管理職おすすめの仕事に役立つ本100冊+

現役課長が身銭を切る価値のあるのおすすめ本だけを紹介するページ(社会人向け)

モチベーション3.0 ダニエル・ピンク著


 

1.はじめに

今、多くの組織で「成果主義」が取られています。もちろん、私の勤務先もそうなっています。

ただし、成果主義によって、社内の関係がギクシャクすることがあるなど、必ずしもうまくいくことばかりではない、というのが科学的にも示されています。

そこで、モチベーションについて新たな考え方を提案し、個人や組織がパフォーマンスを向上させ、満足感を得られるためにはどうしたらよいかついて考える内容となっています。

2.内容

生存を目的とした人類最初のOSをモチベーション1.0と呼ぶことにします。

それに対し、報酬を求める一方で罰を避けたいという観点に着目した動機付けをモチベーション2.0と呼びます。

(1)モチベーション2.0が向かない世界

様々な科学実験から、アメとムチが逆効果になることが示されています。

  • 外的な交換条件的報酬が与えられると、内発的な動機がしぼんでしまう。
  • 目標が人の焦点を狭める。革新的な解決策を発見するために必要な幅広い思考を奪いかねない
  • 倫理に反した行為、リスク負担の増加、協調精神の低下により、組織にシステム上の問題を引き起こすおそれがある。
  • 一度見返りを与えると、二回目以降も与え続けざるを得ず、後戻りできない。(ex.子供がお小遣いをもらえないと手伝いをしなくなる)

一方で、一部のルーティンワークや短期集中の作業においては、うまく活用できる余地もあります。

(2)モチベーション3.0

従来と異なり、外部からの欲求よりも内部からの欲求をエネルギーの源とし、活動によって得られる外的な報酬よりも、むしろ活動そのものから生じる満足感と結びつく、「タイプI」(アイ;intrinsic)と呼ぶ行動を前提としたOSを「モチベーション3.0」と呼びます。

自分の組織を強化したいと考えるなら、対比されるモチベーション2.0である外的報酬が動機付けとなるタイプX(extrinsic)から移行する必要があります。

タイプIの行動は、根本的に以下の3要素をよりどころにしています。 

自らの意思で行動を決め、意義あることの熟達を目指して打ち込む、さらなる高みへの追及を大きな目的を結びつけるわけですが、以下で各項目の詳細を見ていきます。

(3)モチベーション3.0を構成する3要素

①自律性

自律性とは、選択をして行動することを意味します。

独立とは異なり、誰にも頼らずに一人で対応する個人主義ではなく、他社からの制約を受けずに行動できるし、他社と円満に相互依存もできるということです。

タイプIの行動は、以下の4つのTに関する自律性を得たときに現れます。

  1. 課題(Task):自分の作ろうとするものは自分が決める
  2. 時間(Time):時間報酬の考え方を止める。どれだけ時間をかけたかが重要視するのでなく、仕事の結果や質そのものに焦点を合わせる。
  3. 手法(Technique):顧客に役に立つように対応することが達成できれば、その内容や手法は各担当に任せる。
  4. チーム(Team):自主的に組織されたチームで働く。
②マスタリー(熟達)

マスタリーは、心の持ち方次第マインドセット)です。

知能は努力によって伸ばすことができると考える「拡張知能観」の人々は、努力を向上の手段とみなしますが、もともと限られた量しか備わっていないと考える「固定知能観」の人々は、容易に達成できそうな目標を選ぶようになります。

拡張的な思考を抱く人々は、解けない難問を与えられても自分の知能の限界のせいにはせず、解答を見つけようと独創的なアプローチを考え続けるため、マスタリーとなる可能性を秘めています。

 

また、マスタリーは漸近線でもあります。

常に手の届かないところにあるため、欲求不満を引き起こしますが、だからこそ到達しようとする価値に魅力を感じます。

喜びは実現することよりも追及することにあるのです。

③目的

実際に人類史における偉大な業績を振り返れば、当事者が深夜まで働き続けられるほどの意欲を喚起したのは、利益の追求はもちろんのこと、目的が要因となっていました。

健全な社会および健全な企業組織は、まず目的ありきであり、利益を目的達成の方法または目的達成のうれしい副産物とみなします。

人間は、鼻先にぶら下がるニンジンを追いかけて走るだけの馬とは違います。

人生で最も豊かな体験は、他人からの承認を声高に求めているときではなく、自分の内なる声に耳を傾けて、意義のあることに取り組んでいるとき、それに没頭しているとき、大きな目的のためその活動に従事しているときだと、私たちは知っています。

3.教訓

実のところでは、経営幹部や人事制度設計部門でもない限り、本に紹介されているような、例えば1週間に1日、主要業務とは異なるテーマに取組むといった、新制度の導入は難しいかと思います。

ただ、仕組み自体を変えなくても、自分で心の持ちようを変え、何に意義を見出すかを自分に問いかけることによって、新たな世界を見出すこともできると考えます。

もちろん、生活していくうえで、短期の成果に基づく賞与等も重要ではありますが、人生を中長期的にとらえ、モチベーションを再定義したいと思います。