1.はじめに
シャインといえば、キャリアコンサルタント資格の学習でも必ず名前が挙がる、「組織開発」「キャリア開発」「組織文化」の第一人者です。
私自身、これまでも何冊か著作を読み、その都度ブログに感想を綴ってきました。
本書も以前から手に取りたいと思っていたのですが、ハードカバーの重厚さもあって、長らく積読のままになっていました。そんな中、GWに一人で実家へ帰省する機会があり、移動時間も含めてまとまった読書時間が確保できると考え、今年のGWの“個人的な課題図書”として選びました。
積読本を読み始めるとよく感じるのは、「もっと早く読んでおけばよかった」という思いです。本書もまさにその一冊で、含蓄に富んだ内容が随所に散りばめられていました。特に心に残った部分について、以下で引用しながら紹介していきます。
2.内容
(1)企業文化はなぜ重要なのか
- 文化は重要である。なぜならば知らないうちに意思決定に文化的な力が作用して、予期せぬあるいは好ましくない結果がもたらされることがあるから。文化を真剣に考慮するということは、その結果を予想し、それが好ましいかをどうかを考慮して、選択をするということ。
- 社歴を経るにつれて、もし会社が自身の文化的要素を発展、適応、変更していかないならば、会社は徐々に時代遅れとなる。そして、文化が学習し変更していくための重大な阻害要因となってくる。組織は、成功をもたらしてくれたものには何にでもしがみついてしまう。環境が変化し新たな対応が求められていることに、成功をもたらした文化そのものが原因となって、組織のメンバーが気づくのが困難になる。つまり、文化が戦略の阻害要因になる。
(2)企業文化とはいったい何か
- 文化の本質はこのような集団として獲得された価値観、信念、仮定であり、組織が繁栄を続けるにつれてそれらが共有され当然視されるようになったもの。集団として獲得する過程から生じたという点が大切。
- 文化は深い。文化を表面的な現象として扱い、思いのままに操作し、変革できると思っているとすれば、間違いなく失敗するであろう。
- 文化は広い。グループはその環境での生き残りの方法を学ぶにつれ、グループの内外をとりまくあらゆる関係について学習していくことになる。
- 文化は不変。グループのメンバーは自分たちの文化面の過程にしがみつきたがる。文化が変わる恐れがあればどのような場合でも、変わることへの大変な不安と抵抗が生じる。
(3)企業文化は何を基に築かれるか
- システムがうまく機能し続けるにつれて、物事のやり方として当然視されるようになる。そのため、ある会社から別の会社に転職してきた従業員は、新しい環境で仕事をするのが困難であると感じる。このため、いったん組織が強力な文化を持つに至れば、従業員はその組織の中で昇進するのを好む。外部の人間に「ここでのやり方」を教えていくのも困難を極めることとなる。
- 「望ましい文化」としばしば呼ばれているものは、現状の文化では本当は保持できない表向きには標榜されているだけのタテマエの価値観。その文化は、階層、厳格な統制、管理職の特権を肯定し、従業員とのコミュニケーションには制限があるとする深層の過程に基づいて築かれてきた。
(4)変容
- 人々は変革に抵抗する。というのも、これを学習棄却するということは、不愉快で、不安が生じることだからだ。人々に表面上の行いを変えるように強制することはできるが、そのように行動を変えさせても、もっと深いレベルで何らかの変容が起こらない限り安定したものとなり得ない。
- 人間のシステムでは、安定した均衡状態を維持しようとする傾向がある。もし、変化が生じねばならないとすれば、何らかの新しい力で、均衡状態を揺るがす必要がある。これらの力を認識し、管理していくことで、変化への動機づけを行うことができる。それなので、どのような変化でも何らかの現状否認から始まる。
- 新しい概念を学んだ結果として新しい行動がとれるようになっても、その行動が自分の仕事や社会的集団に調和しない場合には、グループを重視してもとの概念と行動に逆戻りすることになる。さもなければ、新しい概念と行動により価値を置くのであれば、そのグループを去ることになるだろう。
(5)成熟企業における企業文化の動態
- 初期の段階では、リーダーシップによって文化が作られてきたが、今や文化がリーダーを創り出す。その鋳型に適合できる管理職しかトップまで登りつめることができないという意味ではそうなっていく。実際、この段階では文化の最も危険な側面として、組織で行われていることの大半を無意識のうちに決めてしまうということがある。組織の使命や戦略さえもである。
