管理職おすすめの仕事に役立つ本100冊×2

課長経験者が身銭を切る価値のあるのおすすめ本だけを紹介するページ(社会人向け)

成長を支援するということ 深いつながりを築き、「ありたい姿」から変化を生むコーチングの原則

1.はじめに

キャリアコンサルタント資格を取得すると、勉強グセがつきます。

すると仲間内では、次は何を目指して勉強しようかという話によくなります。

1つはメンタルヘルス・マネジメント検定。私もラインケアコース(Ⅱ種)を取得しました。他にも産業カウンセラーがあります。こちらも取得を目指しています。

そしてもう1つ、コーチングがあります。こちらは資格というよりも、相談者へのアプローチ手法の1つとして関心があります。以下、基本の勉強をして、もう少し深く知りたいと思い、本書を手に取りました。

bookreviews.hatenadiary.com

2.内容

(1)支援の本質-他者が学び、成長するのを真に助けるには

  • 誰かをコーチする場合には、その人のパーソナルビジョンを掘り起こし、明確にすることが不可欠。いま目の前にある課題を解決したり、規定の目標を達成するーまたは一定の基準を満たすー手助けをしたりするよりも、その人の望みやビジョンを明らかにするほうが、プラスの感情や本来あるはずのモチベーションを解き放ち、本物の持続的な変化をもたらすのに重要な鍵となる。
  • 小学校教師のカイルは子どもたちに、「私が先生に知ってもらいたいのは…」に続く分s評を書くように言った。担当の教師として児童を支援するために必要な情報を得ることができた。子どもたちのために何が一番重要かわかった。
  • カイルが児童にした質問はXでまたたく間に広がり、世界中の小学校の教室で導入された。他者を理解し支援する効果的な方法を切実に求める人は大勢いた。教師もマネジャーも、親もコーチも、目先のタスクや課題にとらわれるあまり、こんなにも当たり前でありながら多くを明らかにする質問をー支援したいと願う相手について重要な物事を語ってくれる質問をー投げかけるのを忘れていた。
  • 問題を正そうとするのは間違った方法。支援を求めている人に手を貸そうとするとき、私たちの大半は自然と問題中心のアプローチを取り、人々の現状と、あるべき姿、なれるはずの姿との間のギャップに注目し、人々を修正しようとする。これでは持続的な学び、変化、適応をうまく促すことはできない。ときにはその場しのぎの矯正につながってしまう。
  • 欠点を修正したり、ギャップを埋めたりすることだけが目的であるとき、人は持続的な変化に必要な努力をあまりしない。反対に、長期的な夢やビジョンがあるとき、人はそのビジョンからエネルギーを引き出し、困難があっても変化のための努力を続けることができる。そういう状況を作り出せる支援を、私たちは「思いやりのコーチン」と呼ぶ。
  • コーチをはじめ、他者を支援しようとする人なら誰でも、まず自分がインスピレーションを受けていなければならない。自分自身のモチベーションや感情を自覚していなければ、有益なやり方で他者と本物のつながりを築くことはできない。つまり、コーチは、自身の感情を理解し、自身のパーソナルビジョンへの展望を持っておく必要がある

(2)インスピレーションを与える対話-一番大事なことを発見する

  • 他者が成長、変化するのをどう促し、どう支援するかを探っていく。私たちはこれを「思いやりのコーチング」と呼ぶ。では、思いやりのコーチングの目指すところは? コーチする人とされる人の間に「共鳴する関係」を築くこと。これは持続する変化を生み出すために欠かせない。
  • マインドフルであるコーチは、いつでも相手のためにそこにいて、意識を完全に相手に向ける。相手の言っていることに波長を合わせると同時に、相手の感じていることも察知する。そういうコーチは己を知っていて、常に自分個人の考えや感情を認識しており、それを相手に投影しないように注意している。
  • 優れたコーチは、内省を促し、相手にとって一番重要で意義のある物事を明らかにするような問いを投げかける。それから優れたコーチは他者に気遣いを示す。これはただの共感や、相手の感情の理解だけにとどまらない。心からの思いやりを示し、進んでその心遣いに見合った行動を取り、夢に到達しようとする相手に必要な助言やサポートを差し出す。

