管理職おすすめの仕事に役立つ本100冊+

現役課長が身銭を切る価値のあるのおすすめ本だけを紹介するページ(社会人向け)

このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法 北野唯我 著

 

1.はじめに

本書や統計によると、今の日本では転職経験者が50%を超えているということです。

next.rikunabi.com

検討したが転職をしていない人や、転職活動すらしたことがない人でも、本のタイトルにある、「このまま今の会社にいていいのか?」ということを一度も考えたことがない、という人はほとんどいないのでは?と思います。

具体的に転職活動をしている、したい、と考えている人だけではなく、漠然とキャリアデザインに悩んでいる人にとっても、非常に有用な内容かと思いまして、重要と感じた部分を以下に引用していきます。

2.内容

(1)仕事の「寿命」が尽きる前に、伸びる市場に身を晒せ

  • 転職というのは多くの人にとって「初めての意思決定」。だから怖い。就職先の選択は、これまでレールの上を歩いてきただけで、自分で何も決めていない。意味のある意思決定というのは必ず、何かを捨てることを伴う
  • 会社が潰れても食べていける人と、食べていけない人が見てきたものの違いは、上司を見て働くか、マーケットを見て働くかの違い。どこを見て働くかによって、ビジネスパーソンとしての価値はほとんど決まる。マーケットバリューがある人間には、自由が与えられる。知るべきは自分のマーケットバリューを図る方法。
  • 専門性のある人間にこそ、「貴重な経験」が回ってくる構造。そもそも、「貴重な経験」は簡単に得られるわけではない。会社の重要なプロジェクトはいつも専門性の高いエースが任される。言い換えれば、専門性のない人間に打席は回ってこない。
  • 「専門性」で登り詰めるには、明らかにセンスが必要。それには若いころの環境や、与えられた才能に大きく影響を受ける。しかし、「経験」は、どこを選ぶかというポジショニングの問題。ポジショニングは思考法で解決できる。普通の人間こそ、どこで戦うのか、つまり「経験」で勝負すべき
  • 会社がダメになる理由を一言で言うなら、大きな流れ。それを乗り越えられるだけの対応ができなかった。だが、それは社長のせいではない、むしろ社員のほう。彼らは雇われることが当たり前だと思っていて、何も努力をしてこなかった人々。楽をするために勉強してきた人間は、楽をするために就職する。そんな人は努力しない。彼らにとっては就職することがゴール。
  • 多くの人間は、会社が潰れそうになったり不満があると、すぐに社長や上の人間のせいにする。だが、君が乗っている船は、そもそも社長や先代がゼロから作った船。ほかの誰かが作った船に後から乗り込んでおきながら、文句を言うのは筋違い
  • 強い会社というのは普通の発想とは逆。いつでも転職できるような人間が、それでも転職しない会社。それが最強。そんな会社だけが今の時代を生き残れる。
  • 会社がうまくいっているときは、マーケットバリューなんてものは関係ない。仲良しクラブでうまくいく。だが、会社がうまくいかなくなったときに状況は逆転する。マーケットバリューがない人間ほど残忍に変わり、自分の居場所を確保するために、他人を蹴落としてでも生き残ろうとする。

(2)「転職は悪」は、努力を放棄した者の言い訳にすぎない

  • 転職の思考法を手にしたからといって、必ずしも、今の会社を辞めなくてもいい。個人の人生で正解はない。ただ、「辞められない」という思い込みの檻の中に閉じ込められたら、どんな人間も必ず自分に小さな嘘をつくことになる
  • いつ辞めてもいいや、と中途半端に向き合うのではない。選択肢を持ったうえで、対等な立場で相手と接する。選択肢を失った瞬間、仕事は窮屈になる。だから、食べていく力を身につけなければならない。自信はそこからしか生まれない。
  • 転職が悪だというのは、新たな選択肢を手に入れる努力を放棄した人間が発明した、姑息な言い訳にすぎない。人間には居場所を選ぶ権利がある。転職は、個人にとっても会社にとっても「善」。

