1.はじめに
キャリアコンサルタント資格を取得し、50歳が目の前になってきた自身にとって、この表題で読まないわけにはいかないと感じ、手に取りました。実際、ロジャース、「中年の危機」など、受験時に学習した内容が文中に登場します。
また、流動性知能・結晶性知能についても、メンタルヘルス・ヘルスマネジメント資格取得時に学習しました。学びを継続していくと、知識がつながっていくことを実感できたという点でも、いい経験になりました。
2.内容
(1)第2の曲線を知る
- 人間は単純に、昔の栄光を楽しめるようにはできていない。止まらないランニングマシンに乗っているようなもの。成功による満足感はあっという間に過ぎ去る。足を止めれば、一瞬で転げ落ちる。だから私たちは、次の成功が、つまり前回以上の成功が、私たちの渇望する不滅の満足感をもたらすことを願って、ひたすら走り続ける。
- 人には2種類の知能が備わっているものの、各知能がピークを迎える時期は異なる
- 流動性知能:推論力、柔軟な思考力、目新しい問題の解決力。成人期初期にピークに達し、30代から40代に急速に低下。
- 結晶性知能:過去に学んだ知識の蓄えを活用する能力。蓄えに依存するため、40代、50代、60代と年齢を経るほど向上する。
- 流動性知能だけを頼りにキャリアを積んでいれば、かなり早期にピークと落ち込みを迎えるが、結晶性知能の必要なキャリアを積んでいるか、もっと結晶性知能を活かせるようにキャリアを再設計できれば、ピークが遅れる代わりに、落ち込みの時期もかなり先に延ばせる。
- 人生の後半は、知恵で他者に奉仕しよう。あなたが最も重要だと思うことを分かち合いながら年を重ねる。何かに秀でていることは、それだけで素晴らしいことなのだから、それ以上の見返りは不要。そう思って生きていれば、歳を経るほど再興に秀でた存在になれる。
- 第2の曲線を第一の曲線より良いものにするため今始めるべきこと3つ
- 人間関係を深めること
- 精神性を探求すること
- 弱みを受け入れること
(2)成功依存症から抜け出す
- 幸福になることより特別になることを選ぶ人は、依存症に陥っている。人より必要以上にたくさん働くことで成功すると、そのペースを維持しないと桁外れな生産性を維持できないと考え始める。桁外れな生産性から得られる見返りは、落ちこぼれたくないという恐怖心へと変わり、ますます走り続ける推進力となる。
- 仕事依存症の人が本当に求めているのは仕事そのものではなく、「成功」。身を粉にしてまで働き、手に入れたいのは、お金であり権力であり威信。なぜなら、それは世間から承認され、喝采され、賞賛されていることの表れだから。
- 「ナルキッソスは自分に恋をしたのではなく、自分のイメージに恋をした」。私たちは現実の自分ではなく、成功している自分のイメージを愛している。でも「あなた=あなたの仕事」ではないし、「私=私の仕事」ではない。
- 失敗を強く恐れている人たちが、実際にことを成し遂げても大した喜びを感じられず、重大な場面で失態をさらすことを心配しているとは、なんと悲しい皮肉。言い換えれば、その人たちを動かしているのは、価値あるものをつかみ取れる可能性というよりも、しくじる可能性に対する恐怖心。こうした恐怖心は、完璧主義に陥る原因の1つでもある。
- 世俗的な成功を収めて地位を高めたいという願望は、一歩間違えれば脅迫的な情熱へと変わる。問題は、この種の成功は、すべての依存性物質と同様に、どこまで行っても切りがなく、満足に至らないことにある。どれだけ有名になろうと、どれだけ裕福になろうと、どれだけ権力を手に入れようと、満足する人はいない。
- 成功依存症を解決するのは簡単ではない。しかし、真実を素直に認め、変化を誓わないといけない。「自分は今問題を抱えていて、解決したい。今までのやり方はもう通用しない。幸せになりたい」と認める。なお、これはどんな依存症にも共通する、克服の第一歩。
- 大事なことは、依存症を言葉にし、解放されたいと願望を口にすること。
人よりキャリアを優先する人生から、私を解放してください。
仕事にかまけて人生をないがしろにする行為から、私を解放してください。
他者より優位に立ちたいという欲望から、私を解放してください。