(3)思いやりのコーチングー持続する望ましい変化を呼び起こす

  • 人はたいてい、変化を望んだときに望んだ方法で行動を変える。何を変えるか、いかに変えるかについて自分の内側に強い願望がなければ、目に見える変化は長く続かないもの。
  • 持続する望ましい行動変容を起こすには、5つの「発見」が必要。
  1. 支援しようとする相手の「理想の自分」を探索し見極めること。「どういう人間になりたいのか?」「人生をどのように生きたいのか?」といった問いに答えを出す。キャリアプランニングだけの話だけではないことに留意してほしい。もっと全体的なもの。
  2. 相手の正確な「現実の自分」を明らかにすること。その人の強みや弱みを評価するだけではない。パーソナルビジョンに表現されている「なりたい自分」と比較しながら、現在の全体的な姿を見極める手助けをする。役割として重要なのは、理想の自分と現実の自分がすでに一致している領域を特定するための手助けをすること。
  3. 「学習アジェンダ」を作成すること。重要なのは、理想の自分に近づくのを手伝うなかで、対象者が何をするときに一番高揚するかを考えること。欠点を並べることに焦点を合わせたパフォーマンス改善プランは気の重い仕事のように感じられ、変化のプロセスの妨害になりかねない。
  4. たとえ意図した結果につながらなくても、コーチは新しい行動の実験を続けるように奨励する。実験はときに失敗することもあるが、それはかまわない。実験とはもともとそういうもの。
  5. 信頼できて支えとなってくれる人々のネットワークから引き続き助力を得ること。変化への努力は「共鳴する関係」-ポジティブな感情を基調とした、人と人との本物のつながりーがあってこそ成功する。こうしたネットワークのことを私たちは「個人のための取締役会」と呼ぶ。
  • 誘導型のコーチングの場合、たとえそれが善意に基づいたものであっても、コーチは対象者から防衛的な反応を引き出すことが多い。これはストレス反応に近いもので、ネガティブな感情や交感神経系の活性化を伴い、学習や変化を遮断するいくつものホルモンの作用の引き金となる。
  • 優れたコーチになるには、また、誰かを支援する役割をうまく果たすには、人が変化を起こそうと努力する際に感情が果たす決定的な役割を避けて通ることはできない。コーチングのプロセスにおける感情の流れを認識し、うまく扱うには、対象者に充分な注意を払い、相手が経験している感情を読み、同時にその感情を与えられるくらい同調する必要がある。

(4)変化への渇望を呼び起こすー喜び、感謝、好奇心に火をつける問いかけ

  • 誰かを支援するには、物事はこうあるべきという自分のビジョンではなく、支援したい相手に焦点を合わせ、相手を理解しなければならない。相手を理解するには、たっぷり話をして、相手のものの見方、状況、感情を探らなければならない。実際、うまくコーチしたり支援したりするには、相手が何を感じているかだけでなく、何を考えているのか探り当てる必要がある。残念なことに、対象者が何を考えているかはしばしば思い込みによって誤解される。とりわけ支援する立場にあるプロの人々によって。
  • 誰かを支援することの目的の1つは、能動的な問題解決ができる状態を取り戻せるように手を貸すこと。もし私たちが控えめな問いかけー想定された答えのない質問-をするなら、私たちはもっと相手から学び、相手が自己分析をしたり、学習プロセスを身につけたりするのを助けることができるだろう。
  • PEAがあると自分が他者や新しいアイデアに対してオープンであるように感じられる。そしてPEAは転機を生む。変化のプロセスにおいて新しい段階を呼び起こし、自覚を強化するための新たな一歩を助ける。転機とは、言い換えれば相転移。氷が固体から液体に変わり、水になって流れるようなもの。

(5)パーソナルビジョンの力-単なるゴールにとどまらない夢

  • ビジョンとは、起こりうる未来のイメージ。ゴールでも戦略でもない。行動や義務によって成り立つわけでもない。要するに、パーソナルビジョンとは理想の自分や理想の将来を表現したもの。たとえば夢、価値観、情熱、パーパス、転職、アイデンティティの核といったもの。やりたいことだけでなく、なりたい自分をも表明すること。
  • たいていの組織は今後2~3年のキャリア上のゴールに意識を集中するが、私たちが推奨するのは10~15年のスパンで考えること。なぜか? 時間軸を長く取ることによって、目先の物事や世間の期待に反応していいればいいだけの安全地帯から押し出されるから。
  • 現実世界では、自分が向かいたい先を知っていることは大いに重要。キャリア、人間関係、人生において、行きたい場所をはっきり思い描けば、それがコンパスの役割を果たし、進む方向を指し示してくれる。1つだけでなくさまざまなルートを考慮に入れたうえで、目的地に到達するのに最適な道を選べるようになる。だからこそ、理想の自分を探り、なんらかの形で表明してもらうことからコーチングを始めるのが重要
  • パーソナルビジョン(実質的には、理想の自己像、あるいは未来像と同義)を発見することによって、希望、興奮と言ったポジティブな感情が解き放たれ、成長と変化へのモチベーションや欲求が増進される。
  • 私たちはコーチとしての仕事のなかで、相手が希望や夢を全体的に眺めるのをー人生のすべての側面を考慮し統合するのをー手伝うことによって、情熱、パーパス、価値観、アイデンティティなどを含む本当の自分増を育むのを助ける。パーソナルビジョンの発見を支援するプロセスは、将来の生活や仕事についてよく考えるように促すことから始まる

