管理職おすすめの仕事に役立つ本100冊×2

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新版 コーチングの基本 コーチ・エィ 鈴木義幸 監修

1.はじめに

キャリアコンサルタントの勉強を始めると、だいたいの人が、そもそもコンサルタントって何?、カウンセリングと何が違うの?、コーチングっていうのもあるよね?、という謎にぶつかります。

ものの本やネットでは、以下の4象限で説明をされることが多いようです。

要は、上半分は、「答えは相手が持っている」と信じて、自身で気づけるような問いかけを行う、というやり方です。その意味で、キャリアコンサルタントの実務は、カウンセリングに近いと思いますし、実際の養成講座ではカウンセリングの基礎に大きく時間が割かれます。

コーチングは、資格名に登場するコンサルティングの対極にありますが、実際の場面を考えれば、カウンセリングと親和性のあるアプローチ方法だと思います。

以下では、印象に残った要点を記していきます。

2.内容

(1)コーチングとは何か

  • コーチングとは、対話を重ねることを通して、クライアントが目標達成に必要なスキルや知識、考え方を備え、行動することを支援するプロセス
  • 特徴的なことは、「目標を設定し、その達成のプロセスを設計し、必要な行動をプログラム化する過程で主導権を握るのは、クライアント(以下CL)自身。
  • コーチは、課題解決に向けた適切な回答を与える専門家ではないが、CL自身が自ら考え課題を解決していくため、適切な質問を与える専門家
  • コーチングは、「知識」と「行動」の間の溝を埋める。私たちは多かれ少なかれ、「わかっているけど、行動できない」経験をしている。コーチングは、こうした「知識と行動の間に横たわる溝」に橋をかける試み。
  • コーチングは、強制ではなく放置でもない「第三の選択肢」を探す。「やりなさい」と強制的な指示をしてうまくいくこともある。一方、やらないのは本人の問題なので、放置するのも1つの選択肢。そのいずれでもない。
  • コーチとCLのリレーションは、上下関係ではなく、横に並んだ関係。ちょうど2人で並んだ椅子に座って、目の前に立てかけられたホワイトキャンバスを見ながら対話をしていくイメージ
  • 「CLは目標は達成しませんでした。しかし、CLはコーチングの中で対話や関わりには満足しましたのでコーチングはうまく進みました」ということは、コーチングの成果としては認めにくい。コーチングはとても成果志向の強いもので、コーチは相手が目標達成するために存在する、といえる。
  • コーチングの対話は、CLの内側に眠っている潜在的な目的意識を顕在化させていくプロセスでもある。目標が明確化する中で、現在の立ち位置との差が明確になり、その差の中に「乗り越えるべき成長テーマ」が見つかる。