- 事業慣行を変えること、経費削減を図ること、規模の適正化などによって、必ずしも文化が変革されるわけではない。既存の文化に影響を与える変革を行わねばならない場合のみ、文化を変えることが課題となってくる。
- 既存のはえぬき幹部集団はしばしば自分たちを成功させてきた古い文化にしがみつくため、事業場の問題解決以前にこの古い文化を置き換えておく必要がある。したがって、多大な人的犠牲を伴わないで主要な文化の改革ができるというような幻想を抱いてはいけない。古い文化面の仮定を破壊するのは、組織はその文化の体現者を変革するか、排除する必要がある。
(6)文化が出会う時
- ジョイント・ベンチャーでは、2つの異文化を統合して新たな文化を創造することになる。いずれにしても、融合や同化の問題は、新たな組織、あるいは全体としての組織に共有された歴史が無いという事実から生じてくる。そのため、おそらくは一方、あるいは他方が劣等感や脅威を感じたり、怒りを抱いたり、防御的になったりする。
- 突然、自分のやり方が全く理にかなっているように思え、どうして「相手」が異なったやり方でやりたがるのか一体全体理解できない。この時点で、相手を説得しようとする心理状態に陥る。相手が自分に同意しなければ、相手のことを道理にかなわない人たちだという固定観念を押し付けることになる。
- 異文化間の理解の鍵は対話。きちんと対話が成り立つような話し合いを開始する鍵は、議論で参加者を打ち負かそうとする欲求、参加者が話すこと全てに聞き返して明瞭さを求める欲求、意見の違いが生じたときは常に互いに挑戦し合うという欲求を保留できるだけの安心感を参加者が持てるような場を創造すること。
(7)文化を真剣に考えるリーダーにとっての文化的現実
- 組織の文化が強力で、深部まで達しているかどうかは、以下に依存する。
- 組織の創設者の強力さおよび明瞭さ
- その組織のメンバーが一緒に行った共有の経験の量と強烈さ
- 組織がどの程度成功してきたかの度合い
- 文化は、それゆえ、社会的学習の産物である。共有され、しかもうまくいった思考および行動が文化の要素となる。そのため、新しい文化を「創る」ことはできない。
- 文化を変革するという考えからは決して出発しないこと。常に、組織が直面している課題から始めること。事実上の課題が明確である時のみ、文化がその問題を解決する助けとなるか妨げとなるかを自問自答すべき。組織の運営に変革が必要な場合、弱さであるかもしれない要素を変えようとするよりもむしろ、既存の文化的強さを土台に築いていこうとする方が良い。
- 明らかに機能不全に陥っている文化の要素を抱えている中年期の組織の場合、文化をアセスメントし機能不全の要素を特定し、そのような要素を体現している人を見つけ、彼らを排除する。これもまた、痛みの伴うプロセス。
- 文化について学ぶには、努力が必要。視野の幅を広げなければならない。自分自身の思考プロセスも検討する必要がある。別の考え方、別のやり方もあることを受け入れねばならない。
3.教訓
本書は、以下の文章から始まります。ここを読んだ時点で、これからどんなことが書かれているのか、どんなことが学べるのか、期待感でいっぱいになりました。
文化は重要である。なぜならば知らないうちに意思決定に文化的な力が作用して、予期せぬあるいは好ましくない結果がもたらされることがあるから
本書では、転職やジョイントベンチャーなど、異なる企業文化が交わる場面が多く取り上げられています。しかし、同じ会社の中であっても、事業部をまたぐ異動や、営業店と本部の行き来など、文化の違いに直面する場面は少なくありません
うまくいっている組織では、多少の課題があっても、そのやり方が「正」として受け入れられ、いつの間にか有形無形のローカルルールとして定着していきます。しかし、その“当たり前”は外から来た人にとっては強烈な違和感となり、戸惑いを生むことがあります。
私自身、未経験の事業領域へ異動した際には、まさにカルチャーショックを味わいました。あのときの感覚は今でも完全には消えていません。
本書の終盤には、次のようなメッセージが記されています。
文化について学ぶには、努力が必要。視野の幅を広げなければならない。自分自身の思考プロセスも検討する必要がある。別の考え方、別のやり方もあることを受け入れねばならない
まさにその通りだと感じる一方で、頭では理解していても、実際に変化へ適応することの難しさも痛感します。
私は今、組織変革の中心にいるわけではありませんが、本書の視点は非常に示唆に富んでおり、自分自身や自組織を客観的に見つめ直す貴重な機会となりました。積読のままにしておかず、読んで本当によかったと思える一冊でした。