(3)あなたがいなくなっても、確実に会社は回る

  • マーケットバリューと給料は長期的には必ず一致する。すでに給料が高い成熟企業と、今の給料は低いけど今後自分のマーケットバリューが高まる会社とで悩むことがあれば、迷わず後者を取る。
  • 転職の最後には「やはり自分がいないと仕事は回らないのでは」と不安になるもの。だが絶対に回る。会社とはそういうもの
  • パートナーから共感を得るためには必ずお互いが同じレベルで理解できる言葉や比喩を使って話す。ただでさえ戸惑っている相手を、専門用語で混乱させてはいけない。
  • 意思決定とは、いちばん情報を持っていて、いちばんコミットしている人間がやるべき。本人しかわからない部分がある。だったら最後は信じるしかない。つまりパートナーに説明する際に必要なのステップは次の3つ。
  1. ロジックを固めること
  2. 共感してもらうこと
  3. 最後は信じてもらうこと

(4)仕事はいつから「楽しくないもの」になったのだろうか?

  • 重要なのは、どうしても譲れないくらい「好きなこと」など、ほとんどの人間にはない、ということに気づくこと。そもそも、心から楽しめることなんて必要ない。むしろ必要なのは、こころから楽しめる「状態」
  • 実際のところ、99%の人間がbeing型(状態に重きをおく人間)。そして99%の人間は「心からやりたいこと」という幻想を探し求めて彷徨うことが多い。なぜなら、世の中に溢れている成功哲学は、たった1%しかいないtodo型人間(コトに重きをおく人間)が書いたものだから。両者は成功するための方法論が違う。
  • being型の人間は、ある程度の年齢になった時点から、どこまでいっても「心から楽しめること」は見つからない。だが、それでまったく問題ない。それは何を重視するかという価値観の違いであって、妥協ではない。being型の人間にとって最終的に重要なのは、「やりたいこと」より「状態」。
  • 仕事を楽しむためには「マーケットバリューがある程度あること」、「求められるパフォーマンスとマーケットバリューがある程度釣り合っていること」は必要条件。
  • 信頼とは「自分に嘘をつかないこと」。being型の人間にとって、自分への信頼を保つのは難しい。嘘をつかざるをえないとき、「やりたいことのためには手段を選ばない」と言い訳ができるtodo型の人間と違って、being型は精神的に逃げ場がない。いくら強くなっても、仕事で嘘をついている限り自分を好きになれない。
  • being型の人間にとって重要なことは、マーケットバリューを高めること。そのうえで、迷ったときに、自分を嫌いにならない選択肢を選ぶこと。
  • being型の人間が、好きなことをみつける方法は2つある。
  1. 他の人から上手だと言われるが「自分ではピンとこないもの」から探す方法
  2. 普段の仕事の中で「まったくストレスを感じないこと」から探す方法
  • これからの時代、個人として「ラベル」をもっている人が強い。「ラベル」とは、自分だけのキャッチコピーのようなもの。組織が個人を守ってくれる時代は終わった。いつ会社から放り出されるかわからない。そのときに一つでもいいから個人としての「ラベル」を持っていないと、完全なコモディティ(いくらでも替えが利く存在)になる
  • 転職とは、単に名刺の住所や給料が変わるだけのものではない。世の中の人々に次のチャンスをもたらすもの。今の会社では活躍できていなかったとしても、違う場所で輝ける可能性がある人は本当にたくさんいる。それなのに、転職をタブー視して会社への忠誠という言葉で自分をごまかしている人間が多い。
  • 最後さえ成功すれば、その途中の失敗も、すべては「必要だった」と言える。要は考え方次第。だが、その中でも「100%失敗を招く唯一の条件」がある。それは腹を括るべきタイミングで、覚悟を決めきれなかったとき。
  • すべての働く人が「いつでも転職できる」という交渉のカードを持てば、結果、今の職場も絶対によくなると確信している

