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人と組織の問題を劇的に解決するU理論入門 中土井 僚 著

 

1.はじめに

私も本書を読む前はそうだったように、ほとんどの方が、「U理論ってなに?」という状態かと思います。

プロローグでは、U理論とは「過去の延長線上になり変容やイノベーションを個人、ペア、チーム、組織やコミュニティ、そして社会で起こすための原理と実践手法を明示した理論」と紹介されていますが、この一文を読んでもなんだかよくわかりません。

ただ、本書は入門書であり、難しい理論展開がなされるのではなく、日本人の著者が日本の会社や家庭で起こりそうな事例を織り交ぜて、かなりわかりやすく解説されていて、「あー、わかる」と思いながら読み進めることができます。

2.内容

(1)人と組織が「頭を抱える問題」を解決する

  • 自社の先行きが危ぶまれる状態になると、「上が変わらなければ」という経営陣に対する批判とは裏腹に、業種・業態は違ってもほとんど同じ発言が繰り広げられる。
  1. カリスマ的リーダーが現れ、危機的状況をなんとかしてくれることを望む「救世主(メシア)待望論
  2. 「みんなが危機意識を持たないので会社は変わらない」という諦めとともに、「もう後がない!」というくらいの危機に陥れば一致団結して大逆転できるのではないかという淡い期待を抱く「危機団結論
  3. なんのかんの言いながら最終的にはどうにかなるのではないかという「ポジティブ幻想論
  • 盲点となっているのは、何を(What)どうやるか(How)ではなく、誰(Who)という側面。リーダーが何を実行するか、どのように実行するかではなく、個人としても、集団としても、自分は何者なのか、行動を生み出す源(ソース)は何か、にある。
  • いま遭遇している問題が「煩雑な問題」なのか、それとも「複雑な問題」なのかを見極めることが重要
  1. 煩雑な問題:「ジグソーパズル型」の問題。煩雑で手間がかかるものの、望ましい状態やゴールが明確であり、問題を分解し、役割分担しながら積み上げていけば前進すること、解決可能なこと。
  2. 複雑な問題:「ルービックキューブ型の問題」。その構造を理解しない限り、まぐれでも6面がそろうことはまずない。「あっちを立てれば、こっちが立たず」という関係性は、「相互依存関係」と言われる。
  • 三者として見ていると、双方の態度や言動が相手のネガティブな反応のトリガーとなっていることは、手に取るようにわかる。しかし当事者同士は、第三者が見ているようには自分の態度や言動を捉えることができないので、それが相手のネガティブな反応を引き起こしていることに、なかなか気づくことができない。

(2)U理論が起こすパラダイムシフト

  • カイゼンに代表されるPDCAサイクルのような過去に起きたことを振り返ることから学ぶ方法を「過去からの学習」と呼ぶ。しかし、「出現する複雑性」のように、過去に遭遇したことのない問題に対しては、当然ながら限界がある。
  • 本番に強い人はそもそも緊張を強いられるような場面においてもなぜリラックスできるのか、逆に緊張でガチガチになってしまうのか、その違いがすなわちWhoの違い。つまり、その状況に臨んでいる自分が「何者としてその場にいるか」
  • 畑から収穫を得るために最初に取り組むことが土地を耕すことであるように、乾き痩せたソーシャル・フィールドを耕すことから、U理論のプロセスは始まる。このソーシャル・フィールドを耕すプロセスこそが、「どこからやるのか」という行動の「源」を転換すること
  • まず徹底的に観察する。それから一歩後ろに退く。うまくいけば内面の深い場所にある何かに触れることができる。そこから”知(ノウイング)"が浮かび上がってくる。ひたすら待って、経験が何か形になって湧き上がるのに任せる。決定する必要はない。何をすべきかは自ずと明らかになる

(3)本質的な変容を起こすU理論の7つのステップ

www.presencingcomjapan.org

 

