管理職おすすめの仕事に役立つ本100冊×2

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ホワイトカラー消滅 私たちは働き方をどう変えるべきか 冨山和彦 著

1.はじめに

私も、本書が主としてターゲットとしている、一定規模の企業に勤めているホワイトカラーの1人です。そのため、書店で初めて著者とタイトルを見たときから、買って読もうと考えていました。

本書は序章~第5章までの構成になっていて、最終章では「日本再生への20の提言」がなされています。ただ、ここでは、自身が最も印象に残った、第4章の「悩めるホワイトカラーとその予備軍への処方箋」に絞って紹介していきたいと思います。

タイトルには”処方箋”とありますが、いきなり「企業自身のCXがそうであるように、これだけ大きな社会と経済の転換局面にあって、一朝一夕でなんとかなる処方箋など存在しない」というところから始まります。

いくつも示唆に富む話が出てくる中、自分にとって響いた内容を引用していきます。

2.内容

  • 腹を括って自分自身の生き方、働き方、武器やスキルをどうするのか、それを実現するにはいかに自分自身が変容、すなわち自己トランスフォーメーションをすべきか考え、そのための努力を営々と続けて自らを変えていくしかない。
  • SNSの時代なので短文の読み書き能力は放っておいても向上するが、ビジネスパーソンに問われる能力は、相当量のファクトを認識し整理し、一定の思考フレームワークを選択し、これらを当てはめて論理を構築する、さらにわかりやすく表現する力。仕事の世界で他人に物事を伝えるにはこうした最低限のファクトとロジックの「物語り」の基本構造が必要
  • ここで重要なのは、人間にとって理解できないものを書くことはできないということ。だからそれなりの長文を読んで理解する能力がないと文章は書けない。そこで本を読むこと、長文を読むこと、それもできるだけいろいろな文章を読むことが大事となる。
  • 日本企業は、産業どころか企業を超えた「共通性」がないものをスキルと呼んできた。しかし、それはどんどん使い物にならなくなっている。しかも、業務マニュアルにしても、変容のスピードが速くなり、変容の幅が大きくなると、むしろ問われるのは、業務マニュアルを何の疑いもなく墨守する能力ではない。業務マニュアルが変わるごとに適応する能力。その際、個人が持つ普礎的な「技芸あるいは技能」が問われる。
  • これからの企業社会では、業務マニュアルを墨守する能力はAIや機会に代替されていく。業務マニュアルから外れているものにどう対応できるか、マニュアルが現実に合わなくなったときにそれをどう変えるか。考えようとすると、どう考えても言語能力を持っていなければできない。リベラルアーツ力を基盤にして、その人がこれから生きていく業種や職種において、より解像度を上げて求められる言語能力、考える力は何なのか、が問われる
  • 社員には「これからは自分の力で稼ぐことが大事だから、メニューの中から自由に選択し、勉強してください」と伝える。ところが、社員の側からすれば、何から勉強していいかわからない。そのため、企業が提示したメニューはほとんど使われることなく、うやむやになる。また、そもそものスキリングが弱い、基礎的言語力が弱い人が、この程度の「お勉強」をやったからといっても使い物にはならない。これが、現状の日本企業に多いリスキリングの状況。
  • 従来型の日本企業ほどメンバーシップ型雇用であるため、ジョブ型のリスキリングとはもっとも遠いところにある。だからリスキリングメニューもカフェテリア型のぼんやりとしたものになりがち。そもそもスキリングの部分、すなわちリベラルアーツの基礎編が脆弱なので、リスキリングはその前のスキリングの段階から射程に据えるべき。
  • とはいえ、最後の最後は個人の責任になると考えておいたほうが安全。もっと言えば個人の主体性がないと、ホワイトカラーが安全地帯ではなくなる時代における長い人生は、かなり厳しいものになる
  • ローカル企業で経営に近い仕事をしようとすると、「田舎の駅長さん」のような仕事をしなければならない。現場作業員、中間管理職、経営者の仕事を、すべて1人でやらなければならない。他方、グローバル企業では立派だったかもしれないが、分業前提の仕事しかしていないホワイトカラーは役に立たない。それぞれ歩の仕事、香車の仕事はできても、将棋指しとしては一人前ではない。
  • 現場で仕事をしている若い平社員の方が、モノを売ったり、モノをつくったり、サービスを提供したりしているから、具体的に付加価値に貢献していることを認識しやすい。ところが、出世し、偉くなればなるほど、曖昧になっていくのがホワイトカラーの世界。管理職になるほど付加価値を生むことが難しいため、多くのホワイトカラーが管理職になるほど無能に近づいていく
  • 真面目にコツコツと仕事をしていれば、確実に自分の給料が上がることが所与ではなくなる。それが進んでいくと、最後は会社の形が変わる可能性もある。そのときにはじめて、一人ひとりが検証され、付加価値を出しているかが問われる。
  • ブルーカラーやエッセンシャルワーカーは、現場で具体的な仕事をしている。実際にやっていることと、その人のスキルは対応しやすい。しかし、ホワイトカラーはぼんやりと広範囲の仕事をしているため、漫然とその状態に身を任せていると、人に語れる自分の強みが何もないまま時間だけが過ぎていく。何度でも言うが、本当に気をつけるべき。時間だけは絶対に返ってこない。
  • ホワイトカラーの多くは、自分の食い扶持を自分の才覚や能力で稼がなければならないという感覚を喪失している。その代わり、努力賞で評価されようとする。毎日休みなく通っているから、これだけの苦労をしているから、これだけもらうのは当然ですと主張する。しかしそれは、世界基準で考えると異常な感覚と言わざるを得ない。
  • 人手が不足するこれからの時代に、企業と従業員はお互いにWinWinでないとうまくいかない。企業として従業員に期待するMUSTと、従業員のWILLとCANが合わなければ互いに不幸になる。ブルシットジョブに我慢してしがみついている人は、間違いなくモチベーションが低い。メンタルのトラブルにも陥りやすい。それでは、企業も本人もハッピーではない。
  • 従業員個人がどのようなキャリアビジョンを描くのか。それを企業としてもサポートすべき。両者が重なり合う領域があってはじめて、従業員が企業で仕事をし続ける選択肢が生まれる。重なり合わなかった場合は、無理に残るのではなく、それぞれの道を歩めばいい
  • 今後のキャリアパスが怪しいと思っている人は、自分と言う人間は企業からどのように評価されているか、この企業で価値を生み出せるかどうか、自分と言う固有名詞は外部労働市場ではどう評価されるかなど、自問自答を重ねるべきだろう。これは年齢を重ねるほどシビアに行う必要がある。年を取るにつれ変容力は下がり、周りも即戦力性を期待するので、今の能力、技能レベルの認識は正確に把握しなければならない。
  • ホワイトカラーの空間では見過ごされてきた能力も含め、自分の持っている能力やスキルを必死に探したほうがいい。相当程度の内省モードに入らないと、能力やスキルの棚卸しは難しい。正確に解析できないなら、転職には失敗する。転職コンサルタントが高額な代金を取って懸命にやる作業なので、そうした経験のない個人がそう簡単にできるわけではない。
  • 窓を開けて外を見れば、日本は広い。オフィスの狭い空間で生きてきた人たちは、外に出て世界に広く目を向けてほしい。社外のいろいろな人と付き合い、キャリアについてもフランクに話せる仲間を増やしていったほうがいい。そうすると、世の中には自分のしらないことが日々起きていることがわかる。