3.教訓

上述の2.に記載していることは、要約ではなく、重要だと思った部分の書抜きです。

実際には、転職のコンサルタントや同僚、上司等が登場して、会話形式として物語が進行していくので、本を読むとさらにリアルな感情が伝わってきます。

また、転職業界・企業の見つけ方なども記載されていて、本当に転職を考えている人であれば、転職サイトに登録する前に一度読んでおくことを勧めます。

ただし、本書に登場するコンサルタントが以下のように言っています。

  1. 転職の思考法を手にしたからといって、必ずしも今の会社を辞めなくてもいい
  2. 辞表を書いてから(会社を辞めるという選択肢を手に入れてから)仕事が楽しくなった若者とは、昔の自分のこと

この2点は非常に重要だと思います。

自分には「他に選択肢がある」と思えることが心の余裕につながる一方で、そう思えるためには「自身にマーケットバリュー」がある状態に持っていく必要があります。

そうすると、冒頭の「上司を見て働くか、マーケットを見て働くかの違い」に戻ります。自身はbeing型の典型だなと感じつつも、コモディティではなく、「これだけはできます」と言えるようなラベルが持てる働き方のある人間になるよう、意識を持ち続けたいと考えています。

反応しない練習 あらゆる悩みが消えていくブッダの超・合理的な「考え方」 草薙龍瞬 著

1.はじめに

タイトルは「反応をしない」となっていますが、単に応答しない、ということではなく、意味するところは、いわゆる「脊髄反射しない」=「考えることなく感情だけで反応しない」ということだと理解しています。

すなわち、頭で考えて正しく理解し、自分の軸でとらえ、無駄に判断・比較やマイナスの反応をしないことが重要だという内容です。

2.内容

(1)反応する前に「まず、理解する」

  • 「ある」ものは「ある」と、まず理解すること。わたしには満たされなさ・未解決の悩みがある、と理解すること。解決への希望はそこから始まる。
  • 「反応」こそが悩みの正体。心の反応こそが、人生のトラブル・悩みを引き起こしている。となると、私たちが日々心掛けなければいけないことは、「ムダな反応をしない」こと
  • 「心は求め続けるもの」、それゆえに渇き続けるものと理解する。すると、「このままではいけない」「何かが足りない」という得体のしれない欠落感や焦り、心の渇きが収まって、「人生はそういうもの」と大きな肯定が可能になる。
  • 心の状態を3種類に分けて理解する。
  1. 貪欲:過剰な欲求に駆られている状態。求めすぎ、期待しすぎ。人間関係をめぐる不満は、たいていは「求めすぎる心」から来ている。貪欲に支配されると、自分自身が苦しいし、関わる相手も必ず不幸にしてしまう。
  2. 怒り:不満・不快を感じている状態。放っておくと怒りは徐々に蓄積される。怒りっぽさや気難しい性格となって、年を取るほどに外に現れてくる。「怒りがある」と理解して怒りを洗い流していけば、心はすっきりと軽くなっていく。
  3. 妄想:想像したり、考えたり、思い出したりと、アタマの中でぼんやりと何かを感じている状態。さっきまで脳裏に浮かんでいた映像は存在しない。「さっき見ていたものは妄想である」「今見ているのは視覚(光)である」とはっきりと意識する。
  • 「正しい理解」に「反応」はない。ただ見ているだけ。動揺しない、何も考えない、じっと見ているだけ。そういう徹底したクリアな心で、自分を、相手を、世界を理解することを「正しい理解」と表現している。

