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このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法 北野唯我 著

 

1.はじめに

本書や統計によると、今の日本では転職経験者が50%を超えているということです。

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検討したが転職をしていない人や、転職活動すらしたことがない人でも、本のタイトルにある、「このまま今の会社にいていいのか?」ということを一度も考えたことがない、という人はほとんどいないのでは?と思います。

具体的に転職活動をしている、したい、と考えている人だけではなく、漠然とキャリアデザインに悩んでいる人にとっても、非常に有用な内容かと思いまして、重要と感じた部分を以下に引用していきます。

2.内容

(1)仕事の「寿命」が尽きる前に、伸びる市場に身を晒せ

  • 転職というのは多くの人にとって「初めての意思決定」。だから怖い。就職先の選択は、これまでレールの上を歩いてきただけで、自分で何も決めていない。意味のある意思決定というのは必ず、何かを捨てることを伴う
  • 会社が潰れても食べていける人と、食べていけない人が見てきたものの違いは、上司を見て働くか、マーケットを見て働くかの違い。どこを見て働くかによって、ビジネスパーソンとしての価値はほとんど決まる。マーケットバリューがある人間には、自由が与えられる。知るべきは自分のマーケットバリューを図る方法。
  • 専門性のある人間にこそ、「貴重な経験」が回ってくる構造。そもそも、「貴重な経験」は簡単に得られるわけではない。会社の重要なプロジェクトはいつも専門性の高いエースが任される。言い換えれば、専門性のない人間に打席は回ってこない。
  • 「専門性」で登り詰めるには、明らかにセンスが必要。それには若いころの環境や、与えられた才能に大きく影響を受ける。しかし、「経験」は、どこを選ぶかというポジショニングの問題。ポジショニングは思考法で解決できる。普通の人間こそ、どこで戦うのか、つまり「経験」で勝負すべき
  • 会社がダメになる理由を一言で言うなら、大きな流れ。それを乗り越えられるだけの対応ができなかった。だが、それは社長のせいではない、むしろ社員のほう。彼らは雇われることが当たり前だと思っていて、何も努力をしてこなかった人々。楽をするために勉強してきた人間は、楽をするために就職する。そんな人は努力しない。彼らにとっては就職することがゴール。
  • 多くの人間は、会社が潰れそうになったり不満があると、すぐに社長や上の人間のせいにする。だが、君が乗っている船は、そもそも社長や先代がゼロから作った船。ほかの誰かが作った船に後から乗り込んでおきながら、文句を言うのは筋違い
  • 強い会社というのは普通の発想とは逆。いつでも転職できるような人間が、それでも転職しない会社。それが最強。そんな会社だけが今の時代を生き残れる。
  • 会社がうまくいっているときは、マーケットバリューなんてものは関係ない。仲良しクラブでうまくいく。だが、会社がうまくいかなくなったときに状況は逆転する。マーケットバリューがない人間ほど残忍に変わり、自分の居場所を確保するために、他人を蹴落としてでも生き残ろうとする。

(2)「転職は悪」は、努力を放棄した者の言い訳にすぎない

  • 転職の思考法を手にしたからといって、必ずしも、今の会社を辞めなくてもいい。個人の人生で正解はない。ただ、「辞められない」という思い込みの檻の中に閉じ込められたら、どんな人間も必ず自分に小さな嘘をつくことになる
  • いつ辞めてもいいや、と中途半端に向き合うのではない。選択肢を持ったうえで、対等な立場で相手と接する。選択肢を失った瞬間、仕事は窮屈になる。だから、食べていく力を身につけなければならない。自信はそこからしか生まれない。
  • 転職が悪だというのは、新たな選択肢を手に入れる努力を放棄した人間が発明した、姑息な言い訳にすぎない。人間には居場所を選ぶ権利がある。転職は、個人にとっても会社にとっても「善」。

(3)あなたがいなくなっても、確実に会社は回る

  • マーケットバリューと給料は長期的には必ず一致する。すでに給料が高い成熟企業と、今の給料は低いけど今後自分のマーケットバリューが高まる会社とで悩むことがあれば、迷わず後者を取る。
  • 転職の最後には「やはり自分がいないと仕事は回らないのでは」と不安になるもの。だが絶対に回る。会社とはそういうもの
  • パートナーから共感を得るためには必ずお互いが同じレベルで理解できる言葉や比喩を使って話す。ただでさえ戸惑っている相手を、専門用語で混乱させてはいけない。
  • 意思決定とは、いちばん情報を持っていて、いちばんコミットしている人間がやるべき。本人しかわからない部分がある。だったら最後は信じるしかない。つまりパートナーに説明する際に必要なのステップは次の3つ。
  1. ロジックを固めること
  2. 共感してもらうこと
  3. 最後は信じてもらうこと

(4)仕事はいつから「楽しくないもの」になったのだろうか?

