管理職おすすめの仕事に役立つ本100冊+

現役課長が身銭を切る価値のあるのおすすめ本だけを紹介するページ(社会人向け)

アサーティブ・コミュニケーション 戸田久美 著

1.はじめに

著者の戸田久美さんは、アンガーマネジメント協会の理事もされている方です。

私の所属する会社において、管理職向けに「アンガーマネジメント」や「アサーティブ・コミュニケーション」の社外研修があり、戸田さん講師の講義を受けたことがあります。

「アサーティブ」とは、自他を尊重した自己表現or自己主張のことで、単に自分の意見をゴリゴリと押し通すことではありません。

研修自体が非常にわかりやすかったのですが、当時から少し経験を積み、改めて本書を読むと、よい復習と新たな学び・気づきが得られます。以下2.において、自身が印象的に思った個所を引用します。5章には、ここでは紹介しきれないほど、いろんなタイプの方への対応事例が出てきますので、ぜひ手にとって全体をお読みいただくことをおすすめします。

ちなみに、以下から自身の怒りのタイプを動物に例えてみるとどうなるかという、無料診断もできますので、ご参考まで。

www.angermanagement.co.jp

2.内容

(1)アサーティブ・コミュニケーションとは

  • アサーティブコミュニケーションでは、以下のマインドを持つことを大切にしている。
  1. もしお互いの考えや価値観が違っても、相互尊重・相互信頼をもとに建設的な議論ができる
  2. お互いが正直に、率直に忖度せずに伝え合う
  3. 違いがあったとしても対等な姿勢で対話できる
  • 直接相手に攻撃的な言動をしない「受身的攻撃」にはさまざまなものがある。言葉がなければ、相手はなぜ不機嫌になるのか、正確に理解できない。言葉なく責められることが何度も繰り返されると、相手は「面倒な人だな・・」「できれば関わりたくない・・」と感じるもの。やがて付き合いを最小限にしようと避けていく。
  • 非主張的な自己表現とは、「自分を抑えて相手を立てる自己表現」を指す。遠回しな言い方をする、語尾まで言わない。このような表現をしている人は、自分の言いたいことを率直に相手に伝えられないため、ストレスを溜めてしまいがち
  • 怒ること自体悪いことではない。適切な表現の仕方をすればいい。ネガティブな思い込みを手放せるようになると、コミュニケーションの取り方もガラッと変わる。「適切な表現ができれば相手に伝わる」と信じて相手に向き合うことも、コミュニケーションでは大切。
  • 非主張的な表現は相手に気を使わせ、困惑させ、イラッとさせてしまうこともある。かえって相手を攻撃的にしたり、相手にマウンティングさせてしまったりする原因にもなっている。
  • 怒りとは、自身の「べき」が思う通りにならないときに抱く感情。「べき」とは自分の理想、願望、期待、譲れない価値観を象徴する言葉のこと。怒る必要のあること、ないことの線引きを明確にすることは、怒りを扱ううえでとても重要。

(2)アサーティブになるための準備

  • たとえ立場に違いがあっても、相互尊重のもとに、伝えたいことは伝え合えること。必要以上にへりくだったり、コントロールしようとしたり、押し付けようとしないこと。これらを心がけることが、「心のなかでは対等」という状態。
  • 相手に耳の痛いことを言わなければいけないとき、何か改善してほしいことを要求するといった、言いにくいことを伝えるときには、「わたしは相手にわかるように伝えられる」という自分への信頼と、「この人は耳を傾けてくれる」という相手への信頼の両方が必要。信頼の気持ちを持つことで、臆することなく相手に伝えることができるようになる。
  • 人は誰でも不完全なところがある。できないこと、間違うこと、失敗もある。でもだからといって人としての価値が下がるわけではない。相互信頼を土台にした対等なコミュニケーションをとるためにも、自分のよいところ、できていることはもちろん、不完全さを認める勇気が大切
  • 相手の言うことにすべて同意して、飲み込む必要はない。「同意できなくても理解はしよう」という姿勢を大切にする。
  • すべてのことを議論もせずに丸く収めようとするのは、とても不自然で不健全なこと。話し合いやミーティングの目的は、丸く収めることではない。どこにゴールを設定しているのかを見直してみると、「交渉」で意見を交わしたり、「No」と言ったりすることができるようになる。