(2)良し悪しを「判断」しない

  • 判断する心には、わかった気になる気持ちよさと、自分は正しいと思える(承認欲を満たせる)快楽がある。判断がただ気持ちよいだけなら問題ないのかもしれない。しかし、その思いに執着しすぎると、自分か誰かが激しく苦しめられることになる。
  • 苦しんでいるのが、自分であれ相手であれ、誰かが苦しんでいるなら、何かが間違っている。「このままではいけない」と目を醒ます。これらの「執着」を手放さなければ、自分も相手も苦しみ続けてしまう
  • 自分が正しいと執着してしまったら、その時点で”漫(自分の価値にこだわる心)”が生まれる。「正しい理解」とは、「正しいと判断しない」理解。そんなことより、「真実であり、有益である」ことのほうが大事だと考える
  • 「人は人、自分は自分」という明確な境界性を引く。この考え方ほど大事なことはない。自分の心は、自分で選ぶこと、決めること、常に自由に、独立して考える。
  • 世の中には、たくさんの心優しい人、良心的な人、親切な人がいるもの。人を否定するという発想すらなく、毎日を一生懸命生きている人が大勢いる。執着から一歩離れて外の世界を見渡してみれば、その「否定的判断は」もう存在しない
  • どのような状態であっても、自分を否定するという判断は手放すこと。むしろ、今何をなすべきか、何ができるかという”この瞬間”だけを考える。「過去を引きずる(過去を理由に今を否定する)」というのが、それ自体、心の煩悩・邪念・雑念。落ち込まない、凹まない、自分を責めない、振り返らない、悲観しない。
  • 「自分はまだまだ」と感じている人はたくさんいるが、その「まだまだ」こそは必要のない判断・妄想。「自身が欲しい」とも考えない。わたしはわたしを肯定する、そして今できることをやっていこうと考える。

(3)マイナスの感情で「損しない」

  • 「自分は正しい」という思いには、”漫(自分を認めさせようという欲)”も、常に働いている。だから異なる意見をぶつけられると、自分自身が否定された気がして、怒りで反応してしまう(だから自信がない人ほど怒りやすい)。相手と自分の反応を分けて考える、相手の反応は相手にゆだねるーこれが人間関係で悩まないための基本
  • 相手と同じ反応を返せば、相手との反応の応酬になってしまう。問題は、相手に負けないことや我を通すことではなく、反応することで確実に「自分の心を失う」こと。「つい反応してしまう」状況にあってこそ、あえて大きく息を吸って、吐いて、覚悟を決めて、相手を「ただ理解する」ように努める。
  • 心の内側を見つめて、なるべくクリアな心を保つという”仏教的な”生き方に照らせば、「しなくていい判断は、しないほうがいい」ことになる。人間にとって一番大切なのは、「心に苦悩を溜めない」こと。どんな幸福感も、苦悩(という反応)によって、いつも台無しになってしまう。
  • ただ、伝えることで相手が理解してくれる可能性があるなら、「理解してもらう」ことを目的にすべき。「こういうことはやめてほしい」と思うなら、「やめてほしい」と伝えること。そこまでが自分自身にできること。それを相手がどう受け止めるかは相手の領域。大切なのは、「理解してもらうこと、理解し合うことが大事」という理解。

(4)他人の目から「自由になる」

  • 承認欲があるのは当たり前。問題はそこからなぜ「他人の目を気にしてしまうのかの理由、プロセス。①「認められたい」(自分の価値にこだわる)欲求がある⇒②その欲求で反応して「どう見られているのだろう」と妄想する。つまり”承認欲が作り出す妄想”が「気になる心理」の正体
  • 妄想には際限がない。今の時代は、煩悩を刺激するさまざまな映像や情報がいくらでも飛び込んでくる。そうして心にインプットされた”反応の記憶”は、自分でも予期しない形で脳裏によみがえる。ただ、それらは全部「妄想」。「妄想は妄想にすぎない。何が思い浮かんでも反応しない」という覚悟が大事
  • 「比較」というのは、実はとても不合理な思考。①比較という心の働きはそもそも実在しない妄想でしかないこと、②比較しても自分の状況が変わるわけではないこと、③比較によって安心を得たいなら、絶対・完全に有利な立場に立たなければいけないが実際には不可能であること。
  • 承認欲はモチベーションとして利用するだけで、「目的」そのものにしてはいけない。他人が認めてくれるかどうかは、他人が決めることであって、自分がコントロールできるものでない。他人の評価を「目的」にしてしまうと、そこから「他人の目が気になる」心理に突入してしまう。
  • 「正しい努力」とは、いわば「外の世界」を忘れて、「自分の物事に集中」して、そのプロセスに「自ら納得できること」。これが成果を運んでくれる。
  • 実は、心というのは、何かに触れれば必ず反応するもの。あなたが期待するほど、心は強くない。外を歩けば反応する、人を見れば反応する。反応すれば、いろんな雑念が溜まる。心は本来そういうものだと心得ておく。
  • 取り組むときは「無心」でやる。いっときに、1つの物事を心を尽くしてやるというのが原則。自分のなすべきことがわかっている、心をリセットして集中する、やり遂げたあとに納得が残る。それだけですっきり完結。

