1.はじめに
河合薫さんといえば、本書がターゲットにしている40代・50代・60代では、ニュースステーションでお天気コーナーを担当されていたことを記憶している方も多いのでは、と思います。
そして本書は、各世代を代表して考えを表明してもらっているような本です。
自身が属する世代によって、それぞれ感じること、刺さることは少しずつ変わると思いつつ、自身が特に印象に残ったところを以下で引用して紹介していきます。
2.内容
(1)老害と呼ばれたくない私たち
- 会社の先頭バッターから外され「ついに戦力外か」と居場所を失った中高年にとって、慰めや気遣いは同情でしかない。同情は必ずしも悪い感情ではないが、自分の弱さを突きつけられたようであり、見下されたようでもあり、自信喪失し、自分が情けなくなる。
- 昇進が遅れ年下に追い越された時、役職定年で肩書が消えた時、雇用延長で閑職に回された時、「私は働かないおじさんなのか」「働かないおばさんなのか」と不安になる。自尊心が低下し、自分への期待値を下げ、自己不信を引き起こし、本来の能力が発揮できなくなる。これまでの人生で培ってきたはずの自身が、痛みを伴って脆くも崩れ去っていく。
- ステレオタイプが現実のものとなることへの不安や、高いパフォーマンスを示さなければならないというプレッシャーが、注意力、思考力、判断力といった認知資源を浪費させ、意気込めば意気込むほど空回りする。
(2)自分を縛るしがらみの存在
- 境界に何が含まれるかは人それぞれだが、1つだけ条件がある。「身近な人とのつながり(家族・友人)、社会とのつながり(仕事・ボランティア)、生命の尊さ(健康)」の3つの要因がすべて満たされていること。わかりやすく言い換えると、私たちは「家庭」「仕事」「健康」という3つの幸せのボールを持ち、どのボールも決して落とすことなく、ジャグリングのように回してこそ、豊かな人生、幸せな人生が実現する。
- 「私」たちは案外気づいていないけど、「私」は自分が決めたことなら何が起ころうとも、「私の運命」を引き受ける強さを備えている。そのためには伴走者がいた方がいいに決まっている。そうしているうちに、身近な人とのつながり(家族・友人)=家庭のボールを回し続けることの大切さがわかっていく。
(3)自分の「心の土台」を再構築する
- どうすれば競争のらせんから、自由になれるのだろうか。「私」の価値観とは何か?自分が納得できる生き方はどうすれば手に入るか?答えはシンプル。「私」の理解を深めること。ただそれだけ。
- 「私」という存在は、ただ1人で成り立っているわけではない。私たちの個性やあり方は、常に環境から大きな影響を受け、その影響力は想像以上に大きい。幸福な人生を送るには、「共同体の中にいる自分」を見つめる視点が不可欠。特に、中年期以降の人生には、極めて重要になる。
- 家族や友人との時間のため、自分の学びのため、健康を維持するため、知見を広げるため、趣味のため、そして困っている人たちのため、ときにはがんばった自分を労うため。そんな「私の大切なもの」のために、「私」のカネと時間とエネルギーを使うことは、3つのボールを回し続けるために不可欠な投資。
- 自分ではどうにもならない雨が降ってきたとき、「傘を貸してください」と手を伸ばす勇気と、差し出された傘を素直に受け取る勇気があればなんとかなる。彼らの経験は1人きりではあきらめてしまいそうなときも、誰かの支えがあれば底力が発揮されることを物語っている。それはまさしく「積極的他者関係」こそが、人が生き抜くための底力となる証と言えよう。
(4)「いい大人」の呪縛から離れる
- そもそも「老害」という言葉を自ら使うことは、本来、自分が持つべき経験や知恵といった価値を、自分で否定してしまう行為でもある。相手に「自分はもう役に立たない」「邪魔だ」という印象を与えるだけでなく、言霊のように自分自身をも蝕む呪いだ。だからこそ、安易に使うべきではない。
- 1番大切なことは何か?「健全な心の土台」に従って働くこと。それは、仕事の大小にかかわらず誰かの役に立つ喜びを感じたり、純粋に自分の心が満たされる選択をすることだったりする。ここまで読んでくれたあなたは「健全な心の土台」を再構築できるし、あなたの「本来の自己」に近づくこともできる。ありのままに、思うように、気が向くようにやればいい。
3.教訓
”私たちは「家庭」「仕事」「健康」という3つの幸せのボールを持ち、どのボールも決して落とすことなく、ジャグリングのように回してこそ、豊かな人生、幸せな人生が実現する。”
本書の核心は、この一文に凝縮されているように感じました。
どれか一つだけが突出して満足していても不十分で、三つすべてがバランスよく合格点に達していることが大切なのだと思います。もちろん、それが簡単ではないことは重々承知しています。それでも、このバランスを意識し続けなければ、人生を振り返ったときに「どこか引っかかる」感覚が残ってしまうのではないかと感じました。
少し前まで、私の人生は仕事の比重が大きかったように思います。しかしコロナ禍でテレワークが広がり、家で過ごす時間や家族との時間が増えたことで、家庭の比率が自然と高まりました。さらに、健康寿命を意識してジム通いを始めてからは、健康のウェイトも確実に増してきています。
今の私は、もはや仕事だけにまい進する年齢でも役割でもありません。だからこそ、自分が本当に大切にしたいものを大切にしながら、これからの人生を歩んでいきたい――そう素直に思わせてくれる良書でした。
