1.はじめに
まず、本書は市販されていません。
試験実施団体である「キャリアコンサルティング協議会」のホームページからしか購入できない、実際の過去の実技面接試験についての公式解説本です。
キャリアコンサルタント養成講座に通っていた時の講師も、勉強会に参加いただいた先輩ホルダーも、そして本書にも、「面接における共通の正解というものはどこにもない」という話になり、実体験でもそう感じています。
ただし、試験実施団体の解説本ということで、有資格者に求める水準感がわかるのではと考え購入しました。面接時の逐語録が9例収められており、本当に勉強になる1冊でした。以下では、特に重要だと感じた部分を、主として自分のために書き残します。
ちなみに、いくつか市販されている本もあります。
2.内容
(1)カウンセリングスキル向上のための自己研鑽
①カウンセリングスキルが向上するということ
- 本音で相手を尊重し、敬意を払うならば、それは自然と服装、言葉遣い、表情に出るし、自分にできることはクライエント(以下CL)に肯定的な関心を持ち続け、理解することであるという覚悟ができるはず。
- 過去に触れた似たようなケースに当てはめたり、自分の経験に照らしたりして、こうなんだと決めつけたり、分かったつもりになっていたりすると、CLには分かろうとしているとは伝わらない。
- 理解したいという気持ちをもってやり取りを続けていく中で、徐々に近づいていくことが可能。分かったことを言葉や表情などで伝えることで、CL自身も自分の伝えたいことがはっきりしてくることもよく見られる。
- 伝えたいことがはっきりしているときには、「その通りに率直伝えればいい」、「伝えたいと思うことが一番伝わりやすい、自分らしい言い方を工夫してみて」と答えている。自分で工夫して、伝わったかどうかを気にかける姿勢が、CLに対する誠意。
- CLは混乱しているので、理路整然と話すことはできない。話を聴きながら、CLとキャリアコンサルタント(以下CCt)の間の状況が1つの景色として立ち上がってきたときに、困っていることを共有することができる。その時にCLも、自分が何に困っているのかが明確に理解できるようになる。
- スーパーマンなんてどこにもいないし、多くの人は自己理解、仕事理解、コミュニケーション、中長期展望について不完全だが、それでも困っていない。今の悩みをどう捉えたら解決に向かっていくのか、という視点を持つことが必要。
- 「こうなりたいが自分にはできない」という発言があった時、直ちに「自己理解不足」「思い込み」と断じるのではなく、どうしてそう思うのだろう、どういった事情があるのだろうという視点で話を聴いていくうちに、なぜ困っているのかが明らかになってくる。
②自己研鑽の方法
- 今自分はどのように振舞っているのか、何を話したのか、どんな気持ちでいるのか、相手はどんな気持ちでいるのだろうといったことを感じたり考えたりする習慣がCCtとしての「基礎体力」を養っていく。
- CLとしてキャリアコンサルティングを受ける意味は、モデリングされたキャリアコンサルティングを通じて、心地よさ、暖かさ、信頼、安心感、受容されている実感を味わい、目指すものについてのイメージを育て、目の前が広がり状況や課題が見えるようになることを体験することにある。
- 実際のキャリアコンサルティングでは、なかなかCLからフィードバックを得られる機会はない。ロールプレイは、その意味では貴重な機会。
- 正しい方法、よい進め方、うまい質問の仕方などを習得したいと考えて、ロールプレイを活用しようとしても、あまり効果はない。どんなCLのどんな相談でも通用するユニバーサルな技法や言い回しはない。また、ロールプレイを重ねることで、自分の流儀を作り上げようとすることもあまり推奨できない。自分のやり方をCLに押し付けることになってはいけない。
- 困っていることは何か、なぜ困っているのかを正確に捉えていれば、意図をもって進めることができる。逆に正確に捉えられていないと、意図があいまいなまま、単なる思い付きで話が流れていったり、つまみ食いの質問を繰り返したり、同じことを何度も話題にしたりで、堂々巡りになったりしてしまう。
- どんなCLでも、まずはこのように言う、この順番で質問する、この言葉でねぎらう、提案は開始から○分後に、といった型にはまったやり方を当てはめてしまうのは、本来のCCtとしての成長とは無関係。ロールプレイは、こういった目的で行うものではない。
- 逐語録の作成には、時間がかかり多くの労力を必要とするが、研鑽のための方法としてはかなり有効。そこには、面談の流れ、話題の取り上げ方など、やりとりのすべてが記録されている。CLが何度も繰り返している言葉を取り上げていないとか、CLが話している最中に別の話題に切り替えてしまったとか、見立てができていないために話が進んでいないとか、多くの気づきが得られる。言葉遣いや間などについても振り返ることができる。
