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苦しかったときの話をしようか ビジネスマンの父が我が子のために書きためた「働くことの本質」 森岡 毅 著

1.はじめに

本書の冒頭にエピソードが記載されているように、自分の子どもたちへのメッセージとして書き留めていたものを、本にして世の中に送り出した、という内容で、それは副題にも表れています。

そのため、文体としては、将来のキャリアに悩む自分の子どもに語り掛けるようになっています。

自身も二児の父であり、普通の生活をするだけで大変なのに、著者のように4人も子どもを育てながら、かつその子どもたちへのメッセージを書き溜めるというエネルギーに頭が下がります。

以下では、内容からピックアップして印象的な部分を紹介していきます。

2.内容

(1)やりたいことがわからなくて悩む君へ

  • 最終的には、今の君の精一杯の価値観で、君が「軸」を決めるしかない。君の価値観が変化したら、またその時点での君のベストの軸に合わせてキャリアをアップデートすれば良いだけ。経験とともに、ライフステージとともに、最も大切なものが変わることがある。だから未来に軸が変わることは全く恐れなくていい。
  • ”わかる”ということは、何がわからないかをわかること。考えたらわかること、考えてもわからないことの境界が自分なりに納得できるようになること。つまり不安は、わからないことをずっと放置してきた”うしろめたさの闇”から溢れ出てきている。
  • 自分の中の特徴探しは他人との比較ではない。しかしながら社会的な評価は自分以外の誰かが最終的にするもの。社会では厳然とした相対評価の正解が待っている。最終的には同じような強みを持つ人たちと比較される中で、相対的に秀でていかねばならない。
  • スキル(職能)こそが、相対的に最も維持可能な個人財産。能力だけは、健康な限りは常に君と共にあり、君のために生活の糧を生み出す。身について能力こそが君の何より大切な財産。

(2)学校では教えてくれない世界の秘密

  • 当人の責任とは全く関係なく、人は生まれつき違っている。同じでも平等でもない。みんな違って、極めて不平等に世界はできている。まずはこの事実を直視しよう。
  • コントロールできる変数は、①己の特徴の理解と、②それを磨く努力と、③環境の選択、最初からこの3つしかない。この事実を直視することは、君にとってのキャリアの勝ち組を見つけるための大切なスタートラインになる。そもそも君は、生まれた瞬間から、他の誰でもない「君」という人間。
  • 現実には、人の命の価値は同じではなく、厳然とした差がある。概念的な話としてどう思いたい人がいても構わない。私の目はただ現実を見ている。その人が死んで周囲が困る場合は、人によって雲泥の差がある。現実を見よう。人の命の価値は、社会にとっての有用性において歴然とした差がある。
  • この世界は平等ではなく、資本家のために都合よく構造が作られている。それが資本主義の必然。汗水垂らして働いたサラリーマンの所得にかかる最高税率は5割をゆうに超えるが、汗を一滴も流さない資本家の株式配当に対しては税は2割しかかからない。そういうことはちゃんと知っておいたほうがいい。
  • 年収の期待値の上下を知った上で、それでも自分にとって情熱を持てる好きな仕事を選ぶべき。仕事というのは辛いことのほうが多い。たとえ好きなことを選んでも、辛いことやしんどいことの連続が待っているのに、お金のために好きでもない仕事を選んでも成功できるわけがない。
  • 同じようなことをやっているように見えても、学び取る意思があれば同じ川を渡ることは二度となく、知恵と知識を集積して自分の世界を拡げていく過程は喜びに満ちている。人生とは、まだ知らない面白いことを求めて、自分の世界を拡げていく旅のようなもの

(3)自分をマーケティングせよ!