ステップ①:ダウンローディング(Downloading)
  • 過去の枠組みの構築は、人間の持つ正常な環境順応機能といえる。もし構築できなかったら、同じことに取り組んでいるのに毎回1から考え、人に教えてもらって、手順をその都度作り直さなければならなくなる。しかし、過去の延長線上にはないイノベーションが求められているとき過去の枠組みは時に足かせになる。それが組織レベルになると、官僚的、大企業病と揶揄されてしまう状態になる。
  • 過去の枠組みを否定するような到底ありえないことに遭遇した時、私たちは過去の枠組みを「再現」し、次いで「黙殺」「否定」、時には「思考停止」という手段によって、自動的にその枠組みの存続を図ろうとする。この状態に留まっていると状況をありのままにとらえることができなくなり、学習障害の原因となる。
  • たとえダウンローディングという状態を知識として知っており、頭で理解できていたとしても、黙殺、否定、思考停止といった状態からなかなか逃れられないことに無自覚だと、簡単に学習障害に陥り、手遅れになってしまう
  • 自動的な反応によるダウンローディングを未然に防ぐためには、自分がどんな時にどんな反応をするのかを知り、反応を客観視することが重要。具体的には「カチン」ときたり、「スイッチが入った」自分に気づくこと。
  • 裁判に勝てるくらい自分が正しく、仮にそれが証明できたとしても、チームとして生産性が上がる状態にはならない。自分の正しさを証明することに固執し場を崩壊させたいのか、自己正当化の権化となっているダウンローディングな状態から抜け出し、場にイノベーションをもたらしたいのかの選択。その意味において、ダウンローディングから抜け出す姿勢はリーダーシップそのもの
ステップ②:観る(Seeing)
  • 「観る」は、頭の中で起きている雑念に意識を奪われず、目の前の事象、状況、情報に意識の矛先が向けられている状態。自分の頭の中に没入するのではなく、目の前のことに意識が奪われている状態。
  • ダウンローディングの弊害は、思い込みや先入観によって情報が処理されることで現実に生じている変化を察知できず、誤った意思決定をしてしまったり、結論は正しくても「話を聞いてもらっていない」と部下に感じさせてしまうことにある。それに対して「観る」は部下の話に一言一句、注意深く耳を傾けている状態
  • ダウンローディングから観るへの移行は受動的に生じるのであって、能動的に起こせるものではない。移行が生じるのは「自分の前提や固定観念を覆すデータ」に触れた瞬間。受動的に生じる以上、待つこと以外に私たちにできることはない。待つしかないとしても、「待つ姿勢を高めること」はできる。
  • 「待つ姿勢の質」を高めるコツが「保留」。自分がダウンローディングな状態になっていることに気づき、自分の枠組みを適切に覆す情報が入るまでは結論は一切出さないようにする。思考の壁をすり抜けて、ハッとする驚きとともに「観る」への移行が生じやすくするのが「保留」という行為。
ステップ③:感じ取る(Sensing)
  • 心理学における成長とは、自分の中に他人の目玉が増えること。それはまさに「感じ取る」そのもの。U理論は、自分の中に他人の目玉を増やすことなくして、複雑な問題を解決することができない、ということにフォーカスしている。
  • 「感じ取る」は、過去の経験によって培われた枠組みが崩壊し、枠組みを超えた側から今の自分や状況が見えている状態。普段われわれは、自分とは違う立場の人の考えや気持ちを頭ではなんとなく理解できたり推測することはできても、その立場に実際になってみるまで、なかなかピンと来ないことが多い。
  • 「感じ取る」に到達すると、過去の枠組みが崩壊し、新しい枠組みから物事を捉えられるため、今まで頭をかすめたこともなかったような考えが浮かんだり、人としての優しさや誠実であろうとする想いが湧き上がったりする。その結果、相手に自分の主張を飲ませるためにむやみに説得したり、力によってねじ伏せたりしないようになり、自分に何ができるのかを深く考える姿勢が生まれる。
  • 諦めの枠組みを通して世界を見てしまうと、裏があるように捉えたり、人の成功を喜べずに皮肉な態度を取ったり、「自分にはできるわけがない」と怖気づいたりする。つまり、「開かれた心」とは真逆の心的態度をVOC(Voice Of Cynicism)は作り出してしまうため、「開かれた心」へのアクセスを困難にしてしまう。
ステップ④:プレゼンシング(Presencing)
  • プレゼンシングは、Uのモデルの底にあたり、ここから未来が出現しイノベーションが生まれると捉えていることからも、U理論の根幹ともいえるステップ。
  • Uの谷を潜り続けると、「私の大きなSの自己(Self)とは何者なのか」「私の成すこと(Work)とは何なのか」、この2つの根源的な問いに対する答えが出現する。
  • 何かに対して「自己同一視化(Identify)」した状態を「手放す(Letting Go」ことには抵抗感が生まれ、恐れを伴う。恐れを乗り越え、腹をくくって前に進んだ時にプレセンシングに到達し、過去の延長線上ではない新しい可能性が迎え入れ(Letting Come)られる
ステップ⑤:結晶化(Crystallizing)
  • 人と人、人と大きな現実が繋がったとき、その場の空気が変わる。この空間が生まれたビジョンなら信頼できる。すべてが明確にわかるからではない。大いなる意思の存在を感じて、それに従うだけでいい。ある意味で、真のビジョンは明らかになるものであって、つくられるものではない
  • われわれは、その人自身の思考や技能が、これまでに無かった創造的な何かを生み出しているという捉え方をしがちだが、U理論では、われわれという器を通して現れたがっているものに道を譲ることこそが、創造性と関連している。
ステップ⑥:プロトタイピング(Prototyping)
  • 創造のプロセスとは学習のプロセスであり、最初の時点でわかっているのは、成功するために何が必要かについての仮設であり、仮のアイデアに過ぎないと考える。本当に新しいことをやろうとするなら、まずはやってみて、それから調整しない限り、やり方は学べない
  • プロトタイピングで着目したい点は、プロジェクトリーダーは指示命令するのではなく、一連のステップをファシリテートしていること、そして、異なった経験を持つ専門家たちの議論が空転しないよう、実際に同じものを目にしたり手にしたりするよう促すことで、社会的な複雑性を乗り越えている点。
ステップ⑦:実践(Performing)
  1. 水平方向 「境界」を超えた幅広い協働:活性化した組織は、論理性や合理性を重視しつつも、一肌脱ぐことを大事にする風土が見られる。一朝一夕には出来上がらないので、日々の積み重ねが大事になる。ステークホルダーとして関わり合う人たちが「自分たちは何者で、何を成すのか」について普段から共に探求し、一貫した行動を続けることで可能になる。
  2. 垂直方向 日常的な源とのつながり:Uプロセスはアイデアがプロトタイピングされるまで1回だけ行えばよいのではなく、何度でも行うことに真髄がある。

