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選択の科学 シーナ・アイエンガー著


 

1.はじめに

著者は生まれつきの目の病気があり、13歳で父親を亡くし、高校生になるときには全盲になりました。

そのような環境でも、自分の人生を「選択」という次元で、つまり自分に可能なこと、実現できることという次元でとらえた方が、はるかに明るい展望が開けるように思い、選択をテーマに研究を進めています。

2.内容

(1)選択は本能である

  • 私たちが「選択」と呼んでいるものは、自分自身や自分の置かれた環境を、自分の力で変えられる能力のこと。選択するためには、「自分の力で変えられる」という認識を持たなければならない。
  • 動物たちにとっては、実際に状況をコントロールできるかどうかよりも、コントロールできるという認識の方が、大きな意味を持っている。
  • たとえ状況が自分の力に負えないように思えても、自分の力で何とかするという気持ちを持つことで、より健康で幸せな日々を送ることはできる。人生の辛い出来事を不可抗力のせいにする人は、自分次第で何とでもなると信じている人に比べてうつ病にかかりやすいほか、薬物依存や虐待関係といった破壊的な状況から抜け出せず、心臓発作が起きても助かる確率が低く、免疫力も低い。
  • たとえささいな選択であっても、頻繁に行うことで、「自分で環境をコントロールしている」という意識を、意外なほど高めることができる。自分や他人に選択の自由を与えることで、それに伴う恩恵を与えることもできる。

(2)「強制」された選択

  • 私たちは大勢に従うときでさえ、自分だけは例外だと思っている。自分は大勢に同調しているわけではなく、自分だけの独立した考えで決定を下していると思っている。言い換えれば、自分の行動が一般的な影響要因や日々の出来事に、それほど左右されていないと考えている。つまり”意識が高い”のだ。
  • 私たちは自分の信念と行動の矛盾に気づくとき、時間を巻き戻して行動を取り消すことができないため、信念の方を行動と一致するように変える。努力が無駄になったと感じないために、自分に言い聞かせることになる。
  • 私たちは一貫性のない行動は取りたくないし、一貫性のない人だと思われたくもない。他人が認め、好感を寄せるようになった自己像にそぐわない行動を取れば、よくわからない人、信用できない人と思われてしまう。しかし整合性にこだわり過ぎると融通が利かなくなり、世間からずれていってしまう。
  • 要するに、私たちは変わっても変わらなくても非難される。一貫性と柔軟性のバランスを保つことはそれほど難しい。
  • 月曜に発言し、水曜に違う発言をしたとしても、火曜に新しい知識を得た場合や状況そのものが変化した場合には矛盾にならない。高みから俯瞰することで、内に抱える多くのものの折り合いをつけることができる。大切なのは、昔からずっと同じ自分でなくても、自分であることに変わりないという認識を持つこと。
  • 自分がそれほど立派に思われていないことがわかったら、他人にどう見られたいかに合わせて自分の行動を変えればよい。自他の認識ギャップを埋めるために打てる手はたくさんある。気を付けなくてはいけないのは、自分を実際より良く見せたいという誘惑に屈しないこと。
  • 様々な決定を通して彫像を彫り、削ることが自分自身を作る。私たちは選択の結果だけでなく、選択の進化を通して自分探しをする彫刻家だ。

(3)選択を左右するもの

  • 自分をごまかそうとせず、誘惑を避けることを自分に教え込まなくてはならない。誘惑を回避する行為そのものを習慣化、自動化する必要がある。
  • 私たちは、大切なものを失わないためならどんなことでもするが、同じようなリスクを取ってまで利益を得ようとはしない。
  • 自分の意見を裏付けたり、以前を行った選択を正当化するような情報を進んで受け入れる。なんといっても、自分の考えを疑うより、その正しさを証明する方が気分がいいだから賛成意見だけを考慮し、反対意見は頭の片隅に追いやる。だが、自分の行った選択を最大限に活かすには、都合の悪いことも進んで受け入れなくてはならない。
  • 後で自分の選択を振り返ることには意義がある。たとえ後の祭りでも、自分が誤りを冒したことに気が付けば、その間違いを繰り返さずに済むはず。私たちは誰しも、意思決定バイアスにとらわれやすいが用心と粘り強さ、それに健全な猜疑心があれば、自衛は可能。

(4)豊富な選択肢は必ずしも利益にならない

  • 選択肢の見分けが容易につかないとき、選択肢の多さは、もはや便利でも魅力的でもなくなり、単にノイズを生み出し、集中を妨げるだけになってしまう。
  • 選択は無条件の善ではない。認知能力や許容量の制約上、複雑な選択を十分に検討できないことをわきまえ、常に最良の選択肢を探し当られないからといって、自分を責めないこと。
  • 人は学習を通して多数の選択肢から選べるようになるが、浅瀬から始めて技と度胸を培いながら、徐々に深場に向かった方が溺れにくい。

(5)選択の代償

  • 難しい選択に限っていえば、選択の権利を行使するには、外部から何らかの助けが必要。
  • まかり間違うと、明らかに正しい選択肢や、ましな選択肢が存在しないのに、自分こそが望ましくない結果を引き起こした張本人だという自覚で押しつぶされそうになる。選択の自由は、精神的、感情的な代償を伴うことが多い。
  • 人生を変えるほどの重大な選択であろうとなかろうと、どんな選択をしても、不安になったり後悔したり可能性があることは覚えておいてほしい。
  • 選択が人に及ぼす悪影響を建言する方法は、選択の幅をさらに広げることではなく、判断の一端を他者に委ねる、あるいは自分の行動に制約を加えることで、選択のプロセスを自分に有利に変えること。
  • 実のところ、選択を全くせずに済む方法など存在しない。「選ぶべきか、選ばざるべきか」という問いにどう答えようと、選択を行うのがあなただということに変わりはない。でも選択を行うからと言って、必ずしもつらい思いをする必要はない。

3.教訓

自分自身を振り返ってみても、ちょっとしたことでも「あの時の行動は正しかったのか」とずっと心に引っかかることはあります。

しかし、この本を読んで、多くの人が同じように思い、悩み、考えていることがわかり、また様々な制約の中で、常に最良の選択ができないことも認識できました。

かといって、生きることは選択し続けることでもあるので、自他の認識ギャップや都合の悪いことも受け入れながら、選択できる喜びを感じて行動していきたいと考えます。