  • 重要なのは、どうしても譲れないくらい「好きなこと」など、ほとんどの人間にはない、ということに気づくこと。そもそも、心から楽しめることなんて必要ない。むしろ必要なのは、こころから楽しめる「状態」
  • 実際のところ、99%の人間がbeing型(状態に重きをおく人間)。そして99%の人間は「心からやりたいこと」という幻想を探し求めて彷徨うことが多い。なぜなら、世の中に溢れている成功哲学は、たった1%しかいないtodo型人間(コトに重きをおく人間)が書いたものだから。両者は成功するための方法論が違う。
  • being型の人間は、ある程度の年齢になった時点から、どこまでいっても「心から楽しめること」は見つからない。だが、それでまったく問題ない。それは何を重視するかという価値観の違いであって、妥協ではない。being型の人間にとって最終的に重要なのは、「やりたいこと」より「状態」。
  • 仕事を楽しむためには「マーケットバリューがある程度あること」、「求められるパフォーマンスとマーケットバリューがある程度釣り合っていること」は必要条件。
  • 信頼とは「自分に嘘をつかないこと」。being型の人間にとって、自分への信頼を保つのは難しい。嘘をつかざるをえないとき、「やりたいことのためには手段を選ばない」と言い訳ができるtodo型の人間と違って、being型は精神的に逃げ場がない。いくら強くなっても、仕事で嘘をついている限り自分を好きになれない。
  • being型の人間にとって重要なことは、マーケットバリューを高めること。そのうえで、迷ったときに、自分を嫌いにならない選択肢を選ぶこと。
  • being型の人間が、好きなことをみつける方法は2つある。
  1. 他の人から上手だと言われるが「自分ではピンとこないもの」から探す方法
  2. 普段の仕事の中で「まったくストレスを感じないこと」から探す方法
  • これからの時代、個人として「ラベル」をもっている人が強い。「ラベル」とは、自分だけのキャッチコピーのようなもの。組織が個人を守ってくれる時代は終わった。いつ会社から放り出されるかわからない。そのときに一つでもいいから個人としての「ラベル」を持っていないと、完全なコモディティ(いくらでも替えが利く存在)になる
  • 転職とは、単に名刺の住所や給料が変わるだけのものではない。世の中の人々に次のチャンスをもたらすもの。今の会社では活躍できていなかったとしても、違う場所で輝ける可能性がある人は本当にたくさんいる。それなのに、転職をタブー視して会社への忠誠という言葉で自分をごまかしている人間が多い。
  • 最後さえ成功すれば、その途中の失敗も、すべては「必要だった」と言える。要は考え方次第。だが、その中でも「100%失敗を招く唯一の条件」がある。それは腹を括るべきタイミングで、覚悟を決めきれなかったとき。
  • すべての働く人が「いつでも転職できる」という交渉のカードを持てば、結果、今の職場も絶対によくなると確信している

3.教訓

上述の2.に記載していることは、要約ではなく、重要だと思った部分の書抜きです。

実際には、転職のコンサルタントや同僚、上司等が登場して、会話形式として物語が進行していくので、本を読むとさらにリアルな感情が伝わってきます。

また、転職業界・企業の見つけ方なども記載されていて、本当に転職を考えている人であれば、転職サイトに登録する前に一度読んでおくことを勧めます。

ただし、本書に登場するコンサルタントが以下のように言っています。

  1. 転職の思考法を手にしたからといって、必ずしも今の会社を辞めなくてもいい
  2. 辞表を書いてから(会社を辞めるという選択肢を手に入れてから)仕事が楽しくなった若者とは、昔の自分のこと

この2点は非常に重要だと思います。

自分には「他に選択肢がある」と思えることが心の余裕につながる一方で、そう思えるためには「自身にマーケットバリュー」がある状態に持っていく必要があります。

そうすると、冒頭の「上司を見て働くか、マーケットを見て働くかの違い」に戻ります。自身はbeing型の典型だなと感じつつも、コモディティではなく、「これだけはできます」と言えるようなラベルが持てる働き方のある人間になるよう、意識を持ち続けたいと考えています。