世間の空虚な約束に惹かれる心から、私を開放してください。
職業上の優越感から、私を解放してください。
愛よりプライドを取る心から、私を解放してください。
依存から離脱する苦痛から、私を解放してください。
落ち込みを忘れられる恐怖から、私を解放してください。
(3)欲や執着を知る
- お金、権力、快楽、名声らに執着すると、つまり人生の関心が世俗的な見返りに集中し、それが手段でなく目的になってしまうと、問題が生じる。世俗的な見返りからは、私たちの望む深い満足は得られない。
- 結局のところ、社会的階層の基準となるのは、あなたが属するコミュニティの他人。他の誰かのほうがもっと有名だという理由で落ち込んでいるハリウッドの有名セレブも1人ではない。
- 満足=持っているもの ÷ 欲しいもの。欲しいものを管理せずに持っているものを増やし続ければ、欲しいものは増殖し際限なく広がっていく。一歩間違えれば、成功の階段を上るほど満足感が減ることになりかねない。そうすれば、満足感は下がる。
- 欲しいものを一覧にすれば、一時的には満足できる。しかし一覧を作れば執着が湧き、一覧が増えるほど不満も増える。幸福の要素に比べたら、バケットリストの項目がいかに無意味か。人間関係を犠牲にして赤の他人の賞賛を選んだらどんな未来が待っているか。その思いを念頭に置いて、バケットリストを見直す。
- 「悪いものではないけれど、これを手に入れても私の求めている幸福と平穏は訪れないし、そもそもこれを目指す時間もない。この願望は手放そう」。最後に、本当の幸福をもたらす要素を見返し、それを追求することに時間と愛情とエネルギーをかけようと誓う。
(4)死の現実見つめる
- あなたが自分の仕事を本当に愛しているなら、働いているうちは働くことを楽しんだほうがよい。自分のレガシーを作るために試行錯誤してばかりいるなら、あなたはすでに死にかけている。
- 要するに、「あと1年しか生きられない、働けない」と思って生きればいい。キャリアも人生もあと1年しか残っていないとしたら、来月の予定に何を入れるだろう? ToDoリストには何を載せるだろう? どの悩みを手放すだろう? きっと「配偶者との時間を犠牲にしてまた出張に行く」「上司にアピールするため遅くまで残業する」という予定は入ってこないだろう。
- 死に抵抗するのが無駄なように、落ち込みに抵抗しても無駄。そして無駄な抵抗は不幸と不満の元。落ち込みに抵抗すれば不幸になるし、人生のさまざまな機会を見落としてしまう。真実を避けてはいけない。真実を直視し、真実について熟考、検討、瞑想すべき。
(5)ポプラの森を育てる
- 多くのストライバーが、「1人で生きている」という幻想のもとに成人期を過ごし、今になってその結果に苦しんでいる。比喩抜きで言えば、単純に「孤独」。
- 「孤独かどうか」には、性別と年齢はあまり関係しないが、婚姻状況は大いに関係する。既婚者は、離婚者、配偶者を亡くした死別者、未婚者より孤独ではない。しかし、最も孤独なのは、「不在がちな配偶者を持つ既婚者」。
- 本当の友達を2、3人挙げる。既婚者は配偶者を除くことにする。その「本当の友達」と最後にじっくり話をしたのはいつか?困った時、その人になら気がねなく電話をかけられるか?もし本当の友達を挙げるのに苦労したなら、問題がある。
- 本当の友達作りに関しては、女性より男性のほうが苦労する傾向にある。さらに、女性は一般的に社会的・感情的な支えを土台にして友情を築くのに対し、男性は仕事など、共通の活動を土台にして友情を築く傾向がある。要するに、女性には本当の友達が多く、男性には取引の友達が多い。晩年は特に、本当の友達の有無がウェルビーイングに大きく影響する。
- 人間関係に関しては、行動は言葉より雄弁。過去にも言葉だけで行動が伴っていなかったのなら、なおさら。
- 「何をしている方ですか?」と聞かれたら、肩書のような外発的なものではなく、自分が最も目的と意義と喜びを得られそうなものを答える。精神生活、人間関係、他者へ奉仕する方法といった観点から考える。それが本当の自分。人生では、口にすることが現実になっていく。
(6)林住期(ヴァーナプラスタ)に入る