  • 「伝え方(HOW)」よりも「中身(WHAT):何を伝えるか」こそが、はるかに重要な意味を持つ。話し方の巧拙よりも、話している内容こそが君の価値を決定することを忘れてはいけない。
  • WHOを定義する根本的な意味は、”選択と集中”を可能にすること。限られたリソースは本当に希少なので、市場におけるすべての相手に対して平等に努力を分散させてしまうと、一人ひとりの誰にとっても君への印象は中途半端になってしまい、誰も君というブランドを購入することができなくなる。
  • 就活の文脈のWHATの便益に該当するものは、君というブランドの本質的な価値。便益は自分にとっての価値ではない。あくまでもWHOで定義したMY Brandの購入者の価値であることを忘れてはならない。
  • キャリア戦略に置き換えたHOWとは、WHATで定義した自分自身の”便益”を、WHOで定めた”ターゲット”に届けるための具体的な仕組みを表現すること。
  • エッジを立てようとするあまり、結果的にキワモノになってしまう。面接現場で求められていない一発芸や、人が聞いたら眉をひそめるような人となりを披歴するのはリスキー。差別化のための差別化はうまくいかないので注意が必要
  • 選ばれるために、ウソはついてはいけないが、スピンは必要。これはマーケティングの常識。スピンとは、同じ事実を言うのに、切り口や見せ方を変えるだけでインパクトを増すやり方を指す。
  • 自分をブランディングしていく中で、「オフ・エクイティ」と呼ばれる、設計図に矛盾する行動を取ると、築き上げてきたブランド・エクイティを破壊し、ブランドは一気に弱くなる。ブランドは社会の中で築き上げたい「自らの信用」
  • 長いキャリアにおいては、逃げてもよいときと、逃げてはいけないときがある。ブランディングにとって重要でもないことを、いちいちバトルとして拾っていては、人生に無駄と寄り道が増えすぎる。逃げてはいけないのは、戦うことがブランディングにとって大きなプラスになるときと、逃げることがブランディングにとってオフ・エクイティになってしまう場合
  • 普通の人と同じようなことをしていたら、普通にしかなれない。人と違う結果を出したいなら、人と違うことをやるか、人と同じことを違うようにやるか、そのどちらかしかない

(4)苦しかったときの話をしようか

  • 潰れないためには、最初から肩の力を抜いて、最後尾からスタートする自分をあらかじめイメージとして受け入れておくべき。みんな最初は新人だった。大丈夫、どん欲に学ぶ姿勢と、数年に満たない時間がきっと解決する。
  • 王様に近い幹部が自己保存のアジェンダを追求するせいで、「王様は裸だ!」と言えないのがむしろ世の常であると知っておいたほうがいい。組織では、意思決定者へ正しい情報を供給する神経回路が破断しているせいで、驚くような平易な間違いがしばしば起こる。
  • たとえ自分の意に沿わないことでも、一旦引き受けた限りは、全体(会社)の立場に身を置いて最善の行動を尽くすのがプロだと、昔も今もそう信じている。
  • 無力なサラリーマンである以上は「後ろ向きな仕事」は避けられないという悲しい結論。無力ではない、有力なサラリーマンとは、会社にとって数多くいる消耗品のような「人材」ではなく、辞められたら本当に困る「人財」として組織に認識されること。それでようやく、ある程度の対等さで会社と交渉できるようになる。
  • 結果を出さないと誰も守れない。ならばリーダーとして成さねばならぬことは、誰に嫌われようが、鬼と呼ばれようが、恨まれようが、何としても集団に結果を出させること。自分の周囲の仕事のレベルを引き上げて、成功する確率を上げることに、達すべきラインを踏み越えることに、一切の妥協を許さない。そういう厳しい人にならねればらないということ。
  • 後ろ向きな仕事による苦しみの最中は、とにかく辛くて惨めだ。その傷がまだ生々しいうちは、自己肯定感がなく、自信は崩れ、自分の中の軸が容易に揺らぐ。しかしキャリアをもっと長い目で見たときには、そういう経験こそが得難い学びであったと思えるようになったのは不思議。
  • プロの世界で最初から友情や親切を期待するのは単なる「お人よし」であり、淘汰される「負けのマインド」であることを覚えておいてほしい。プロの世界とは生存競争の最前線。プロの世界の友情とは、お互いの実力を認めた後に初めて通うリスペクトの感情であって、日本の道徳上の定義とは違う。
  • 強い人間は、環境に合わせて自分を変えるか、自分に合わせて環境を変えるかのどちらか。その力は本質的に誰もが備えているが、実は多くの人が眠らせたまま。自分にとって安全でストレスの少ない道を選び続ける人は、運が良ければ幸せにはなれるだろうが、それでは決して強くはなれない。Comfort Zoneを出ない限りその力は覚醒しない。

(5)自分の”弱さ”とどう向き合うのか?