(2)コーチの持つべき視点

  • コーチは、PBPの要素のうち、いま相手は何を必要としているのかを考える。単にスキルが不足しているのか(Possession)、十分考えていて行動を起こせていないだけなのか(Behavior)、実施すること自体に迷いがあったり、意味づけが曖昧だったりしていないか(Presence)、コーチは対話を進めていく。
  • 注意すべきは、どのような変化が必要かをコーチが決めるわけではないということ。コーチは質問することで論点を投げかけるが、最終的に行動を選択し決めるのはCL
①Possession(CLが「身につけるべきもの」)
  • 1つの問題に対しても、いくつかの選択肢がある。コーチは対話の場で幅広く選択肢が出るようにし、現状で一番有効な選択ができるように対話を進める。そして、それを身につけるためにどうしていくかをCLと考える。
  • 以下のような対話を通してCLに必要なスキルや知識(Possession)を明確にし、それを獲得するためのアクションプランをつくる。
  1. 理想の状態に近づくために自分に必要なものは何ですか?
  2. 目標達成にはどんな分野の情報が必要ですか?
  3. 自分がいま持っている知識やスキルで使えそうなものは何ですか?
②Behavior(行動を起こすこと)
  • 「現状維持のバイアス」を乗り越え、「新しい行動」という変化をCLが起こせるように支援するために、コーチングではCLに行動を「宣言」してもらうことがある。
  • コーチは宣言してもらう際に、具体的な行動計画となるようにCLと話をし、次回までに何をするか明確にする。これにより、何をすればいいのかが理解でき、行動を起こしやすくなる。
  • 以下のような対話を通してCLの行動(Behavior)に働きかけ、目標達成のためのアクションを促進する。
  1. やろうと思っていて実行できていないことは何ですか?
  2. 目標を達成するために今日からできることは何ですか?
  3. 次回のセッションまでにどんなことをやりますか?
③Presence(人としてのあり方)
  • 経験はいつの間にか積み重なり、人が判断するときの軸となっていく。人は、毎回毎回「どうやったらうまくいくだろうか」と改めて考えるようなことはしない。物事をうまく進めるために無意識レベルで即座に判断できる軸として、人はPresenceを身につけている。
  • トランジションを乗り越えるのを支援するのもコーチの大きな役割。環境の変化に対応せずに、同じPresenceを持ち続けていると、いつの間にかそのPresenceが現状とマッチせず、成長の妨げになってしまうことがある
  • なかなか自分のPresenceを自覚することは難しいもの。なぜなら、本人にとってそれは当然の前提となっているから。そこで、コーチはCLのPresenceに関して、日ごろから質問やフィードバックをして自己認識を促す。
  1. 価値観や座右の銘は何でしょうか?
  2. その価値を大事にしている理由は何でしょうか?
  3. いつからその価値を大事にしているのでしょうか?
  4. その考えが大事だと身につけた時と比べて、いま違うことは何でしょうか?
  5. その価値が仕事で現れているのはどんなときでしょうか?

(3)コーチングの3原則とは

①双方向
  • コーチは、CLが「当然」そうだと思っていることについて深掘りしていく。CLの無意識での思考パターンや物事の捉え方を顕在化させることによって、目標やCL自身の成長にそれが有効なのかどうかを検証していく。
  • コーチは、CLの無意識の思考や行動の原因をアウトプットさせて自覚させることで、CLが自ら、目標や成長に向けて最も有効な方法の選択、実践、軌道修正ができるように支援する。
  • 人は、会話の中で、自分の内側の情報をアウトプットすることで、はじめてその情報を正確に認識することができる。会話を交わすことで言語化し、アウトプットすることで自分のアイデアを認識する。つまりオートクラインを起こす。
  • 大切なのは、CLが普段から自分に問いかけている質問と同じ質問をコーチがしても、オートクラインはなかなか起こらないということ。CLにとってオートクラインを起こすための効果的な質問を投げかけるように、常にCLに興味を持ち続けることが、コーチにとって重要な姿勢といえる。
②継続性
  • 人は、なかなか自分で自分の変化、成長を確認できないもの。他者から言われてはじめて自らの変化に気が付く。「前回と比べてこの点が改善されましたね」と具体的に伝えることにより、CLは自己成長を再認識し、自己効力感を高める。
  • 軌道修正の有効な手段の1つとしてコーチは、目標に向かって、いまCLがどのような状態にあるのかを気づかせるために、フィードバックする。伝える内容がCLにとってネガティブなものであったとしても、あくまでも事実をそのまま伝える。そうすることで、CLは自分の現状を客観的に捉えることが可能となる。
  • CLと関わる際に、「CLは必ず目標達成できる、必ず成長する」と信じ、決して諦めないで関わり続けるということが、コーチとして大切なスタンス。
③個別対応
  • 「CLの、他の人にはない唯一無二の特徴とは何なのか」を探そうとする興味関心なくしては、CLの特徴を知ることはできないし、本当の個別対応はできない。
  • コーチは、CLに対して「こういう特徴を持った人だ」と認識したものを、本当にそうだろうかと疑い続ける。つまり、自分が一度貼ったレッテルを、常に貼り替え続ける。「本当にこの人はこう思っているのだろうか」と、CLのさらに奥にあるものを探り続ける姿勢こそが、CLへの理解を深めることに他ならない。

(4)コーチング・プロセス

(本書P.106をもとに作成)