(5)「正しく」競争する

  • 競争という現実を否定せず、むしろその中にあって、自分はどんな心を保つのかを確立する。つまり「勝つ」という動機以外で、競争社会を生きていくこと。勝ち負けという二者択一の価値観ではなく、別の価値観をもって競争社会の中を生きる
  • 「そうはいっても、また現実の中に戻らなくては、競争に巻き込まれてしまうのでは」と思う人もいるかもしれない。しかし私たちが目醒めるべきは、競争という現実、社会の現実に対して、日頃どんなここころで向き合っているかという、最も根源的な部分。外の世界は二の次で、それよりも自分の反応、今の心の状態に気づくこと、どんな心で外の世界に対峙しているかを理解すること。
  • 世界に対する向き合い方は、慈・悲・喜・捨と呼ばれる4つの心がけ。この4つを働く動機、生きる目的に据えるなら、「競争」という現実の中で、欲と怒りと妄想とに駆られて生きてきた自分から、ちょっと自由になれる。
  1. :相手の幸せを願う心。
  2. :相手の苦しみ・悲しみをそのまま理解すること。
  3. :相手の喜び・楽しさをそのまま理解すること。
  4. :手放す心、捨て置く心、反応しない心。「中立心」ともいう。
  • ブッダは、人が「道を成就する(目的を達成する)」うえで、5つの妨げに気をつけなさいと語る。すなわち①快楽に流される心、②怒り、③やる気の出ない心、④そわそわと落ち着かない心、⑤疑い。「正しい努力」から「5つの妨げ」を引いた残りが、ありのままの自分。
  • 「自分には大切な目標がある」「どうしても結果を出したいことがある」というなら、なるべく「反応に逃げない」ことをルールにする。手を伸ばしたいのをぐっと我慢する。
  • 「快を見つける」というのは、仕事や作業を「積極的に楽しむ」ということ。あえて快で反応してみせること、楽しんでいるぞを務めて意識すること。ここは本書のテーマである「反応しない」というのと逆のアプローチをとる。
  • 人間だから弱さはある。妥協もする。快楽や怠惰に流されることもある。それは事実なのだから否定してもしようがない。本当の自分とは”頑張れる自分”から”弱い自分”を引いた「等身大の自分」を、ありのままの、否定しようのない自分として受け容れることが正解。
  • 人は3つの執着によって苦しむ。
  1. 求めるものを得たいという執着(だが叶わない)。
  2. 手にしたものがいつまでも続くようにという執着(やがて必ず失われる)。
  3. 苦痛となっている物事をなくしたいという執着(だが思い通りにはなくならない)。
  • 嫉妬から自由になるというのは、まずは相手に目を向けている状態から「降りる」こと。相手は見ない。「相手は関係ない」と考えて、怒りからも降りる。さらに「他人と同じ成果を手に入れたい」という妄想からも降りる。そうやって、嫉妬という感情から、まず完全に降りてしまう。
  • もし、かつて自分が目指した成功や勝利を手にしている人をみかけたら、「よく頑張ったんだな」と認める。”悲の心”に立って、その人がどれだけ努力してきたかを感じ取る。そのとき「敬意」が生まれる。もし相手に嫉妬めいた感情や負い目を感じたら、「わたしには違う役割がある」と考え方を切り替える