  • 最悪なことになっても、それは最悪ではないことがしっかりと理解できているから乗り越えられる。挑戦をする過程で得られる多くの貴重な経験価値が、天秤の反対側で重くぶら下がる”不安”とバランスを取ってくれる。
  • 会社に入って、前向きに挑戦して、たとえ大きな失敗をしたとしても、誰も君の命までは取りに来ない。「君はクビだ!」と言われるのがどうしてそんなに怖いのか。実施にクビになったほとんどの人の人生が、それでもちゃんと続いていくことも知っているだろう。クビになったら新しい居場所を見つければいい、ただそれだけ
  • むしろ挑戦しない人生にこそより悪性の不安はつきもので、それは自信のない人に特有の”永遠に拭えない不安”。どちらの道にも不安があるなら、挑戦する”不安”の方を選択するべき。挑戦する”不安”は、君の未来への投資。
  • 弱点が得意になるかどうかは、やってみないとわからない。やってみても、自信の特徴の限界が見えて、やはりものにできないと悩むこともあるどあう。しかし、少なくともやってみることで、自分の特徴がよりよくわかるようになるメリットをしっかり覚えておいてほしい。
  • 人が弱点を克服できるのも、すべきなのも、その人の強みとなる特徴の周辺だけ。それ以外に費やす努力は、リターンをほとんど生まない。だから、自分が強めたい能力をもっと強くするために弱点を克服していく、それ以外はきっぱりと諦める。自身でその領域をマスターすることから、戦略的に撤退する。
  • プロの世界においては、目的達成に必要な主な能力のすべてを自分一人で賄うのはそもそも無理。それを目指すとすべて中途半端なスキルしか持てない自分になる。どこかに突出したプロであるならば、必ず苦手な領域がいくつも出てくる。したがって、自分の苦手領域をカバーできる他者の力を借りることは、極めて重要な戦略的手段となる。
  • 自分の強みの裏側にある弱みを自分で克服する努力などは無駄の極み。そんな暇があれば、そこに強みを持つ人を探し出して、辞を低くして力を借りればよい。たいていの場合、君の凹に対して強みを持つ相手の特徴は、君の凸を喜んでくれる場合が多い。
  • いつか必ず仲間ができるのだから、広く薄く錯覚で繋がる”友達”なんていらない。一生懸命お互いに気を遣って”友達ごっこ”をしても、そもそも目的が違うのに利害を調整するなんて最初から”無理ゲー”。無理に合わせていても、目的がバラバラなのだから、ストレスが溜まる割には時間も空間もわずかしか共有できない。
  • 行動変化には時間がかかる。最初からすぐに変われないことを覚悟して、時間がかかることを織り込んで、変わる努力を継続すること。周囲にも自分にも正しく期待値をセットするということ。

3.教訓

いわゆる「キレイごと」でなく、社会で生きていくことの現実を直視せよ、という内容について、今となっては肌感覚としてもよく理解できます。

ただ、この内容を就活開始前の大学生が読んでわかるのか?というと、ちょっとハードルが高いような気がします。

むしろ、会社に入って、新人としてがむしゃらに働いたあと、少し壁を感じたり目標を見失いがちになったりする20代半ばくらいが一番フィットすると思います。

また、それより上の世代でも、もう一度自分のキャリアを見つめ直したり、本音と建前は違うよね、やっぱり現実ってこんなものだよね、と開き直ってまた前を向いたり、というときにもいいきっかけになる良書だと思います。

自身でも、数年前には、何でこんなことをやっているんだろうと思いながらやっていたタスクもありました。

ただ、むしろうまく行かなかったり、撤退方針を考えたり、前任者が異動になって突然振られてあたふたしたりと、ああでもないこうでもない、と試行錯誤しながら対応していたときの方が学びが多かったというのは、紛れもない事実だと思います。

DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール ビル・パーキンス著

1.はじめに

数年前に、「老後2000万円問題」ということが大きく報道されました。

それを受け、将来に対する不安や節約志向が高まり、資産防衛の意識が全体に広がったように感じます。


gentosha-go.com

自分もそのような自衛意識に傾きがちでしたが、今回、ちょっと違う目線の本を読み、異なる考え方(お金の使い方)を取り入れようと思い、手に取りました。

以下に気になったポイントを引用・紹介していきます。

2.内容

(1)「今しかできないこと」に投資する

  • 今しかできないことに金を使う。今それを我慢すれば、その分の金は貯まるだろう。だが、十分な金を得たときには、すでにすれができない年齢かもしれない。金を無駄にするのを恐れて機会を逃がすのはナンセンスだ。大切なのは、自分が何をすれば幸せになるかを知り、その経験に惜しまずお金を使うことだ。
  • 経験の価値を信じること。節約ばかりしていると、そのときにしかできない経験をするチャンスを失う。その結果、世界が必要以上に小さな場所になってしまう。人生は経験の合計だからだ。