(4)U理論の実践[ペア・チーム編]

  • Uの谷の下る左側がLoveの創造的な側面を引き出すプロセスであり、Uの谷を上る右側がPowerの創造的な側面を引き出すプロセス。立場、役割、文化、価値観、見解の違いによって、相手とのつながりが失われ、溝が生じてLoveの破壊的な側面が出ている状態では、何かの施策をPowerとして生み出そうとしても効果には限界があるばかりか、より事態を悪化させてしまうことも起こる。
  • それぞれの相手の問題点や困った言動を理路整然と言えるのに、相手が自分に対して理路整然と言っている問題点を認識している人がほとんどいない。これは、自分の目玉から相手のことはよく見えているものの、相手の目玉からの自分が一切見えていないことを意味する。
  • 関係を悪化させる「関係の4毒素」は、①非難、②侮辱・見下し、③自己弁護・防御、④逃避。関係の4毒素は、コントロールできる範囲の言動を慎重にしたとしても、相手や周りの人に伝わってしまう。
  • 関係4毒素強化ループが悪化の一途をたどっているとき、それを加速させる2つの要因が隠れている。危機的な状態に陥ったときには、一致団結に向かうとは限らず、お互いに毒素の吐き出しあいをして関係性に亀裂が生じ、別離や破綻に向かいやすくなる
  1. 決めつけと認識の歪曲:相手にレッテルを貼り、それによって偏った情報を収集してしまう状態
  2. 自己正当化と犠牲者感:自分は悪くない、なぜ自分がこんな仕打ちを受けないといけないだと思う状態
  • 関係の4毒素強化ループがどんどん強化されてしまうのは、お互いの相手の複雑性が死角になっており、そこに目を向けられない上に、自分の複雑性は理解してくれて当然だと無意識に期待してしいまうから。つまり、自分が相手にしてやれない無理な注文を、押し付けあっているということ。
  • 相手やチームメンバーの目玉を取り入れるというのは、相手方の意見や行為の内容を認めることではなく、「その意見や行為自体はどうかと思うけど、そう考えたくなる気持ちはわかる」「自分がその立場になったら、やり方は違っても、そういうことを言いたくなったり、やりたくなったりするだろう」という「心境」にたどり着くこと
  • どちらのスタンダードが正しいのかを議論したり、主張しあったりしても、違いが浮き彫りになり、対立が激しくなるだけ。「決めつけと認識の歪曲」が生まれている中で、自分が犠牲になっている感覚を抱いたまま、自分の正当性をどれだけ述べようと、相手の反応的な態度を引き起こしやすくなるばかり。

(5)U理論の実践[組織・コミュニティ編]

  • 「口ではいいことを言っているけれど、やっていることが違う」という結果に終わってしまうのは、自分の都合を優先する「小さな自己」、すなわちエゴに乗っ取られているから。それに対して「小さな自己」を超えた「大きな自己」につながったときには、「これが自分にとって”本当に大切なこと”」と思えるようになる。
  • U理論が切り込もうとしているのは、身の入らない建前のスローガンではなく、「本当に大切なこと」がいきいきと、まるで生命があるかのように存在している状態を生み出すこと。「存在させる」だけでは効果は限定的で、「させようとする」働きかけがあってこそ、創造することにつながる

3.教訓

特に赤字にした3か所は非常に心に響きました。

相手と話をしていて、「それを言ってどうしたいの?」、「自分だったらそんなやり方はしないけどな」と思うことにはよく遭遇します(本書にあるように、なかなか自分を客観視できず、無意識に自分もそう思われていることもあるのだろうと推察します)。

直近でも、とある作業依頼についてこんなことが起こりました。

依頼者側は「まだ終わっていない」部分があって督促しますが、受けた側は期限前早々に「作業が終了した」と思っていました。

依頼者は「ちゃんと作業マニュアル読んでください」と主張し、受けた側は終わったつもりでいるので、「どこが未入力なのか具体的に教えてくれればいいのに」と思っています。

ここで、本来の目的に立ち戻る必要があり、それは「期限内に必要な作業を終えること」です。

そのためにできることは、受けた側は「期限前に作業を終えた」と伝えること、依頼者側は「この部分が未入力である」と具体的に指し示すこと、そうすることで、双方が同じゴールに向かって進むことができます。

すでに期限が超過しているのに、お互いに「自分は正しいことをしているつもり」と主張したところで、何もいい結果は生まれません。

今後のチームビルディングにおいても、事態をしっかりと観察し、過去の枠組みに縛られすぎず、「関係の4毒素」がループにならないように意識したいと思える良本であり、U理論本体のほうもいずれ勉強したいと思いました。