- 私たちは成長し歳を重ねるとともに自己概念を構築する。情緒の安定した人は、自己概念が人生経験と一致している。逆に、情緒不安定な人は、自分の経験を正当に受け止められないために、自己概念をゆがめる。私たちは自己概念からの逸脱に不安を抱き、抵抗する。
- 大事なことは、自己概念を「none(無宗教)」から「今はnone」、もっといえば「noneだけど聞く耳は持っている」へと、ほんの少しずらすこと。自己理解にわずかな隙が生まれ、絶大な効果をもたらす。ドアを開放しておけば、いつか何かひょっこり入ってくるかもしれない。
- 精神の修養は、健康と増進と同じくらい重要な自己改善。その時間をなんとしても確保するために、瞑想、祈り、読書、実践を予定に入れる。それも毎日の予定に入れる。たいていの場合、足りないのは一歩を踏み出す口実だけ。
(7)弱さを強さに変える
- 本当に幸福と成功を実現したいなら、他者に自分をさらけ出すべきで、壁を作ればむしろ傷つく。わかりやすく言えば、誰もが知っているように、防御は裏目に出るばかりで、自分のためにならない。本当に目指すべきは無防備。
- 誰かと深くつながりたいときに、強さや世俗的な成功はあまり役に立たない。見せるべきは弱さ。エリートという箔は共感を呼ばない。むしろ深いつながりの妨げになる。
- 組織のリーダーは、弱さを隠さず人間味にあふれているほうが、幸福で、部下からも有能とみなされる。裏を返せば、保身的だったりよそよそしかったりするほど、部下からあまり信頼されず、不幸で、結果として良い成果を上げられない傾向がある。
- 悲しいときは、うぬぼれたりネガティブな真実を取り繕ったりする可能性が下がるため、社会的状況で現実を適切に評価しやすい。それどころか、悲しみがあると、集中力が高まるし、過ちから学ぼうとするため、仕事の生産性も上がる可能性がある。失敗は、失敗の結果生じるネガティブな感情によって、のちの成功の可能性を高める。
- 自分の弱さに正直に、そして謙虚になれば、ありのままの自分が心地よくなる。弱さを通じて人とつながれば、もっと愛にあふれた人生になる。すると、最後の最後には、「周りから思われているほどすごくない自分」がばれることを気にせずに、自然体でいられるようになる。人の目を気にせずに弱さを分かち合えるというのは、ある意味無敵。
(8)引き潮に糸を垂らす
- 楽な過渡期などないだけに、リミナリティは悩ましい。しかし明るい話もある。望まなかった過渡期さえも、後から見ればたいてい印象が変わる。実際、たとえ過渡期に挫折を経験しても、それを乗り越える限り、人は最終的に90%の確率で、過渡期は良い経験になったと報告する。
- 過去に求めていたものではなく、今本当に求めているものについて考える。金銭的な報酬に対する期待を下げる。周りから「威信が下がった」「過去の経験やスキルをわかりやすいかたちで活かしていない」と思われることを恐れない。
- 自由になるには飛ばなくてはいけないとわかっていても、飛ぶのは怖い。それでも飛べば、つかの間の過渡期を経て、あなたは生まれ変わる。
3.教訓
まさに自身が頭に描いていたことを言語化してくれていた本でした。
私の組織では定期的に自分のキャリアプランを人事に申告する機会があります。実際に、先日、「昇格したり、自分が先頭に立って手も動かしたりするよりも、これまでの経験・知識を後進人材に伝え育成側に回りたい」と記載したところでした。
しかしながら、直近の異動ではそれは叶いませんでした。だからといって、まだ学生の子どもの養育費用もかかるため、気軽に転職や早期リタイアもできません。そういう矛盾や葛藤を抱えながら日々を過ごしている人は自分だけではないと思います。ただ、この転機で迎えた危機も、数年後にいい経験になったと言える日が来ると信じています。
また、かつて管理職になりたての頃は、何でも知っていないといけないと、完璧主義を求めるようなところがありました。そこから数年経過し、任せるところは任せたらいい、誰に任せるのが適任かわかっていればいい、わからないところはわからないと正直に話せばいい、ということがわかってきて実践しました。そもそもの自分の弱さにも、これからの落ち込みにも、自然体で向き合いたいと強く感じる良本でした。