(2)一刻も早く経験に金を使う

  • キリギリスはもう少し今を楽しむべきだし、アリはもう少し今を楽しむべき。この本の目的は、アリとキリギリスの生き方の中間にある最適なバランスを見つけること。なかでも重要なのは、「どの年齢で、どれくらい金を稼ぎ、どれくらい楽しい経験に金を費やすか」。
  • 金を払って得られるのは、その経験だけではない。その経験が残りの人生でもたらす喜び、つまり記憶の配当も含まれている。良い経験は周りに伝染する。自分が思っている以上の、ポジティブな連鎖反応が起こる。だからこそ、私たちは経験に投資すべき。
  • 年を取れば取るほど、行動に移せる経験の種類は減っていくこともまた事実。もちろん老後の備えは必要。だが、老後で何より価値が高まるのは思い出。とにかく早い段階で経験に投資すべき。そうすれば、年齢を重ねるほどに驚くほど多くのリターンが得られる

(3)ゼロで死ぬ

  • 自分の行動について積極的に考え、自らの意思で判断を下すことを習慣にすれば、「自動運転モード」な生き方はやめられるようになる。金と時間の使い方をよく考えて選択していくことは、人生のエネルギーを最大限に活用するための基本。人生を存分に楽しむためには、無意識な自動運転をやめ、自らの意思で思う方向に操縦していかなければならない。
  • 莫大な時間を費やして働いても、稼いだ金をすべて使わずに死んでしまえば、人生の貴重な時間を無駄に働いて過ごしたことになる。その時間を取り戻すすべはない。それでは最適に生きたとは言えない。
  • 高額な週末医療に備えて多額の貯金をするのは大多数にとって現実的ではない。医療費は病気の”治療”に使うより、健康を保つための”予防”に使うほうがはるかに賢明。今の生活の質を犠牲にしてまで、老後に備えすぎるのは大きな間違い。

(4)人生最後の日を意識する

  • 長寿リスクにどれくらい備えるかは、あなた自身の「リスク許容度」による。リスク許容度を考えて備える場合と、単に闇雲な恐怖にかられて備える場合とでは、とてつもなく大きな違いが生まれる。死ぬ前に金がなくなることや、死ぬことそのものをただ漠然と恐れると、恐怖の奴隷として何年も働き続けなければならなくなる。
  • 私たちの問題は「できる限り人生を充実させるにはどうすればよいか」だ。見境なく豊かになることではない。つまり、この本の目的は、富の最大化ではなく、人生の喜びを最大化するための方法を探すこと。
  • 人生の残りの時間を意識しよう。死を意識することで、人生という限られた時間の大切さがわかる

(5)子どもには死ぬ「前」に与える

  • 子どもたちに与えるべき金を取り分けた後の、残りの「自分のための金」を生きていくうちにうまく使い切るべき。そもそも子どもたちには、あなたが死ぬ「前」に財産を与えるべき。
  • 譲り受けた財産から価値や喜びを引き出す能力は、年齢とともに低下する。金を楽しい経験に変えるあなたの能力が、老化とともに衰えていくのと同じ。何かを楽しむには最低限の健康が必要
  • 親が財産を分け与えるのは、子どもが26~35歳の時が最善。金を適切に扱えるだけ大人になっているし、金がもたらすメリットを十分に享受できるだけの若さもある。
  • 何かを優先させれば、何かを逃すのは自然の理。家族と過ごすその時間は、働いてお金を稼げたはずの時間でもある。「金を稼ぐこと」と「大切な人との経験」をトレードオフの関係として定量的にとらえ、自分の時間を最適化する。働くことで得られる経済的な価値と、子どもと一緒に過ごすことで得られる経験の価値を比べればそのときに何をすべきかわかるはず

