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幸せになる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教えⅡ 岸見一郎・古賀史健著

1.はじめに

本書は、大ベストセラーになった「嫌われる勇気」の続編です。

アドラー心理学をベースとし、対人関係の悩みの改善に向け、青年と哲人との会話形式で示していくスタイルは、前作と同じです。

本サイトを訪れていただく方におかれては、以下の青い表紙の本は、読んだことがあるという人も多く、見たことはあるという人を含めると大半ではないかと思います。

2.内容

(1)悪いあの人、かわいそうな私

  • 哲学とは永遠に歩き続けること。そこに神がいるかどうかは関係ない。哲学は学問というより、生きる「態度」。
  • 役割として「教える側」に立っている人間が、「教えられる側」に立つ人間のことを敬う。尊敬なきところに良好な対人関係は生まれず、良好な関係なくして言葉を届けることはできない。根源にあるのは特定の他者でなく「人間への尊敬」。
  • あなたはまだ、何も見ていないし、見ようともしていない。自分の価値観を押しつけようとせず、その人が「その人であること」に価値を置く。さらには、その成長や発展を援助する。それこそが尊敬というもの。他者を操作しようとする態度、矯正しようとする態度には、いっさいの尊敬がない。
  • 世間一般で考えられている共感、つまり相手の意見に「わたしも同じ気持ちだ」と同意することは、たんなる同調であって共感ではない。共感とは、他者に寄り添うときの技術であり、態度。技術である限り誰でも身につけることができる。
  • われわれは過去の出来事によって決定される存在ではなく、その出来事に対して「どのような意味を与えるか」によって、自らの生を決定している。自分の人生を決めるのは「いま、ここ」を生きるあなた。

(2)なぜ賞罰を否定するのか

  • どんなことであれ、われわれは誰しも「知らない」という地点からスタートします。「知らない」という事実をもって厳しく責めるのは理にかなわない。われわれ大人たちに必要なのは叱責ではなく教えること。感情的になるのではなく、大きな声を出すのでもなく、理性の言葉で。
  • あなたは相手に「原因」ばかりを聞いている。そこをいくら掘り下げても、責任放棄と言い訳の言葉しか出てこない。あなたのやるべきことは、彼らの「目的」に注目し、彼らととともに「これからどうするか」を考えること。
  • あなたは相手たちと言葉でコミュニケーションすることを煩わしく感じ、手っ取り早く屈服させようとして叱っている。それは教育者として未熟・愚かな態度。
  • 教育する立場にある人間、そして組織の運営を任されたリーダーは、常に「自立」という目標を掲げておかねばならない。相手の「自立」という大きな目標に自分は貢献できたという貢献感を持ち、そのなかに幸せを見出す
  • 相手の決断を尊重し、その決断を援助する。そしていつでも援助する用意があることを伝え、近すぎない、援助ができる距離で見守る。「自分の人生は、自分で選ぶことができる」という事実を学んでくれる。

(3)競争原理から協力原理へ

  • 他者と競争するのではなく、他者との協力を第一に考える。もしもあなたの組織が協力原理によって運営されるようになったら、相手は「人々はわたしの仲間である」というライフスタイルを身につけてくれる。
  • 文明とは、人間の生粒学的な弱さを補償するための産物であり、人類史とは劣等生を克服する歩み。人間はその弱さゆえに共同体を作り、協力関係のなかに生きている。人間は単独では生きていけないほど弱かった。
  • 弱さゆえにわれわれはいつも、他者との強固な「つながり」を希求し続けている。すべての人には共同体感覚が内在し、それは人間のアイデンティティと深く結びついている。共同体感覚は「身につける」ものではなく、己の内から「掘り起こす」ものであり、だからこそ「感覚」として共有できる。
  • 承認には終わりがない。ほめられることでしか幸せを実感できない人は、人生の最後の瞬間まで「もっとほめられること」を求める。その人は「依存」の地位に置かれたまま、永遠に求め続ける生を、永遠に満たされることのない生を送ることになる。
  • 「わたし」の価値を、他者に決めてもらうことは依存。一方、「わたし」の価値を自らが決定することを「自立」と呼ぶ。「人と違うこと」に価値を置くのではなく、「わたしであること」に価値を置く。