(3)アンコンシャスバイアスの影響に気づく

  • 不満な気持ちを抱いてただ悶々としているだけでは何も解決しない。こういったときに大切なのは、「今後どうしたいか」、自分にとっての理想的な未来を考えていくこと。本当はどのようなことを伝えたいのか、どう伝えたいのかを相談。伝えることで相手の真意がわかることもある
  • アンコンシャスバイアスは誰でも持っているものだからこそ、自分の思い込みを押し付けていないか振り返り、相手の意見を確認しながらコミュニケーションを取ったほうがいい。
  • 失敗経験が過去に何度かあったとしても、「あのときはそういう結果になった」という事実があるだけ。「すべての場合においてそうに違いない」「また同じようになったら怖い」と考えるのは、本人の思い込みにすぎない。自分自身の意志で思考をリセットしていく必要がある。

(4)アサーティブな表現のポイント

  • 相手に言うか言わないかは、すべて自分で決めていいが、仮に「言わない」と決断したときに大切なことは、「誰かのせい、環境のせい」という他責にはしないようにする。
  • 「言えない」と「言わない」は違う。言わなかったことに後悔が無く、その結果の責任も取れる選択をすることが、アサーティブ。もしも、言えなかったことの後悔を抱えてしまうのであれば、それは非主張的な表現に当てはまる。
  • 事実と主観が混ざっている状態では、思わぬ受け止め方をされ、関係性がこじれてしまう可能性がある。注意をするとき、お願いをするときなどは、主観と事実を切り分けて話すことがとても大切。
  • 人によってどの程度のことを意味するのかが曖昧な、共通認識にならない言葉を選んでしまったとき、自分が期待する程度と相手が認識する程度が食い違ってしまい、ミスコミュニケーションを起こしてしまう。
  • 言っていることと、実際に表現していることが違う人を相手にしていると、まわりは本当にやりにくいもの。かえって相手に気を遣わせる分、いつまでも「察してほしい」という態度を取り続けていると、「やりにくい」と感じて、離れていく人も多くなってしまう。

(5)ケース別対応例

  • 相手の発言に、決めつけや思い込みと感じることがあっても、まずはいったん相手の意見を受け止めるようにする。そのうえで、相手の言動に対して感じたことを自分が言うか言わないかを判断し、言うと決めたなら率直に伝えることが大切。相手に対して、「そう決めつけないでください」と責め立てるのは厳禁
  • 「かまって行動」をしてくる相手に対して、OKとNGの境界線を引けたら、「ここまではできるけれど、ここからはできない」ということを相手に伝える。そして、一度引いた線をずらさない。ぶれてしまうと、相手の甘えの気持ちが増長してしまう。
  • 相手が感情的になったり、威圧的になったり、怒りを爆発させたりすると、こちらも冷静な判断ができなくなってしまう。感情をぶつけられたら、まずは「この人は今どんな状況にあるのか?何を要望しているのか?」を冷静に判断する。ここを把握できなければ問題の解決ができないため、丁寧に確認する。
  • クレーム対応のゴールは、相手の機嫌を取ることではない。クレーム対応時には、「こちらができることを行う」「相手の機嫌をよくすることまではできないと割り切る」の2点を意識する必要がある。
  • 「何かを言って働きかけたところで、どうにも変わらない。何の変化も期待できない」と心から感じてしまったら、思い切って「これは難しい。解決は無理!」と割り切るようにする。すべての案件を100%解決できる人はほぼ存在しない
  • 「感情的に物を言う」ことと、「感情を伝える」ことはまったく違う。「●●が不安、●●で困っている」というように自分の感情を上手に伝えることは、どんな関係性同士でも心がけたい点。

3.教訓

人は誰でも攻撃的や非主張的な面を持っていて、相手や環境によって無意識的に使い分けています。例えば会社ではいろいろと指示出しをするが、家庭だと配偶者の手のひらの上で転がされていたり、その逆だったり、ということも起こります。

そして、非主張的な方と話をしていると、「それで何が言いたいの?」となって、ついついこちらの口調が厳しくなってしまうこともあります。また、怒りっぽい人を前にすると、言いたいことを直接言わずに、こちらから下手に出ることもあります。そうなってしまうと、対等な関係ができず、いい話し合いとならないため、議論が深まらずに終わってしまいます。それはお互いにとっても組織全体にとっても不幸なことです。

やはり一番よくないのは「言えない」ことです。言いたいのに言えない鬱憤がたまったり、言わないと相手に伝わらかったり、何もいいことはないので、とにかくチームメンバーからは思っていることを話してもらうことを意識しています。そして話してみて、自分の思っていた反応と違うことが返ってきたら、「ああ、これは自分の思い込みだった」と学習すればいいと思います。