(6)年齢にあわせて「金、健康、時間」を最適化する

  • 昔の感覚をひきずり、今の自分の体力をうまく把握できていない人は多い。その感覚のズレが、老後もいくつになっても若い頃と同じようなことができるという思い込みにつながっている。
  • 端的に言えば、まだ健康で体力があるうちに、金を使ったほうがいい。金から価値を引き出す能力は、年齢とともに低下していく。能力が高いときにたくさんの金を使うことは理にかなっている。
  • 私たちはずっと、老後のために勤勉なアリのように金を貯めるべきだと言われてきた。だが皮肉にも、健康と富があり、経験を最大限楽しめる真の黄金期は、一般的な定年の年齢よりも前に来る。この真の黄金期に、私たちは喜びを先送りせず、積極的に金を使うべき
  • 時間をつくるために金を払う人は、収入に関係なく、人生の満足度を高めることがわかっている。言い換えれば、金で時間を買うメリットを享受するのに、金持ちである必要はない。

(7)やりたいことの「賞味期限」を意識する

  • どんな経験でも、いつか自分にとって人生最後のタイミングがやってくる。私たちは皆、人生のある段階から次の段階へと前進し続ける。ある段階が終わることで小さな死を迎え、次の段階に移る。それぞれの生を豊かにしようとするときに問題になるのは、後戻りができないことだけではない。それがいつ終わるか、とてもあいまいということ。
  • タイムバケットを作成し、「死ぬまでにやりたいことリスト」に期間を設定すると見えてくるのは、物事にはそれを行うための相応しい時期があるという事実。具体的な計画を立てなければ、いつまでたっても実現しないものがあることもわかるだろう。

(8)45~60歳に資産を取り崩し始める

  • ゼロで死ぬことを目指すなら、純資産は人生のある時点から減り始めなければならない。そうしなければ金が無駄になる。私たちは人生のある段階で、まだ経験から多くの楽しみを引き出せる体力があるうちに、純資産を取り崩していくべき。
  • 人生を最適化するよう金を使う場合、大半の人は45~60歳のあいだに資産がピークに達する。この範囲から外れると、人生の充実度を最大限に高めるのは難しくなる。つまり、経験のために金を十分に使いきれなかったということになる。

(9)大胆にリスクを取る

  • 全力で取り組んだのなら、結果がどうであれ、その経験から多くの良い思い出も得られるだろう。これは、「記憶の配当」の一形態。後で振り返ったとき、期待した結果が得られなかった経験も、ポジティブな記憶を生み出す。大胆な行動は、将来の幸福度を高めるという意味での投資になり、人生を豊かにする。
  • 今リスクを取れないなら、いつ取れるのか?最も大切なのは簡単な道を選ぶことではない。あなたにとって最善の道を選ぶこと。本当にやりたいことを探したいのなら、リスクを取るときがあってもいい
  • 「リスクの大きさ」と「不安」は区別すべき。人は不安に襲われていると、実際のリスクを過度に大きくみなしてしまう。最悪シナリオを乗り越える策を検討すると、リスクを取ることで起こりうる事態も、想像したほど悪くないと気付けるかもしれない。

3.教訓

この本を読んで「さぁ、お金を使いまくるぞ!」となるかというと、それは少数派なのではないかと思います。というのも、ほとんどの人が、老後の収支バランスを理解できていない、と思っています。

私自身、退職金がいくらもらえるのか、年金が毎年いくら受け取れるのかを全くといっていいほど把握していませんし、子育てが終わって夫婦二人となった場合の毎月の生活費が、今とどれくらい違ってくるのかも想像できていません。

そのため、ライフプランのアプリをインストールしても、多くの質問に答えられないので、適当な数字を入れても確信が持てず、今お金を使ってしまったらどうなるのかどうかの判断がどうしてもできない、というのが実感です。

 

ただし、子供と過ごす時間は限られるし、体力が落ちてからだとできないことなど、記載されていることは事実だということは、実感を持って受け止めます。

非日常な出来事にお金を使うと、それが失敗談だったとしても、家族で「あの時は大変だったね」と楽しく振り返ることができ、会話も弾みます。

将来を左右する規模でない出費であれば、過度に節約を意識することは控え、今を楽しむことの価値に対して金を使おうと、考え方を変えることの必要性は理解できました。

表紙の裏に「人生で大切なのは、思い出を作ることだ」と書かれている意味が、本書を読めばしっかりと受け止めることができ、これから実践していきたいと思います。

 

駆け出しマネジャーの成長論 7つの挑戦課題を「科学」する 中原 淳 著

 

1.はじめに

中原淳さんの本は、「フィードバック入門」に続いて2冊目です。

世代が近いこともあって、育ってきた時代、社会人になったころの状況、それから今に至る環境変化について、共有・共感できることが多く、非常に勉強になることが多いと感じています。

bookreviews.hatenadiary.com

自身が読んだのは、増補版ではなく旧版のほうですが、その中から印象に残った箇所を、以下に引用して紹介していきます。

2.内容

(1)マネジャーとは何か?