3.教訓

第4章だけで70ページ弱あるので、ここに紹介したのはほんの一部です。しかも、置かれている立場ごとに、どんな内容が刺さるのかは人それぞれだと思い、自分以外の人が書き抜きすると、まったく違う内容が出来上がると思います。

自社でもリスキリングに取り組んでいますが、現状の仕事内容によって必要なスキルが異なるにもかかわらず、一律に取組率としての数値実標だけが独り歩きしていて、実を伴った活動になっていないと感じています。

メニューだけそろえて、「あとは自己責任。キャリア自律です。選び選ばれるために頑張って勉強してください。」と言われて、それまでとのあまりの違いに困惑し、なかなか向き合えないという人も多いと思います。

ただ、そうはいっても、「最後の最後は個人の責任になると考えておいたほうが安全。個人の主体性がないと、ホワイトカラーが安全地帯ではなくなる時代における長い人生は、かなり厳しいものになる」という言葉は、相当に重いです。

これを読む前からではありますが、読後にはさらに、漫然と過ごしていてはいけない、と痛切に感じています。少し前に決心し、キャリアコンサルタント資格を目指して養成講座を受講し、同じ目標を目指す社外の友人たちとつながりを持てたことは本当に良かった、とも思っています。これからも自己研鑽は続けたい、そう思える良書でした。