最初から100点の会話・コミュニケーションをしようと考えると、準備にも時間がかかりますし、一歩目を踏み出すことが難しくなります。まずは普通に話せばいいんだというフラットな空気感を作っていきたと思います。

キャリアコンサルタントのためのカウンセリング入門 杉原保史 著

1.はじめに

この原稿を書き始めた2024年3月3日は、国家資格キャリアコンサルタントの試験日です。私は次回7月の受験を目指して学習中の身です。

本書のまえがきで、「キャリアコンサルタントやキャリアコンサルティング技能士の方々、またそれらの資格取得を目指す方々を意識して書きました」、と記載されています。実際に、養成講座の講義内容のよい復習ができる良本だと思います。

2.内容

(1)実際編

  • クライエントは好きで相談に来たわけではない。やむを得ず相談に来た。たいていのクライエントは、カウンセラーに気持ちを汲んで欲しいという欲求を抱いている。そしてほとんどのクライエントは、自分の人生のストーリーに、しばし耳を傾けてほしいと願っている
  • クライエントの反応から、直接学ぼう。それこそが最高の学び。本や指導者から学ぶことも重要だが、クライエントの反応から得られる学びとはそれとは次元が違う。クライエントから直接に学ぶことができるカウンセラーこそ、力強く成長していくカウンセラー
  • カウンセラーはクライエントの話を受容的な態度で聴くことが基本。受容とは、クライエントの話を、クライエントが意味するように、クライエントの体験を追体験するように、クライエントに寄り添うように聴くということ。クライエントはこのように感じたんだ、このように思ったんだ、このような体験をしたんだと、理解するように聴くこと。そこには価値判断や、正誤の判断は含まれない。つまり需要は、クライエントの話の内容を肯定することではない。
  • カウンセラーにしている作業は、ほぼ、クライエントに自分の感じていることや考えていることを明確にしていくことだけ、心の世界を探索するよう助けているだけ。そういう作業をただじっくり重ねていけば、クライエントはしばしば自ら道を見出していく
  • クライエントの気持ちを受け止めるように、整理するように、そしてクライエント自身が振り返ることができるように聴いていく。クライエントが自分自身の心のひだに注意を向け、自分自身の感じていることをはっきりさせ、自分自身に気づいていけるように聴いていく。何か特別な知識を伝えたり、教えたりすることが必要ではない。基本は、ただクライエントの心の動きをなぞるようにして描き出し、伝えていくこと。
  • クライエントが、自分は価値のない人間だと言えば、「そうなんだ。あなたは価値がない人間なんだ、そう感じてるんだね」と受けとめる。クライエントにとって、不快な気分がいかに耐え難いかを聴き、それに共感する。それができて初めて、クライエントは自分から「だからって、いつまでもこんなことをしていてはダメ」と言い出すもの。
  • 口調や態度から、あせりや不安が感じられることがよくある。カウンセラー自身がクライエントのあせりや不安にオープンな態度を取り、それを受け容れ、感じ、味わい、それに触れながら、ゆったりとした雰囲気でただ「あせりがありますね」と言葉にしていく。穏やかにゆったりと。決してあせりを取ろうとか、減じようとプレッシャーをかけるのではなく、ただ言葉にする。まるでテーブルの上にリンゴがあるにふと気づいたとき「ああリンゴがありますね」と言葉にするのと同じように。
  • 将来を決められないでいると、そのために前に進めず、経験が増えていかないので、いつまでも決められない状態のまま留まってしまう。前に進むことにより、経験が蓄積され、自分にとって大事なことや、自分の好きなことが細かく分化してくる
  • カウンセラーから見ると、不合理だとか、無理があるとか思われるような目標が示されても、即座に否定せず、その目標の背後にあるクライエントの気持ちや欲求を探索しよう。納得できない目標を拒否したり、カウンセラーが合理的だと思うような目標に誘導したりすることがカウンセリングではない
  • 「今、不安な考えやイメージが湧いているみたいですね。どんな考えやイメージがあなたを不安にさせているのか、ここで二人でじっくりとよく観察してみましょう。じっくり心の中を見て、あなたを不安にさせる考えやイメージを、一つ一つていねいに詳しく観察して、教えてもらえますか?」。面接場面の今ここで何が起きているかに注目することが非常に重要。カウンセラーがクライエントを直接に観察できるのも、変化をもたらすような影響を直接及ぼすことができるのも、面接場面の今ここをおいて他にない。最も重要な影響力の機会。
  • 単に紹介先情報を教えて行くように指示する、ということだけが「リファー」ではない。リファーが必要と判断されるような状況についての、クライエントのさまざまな思いや考えを引き出し、一緒に検討し、合理的で建設的な判断を共有することも、「リファー」のスキルに含まれる
  • ともかく、クライエントの否定的な感情や考えを尊重し、理解し、クライエントの体験してきた世界からすれば、それも妥当な反応だと認めていく。クライエントの考えや感情に好奇心を持って聴くことができるといい。
  • ほとんどの転職支援のケースで、同じ価値観、同じ職業観、同じ人生観のままで、単にあっちの職場からこっちの職場、あっちの仕事からこっちの仕事へと移ることはできない。さまざまな傷つき、挫折、喪失の体験がある。これまでの生き方を見つめなおし、これからの人生をどう生きるかを考え直す作業が求められる。そうした過程をサポートし、ともに歩むキャリアカウンセリングは、かなりの程度、心理カウンセリングとは異なる。
  • 価値とは「この地球という星の上で過ごす短い時間をどのように過ごしたいか」ということを思うとき、胸の奥深くに感じる願望のこと。価値をはっきりと自覚している人は、たとえ不安や恥を体験することになったとしても、価値を実現するための行動にしっかりと取り組んでいく。そういう経験を重ねる中で、その人の人生において、不安や恥の果たす役割はどんどん小さくなっていく。