(6)共鳴する関係を育むーただ聞くより、深く耳を傾ける

  • 誰かを支援したいと思うとき、支援者としての主要な役割は、相手が自分で学び自力で成長できるように手を貸すこと。成長のための効果的な対話は、個々の人間関係の質、大事な局面をともに過ごし深く話を聞くコーチとしての能力、対象者が意義ある議論を通して学び、成長し、変化するための励ましによって形作られる。
  • 私たちはみな、自分の感情やその背景にある理由に対して敏感になる必要がある。職場や家庭からのプレッシャーも自己認識や成長の妨げになることがある。成長への努力を維持できるのは、たいてい、1人か2人、もしくは1つのネットワークからサポートが受けられるとき。
  • もし自分の能力を俯瞰することができず、強みと苦労を等しく考慮することができなかったら、対象者はひどく弁解がましくなるか、気を挫かれてしまっただろう。それでは人の話を聞く力を改善するという、望ましい変化に向けての取り組みをする気にはなれなかっただろう。
  • 本物のパートナーシップの土台は、理性や感情のレベルの一致する二者の関わりから生じる。共有ビジョンが希望やパーパスを浸透させるのに対し、思いやりは気遣いを浸透させる。互いへの気遣い、信頼が生まれ、自分は高く評価されている、大事に思われているという感覚を双方にもたらす。
  • 対話の内容は相手から引き出すべきと考えること。コーチはプロセス全体の管理者ではあるが、そもそもそのプロセスが存在するのは相手を助けるためであって、コーチがアドバイスや経験を披露するためではない。
  • プロセスの管理者として重要なのは、最終的なゴールを心得ておくことと、そのゴールに向かって忠実に進みながらも、ともに過ごす時間をどう使うかについての意見や選択は相手に任せること。
  • 「ほかには?」というのは私たちが好んで使う質問。相手の深層心理に興味があることを示す質問なので、質問そのものに言葉を引き出す効果がある。また、言いづらい内容がなんであれ、こちらにはそれを聞く準備があると伝える質問でもある。こうした質問が本人さえ驚くような新事実を引き出すことも多い。
  • 聞くというのは気遣いを示しながら話に耳を傾けること。アクティブ・リスニング(積極的傾聴)とは、すべての注意を相手に向け、意識を総動員して耳を傾けること。目指すところは、相手の考えやメッセージを完全に理解し、たとえ賛同できなくても相手の見解を尊重すること。まずは相手の考えや感情を理解し、相手が言わんとしていることを受け入れて敬意を払うのが先。
  • コーチや支援者が対象者に波長を合わせようとするときに頼れる自分の中のリソースはエンパシー(共感力)。エンパシーとは、私たちが「他者の靴を履いてみる」ための能力、相手が見ているもの、考えていること、感じていることを、自分のことのように想像するための能力。
  • WAIT。これは「なぜ私が話しているのか?(Why am I talking?)」の頭文字を取ったもの。もし自分がしゃべりすぎていると感じたら、それはコーチングではない。自分語りをしているか、教えているか、管理しているか、命令しているかのいずれか。

(7)思いやりの呼びかけー夢への招待状

  • これまで、あなたがいまの自分になるために、あるいは人生において今いる場所に到達するために、一番助けになってくれた人のことを思い出してほしいと書いた。そこで次の質問-あなたは誰のリストに載るだろうか? 誰かの人生を変えるというのは、私たちの人生における最大の遺産
  • コーチングに適した瞬間を活かすには、コーチや支援者がそれに気づけるように、いつでもコーチングのマインドセットの準備をしておく必要がある。内省や学びに対して準備のできた好機であることをコーチのほうが正しくキャッチする必要がある。

3.教訓

本書を読むと、コーチングはスキルを習得すればできるものではない、ということがよく理解できます。他者支援のマインドセット、自分が心から他者を支援したいと思っていることが何よりの前提条件です。

中でも特に印象的だったのは、冒頭に出てくるカイル先生のエピソードで、児童に「私が先生に知ってもらいたいのは…」に続く文章を書いてもらうところです。そうすると、「親が家にいない」「シェルターに住んでいる」など、普段はあまり話さない内容が吐露され、支援に必要な情報を入手できたというものです。私もこの問いかけをして、相談相手が何を求めているのか把握することを意識していきたいと考えています。

また、誘導型のアプローチをしても、本人が真に望んでいない場合は効果が長続きしません。まずは中長期スパンでなりたい自分をイメージし表明してもらうことからスタートするのが重要で、それに向かって自力で成長することをサポートします。その際、単に職業的キャリアだけではなく、どういう人生、どういう人間を理想としているのか、広い意味での価値観、いわゆる「ありたい姿」について問いかける必要があります。

「あなたの助けになった人は誰ですか?」と言われて、真っ先ではなくても、何番目かにでも自分の名前が挙げてくれる人がいる、そんな人生を送っていければいいなと思います。