(6)考える「基準」を持つ

  • ブッダは、外の世界には答えはないと言う。どのような価値観も思想も宗教も、みな人間の心が作り出したもの。でも、自分自身の心とは違うもの。ときにそれらに救われるように感じることがあるとしても、やはり自分自身の心の闇・苦悩は、最後は自分自身で乗り越えていくしかない。そのためには、自分自身の心の内側・奥底に、正しい生き方、よりどころを確立しなければいけない
  • 人は常に何かを追いかける。手に入らない現実に苦しむ。失われる現実に悩む。しかし、現実の中で現実に飲まれない心を持とう、苦悩を超えた「納得の境地」にたどり着こうと考える。「納得」というのは主観的なもの。私たちが自分に「よし」と思えれば、それで上がり
  • ブッダが教えるのは、現実を「変える」ことではない。「闘う」ことでもない。現実は続く、人生は続いていく、そうした日々の中にあって、せめて自分の中に苦しみを増やさない、「納得できる」生き方をしようと考える。
  • 人間が抱えるどんな悩み・苦しみも、きっと解決できる。必要なのは、その方法であるーそれがブッダのメッセージ。「方法」とは心の使い方のこと。反応して苦しむのではなく、正しく理解し、苦しみの反応をリセットし、人生に最高の納得をもたらす考え方・生き方のこと。

3.教訓

率直な感想として、「言っていることはわかる。しかし、これができれば苦労はしない。」と思った方が多いのではないかと思います。

一方で、逆説的には、このような本がベストセラーになるということは、いろいろと余計なことを考えてしまうのが人間の真理で、他の人も同じようなことで悩んでいるのだな、ということも客観的に理解できます。

この本を読んだ瞬間から、副題にある通り、あらゆる悩みが消えて無くなる、とまでは思いませんが、以下の考え方自体は納得感があり、自信がない人ほど怒りやすい、という部分にも共感できます。

  • 「人は人、自分は自分」という明確な境界線を引く
  • 相手の反応は相手にゆだねる
  • 他人が認めてくれるかどうかは他人が決めること、自分でコントロールできない
  • 頑張れる自分から弱い自分を引いた”等身大の自分”を否定せずに受け容れる
  • 成功している人を見たら頑張りを認めたうえで「自分には違う役割がある」と考える
  • 現実を変えるために闘うのではなく、自分が主観的に納得できる生き方を考える

アンガーマネジメントの観点でも有益な内容だと感じていますので、少しずつでも取り入れて、今後の業務に活かしていきたいと考えています。

また、少しジャンルは違いますが、言わんとしていることが「7つの習慣」に近いものを感じました。

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組織が変わる 行き詰まりから一歩抜け出す対話の方法2on2 宇田川元一 著

 

1.はじめに

以前、著者の本を読んで感銘を受けたため、2冊目を拝読しました。

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表題では、対話の方法としての「2on2」が提唱されていますが、これはあくまで1つのやり方に過ぎず、実践的な対話とはどういうものか、について記述されていると理解しました。

そのため、対話そのものを中心に引用し、2on2の具体的なやり方の紹介はせず、詳しい内容を知りたい方は直接本を手に取っていただければと思います。

2.内容

(1)組織で対話が必要な理由

  • 誰か優れたリーダーが変革するのではなく、私自身から継続的に日常的な”小さな”変革を積み重ねられると認識を変えることが重要になってくる。たとえるなら、閉塞感漂う組織の変革は、「慢性疾患」状態の変革。
  • 対話が目指すところは、問題を単に解決するだけではない。むしろ、問題の解決行動を一度ストップして、背後にあるモヤモヤとした課題の存在に気付くアラートとして捉える点に特長がある。一人ではなく、他者とともに様々な角度から眺めることによって、自分では気づけなかった背後の課題へアクセスする入口を見つけることができる。