(2)理論編

  • できるだけ具体的に何が起こったのかを明らかにしていく。環境の物理的な刺激や対人関係だけでなく、感情、感覚、イメージ、考えなど、そこで生じてきた内的な刺激についても、関連するものを時系列に沿って明確化していく。また、その時に取った行動もできるだけ具体化するように尋ねていく。このような訊き方をしていくと、クライエントも客観的に何が起こっているのかを整理して捉えられるようになり、気持ちも整理される。
  • クライエントのプロブレム・トークは必要以上に長引かせないほうがよいと考えられている。というのも、問題について詳しく語れば語るほど、問題に捕らわれていきやすくなるから。それよりも問題についての語りを解決についての語り、すなわちソリューション・トークへと軌道修正していくほうが有用。クライエントが自分にとっての解決イメージをできるだけ具体的に生き生きと明確に描けるよう援助していく。
  • どんなに問題があると言っても、その問題の深刻さが無限に広がっていかないよう支えている潜在的な努力がある。それらの努力を見出して、承認し、讃え、補強していく。そうして、すでにクライエントが成し遂げている解決をさらに強めていく。
  • 「どうなったらこの悩みが解決したと言えますか?」と尋ねてみても、「わからない」という答えしか返ってこないことも多い。そのような場合には、質問を言い換えながら、あきらめずに繰り返し尋ねる。クライエントには解決イメージを描く能力があると信じる。その思いがクライエントをエンパワーし、動かす。そもそもクライエントのとっての解決のイメージは、そのクライエント自身にしかわからないもの。
  • 無条件の肯定的尊重:クライエントがたとえカウンセラーから見て、不合理だ、破壊的だ、愚かだ、などと思えるようなことを言っていても、そうした自分の思いは脇に置き、クライエントを尊重する気持ちを維持することができているとき、無条件の肯定的尊重ができているといえる。カウンセラーがこの条件を満たしているとき、クライエントは変化に向かって動き出す。
  • 共感的理解:ともかく、相手の体験を理解しようとする姿勢をもって相手とかかわり、そこで感じられるものを通して、相手を理解することを共感的理解という。クライエントの人格が変化するためには、カウンセラーが知的理解に終始していてはダメで、共感的に理解しようとすることが必要。
  • 自己一致:クライエントの話を集中して没頭的に聴いているとき、ただ専心的に聴いているとき、カウンセラーは自己一致しているといいます。自己一致の状態にあるとき、カウンセラーは自分の経験に開かれていて柔軟。その言葉には真実味があり、存在感や確かさがある。
  • カウンセラーが希望を捨ててしまえば、クライエントが希望を持てないのは当然。クライエントの変化を援助したいのなら、まずはカウンセラーがクライエントは変化すると心から信じること。それ自体が変化を促進する強力な働きかけ。
  • カウンセラーがクライエントを観察するときには、カウンセラーがクライエントにどんな考えや態度を持っているかが、クライエントに影響を与える。それによってクライエントがカウンセラーに見せる表情も態度も、話す内容も変わってくる。そのことがまたカウンセラーのクライエントに対する考えや表情を変化させる。
  • 肝心なのは無意識の心の動き。無意識の心の動きは、言葉にして直接語られることはない。本人が話す内容を聞きながら、一方で話されないように避けられていることを模索する。「当然あってよさそうなにに語られないもの」「妙にさらりと通り過ぎたところ」「言いよどみ」などがポイント。クライエントの恐れや不安を和らげる助けができないかと願いながら、それらがどこにあるのかを感受しようという構えで話を聴いていく。
  • 「抵抗」は、気づきをもたらそうとして取り上げている内容が、クライエントにとって確かに不安や恥や自己非難をもたらす苦痛な内容であることを示すサイン。だから、抵抗はその精神分析治療がうまくいっていることを示すサインでもある。
  • クライエントが抵抗に気づくことは、抵抗を緩める効果をもたらす。その結果、カウンセラーがもともと気づかせようとしていたものが、気づきに上ってきやすくなる。抵抗するクライエントと敵対せず、抵抗を、不安や恥などの何らかの否定的感情の体験を避けようとする自然な心の動きとして理解していくことが大切。そこに温かい注目、好奇心や関心を注ぐことが大切。

