1.はじめに
榊巻さんの本でいえば、「世界で一番やさしい会議の教科書」に続き2冊目です。
タイトルとしては「抵抗勢力」という言葉を使って、変革万歳のような表現になっていますが、中身は決してそんなことはなく、抵抗する側の主張だけでなく、感情にも配慮した「予防治療」が重要、と極めてわかりやすい内容になっています。
以下では、特に印象的だった部分にフォーカスを当て、引用して紹介していきます。
2.内容
(1)抵抗とは何か
- 抵抗する側にも理屈があり、正義がある。単に駄々をこねているわけではない。ましてや、会社を落とし入れようとしているわけでもない。だから間違っても「変革推進側が絶対に正しい」などと思ってはいけない。相手の立場で、相手の主張と感情を深く理解しなければならない。これが抵抗対応の難しさ。
- 「抵抗=悪」とレッテルを貼ってしまってはダメ。抵抗は駆逐するものではなく「向き合うもの」。このマインドがなければ、何をやってもうまくいかない。
(2)立ち上げ期
- 大きな労力をかけてプロジェクトをやるには、誰もが納得できる「プロジェクトゴール(意義・目的」が必要。立ち上げ期にしっかりとゴールを定め、関係者が本当にそのゴールを目指すべきだと思える状態を作らなければ、その先で抵抗と向き合う足場がなくなってしまう。人は「何をするか」ではなく、「なぜするのか」によって動くもの。
- 最も重要なことは「ゴール、コンセプト、必然性」の3要素を意識すること。
- ゴール:いつまでに何を達成するのか?
- コンセプト:ゴールの達成時に、どんな状況を作り出すのか?
- 必要性:なぜ、ゴール達成、コンセプト達成が必要なのか?
- コンセプトをもう少し砕いた言い方にすると「なるほど、この状態を作りたいのか」「うん、確かにこの状態がいいな」「この状態ができたら面白いだろうな」と思わせられるもの。機能しないコンセプトの代表格が「スローガン」。
- メンバー1人ひとりに期待値を発表してもらう。順番に発表するのではなく、一斉に紙に書くといい。一斉に書くと、他に人の意見に乗っかれないから。自分の頭で考えて、自分の言葉で書くしかない。しかも貼り出されるから格好悪いことは書けない。だから真剣に考える。これが本気で考える最初の一歩になる。
- プロジェクトでは、必ず、グランドルール(チームが守る行動規範)を作る。グランドルールというセーフティネットがあるからこそ、発言しやすくなる。特に、部門をまたいでチームを作るときは、絶大な力を発揮する。
(3)計画策定機(前期)
- この時期の特徴は表立った激しい抵抗よりは、水面下で「くすぶる」モヤモヤした違和感が多くなる。あまりにも小さく表に出てこないので、この隠れた抵抗を重要視している人はほとんどいない。表立った抵抗にばかり目がいってしまい、隠れた抵抗が野放しになる。これこそがプロジェクトが抵抗によって失敗する大きな理由。抵抗は放置すると育ってしまう。
- 反論されたときに推進側が陥りがちなのは「その点は考慮しています」と、自分の正当性を訴えて相手を「説得」しようとしてしまうこと。これは結果的に無用な対立や心のしこりを残すことになる。反論せずに、まず共感する。相手に感謝していることを言葉でしっかりと伝える。大事なのは、気持ちよく思いを吐き出してもらう場を作ること。
- 資料として、「プロジェクトの意義、目的、背景などの情報」「プロジェクトで大事にしているコンセプト」「会社全体の活動とどう連携しているのか」などが整理されていると、しっかりしたプロジェクトだと思える。「懸念事項や検討課題」が一覧で整理されていれば、「これだけリスクの先出ができているなら大丈夫そうだな」と安心できる。
(4)計画策定期(後期)
- 表に出てきた抵抗に直面したら、意見をくれた人が何を気にしているのか、何が気に入らないかを”明らか”にすること。相手の主張を正しく理解してからでなければ、反論してはいけない。ポイントは「何をすべき」と言っているのかだけでなく、「何を気にして、そう言っているのか」を確認すること。何を気にしてくれているのかがはっきりするまでは、指摘や不満は明らかになっていないと心得てほしい。
- 大幅な計画の見直しが不要なら、相手の意見に極力乗っかるほうがいい。やる/やらないで長々と議論するよりも、相手の意見に乗っかって、さっさとやってみた方がメリットが大きい。有益な結果にならなかったとしても、別に問題ない。「俺の主張を汲んでくれた」と思ってもらうことも大事。
- 「現状に課題がある」と言われると、すごい拒否反応を示す人がいる。「今の状況が問題であるか否か」で時間を使うよりも、「将来に向けて改善の余地があるのかどうか」を語る。相手が現状にこだわりを持っている人なら、特にそうだ。
(5)施策実行期
- どんなに全社的に意義のあることだと訴えても、人間である以上、自分に直接メリットがないことを徹底してやり続けるのは難しい。だから、こうした施策をやり切るには、基本的にひと手間かけた人がひと手間かけた分だけ恩恵を受けられるようにしておかなければならない。
- 症状が出てから診断し、対処療法をしていたのでは遅すぎる。人の気持ちは一度こじらすと、修復に時間がかかるからだ。従来型の対策が「発生した抵抗といかに戦うか」に着目しているのに対し、「抵抗を発生させないために、どうすべきか」という「予防治療」の考え方。
3.教訓
自分自身も、事業内から事業またぎまで、様々なシステム更改プロジェクトに関わってきました。それらは、決してうまくいったものばかりではありませんでした。
時間と予算、戦力等のリソースがあれば、ユーザヒアリングをしっかりやって、課題を挙げて、対策を考えて、と順に追っていくことができます。しかしながら、制約は多いけれども大きな成果だけは求められる、ということが往々にしてあります。そのため、所管部主導で最低限の予算で走り公開を急ぎ、リリースの直前に説明会を開く、リリースしてから使い方を説明する、ということも起こります。
そうすると、最近でも、自分が要件定義に参加せず、ユーザとして関与しているもので
- ワークフローシステムなのに、リンクを押しても該当の案件に飛ばず、トップページにある一覧表から自分で対象の案件を検索する。
- 複数項目の承認を依頼しないといけないのに、項目ごとに異なる画面単位でしか承認依頼を飛ばせない。承認者は1人でいいのに、初期値では複数人が設定されており、一斉変更の機能がないので1項目ずつ承認者を変更操作をしてからでないと、関係ない人にまで承認依頼メールが大量に発信される。
という考えられないような状態でシステムがリリースされることがあります。
ユーザに正しく情報を登録してもらわないと、所管部が望む効果が得られないのにもかかわらず、操作するのが面倒で、ミスを誘発する懸念がある状態だと、使ってもらえるシステムにはなりません。現場が抵抗したくなる気持ちも当たり前です。
そうはならないためにも、想定されるヘビーユーザーや、ポイントになる部署には、事前にコンセプトを説明し、必要な要件について話し合いをしてから、具体的な設計に入り、進捗の都度フィードバックをして意見をもらう、ということが欠かせない、と改めて理解できる良書でした。
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