管理職おすすめの仕事に役立つ本100冊×2

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忙しい人に読んでもらえる文章術

1.はじめに

表紙が特徴的。

実際には、グレーアウトされた部分を外すと

時間に追われる忙しい人にもひと目でわかりやすく正確に読んでもらえる行動科学に基づいた一生モノの文章術」と書かれています。

そして、本書前半には、以下のような内容が記載されています。

読み手が離れていくのは、読み手側の責任ではない。読み手の注目をつかみ、関心をつなぎとめるのは、書き手であるあなたの仕事なのだ。

「忙しい読み手のための文章」の書き方を理解するには、まず忙しい読み手の脳のなかで何が起きているのかを理解することが先決だ。

また、読み手が行動しない理由として、以下の3つが挙げられています。

  1. 依頼の内容が理解できないから。
  2. それが重要な行動や必要な行動だと思っていないから。
  3. 対応する価値があるとしても、行動を先延ばししたくなってしまうから。

もう出だしから「おっしゃる通り」という内容が続きます。以下ではもう少し細かい内容について引用して紹介していきたいと思います。

2.内容

本書では、PART2として「6つの原則」が示され、P.232に表にまとめられています。

この「表にまとめる」ことも第3の原則に記載されています。

(1)第1の原則:少ないほどよい

  • 読み手に多くを求めすぎると、読み手が行動してくれる可能性が低くなるだけでなく、メッセージ内の重要な情報に気づき、覚えておいてくれる可能性も低くなる。

(2)第2の原則:読みやすくなる

  1. 「短くて一般的な言葉」を使う。効果的な文章を書きたければ、見栄を捨て、長くて珍しい言葉の代わりに短くて一般的な言葉を使うべき。あまり使われない言葉は認識に時間がかかるので、読みのが遅くなり、注意力に負担もかかる
  2. ストレートな文章」を書く。読み手が1回読んだだけですんなりと意味を理解できる文章を書くこと。ストレートな文章は、論理的な順序で進み、関連する言葉どうしがすべて近くにある。この構造を心がければ、読み手は最小限の労力で文章のおおまかな意味をすばやくつかむことができる。
  3. 1文を「短く」する。文章が長くなると、文章全体を処理するのにたくさんの内容を頭に保持しておかなければならなくなるので、認知に負荷がかかる。1文のなかに独立した内容がいくつも含まれていると、特にその負担は大きくなる。

(3)第3の原則:見やすくする

  • 単語や数値をシンプルな表にまとめるだけでも、言葉だけに頼るより、複雑な考えをずっとわかりやすく伝えられる。「元の文章」はじっくりと読む必要があるが、「視覚的な表現」のほうはパッと目を通しやすい。

(4)第4の原則:書式を生かす

  • あなたが太字(または、ハイライト、下線など)で何を伝えようとしているのかを、忙しい読み手自身に考えさせてはいけない。読み手の混乱を防ぐためには、読み手の解釈を把握するか、あなた自身の位置を明確に伝える必要がある。書式の意味について書き手の解釈と読み手の意図が一致するなら、書式は読みやすくわかりやすいメッセージを書くのに大きな効果を発揮する。
  • ここで大事なのは、太字、下線、ハイライトは一長一短であるということ。書式設定された単語を読んでもらえる可能性は高まるが、残りの部分を読んでもらえる可能性はかえって低くなる

(5)第5の原則:読むべき理由を示す

  • 日常的なメッセージを書こうとしている人にとって便利な合言葉が「だから何?」だ。そう自問することで、メッセージを受け取った人の立場になり、どうすればその人があなたの話に興味を持ってくれるのかを考える
  • 「そのメッセージを誰に読んでもらいたいのか?」「なぜ読んだほうがいいのか?」その視点を持って書けば、そのメッセージはあなたが訴えかけたい相手の心に響くようになるし、無関係な読み手にとっては邪魔になりにくくなる。

(6)第6の原則:行動しやすくなる

  • 大事なのは、読み手に必要な情報がすべて1か所で手に入るようすること。読み手行動に必要な情報を自分で探さなくてはいけないようでは、探すのを後回しにし、最終的には依頼そのものを忘れてしまう可能性が高くなる。
  • 集中力を使わせないようにする一例を挙げると、「読み手に提示する選択肢の数を抑える」「行動の選択肢を減らす」「行動に必要なプロセスを明確に伝える」などがある。

(7)原則を実践する

  • 必要な労力に差があると、1つのメッセージに書かれた複数の依頼に対応するのが難しくなることがある。取り急ぎ簡単な依頼に対応したあと、難しいほうの依頼を忘れてしまう人もいる。また、すべての質問にいっぺんに答えられるようになるまで、対応を先延ばしにする人もいるかもしれない。空き時間がたっぷりあるという魔法のような瞬間は、永遠に訪れないことが多い。
  • 多くのメッセージを送りすぎると、読み手がメッセージを完全にシャットアウトしてしまうリスクがある。メッセージを送る最適な頻度を判断する際には、適切なタイミングで通知を送ることのメリットと、メッセージを送りすぎて読み手に無視されてしまうリスク、その2つのバランスを取る必要がある。
  • 私たちにできることは、自分の言葉(つまり自分自身)がどう見られるのか、そしてその認識が書き手としての目的にどのような影響を与えるのかを意識することだけ。読み手は言葉遣いとデザインの両面からメッセージのスタイルを見て、書き手の好感度、信頼性、共感性、そして目的を絶えず推測している。
  • 効果的でない文章から生まれる誤解は、友情を傷つけることがある。あなたが文章を通じて消費者や同僚と日常的にやり取りする仕事をしているなら、キャリアに悪影響を及ぼす可能性もある。極端な場合、歴史に流れを一変させてしまうことだってある。

3.教訓

私も、日常的に、関係者への作業依頼メールを作っては発信しています。言われてみると、作業しやすいようにと細かい注釈をつけて文章が多くなってしまい、読みたくなくなって、期限を守ってもらえてなかったこともあったと自省しています。

逆にメッセージを受け取る立場としても、プッシュ通知が多いスマホアプリはすべての通知をオフにしたり、商品ユーザ登録したら送られるメルマガの頻度が高いと自動仕分けして受信トレイに溜まらないようにしたりといったことを、実際に個人でしています。

転職のアプリでも、同じ企業に在籍する複数エージェントから別々にメッセージが来ると、「この会社は、クライエントにちゃんと向き合うのでなく、手当たり次第送っているのでは?」と思ってしまい、メッセージを送れば送るほど逆効果になります。

今まで、何となくは理解していたものの、しっかり表や文章になったものを読むと、いかに今まで「自分が主体」で文章を書いていたのかがわかります。相手からどう見えるか、どうしたら読みたくなるか考え、不要な文章はそぎ落とすなどに工夫をこれまで以上に意識していきたいと思う、大変な良書でした。