3.教訓

キャリアコンサルタントは聞きにくいことを聞くのが仕事。そこには相談者が見たくない自分もいる。抵抗があるのも自然な働き。むしろ、そこに聞くべきポイントが隠されています。

相談者に「うーん」と唸ってもらったら、その内容について自分事としてとらえてほししいというカウンセラーの意図が伝わった証拠。その後に自問自答や内省が始まります。

そして、解決方法を決めるのはあくまで相談者。カウンセラーは相談者が具体的な行動イメージを持てるように伴走していくだけ。相談者が解決方法を教えてほしいと言っても解決思考にならずに、「こうしましょう」とも言わず、誘導もせずに、相談者の力を信じる。面談時間の最後のほうに見えてくるかもしれないと思い、対話をしたいと思います。

www.sentankyo.jp

 

バナナの魅力を100文字で伝えてください 誰でも身につく36の伝わる法則 柿内尚文 著

1.はじめに

本題は「伝えて」ですが、副題は「伝わる」となっています。

”伝える”と”伝わる”は、実は大きく異なります。実際に、本書第3章では、章の名前自体が「伝える技術」に取消線が引かれ、「伝わる技術」と書き直しているくらいです。

その第3章では、16の「伝わる技術」が紹介されています。その中から、自身で印象に残った内容をいくつか引用して紹介していきます。

(36の法則は何を指すのかわかりませんでした)

2.内容

(1)人は、正しいかどうかではなく「伝わったこと」で判断する

  • 伝わらないものは、存在していないことと同じ。だからこそ、伝えたいことをちゃんと伝える必要がある。人は伝えられたことで判断しているので、ちゃんと情報を伝えないとなかなかわかってもらえない。おべんちゃらを言う必要はないかもしれないが、「言わなくてもわかってくれるはず」という考えは捨てるべき
  • 記憶力や集中力の差もあると思うが、人はかなりの情報を忘れてしまう、もしくは最初から聞いていない。「エビングハウス忘却曲線」が有名。これだけ忘れてしまうわけなので、自分が伝えたことも相手の「忘却側」に入ってしまう可能性は十分ある。なので、忘れられている前提で伝える頻度を高めることが大切

www.ac-illust.com

  • 「言いました」=「伝わった」という誤解はよくある。でも相手が理解し、腑に落ちていないならば、それは伝わったことにはならない。伝えただけ。伝わる=相手が理解する、腑に落ちる、納得する。これは「相手ベース」。