(2)組織が抱える慢性疾患へのアプローチ

  • 組織の慢性疾患の6つの特徴は、①ゆっくりと悪化する、②原因があいまいでお特定できない、③背後に潜んでいる、④後回しにされがちである、⑤既存の解決策では太刀打ちできない、⑥根治しない。
  • 対話のポイントは、表面化した問題をすぐに解決しようとせず、どうしてその問題が起き続けるのか、メカニズムを理解していくこと。この際に気を付けなければならないのは、問題を単純化しないこと。
  • 状況を変えたいマネジャーが、部下が自分から動けない背後にある複雑なメカニズムを理解しないまま、マネジャーの理解の範囲内で状況を単純化している状態を”独話(モノローグ)状態”と呼ぶ。この独話状態を変えていく対話(ダイアローグ)が有用になる。
  • 認識のすれ違いが起きたときこそ、対話のチャンス。問題が出てきたら面白がるくらいの心づもりでいるのがよい。対話をしていくと、どうして問題が起きるのかがわかってきたり、意外な発見があったりする。
  • 問題の単純化が起きる2つの理由は、①問題を既存の解決策で解決できると考えるから、②問題は解決しさえすればいいと考えるから。その結果、問題は掘り下げられず、慢性疾患は放置される。慢性疾患を放置すれば合併症が生じる。
  • 慢性疾患に対して、既存の単純化アプローチを採用することは大変危険。大切なことは、慢性疾患が一体どういうものか対話的に解きほぐすこと。そうすることで、問題の発生を通じて、よりよい組織を作っていくことにつながる。
  • 心理的安全性は結果的に高まるものであって、心理的安全性を高めることに注力するのは慢性疾患悪化への入口。盲点は、互いに何でも言い合えるようにすることにフォーカスし過ぎて、どんな理由があって言いたいことを言い合えなくなっているかがほとんど考えられていないこと。

(3)対話とは何か

  • 対話を一言でいうと、”今見えている問題の枠組みから抜け出し、問題の捉え方を変え、組織をよりよい状態に導くための取組”。対話とは、その断片を持ち寄り、何が起こっているのか、みんなで理解をつくっていくこと
  • 対話に必要な4つのステップは、①問題を眺める、②自分もその問題の一部だと気づく、③問題のメカニズムを理解する、④具体的な策を考える。
  • 各々が正しいことを主張し続けても、問題は平行線のまま。どこかで、互いのナラティブの接点を見つけなければならない。それが対話するということ。相手には相手なりに一理あることを認める。そこに何か物事を進めていく手がかりがある。自分のナラティブの偏狭さに気づき、押し広げていく実践こそが対話
  • 対話とは、相手を自分の目的達成のために道具的に「巻き込む」前に、まず相手のナラティブが自分とは異なるものであることを理解しなければならない。相手を「巻き込む」前に、相手に「巻き込まれる」、つまり、相手のナラティブに参入することが重要
  • 対話は決してわかり合うことを目指して行うわけではない。そうではなく、組織の慢性疾患に対して、セルフケアをする核心が対話。
  • 対話で気をつけるべきことは、「なぜ?(Why)」と問うのをやめてみること。「なぜ?」ではなく、「どんなときに?」「いつ頃から?」「どんなきっかけで?」「どんなふうに?」「関わっている人は誰だろう?」と自問してみる。
  • 誰でも自分が提案したことにネガティブな反応をされたらショック。自分とは違う世界で生きていた現実を突きつけられた、味方だと思っていたのに裏切られた、という気持ちが湧き起こってきたかもしれない。しかし、あなたの提案に価値が無いわけではない。相手のナラティブの溝にうまく橋が架からなかっただけ。
  • 人間は互いに違うナラティブを生きている。その前提に立つと、「どんなことが起きているのか」と観察をスタートできる。小さな変化も感知できるようになる。大事なのは、同じナラティブを生きなくても、ともに仕事はできる、ということ。

(4)新しい対話の方法「2on2」とは何か

  • 2on2とは、他者の力を借りて、普段自分のとらわれている解釈の枠組みからいったん離れて物事の見方を変える、4人で行う対話の方法。
  • 2on2の目的は、普段きちんと話し合えていない組織の慢性疾患問題に対し、具体的に起きている問題を話し合っていくことで、問題発見や対処方法の向上させること。
  • 2on2で最も重要なポイントは、一気に問題を解決しようとは思わないこと。問題解決モードを抜け出し、対話モードで慢性疾患に迫ることを目指している。