(2)実技(面接)試験の過去問題解説
- CCtは「そうだったんですか」と返しているが、「そうだったんですか」は、相手への理解を示すというよりも、知らなかったことを認識したという意図で伝わることがある。
- 「~ですか?」は、やや詰問的で、第三者が聞き取りを行っているような印象を与え、CLにとっては心情に沿ってもらっているという感覚を持ち難いように思われる。例えば、「~ですね」という言い換えができるようになれば印象が非常に異なったものになる。
- 観察者として思考するのみでなく、当事者として、我が事として、CLとともに課題解決に取り組む姿勢を示すことで、キャリアコンサルティングが非常にダイナミックに展開される。
- キャリアコンサルティングにおいて傾聴とは、CLの話を丁寧に聴くことだけではなく、CLの話す言葉をCL自身が聴くことにより、相談や悩みを整理していけるように、CCtとCLが一緒になって耳を傾けることが大切。
- 支援者が独りよがりにならずに、敬意を持って相談にあたるという基本的態度が、キャリアコンサルティングを成立させるために非常に重要。
- CLにとって「そうならざるを得ない何か」があるのだろうという想定の下に、何がCLをそうさせているのかを丁寧に確認して、質の高い共感的理解につなげたい。
- 背景にある「焦り、心配」という感情まで汲み取って返せると「そうなんです!」と返ってくるだろうし、関係構築がより深まる。
- カウンセリングでは助言やアドバイスは最小限にするべきだという鉄則がある。なぜならば、助言は「正論」という性質を帯びるから。ときに正論は、相談者にとって強すぎるメッセージとなる。相談者は「そんなことはわかっている」けれども、「そうできないから困っていて、どうしたらいいのか悩んでいる」。
- 状況把握に軸足を置きすぎて、情況把握がやや疎かになっているため、CLの本音に近づくことができたのか疑問が残る。CLのかなり切実な気持ちが吐露されているにもかかわらず、それに全く応答せずに、CCtの興味関心を満たすCCt主導の質問が続いたことで、CLは発言の自由を奪われていき、CLとCCtの同盟関係から徐々に主従の関係へと、関係性が退化している。
- 逐語記録を作成することは、面談全体を振り返り、言語レベルのやり取りではあるが、その場面を再現することで、CCtが自らの発言や対応の是非・過不足などの内省的に振り返り、CCtの自己成長のためという側面が強い。であるにもかかわらず、単なるレビューだけでは、CCtの自己成長に資するものとは成り得ない。
- CLが強調している表現や、気持ちを表すなどの大切なキーワードは、言葉を繰り返すなどで「受け止めを示す」関わりが必要。
- 相手に具体的を求めるより、何を聞きたいのかCCtの質問の意図が伝わるように問いかけることで、CLの回答も自ずと具体的になり、展開も具体的に推し進められる。
- CLの不安について語られているが、CCtは「でも」と応答してしまい、気持ちを十分傾聴することができていない。
- CCtがCLにポジティブな視点を獲得させようとやや前のめりになってしまっていた点は、CCt自身が今後改善すべき点として自覚できるとよい。このような姿勢の影響により、若干CLを早分かりしてしまっている点や、不安な気持ちを十分拾うことができていない点が認められる。
- CLが語った言葉をそのままの言葉で返さず、言い換えてしまっている点もいくつか認められる。傾聴の基本を再確認し、できるだけCLが語った言葉そのまま返すようにすることができるとさらによい。
3.教訓
自身でも、勉強会でロープレを実施した際に、常に逐語録を作り、後から
- 面談中に感じていたこと
- 問いかけの意図
- 改善・工夫ができた点
についてまとめていました。いくら文字起こしの支援ツールがあるとしても、そんな完全なものが出来上がるわけではなく手直しが必要で、1回分を作成するのに相応に時間がかかりました。
そして、YouTube等で、他者の面談を見て学ぶことも実施していました。
他者の面談の逐語録のよいところは、常に「自分だったら」と反芻しながら読むことができる点です。さらに本書では、面談本人の振返りに加え、専門家による解説がなされているので、新たな見方や気づきを得ることができました。専門サイトでしか購入できませんが、9例分を読み込んで勉強できる価値は十分にあります。
これからも、「どうしてそう思うのだろう、どういった事情があるのだろう」という視点で、相手の話を聴いていくことを大切にしていきたいと思います。
