1.はじめに
個人的には、以下のようなタイトルはなるべく避けるようにしてきました。
- 煽るような表現
- 命令口調
- 「ヤバい」「ずるい」「すごい」が含まれている
本書も、かなり真ん中寄りのタイトルで、今までは読まずに過ごしてきました。
しかしながら、やはりよく売れていること、そして先日書店に立ち寄ったときに目にした、以下の”必読ベストセラー名著100冊”にも選ばれていたことで、自身も読もうと思い手に取りました。
読む前に想像していた内容とは少し異なり、「ザ・日本社会」でサバイブしていくために、理想よりも現実を見るべしという指南書の本でした。
以下では、特に印象的だった部分を引用して紹介していきます。
2.内容
(1)アホと戦うのは人生の無駄
- 冷静に考えれば、権力にすり寄る彼らの努力は、洋の東西を問わず、さらに上に近づく最も大事な準備作業であり、彼ら自身は不本意ながらも、清濁併せ呑む覚悟でそれを積み重ねていたのかもしれない。むしろ、その先輩や同僚を非難するより、賞賛すべきだったのかもしれない。つまり、あなたがアホと思っている人は、実は誰より賢い可能性があることを忘れてはならない。
- 正義は人の数ほどある。その正義を完璧に数値化して公平に判断するのは不可能。人生は不条理だと思ったほうがいい。そもそも、”条理”は人間が考えた勝手な幻想ともいえる。あなたの思う通りに世の中はできていない。
- 自信家はどんどん脇が甘くなっていく。自信を持って成功してきた経験が次への準備を怠らせる。自信があるから未来の想定も甘くなりがち。相手を不快にさせるだけでなく、相手の出方を含めた未来の想定をなめてしまい、自分の能力をさらに過信していく。こうして悪循環になっていく。
- 本来であれば、等身大の自分を知り、その上で達成しようと思うものを持つのが正しい目標設定。たとえ成功途上でも、等身大の自分と、目標に比しての自分の到達点を見失わなければ、成功を続けられる。ところが、少し成功してしまったりすると、たちまち妙なプライドが自分の視野に入ってきて、等身大の自分を見る姿勢を邪魔してしまう。そこで多くの人が自分の目標を見失い落ちていく。
(2)臆病者のための戦略的コミュニケーションのススメ
- 自分のやりたいことが本気ならば、それがはっきりしていれば、いくらでも頭は下げられる。そしてアホは、くそ生意気で自分に嫌いオーラを発しているような人間が頭を下げてくれたら嬉しい。勝ち誇った気になり、それ見たことかと得意げになる。
- 忍耐といってもずっと我慢しろというわけではない。即答、即応してはいけないと言っているのであり、まず嫌なことがあっても、グッと受け止めることに忍耐力を使うべき。成熟したビジネスパーソンになるためには、リアクションを起こす前にじっくり受け止めて考えるようにすべき。まずは何よりこの癖をつけよう。
- 対人関係を捉えるときに知っておいてほしいのは、まず「敵」という発想はいらないということ。実社会で敵なんか作らない方がいいに決まっている。敵とは排除する発想から来ているもので、そもそも心が狭いし、そうした相手を作っていいことは1つもない。
- 自分をいやらしく無視したり、無理難題を押し付けたり、仲間外れにしたりする人がいたら、そのアホに「私を無視したり、仲間外れにしたり、無理難題を押し付ける人がいるんです」と相談に行ってみるといい。これはかなり効く。ドキッとしながらあなたの相談に親身になって答えようとして、その後もあなたに出した答えの期待に添うように、行動を修正してくれる可能性が高い。
- 嫌いな人と険悪になりつつあるときこそ、無理して親しく話す必要はないが、頻繁にコミュニケーションを取り、それ以上関係を悪化させないこと。最悪、顔を合わせておくこと。無理に言葉を発しなくても、敵対しているわけではないという表情やしぐさは見せておいたほうがいい。顔も見たくないという気持ちもわかるが、顔も見なければ悪いほうへの深読みは始まってしまう。
(3)どんな強者でも味方にする”人たらし”の技術
- 常に勝つための努力を惜しまず怠らず、それでいて平気で困った顔をして頭を下げられる人間ほど怖いものはない。困った顔は実は悪いものでもない。困った人間を助けたくなるのがこれまた人情。他人はあなたが適度に困っているときに困った顔をするのが見たい。そして、それを助けたい。
- 今の自分は上司の役に立っているか? 信頼されているか? 相手の期待は何だ? それに応えているか? コンスタントに結果を出せる仕組みづくりに励む。そしてそのために、常に相手の立場に立ってその人の考えを想定すること。
(4)権力と評価の密接な関係
- 実は、うまく立ち回っている人は、憎む対象ではなく学ぶ対象。うまく立ち回る人は、実はとても努力している。言い方は悪いが、誰かに嫉妬にしているあなたは、権力者へのすり寄り方が足りないのかもしれない。
- やれるチャンスが来たら、他人にどう思われようが、そんなチャンスをくれる人に徹底的に忠誠を誓って権力を手に入れようとするのは、汚いことでもずるいことでもなく、潔いことだと思う。そこまでやるのが”本気”ということ。それを格好悪いとか汚いとかあざ笑ったり忌み嫌って批判したりしている人たちの気持ちはわかるが、そういう人たちにこそ「本気でやりたいことを実現させようという気があるのか?」と言いたい。
- あなたは「あいつばかり評価されて悔しい」と思う前に、その人より認められるためになりふり構わず頑張っているだろうか? それを省みるべき。くだらないプライドや見栄に振り回されていないだろうか?