①「目標の明確化」のポイント
  • 目標がなければコーチングをスタートできないために、コーチの最初の仕事はCLと目指す目標を設定することになる。それらを最初から明瞭に語る方はごく少数。実は目標の設定は、重要であると同時に非常に困難なプロセス。
  • CLは最初から自分が本当に求めているもの、達成したいと思っていることに気づいているわけではない。コーチはCL自身すらわかっていない、本当の「Want toの目標」を探し出す達人でなければならない
  • 多くのCLが、周囲から「こうしたほうがよい」といわれていることや、何となく「できたらいいな」レベルの目標を「やりたい」と発言してしまう。多くの人は、普段から「自分は何者で、何を欲し、何を実現したいと思って生きているのか?を考えているわけではないため、突然「何を手に入れたいか?」と質問を投げかけられてると、多くの場合、次の2つに分類されるような目標を話す。
  1. 憧れの目標(Hope toの目標)
  2. しなければならない目標(Have toの目標)
  • 一方でコーチがCLに語ってほしい本当の目標は、「真に達成したい目標(Want toの目標)」の1つのみ
  • 質問によって具体化を繰り返し、相手の脳に負荷をかけることが、「やりたい」という思いがエネルギー不足で失速してしまうのか、逆に考えれば考えるほど「やりたい」という思いが強くなりエネルギーが充填されていくのかを見極める1つの手段になる。
  1. なぜその目標を達成したいと思っているのですか?
  2. その目標を達成することはあなたの人生にとってどれくらい重要なことですか?
  3. その目標について普段どれくらいの時間を割いて考えていますか?
  4. その目標を達成するためにどんな行動を取ってきましたか?
  5. その目標が達成できなかったとしたらどうしますか?
  • 要するに、組織から与えられたor上司から与えられた目標だから即座に「しなければならない目標」となるかというとそうではなく、心の内でその目標に向かうことでプラスを手に入れようとしているか、マイナスを避けようとしているのかによって、Want toの目標かHave toの目標なのかが決まる
  • 組織目標に同意できていないCLを前にしたときにコーチが取るアプローチの1つは、組織目標についての対話はいったん脇に置いて「ではあなたの目標はいったい何か? 目的は何か?」を引き出すこと。目的と目標の違いは、目標は達成しては次の目標を目指す通過点であるのに対し、目的は常に目指し続けるものであり、達成して通過するものではないということ。
  • CLが真に達成したいと思っている目標を設定できたとき、CLのエネルギーが高まり自発性が発揮され、コーチングの成果が約束された経験を何度もしてきた。目標設定が成功すれば、そのコーチングは半分以上成功したといえる
  • 現在は、過去の選択の積み重ねの末にたどり着いた地点。相手が現在にたどり着くまでに行ってきた数々の選択の中には、その人が潜在的に抱いている願望や希望、価値観が必ず表れている。過去の選択を丹念に聞き出していく過程で、話す本人が自分の内側にある欲求に気づくことはよくあること。
②「現状の明確化」のポイント
  • 自己を客観視させる方法として最も直接的で効果が高いのは、自分自身を撮影・録音した情報をそのまま見聞きしてもらうこと。百聞は一見に如かずとはよくいったもので、この手法は非常にインパクトが強く、たいていのCLは大いにショックを受ける。
  • 他者からのフィードバックを受けたCLが、リアルセルフ(現実の自分)とコンフロントすることから逃げないようサポートすること。
③「ギャップの原因分析」のポイント
  • CLが他責の状態で発言を繰り返している限り、コーチはコーチング・プロセスを「⑤行動計画の作成」まで進めてはいけない。行動を起こさなくてはいけないのはCL以外の誰かであるため、非の無いCLは行動を起こしたり変えたりする必要が全くないから。他責の状態のCLからはいつまでたっても行動計画を引き出すことはできない
  • CLが目の前の課題を自責で捉えることができれば、課題を乗り越えるための行動計画はすべて自分で作り出していくことが可能になる。描いた行動計画を実行に移せば、自分自身の力で目標と現状の間にあるギャップを埋めることができ、その分だけ成果が手に入ってくるようになる。