  • 何よりもまず最初に直面しなければならないことは、最も根源的な「マネジャーがどんな存在なのかを知ること」、そして「マネジャーが実務担当者とは異なることを理解すること」
  • マネジャーを一言でいうと、「Getting things done through others」。すなわち「他者を通じて物事を成し遂げた状態にすること」をいう。つまりこれまで「自分のタスクを追ってきた人」「自分が動いてきた人」が、マネジャー候補になって「自ら動かないこと」を求められている。「エキスパート」としての自分のあり方を一部棄却し、「自分以外の人」に「仕事をさせること」が求められる
  • ここでいう「他者」は「部下」だけでは不完全。部下以外のさまざまな「雑多な存在(上司や他部門、経営者含む)」と付き合い、かつ彼らを動かしていくことが求められる。マネジャーの日常は、「組織の(さまざまな人々の)狭間を動くこと」に費やされる
  • マネジャーになるプロセスとは、「”仕事のスター”から”管理の初心者”に生まれ変わること」。その機能を果たせるようになるためには、やはり「学び」と、そのための「移行期間」がどうしても必要。誰もが最初は初心者。
  • マネジャーには、日々の経験(出来事)から学び、自らを振り返ることを通して内省すること(リフレクション)、それによって自分なりのノウハウややり方を蓄え、次のアクションを作っていくことが求められる。

(2)プレイヤーからの移行期を襲う5つの環境変化

  • キャリアの転換期に対処するためには、自己(Self)の属性や、他者から受けられる支援(Support)の中身を知っておくことに加え、自分が置かれている状況(Situation)をしっかりと把握し、戦略(Strategy)を立てることが大切。この枠組みを4Sシステムと呼ぶ。
  • 移行プロセスは、①突然化、②二重化、③多様化、④煩雑化、⑤若年化という5つの環境変化にさらされ、実務担当者からマネジャーの移行が困難になっている。
  • マネジャーが「プレイヤーとしてかける時間と「マネジャーとして働く時間」のバランス、つまり「プレマネバランス」をうまくとりながら仕事を進めるのは、そう簡単なことではない。少なくともプレイングに過剰に時間を当てているマネジャーは、一般的なマネジャーよりも職場業績が低い
  • 「マネジャーとして働き続ける」ためには、準備や学びや覚悟が今まで以上に必要。マネジメントを始める前には、あらかじめ、これから起こるであろうことを知り、またマネジャーになった後には、自らの挑戦課題と向き合い、アクションを取っていく必要がある。

(3)マネジャーになった日

  • 新任マネジャーが実務担当者からの移行において乗り越えなければならない課題は、①部下育成、②目標咀嚼、③政治交渉、④多様な人材活用、⑤意思決定、⑥マインド維持、⑦プレマネバランス、の7つ。
  • マネジャーになることは、「納得のいくように仕事」はできるが、それは「厳しい責任」と引き替え。納得のいくように仕事の割振りを行い、目標管理を行える。しかし、その反面で成果を出さなくてはいけない。
  • 「プレイヤー村」から「マネジャー村」に入ってきたマネジャーは、最初は右も左もわからずに揺れる感情とうまく付き合いつつ、少しずつ能動的に振舞い、自分の職場に働きかけることを通して、不透明感や不確実性を自ら払拭していく。時にはうまくいかないことや寂しさを感じることもあるが、その先にはポジティブな世界が広がっている。
  • 部下育成は、「ちょっと危なっかしい部下にあえて難しめの仕事を振り、マネジャーとして進捗を管理すること」が大切。
  • マネジャーは、まず現場を観察しなくてはならない。職場には、どんな人間関係が存在しており、誰を動かせばだれが動くのか、に関する情報を、いわばフィールドワーカーのゆに集め、それらの情報から作戦を練る。
  • 英語の”manage”は、もともと「やりくりする」という意味。マネジャーが為しうることは、物事がひとつでも前に進むための「やりくり」をすること。