(2)伝える技術 伝わる技術

  • コミュニケーションには常に「メンタル(感情)」というやっかいなものがついてまわる。伝えるときは「ファクト(事象・事実)とメンタルを分けて考え、伝える」。それだけで「伝わる力」が上がるはず。
  • 2人の価値観のずれがベースにあり、立場の違いも影響しているので、考えを完全に一致させるのは難しいが、お互いが「なぜそう思うのか」の理由を知ることはできるはず。お互いに質問をしていき、どの部分に努力がいるか、どの部分に仕事の調整がいるかを見える化させることで、解決への道筋が見えてくるはず。
  • 一見同じようなことでも、どういう言葉をのせるかで伝わる価値はまったく変わってくる。言葉を変えることは、思考を変えることにもつながる。思考が変われば、行動も変わる。行動が変われば未来が変わる。言いかえはその第一歩でもある。
  • 相手のことを考えるだけでなく、もう一歩踏み込んで、相手が「得した!」「よかった!」「嬉しい!」と思えるように伝えていくことが「相手メリット」。マイナスの状況でも「相手メリット」で伝えることで、マイナスをプラスに変えることができる
  • 相手メリットに変換するには
  1. 自分の頭に浮かんだ言葉をそのまま伝えない。
  2. 相手の頭の中の「状態」を想像する。その「状態」にとって「メリット」「デメリット」は何かを考える。
  3. 相手にとって優先度の高いことを、相手にメリットがあるように、もしくは相手のデメリットにならないように伝える。
  • 文脈や前提がわからないと、相手の頭の中は「?」状態。話す側は自分がわかっているし、相手もわかって当たり前と思っているかもしれないが、文脈がわからないまま相手の言うことが理解できたらそれはもうエスパー。面倒でも文脈がわかるように丁寧に話したほうが合理的。いきなり本題は避けたいところ。

(3)「伝わる人」が実践している4つの行動

  • コミュニケーションスキルが高い人は「自分の脳と相手の脳が見ている世界が違うということをしっかりと認識している人」。100人いれば100通りあるのが脳のバイアス。そもそも「伝わっていない」「わかってもらうのは難しい」という前提から始める。
  • 伝えたい内容はなかなか伝わらないのに、イライラはすぐ伝わる。こちらのイライラが伝わると、相手もイライラしたり怖がったりと、感情がざわつく。そうなると、本来伝えたかったことはますます伝わりにくくなり悪循環。イラッときたら、「やさしい人になろう」と心の中でつぶやく。
  • 「言わなくてもわかっているはず」「このことは共有できているはず」。でも実際はそこまで共有できていない、わかりあえていないこともよくある。そうすると生まれるのが「不満」。トラブルの多くが「伝えていない」から起きる

(4)「伝えるのが面倒な人」への対応策

  • どうしても伝わらないと思う人であれば、無理してコミュニケーションをとらないという選択もある。そこに時間をかけても伝わらない可能性が高い。
  • 人は自分の理解できる範囲でしか理解しない。そのため、どうしても伝わらないということは起きてしまう。どうにかして伝えようと時間をかけ、労力をかけるのももちろん悪いことではない。でも、いくら時間や労力をかけても伝わらない相手はいる
  • できるだけ相手を否定しない。まずは受け止めること。受け止めたうえで、ゴールや目的を確認する。避けたいのは、議論が本質からずれてしまうこと。なので、ゴールを確認しつつ、相手の感情や立場を考えた答えをしていく
  • なぜ相手が感情的になるのか。相手と同じ階層に立つのではなく、相手を研究対象として捉える。怒り出した相手に、「人はなぜすぐ起こるのかを研究している脳科学者」の視点になる。
  1. 自分の思い通りにならない。
  2. 相手に何度言ってもわからない。
  3. 相手の態度が悪い、気遣いがない。
  4. ただ機嫌が悪い。

3.教訓

伝えていないからトラブルは起こる、ただし、伝えただけでは伝わらない、はまさに仰る通りだと思います。

例えば、業務日誌やメールのCCで話が伝えられるケースです。日誌はその日に起こった事実を伝えるケースであって、判断を求められているとは考えません。また、CCは「こんなことがやり取りされている」程度であって、中身をすべて見たうえで何かしらリアクションが必要だとは思っていません。

必要な相手に必要な手段で伝えたうえで、相手がこちらの思うようにアクションしてもらって、初めて”伝わった”と言える状態になります。そのやり取りが十分ではなくミスマッチを起こすから、伝え手も受け手もフラストレーションがたまります。

そうならないよう、本書の内容を踏まえたコミュニケーションを意識したいと思います。

 

ただ、自身のなかで、今ひとつ腑に落ちない箇所が1つあります。

それは、畑の広さを示す際、「10haというのではなく、東京ドーム約2個分のほうが伝わる」という部分です。

世の中の人は、東京ドーム1個分が、グラウンド部分の大きさだけでなく、観客席や外周部分まで含まれていることをどれくらい認識できていて、実際にどれくらい広いのかわかるのだろうか、と思います。ただただ広いということだけわかればいいのであればよいが、その程度ではないか、と思うのです。