(4)与えよ、さらば与えられん

  • 他者から逃れることなど絶対にできない。人間の抱える「すべての悩み」は、対人関係の悩み。逆に、人間の喜びもまた、対人関係から生まれる。「すべての喜びもまた、対人関係の喜び」。
  • われわれ人間は、ただ群れを作ったのではない。人間はここで「分業」という画期的な働き方を手に入れた。分業とは、人間がその身体的劣等生を補償するために獲得した、類い稀なる生存戦略。論理的でコモンセンスに一致する答えは、われわれは働き、協力し、貢献すべきである。
  • 要するに人間はひとりでは生きていけない。孤独に耐えられないとか、話し相手がほしいとかいう以前に、生存のレベルで生きていけない。そして他者と「分業」するためには、その人のことを信じなければならない。疑っている相手とは、協力することができない。人間には「信じない」という選択肢はない
  • すべての仕事は「共同体の誰かがやらねばならないこと」であり、われわれはそれを分担しているだけ。人間の価値は、「どんな仕事に従事するか」によって決まるのではない。その仕事に「どのような態度で取り組むか」によって決まる
  • なにより危険なのは、何が善で何が悪であると、中途半端な「正義」を掲げること。正義に酔いしれた人は、自分以外の価値観を認めることができず、果てには「正義の介入」へと踏み出す。その先に待っているのは、画一的な灰色の社会。
  • 自らの価値観を押しつけることなく、その人が「その人」であることを尊重することができるのは、その人のことを無条件で受け入れ信じている、すなわち信頼しているから。他者のことを「信頼」できるか否かは、他者のことを尊敬できるか否かにかかっている
  • 大切なのは、何が与えられているかではなく、与えられたものをどう使うか。どんな相手であっても、「尊敬」を寄せ、「信じる」ことはできる。それは環境や対象に左右されるものではなく、あなたの決心ひとつによるもの。
  • どうすればわたしの言葉に耳を傾け、受け止めてもらえるのか?「わたしを信じてくれ」と強要することはできない。信じるかどうかはその人の自由。わたしにできるのはただ、自分が語りかける相手を信じること。先に相手のことを信じる
  • 自己中心的な人は、「自分のことが好き」だから、自分ばかり見ているのではない。実相はまったく逆で、ありのままの自分を受け入れることができず、絶え間なき不安にさらされているからこそ、自分にしか関心が向かない
  • 仕事によって認められるのは、あなたの「機能」であって、「あなた」ではない。より優れた機能の持ち主が現れればそちらになびくのが市場原理。本当の所属感を得られるには、他者に「信頼」を寄せて、交友の関係に踏み出すこと。われわれは仕事に身をささげるだけでは幸福を得られない。
  • 当然、相手の考えていることがすべてわかることなどありえない。「わかりえぬ存在」としての他者を信じることが信頼。われわれ人間は、わかり合えない存在だからこそ、信じるしかない。
  • 世界から争いをなくしたければ、まずは自分自身が争いから解放されなければならない。自分を信じてほしいと思うなら、まずは自分が相手を信じなければならない。自分を棚に上げて全体の話をするのではなく、全体の一部である自分が最初の一歩を踏み出す

(5)愛する人生を選べ

  • われわれはみな、「わたしは誰かの役に立っている」と思えたときにだけ、自らの価値を実感することができる。主観的な感覚があれば、すなわち貢献感があれば、それでいい。
  • 「わたし」や「あなた」よりも上位のものとして、「わたしたち」を掲げる人生のすべての選択について、その順序を貫く。「わたし」の幸せを優先させず、「あなた」の幸せだけに満足しない。「わたしたち」のふたりが幸せでなければ意味がない。「ふたりで成し遂げる課題」とはそういうこと。
  • すべての人間は、過剰なほどの「自己中心性」から出発する。しかしながら、いつまでも「世界の中心」に君臨することはできない。世界と和解し、自分は世界の一部なのだと了解しなければならない。自立とは「自己中心性からの脱却」。「わたし」だった人生の主語を「わたしたち」に変える。われわれは愛によって「わたし」から解放され、自立を果たし、本当の意味で世界を受け入れる。
  • わたしは、なんら優れたところのない人間である。だから誰とも愛の関係を築くことができない。担保のない愛には踏み出せない。・・これは典型的な劣等コンプレックスの発想。自らの劣等感を、課題を解決しない言い訳に使っている。あなたにできることは、課題を分離し、ただ自分から先に愛すること。
  • 目の前に愛すべき他者がいるのに、あれこれ理由を並べて「この人ではない」と退け、もっと理想的な完全な運命的な相手がいるはずだ」と目を伏せる。それ以上の関係に踏み込もうとせず、ありとあらゆる候補者を自らの手で排除する。それが「出会いがない」と嘆く人の正体。幸せは、向こうから訪れるものだと思い、可能性の中に生きている。
  • われわれに「運命の人」などいないし、その人が現れるのを待ってはいけない。待っていたのでは何も変わらない。運命とは、自らの手でつくり上げるもの
  • やるべきことはひとつ。そばにいる人の手を取り、今の自分にできる精いっぱいのダンスを踊ってみる。運命は、そこからはじまる。
  • われわれは他者を愛することによってのみ、自己中心性から解放される。他者を愛することによってのみ、自立を成しえる。そして他者を愛することによってのみ、共同体感覚にたどりつく。「愛し、自立し、人生を選べ」。
  • 現実としてわれわれは、別れるために出会う。すべての出会いと対人関係において、ただひたすら「最良の別れ」に向けた不断の努力を傾ける。「いま、ここを真剣に生きる」とは、そういう意味。

3.教訓

本書を読んで、以下の「こころの対話 25のルール」を思い起こしました。

まさに、「いま、ここ」というフレーズが共通していて、傍観せずに自分から始めるという考え方も一致しています。

bookreviews.hatenadiary.com

 

アドラーは「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と断言しています。

本書は、教育現場をベースに先生と生徒を中心として話が展開していきます。ただ、教育現場だけでなく、職場における同僚・部下・新人への接し方や、家庭における配偶者・子どもとの会話など、人と人が接する場であれば、アドラーの言葉どおり、それぞれが同じような悩みを持ち、劣等感を抱えながら日々を過ごしていると思います。

実際、我が家でも、子どもがスマホ中毒になっていて、今年の夏休みの読書感想文に「スマホ脳」を選び、感想を綴っても一向に改善しないことで、言い争いが絶えない、ということが起こっています。

相手に嫌われようが自分だけが幸せになる、ということは現実に起こりえません。自分と相手の課題を分離しつつ、相手が自立することを願って貢献し、「わたし」「あなた」でなく「わたしたち」の目線で考えていくことを意識したいと思います。(できれば、その延長線で子どものスマホ中毒も改善したい・・)

改めて、「嫌われる勇気」を再読したいと考えています。