(4)成果を挙げるため、何を為すべきか

マネジャーへの「生まれ変わり」は、「あなただけの課題」ではなく、「みんなの課題」。マネジャーのラーニング・スパイラルの途上にいるのは「あなた」だけではない。みんながこのスパイラルの旅人

①「部下育成」を克服する
  • 企業は学校とは違う。企業の場合、マネジャーが持っている時間や精神的余裕をすべての部下に均等に配分することはできない。育成といえども、中長期の視点を入れつつ、優先順位を決めていくこと、リソースが増えていき状況が許すようになれば、範囲を拡大していくことが大切。
  • 部下の伸びしろや成長意欲は必ずしも均一ではなく、十把一絡げにくくることはできない。育成に当たっては、まず自分の部下について整理し、現段階ではだれに対してどのように育成資源を透過するのか、中長期的には、その配分をいかに変えて、職場の能力を高めていくのかを考えていく必要がある。
  • 部下が業務内容や目指す目標についてしっかりと納得をしていなければ、その後にどんな背伸びや挑戦を含む仕事を当てても、部下は納得しないし、振返りを促されても奏功しない。
  • 部下育成は、「快適空間」でもなく「混乱空間」でもない、ほどよい挑戦が求められる「挑戦空間」をつくること。その空間では、①業務内容や目標について部下の腹に落とすこと(≒目標咀嚼)、②挑戦を含む業務経験を与えること(ストレッチ)、仕事の進捗を見て、部下の振返りを促すこと(内省)が大切。
  • 初任者にしてみれば、質問できる相手は多いに越したことはないし、指導員(OJT)以外の人との接点があれば、いろいろな仕事のやり方を見る機会が増える。
②「目標咀嚼」を克服する
  • 「目標咀嚼」に求められることは、船の行く先を決め、乗船させ、それぞれに役割を与えて、大海に漕ぎ出していくこと。つまり、マネジャーは、誰もが理解できる言葉で目標を示し、部下に納得してもらい、彼らのモチベーションを高めたうえで、部下の行動を引き出さなくてはならない
  • 意識したいことは、職場メンバーに同じ船に乗ってもらうための「ポジティブ・ストーリー」をつくること。
  1. 私たちは今、どのような状態にあるのか?環境はどのような状況なのか?
  2. 短期的/中期的/長期的には、何を達成するのか?
  3. 最後にどのようなポジティブな世界が広がっているのか?
  • ビジネスにおいて「伝えること」とは「マネジャーが言葉を口にすること」ではなく、マネジャーが口にしたことがメンバーに理解され、腹に落ち、さらには実行されることを意味する。この長いプロセスを乗り越えるためには、「繰返し」が必要になることは言うまでもない。
③「政治交渉」を克服する
  • 最も大切なことは「相手を知ることを通して、関係をつくること」。上司を知り関係ができ始めたら、次に大切になるのは「段取りを踏んだ客観的なロジックをつくること」。上司を動かすためには「ロジック」が必要。
  • 上司同様、他部門も「情」だけでは動かない。「数字=他部門にとってのメリットを冷静に提示すること」と「錦の御旗=会社全体のことを考え、一汗かかないかという思い」を使って、動かしていくことが求められる。
  • 関係を深めなければならなくなってから事を起こしても、遅いことが多い。「いざという時、難しい相談がしやすくなるよう」、日常的な関係構築を行っていく必要がある。
④「多様な人材活用」を克服する
  • 相手に迎合してしまうと「年長者の言いたい放題」になってしまい、その悪影響は職場に蔓延する。年長者への対応を誤り、「のさばらせておく」と、職場の雰囲気や他の職場のメンバーにも悪影響をもたらす。
  • 年長者への対応は、1つ間違ってしまうと、職場には「経験も知識もない人間はモノを言ってはいけない雰囲気」などが生まれてしまうので、注意が必要。数の多いグループを味方につけて牽制し、「ややこしい人たち」を圧倒してしまうことが必要になってくる局面もある。
  • パート・派遣社員の人たちは、「仕事の全体像」が理解できないままに、部分的・特定的なタスクのみを切り出されて仕事をしている。それらの方が、職場の仕事全体や事業全体にとって、どのような貢献をなしているか、意味づけることが必要。
  • 中途採用社員の行動レベル「何ができて、なにができないのか」、認知レベル「何を知っていて、何を知らないのか」、知識レベル「自組織に関して何を誤解していて、何を理解しているのか」という境界を、対話を通して探っていかないといけない。
  • 必要に応じて、中途採用社員に、「Unlearn(学習棄却)」を促すこともポイント。前職での経験や慣習にしがみついている場合は、そのままではやっていけないことを伝え、前職で身についけた行動を学習棄却し、必要な行動を再学習させることが重要
⑤「意思決定」を克服する
  • 意思決定を行ううえで最も大切なことは「現場から学ぶこと」。どんなに意思決定力のあるマネジャーでも、現場から正確な情報が上がってこなければ、適切な意思決定を行うことはできない。
  • 部下から学び、部下から現場の情報を吸い上げる際には、「部下は、自分に不都合を生じさせる内容にはバイアスをかけて上にあげてくる可能性がゼロではない」ことに注意。部下からの情報は謙虚に聞くことは大切だが、それをそのまま鵜呑みにしてはいけないということも、また真実
  • 場合によっては、49%の人が反対で51%が賛成、という場合もある。しかし、マネジャーの意思決定は、そもそも「そのようなもの」。すべての人の賛同が得られないからといって、不安に感じる必要はない。自信を持って「決めきること」が大切で、決めきった後は「やりきること」「やりきらせること」が大切
⑥「マインド維持」を克服する
  • 実際、個人というのは、それほど強いものでもなければ、それほど頑健なものでもない。それは時に翻弄されたり、戸惑ったり、揺れたりする存在。マネジャーとて、所詮「人」。そういうときのためにも、自己のために、「かかわり」や「つながり」を維持していくことは、自己を平静に保つことにつながる。
  • 誰かが自身に何か言ってくれるのは、自信もその人に対して何らかの形で役に立てているから。ネットワークとは「ある」ものではなく、自ら「つくりだすもの」だり、そして「メンテナンスするもの」。マネジャーにとって、「マインド維持」を克服するため、「孤独にならない日々の努力」をすることは大切。
⑦「プレマネバランス」を克服する
  • 自分のサポートなしでも、他人に任せることができるものがあることがわかる。実践したいことは「自分がやらないことを決める」こと。