(5)2on2を実施する際にやってはいけない6つのこと

①2on2を実施する理由が共有されていない
  • 問題を共有せずに、一方的に集められて困惑すること自体が、部署の慢性疾患をよく表している。
②すぐに問題解決策を言ってはいけない
  • すぐに問題解決策を言ってしまうと、問題の背後について考えることができなくなってしまう。問題解決策を言うとは、その問題はすでにわかっていると宣言することであり、それ以上、何が問題なのかを考えることを放棄することだと肝に銘じる。
③全部周りのせい、他人のせいにしない
  • 経営者に限らず、マネジャーやメンバーでも、自分ではなく周りを変えようとしがち。この問題には2つのアプローチが有効。
  1. 自分は何に困っているのかを理解する
  2. 自分も問題の一部だと気づく
④きれいに終わらせようとしない
  • そもそも自分が何に困っているかわかっていないことがわかった、程度で終わるかもしれない。案外、当事者役の人がそう思ったりするもの。問題解決モードとは違う対話モードで、いつもの仕事を眺めてみる萌芽的視点が出てきただけでも収穫。日々の仕事が違って見えてきて、変化の入口に立てる。
⑤周りの人たちは自分の話を始めない
  • なぜ自分の経験談を話を始めることがよくないかというと、問題を単純化してしまうから。当事者役が投げかけた問題について、十分に観察せずに、自分の既存の枠組みで解釈しては、まったく対話になっていない
⑥目新しいだけで始めない
  • 組織の慢性疾患のないところに、新しい方法だからとやってみようと取り入れるのは大きな間違い。ニーズがないのにツールを押し付けられたら、メンバーはたまったものではない。それこそ時間の浪費。

(6)なぜ、2on2を開発したのか

  • 「自分では気づけないことを他者は簡単に気が付く」のはよくあること。なぜかといえば、自分とは別のナラティブでその出来事を解釈しているから。棚卸段階含め、一緒に取り組むことができたら、対話のプロセス自体がより充実したものになる。
  • 「部署間で仕事の押し付け合いがあって、毎回うんざりする」といった悩みはよく耳にする。それを「上層部の組織設計の問題だ」「うちの会社の文化は・・」といった大きな問題にしてしまっては、何も変化は生み出せない。まず、その問題に対し、自分がどう困っているのか、何が嫌なのか、今後どうしていきたいのか、そこに目を向けていくが、現状を変えていく一歩
  • 文化の問題という前に、自分もその問題を構成する一員という認識が持てると大きな一歩。自分はその問題の外側にいるのではなく、もう一方踏み込んでその問題のメカニズムや、自分がその問題にどう関わり、どこからアプローチできるかを探っていく姿勢が必要
  • 組織という実体がよくわからないものを変えようとしなくても、自分の困りごとに対して変革はできる。そのとき「うちの会社は少し変わったな」と思えるのは、組織自体が変わったのではなく、あなたと周りの人たちの問題に対するアプローチの仕方が変わったのだ。
  • うまくいっていない仕事において大切なのは、なぜその人がその行動を取ったのか掘り下げること。何がその人に無責任な行動をさせたのか。何か自分たちにできることはなかったのか。大事なのは犯人探しではなく、他者の語りを通じて問題をとらえるナラティブを広げること。人が問題なのではなく、問題が問題

3.教訓

本書にある2on2を始めようとすると、直接の当事者でないが理解力のある人を呼んできて、2on2の枠組みを理解してもらってから始めないといけないので、1回のミーティング時間はそれほどかからないかもしれませんが、トータルの時間は一定量が必要になろうと思います。

また、そういうことに時間を使うということに組織として理解が得られないと、「何をあいつらは無駄話をしているんだ?」と思われかねません。

ただ、冒頭にも書いた通り、2on2という形式の打ち合わせをすること自体が目的ではなく、その主旨を理解したうえでしっかり対話して、問題を認識し、解決の一口を探ることが目的だと理解しています。

その意味で、上述の2(5)の「やってはいけない6つのこと」は、1on1だったりコーチングだったり、他の形式の打合せや面談のときにもしっかり応用の利く内容で、有用な感覚を持つことができました。

また、自分も問題の当事者である認識を持つことや、その問題が起こった背景から考えること、変えられる範囲のものにフォーカスしてアプローチの仕方を考えることについても、改めての気づきや理解を得ることができた良本でしたし、「他者と働く」の復習にもつながりました。