(5)コーチングのスキルと実践例

  • CLの過去の人生において大事にしてきた価値観が明らかになり、その価値観に裏打ちされた「ストーリー」がCL自身によって描かれ、その中で未来の目的と目標が描けているとき、CLの目標に向かうモチベーションやコミットメントは高まる。
  • コーチングは現状認識をさせるのが目的ではなく、あくまでも目標達成させるのが目的。そのために、まずはCL自身が自分の強みに目を向け、目標達成に向けてのエネルギーを多感ることが重要。
  • ある方向に変わりたいというCLに対して、コーチはその方向性と逆でよいのではないか?という趣旨の質問をすることがある。「やっぱり考えた結果、こういう理由で変わりたい」という自発的な決意を導き出そうとしている
  • コーチはCLが目標達成に向けて取った望ましい行動については、どのような小さなものであっても惜しみなく承認する。承認されることで、次にもまた挑戦してみようという動機づけになる。
  • コーチはCLの行動を承認するだけではなく、成功の秘訣を言語化してもらうことが大切。実際に行動してうまくいったときの意識や思考、行動の一連の流れを、今後いつでも再現できるようにするためには、「鉄が熱いうちに」それらをつぶさに言語化しておくことが必要になる。
  • CLの発言をすぐに深掘りするのではなく、「他には何かありますか?」のように質問をスライドアウトする。質問に即答できる話は、CLが日ごろからそのことを考えている可能性があり、それまでの思考の繰り返しで終わってしまうことがある。
  • ゴールの設定ができれば、次にエバリュエーションプランを作成する。つまり、ゴールへ到達するための手順や、必要な知識とツール、途中の小さい目標や、そのための行動などの項目を決める。これをあいまいにすると、コーチングの進捗を確認することも、軌道修正をすることもできず、コーチングセッションが行く先のわからない会話の積み重ねになりかねない。
  • ゴール後の成果をイメージする質問を繰り出して、やる気を高める。ゴールの設定やエバリュエーションプランの作成ができたら、ゴールを達成したその「先」に見える光景をイメージさせる。そのイメージこそが、CLがコーチングで手にしたい成果
  • コーチングの進捗がないときは、アンケートで客観的な情報を集める。CLを苦しめるのは事実だけではなく、CLの主観的な思い込みや不安そのものが、苦しみの原因だったりもする。
  • セッションの最後で力強い質問を投げて、試行や行動を継続させる。セッションの中で行われていることだけがコーチングではなく、セッションとセッションの間の思考や行動も含めて、コーチングは「継続」している
  • コーチングのエバリュエーションはCLがする。コーチング期間中に何を得て、何を得ていないのかを、自分の言葉で明確にすることで、コーチから総括を受けるよりも、自責で自分の言動を捉えることができる。そして、自分を客観的に総括することにより、今後の問題点が明らかになり、以降の行動強化につながる

3.教訓

本書とは別に学習した動画では、「コーチは箱根駅伝の監督のイメージ。コーチは自分では走らない。本番に向けて選手の練習を支援し、本番では監督車から声援を送り伴走する。」といった趣旨の説明もされていました。これは非常にわかりやすいコーチングのイメージだと思います。

「自分でやったほうが早い病」にとりつかれているときは、コーチングはできません。本書でも、営業上がりの管理職や社長が、現場の指導もそこそこに、自ら営業に出かけてしまう、目標から逸れた事例がたびたび取り上げられていました。

一方で、コーチングが「あくまで目標を達成させるのが目的」という部分には、読み始めた当初は意外感がありました。CLに寄り添って、たとえ結果が出なかったとしても、CL本人の自己変革・成長支援ができれば成功だと考えていました。しかし、考えてみたら、色々と調査をして課題を見つけて改善策を提示し、それを採用するか成功するかしないかはCL次第、という考え方はまさしくコンサルティングの領域で、それこそコーチングの真逆だと理解しました。

確かに、プロスポーツの世界では、監督解任が頻発しています。いくらいい試合をし続けていても、勝利して結果を出さないことには評価されない、シビアな世界です。

相手を信じて目標達成の支援を行う姿勢は、キャリアコンサルタント業務や上司部下の関係性だけでなく、日常の仕事や家庭内での会話にも取り入れて、相手との関係性を広げていきたいと思います。