(5)座談会:生の声で語られる「マネジャーの現実」

  • 「好かれたい」という気持ちを捨てなきゃいけない。人は誰だって「いい人ぶりたい」が、言わなくてはならないときは言わなくてはならない。
  • 「自分がわかっていることは、相手もわかっている」と思い込んでいたが、かみ砕いて伝えないと、実務担当者の心には響かない。
  • 実務情報については、現場に近い部下のほうが意外とよく知っていて、部下なりに地に足の着いた判断をしていることもある。
  • 今は情報化が進んでいて、極端な話、われわれが内外時間をかけて培ってきた業務ノウハウを新人がインターネットで調べて入手することもできる。そうすると、言い方はともかく、上司としての優位性を示しづらい。
  • プレイヤーとしても結果を出しているマネジャーなら、それほど細かく部下のケアをしていなくても、部下はついてきてくれる。
  • 自分にできないことを誰かにやってもらうときは、ゴールを明確に見せ、その人のやる気を高めて、その人にしかできないことをやってもらわなくちゃいけない。それこそがマネジメント。自分が代わりにできる程度なら、マネジメント能力はそんなに問われない。

3.教訓

自身がマネジャー職についてから、もう数年が経ちました。

その間、コロナ禍が発生したり、DX化が進んだりして、自分が担当者時代だったころとは、ずいぶん環境が変わったので、過去の経験だけでは語ることはできなくなりつつあります。

加えて、本当に飲みにいく機会はほぼゼロになり、業務から少し離れて、お互いのこと(上下だけでなく、メンバー同士も)を知る機会も減りました。

そんな中でも、マネジャーは判断して、責任を持つことが求められます。

本書を読み、自分も成り立てだった当時、入ってくる情報量・質の違い、求められる範囲の広さ、自分のこと以外に使う時間の多さなど、何を言われているのかもわからずに右往左往していたことを思い出します。

また、今でも思い悩んでいること、今後の職場に移ったときにも活かせると感じたことも多く、これからマネジャーを目指す人だけでなく、一定期間マネジャーを務めたきた人にとっても有用であると思います。

最後の、各業界のマネジャーの座談会の中での一言一言も、みんな同じようなことで悩み、同じようなことを考えているんだなということもわかり、ぜひ手に取った読んでもらいたいと考える一冊です。