- そもそも、この世には”不本意な人事異動しかない”と思おう。希望通りの人事が行われる可能性など本当に小さい。なぜなら、全員の希望を聞いていたら人事など行えるはずもない。また、その人にとって何が本当に最適で最高な人事なのかは、配置されるほうにも配置するほうにも完璧にわかるわけではない。
- 人事や待遇を含めて人生で大事なのは期待値コントロール。それと同時に大事なのは、「どこへ行って何になろうが、何か得て成長してやる」という姿勢。
- 腐るのは人生最大の無駄。思い通りに人事がいかないからといって、腐って組織を辞めたり、不満を態度に表したりする前に、その組織の中で目の前に与えられたことでコツコツ実績を作り、その機会を活かして成長していく姿勢を持ち、それを実践していったほうがはるかに道は開けていくはず。
- とにかく会議を開きたがる上司にこまめに情報を入れておくこと。そして頻繁にコミュニケーションを取り、その人が疑問に思っていることを先読みして、自分なりの分析結果や回答を伝えておくこと。会議をやりたがる人に「必要ないな」と思わせることがまず必要。
(5)他人の目を気にするな
- 人生は自分が主役であるべき。死ぬときは思い出くらいしかあの世に持っていけない。他者の視線を気にして生きても、死ぬときは1人で死ぬ。他人の視線に振り回されていては、あっという間に時間が過ぎて人生の終わりが来てしまう。そんなことをしていては、自分が自分の意志で生きてきた思い出も作れない。
- 好かれたい・慕われたいとの思いに突き動かされ、振り回され、他者にこちらの媚びる気持ちを見透かされ、逆に好かれず慕われない状況に陥るより、目の前のことに主体的に精一杯取り組むほうがいい生き方。結果として、そういう生き方をしている人を他人は慕ってくる可能性が高い。
- 他人と自分を比べて、くよくよ思い悩み、劣等感を抱え込む人がいる。しかし、一概に「世界に1つだけの花」の歌のように、他者と比べるのは無駄というわけでもない。主体性を意識し、ベンチマーク、つまり自分の居場所を確認するために他者と比べるのは有効。
- 失敗したことのある人間でないと信用できないし、大きな失敗ができるということは相当な実力がある証拠でもあり、また、その大失敗から学べる人間であり、学んだことはかけがえがない、と思われる。
(6)アホではなく自分と戦え!
- 自分の判断の基準を持つのが重要。なぜなら人生における幸せとは、自分の「心からの納得」にしかなく、納得は自分の「最も大切な基準」が満たされることで初めて生まれるから。だからこそ、「自分は何が満たされたら納得がいくのか」を自分と正直に真正面から向き合い確認しておく必要がある。
- 「私はこんなはずではなかった」と思い続けて、探し続け、気が付いたら人生の大切な時間を無為に過ごしていた、というのではとても残念。それより人生があるだけ幸せと思い、感謝しないといけない。
3.教訓
著者は国政政治家の経験者でもあって、世の中を客観的に、現実的に見通しているな、ということが実感できる本でした。
そこまでして権力者になりたいのかは、個人の価値観次第だと思います。一方で、社会には一定数、そうなりたい人がいて、その人にはその人なりの考え方やあって、今のやり方を選択しているんだな、ということを知れる意味でも勉強になりました。
最も共感できたのは、人事異動について、「その人にとって何が本当に最適で最高な人事なのかは、配置されるほうにも配置するほうにも完璧にわかるわけではない」という部分です。
自身でも、かなり遠い昔に体調がいまいちだったとき、フロントからバックに部門異動となったことがありました。最初は慣れない仕事に四苦八苦で、前任者も社外に出向してしまい聞く人もおらず、つらい日々を過ごしました。しかし、それで自分でやるしかないと腹を括れたことで、その後いくつかのプロジェクトにも参画できるほど、その領域には社内でも詳しくなりました。
その業務からもまた異動になったときは、「何で?」と思い悩んだこともありました。しかし自身が経営者やフリーランスでもない限り、世の中の大多数の人は環境を選ぶことができません。「腐るのは人生最大の無駄」、という言葉を自分に言い聞かせ、これからも順風満帆には行かないと思いつつ、世の中そういうものと受け入れて、残りの社会人生活を過ごしていきたいと思います。

