管理職おすすめの仕事に役立つ本100冊×2

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ケアする人も楽になる 認知行動療法入門 BOOK2 伊藤 絵美 著

1.はじめに

認知行動療法について、BOOK1に引き続き学習しました。

bookreviews.hatenadiary.com

BOOK1では、理論が中心で実例は最後の1章だけでしたが、BOOK2では以下のように3事例が掲載されています。

  1. スキーマに囚われる管理職
  2. パワハラを受けるナース
  3. 境界性パーソナリティ障害を抱える生徒の教員

その事例の中で、勉強になった部分に絞って紹介していきます。

2.内容

(1)無能な同僚管理職に腹が立って仕方がないカオルコさん

  • カウンセリングは基本的に相談者の話を「鵜呑み」にするところからはじまる。カウンセリングにおいてまず重要なのは「何が客観的な事実か」ということではなく、「相談者にとって何が事実か」ということ。自分の思っていること、感じていることを「事実」として受け止めてもらえなかったら、相談者はカウンセラーを信じて話をすることができなくなってしまう。逆に「事実」として受け止めてもらえると、安心して自分の想いを伝えることができるようになる。
  • 自動思考という概念を知り、自分の自動思考を観察できるようになってわかったのは、怒りとか悲しみという感情は、結局自分自身が生み出しているということ。相手本人を変えることはできない。でも認知と行動なら対処することができる
  • 「べき思考」は、その場その場の考えやイメージが頭に浮かぶ「自動思考」というよりも、自動思考の根底にある「スキーマ(信念、思い込み)」であるとみなすことができる。「べき思考」によるスキーマがストレス反応をさらに強めてしまっている。
  • モードワークによって案出するヘルシーモードの新たなスキーマは、優等生的な「いい子ちゃん」である必要は全くなく、その人自身が「これまでのスキーマを手放して、これからはこの新しいスキーマを持って生きていこう」と心から思えることが最も重要。自分自身が納得できればよい。

(2)キレる医師のいる職場に恐怖を感じるサチコさん

  • 「解離」とは心と身体が分離してしまった状態。心のなかの知的な部分と感情的な部分が分離してしまった状態と表現することもできる。解離状態はストレス反応としては非常に深刻で、これはその人がそれだけ強力なストレスを受けていることを示す。またこの現象は、自分のなかに生じる否定的な気分・感情を抑える傾向のある人に生じやすいと言われている。
  • 自分のつらさを見ないようにして放置し続けると、問題がさらにこじれてしまい、最終的にはその人にとってもっときついことになってしまう可能性もある。自分を取り巻くストレス状況が過酷なものであるならば、それがいかに過酷であるかをきちんと認識し、それによって自分がいかに苦しめられているかをしっかりと自覚する必要がある。
  • 仕事中にネガティブな気分・感情を抑えるというのは、業務を遂行するうえで社会人としてある程度必要なことだが、それらの気分・感情を抑えっぱなしにしておくのは心身の健康のためによくない。強いストレスを感じつつ、一方で気分・感情を抑えまくっていた結果、「解離」という現象を起こしていた。
  • 下の立場の人は暴君に責められ続けるうちに、「自分が悪い」「自分に非がある」と思い込み、自分を責めるようになることが多い。また他の人が責められているのをただ見ていることしかできないことも多い。つまり自分はやられっぱなしだし、他人がやられているのをただ見ていることしかできず、その結果、さらに自責感が強まったり、無力感が生じたりすることが多々ある
  • 本来であれば、カウンセリングなり研修なりを受けて変わらなければならないのは加害者であるはずなのだが、外部のカウンセラーにできるのは、被害者が「自分は悪くない。自分は被害者なのだ」と正しく認識できるよう手助けすること、ハラスメントによるストレス反応に対してうまく対処できるよう援助すること、サポート資源を増やすよう励ますこと、可能であれば加害者に立ち向かうための作戦を一緒に立てること、場合によってはその職場を離れるかどうか(退職や異動など)の検討を一緒に行うことといった、ごくごく限られたことだけ。
  • 何か1つに原因を決めつけてしまうと、その原因だけにこだわることになってしまうし、特に「自分が悪い」と思ってみても、その自分を丸ごと変えたり消したりするわけにはいかない。「他人が悪い」と思ってみても、その他人を好きなように変えることはやはりできないので、実はほとんど意味がないどころか、さらにストレス反応を増やすだけ。

(3)精神的に不安定な看護学生とのかかわりに悩む教員タマキさん

  • 治療やカウンセリングを必要とする、いわば「弱った状態」にある人の場合、枠組みのないなかで話をすること自体に負担を感じることが多く、時間や話題を決めてから話をするほうが(つまり構造化という枠組みがあるほうが)、話がしやすくなる。構造化という枠組みがあることで、むしろ楽な気持ちが話ができる
  • 1人が1人を支えるのには限界がある。多種多様なサポートネットワークがその人を支える。「自分は1人じゃない」「私の気持ちをわかってくれる人もいる」と確認できる。サポートネットワークが豊かだと、サポートされる当事者が助かるのはもちろん、サポートする側1人1人の負担もかなり低減される

3.教訓

本書は、「アサイン量が全然違うのにパートの同僚と時給が変わらないはおかしい」と憤慨する配偶者も読みました。「べき思考」についてピンと来たらしく、

  • 「リビングのテーブルの上には何もない状態が保たれるべき」
  • 「子ども部屋は勉強しやすいように整理整頓された状態であるべき」

といったべき思考の影響で、そうでない状態を見て不機嫌になっていることを認識していました。ただ、数日経つとまた不機嫌に戻っていて、書いてあることはわかるものの、それをしっかり理解して行動に移すのは言うほど簡単ではありません。

私は私で、少し解離状態で無力感を抱いているように感じます。ストレスによって、

  1. 肩こり:自律神経の乱れによる血行悪化、姿勢悪化
  2. 咽頭炎長期化:免疫力の低下、睡眠の質の低下

といった、体調面への影響も出ています。

ただ、そういう状態なんだなという客観視、このブログ含めて書くことによる外在化をすることで、コーピングの一助につながればと考えています。