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ケアする人も楽になる 認知行動療法入門 BOOK1 伊藤 絵美 著

1.はじめに

キャリアコンサルタント資格取得の勉強中に、「認知行動療法」という言葉自体は知っていて、なんとなくのイメージは持っていました。しかしながら、誰かに説明するほどの知識は持ち合わせておらず、一度勉強したいと考えていました。

最近、自身の仕事でうまくいかないことがあってネガティブな感情を持ちがちなことや、他者によかれと思ってアドバイスしたことが自分の意図とは異なる形で伝わって他者の認知(もう少し言うと”スキーマ”)を理解するのが難しいと感じたことから、勉強するチャンスと捉え、まずはこの入門書を手に取りました。

以下では、自身の学びにつながった部分を引用していきます。

2.内容

(1)ストレス状況とストレス反応を目に見える形にしてみましょう

  • 認知行動療法とは、「ストレスの問題を<認知>と<行動>の側面から自己改善するための考え方と方法の総称」。まずここでは「自己改善」という言葉に目を向ける。認知行動療法はストレスの問題を、ストレスをかかえている当事者である自分自身が自分で改善できるようになりましょう、というアプローチ。主役はあくまで自分自身。
  • 「ストレス」を、個人を取り巻く環境における「ストレス状況」と、そのストレス状況に対して生じる個人における「ストレス反応」に分けてみることで、その人を取り巻くストレスの有り様を具体的にとらえることができるようになる。
  • 「頭のなかに浮かぶ考えやイメージ」のことを<認知>という。イメージとしての認知も、ネガティブなものだけではない。たとえば何らかのきっかけで過去の楽しかった出来事や体験が自然と思い出されるようなことがある。その場合、頭に浮かぶ出来事や体験の記憶そのものがイメージであり、認知であるといえる。<気分・感情>とは、短い言葉で言い表せる、その時々の心の状態。
  • 待ち合わせに遅れそうな人は皆、道を走り、交差点を駆け抜けるでしょうか?「ちょっとくらい遅れてもいいや」とさして気にしない人であれば、走ることなく歩き続けるかもしれない。走る人は「待ち合わせの時間は守らなくてはいけない」「待ち合わせの時間に遅れて相手を待たせるのはよくないことだ」という<認知>が意識の奥深くにある「スキーマ」に該当する。その人の「ものの見方」や「価値観」がスキーマとであると考えてもよいかもしれない。「そんな当たり前のこと、わざわざ頭に思い浮かべるまでもないでしょう」と返されてしまう、それがスキーマ

(2)アセスメントしてみましょう

  • ストレス体験に気づき、ストレスモデルにもとづいてざっと整理したら、今度は認知行動療法の基本モデルを使って、具体的なストレス状況と、それに対するストレス反応を<認知(特に自動思考)><気分・感情><身体反応><行動>の4領域に沿って、さらに細かく具体的に自己観察してみる。どんな自動思考が頭に浮かび、その結果どんな気分・感情になるのか、そして身体にはどんな反応が出るのか、そのときどういう行動を取るのか
  • 自分のストレス体験を紙などのツールに書き出すことを、認知行動療法では「外在化」といい、大変重視している。「外在化」し、自らのストレス体験に距離を置き、それを眺めることができるようになると、その結果、まずストレス状況やストレス反応の悪循環の有り様を具体的に理解できるようになる。
  • 「コーピング」とは「ストレスに対する意図的な対処」のこと。もう少し具体的にいうと、自分を取り巻くストレス状況を改善したり、ストレス状況によって生じたさまざまなストレス反応を緩和したりするために、何らかの対処を意図的にすることを「コーピング」と呼ぶ。
  • 直接的にコーピングすることが可能なのは、認知行動療法の基本モデルの5つの要素(環境、認知、気分・感情、身体反応、行動)のなかでも、<認知>と<行動>に限られる認知と行動のコーピングによって悪循環から抜け出しましょう、ということで、まさに「認知行動療法」という名前。たとえハッピーな気分でいようと決めたとしても、生きていればいろいろなことがあり、そのいろいろなことに伴って落ち込みや不安やイライラといった気分や感情が生じてくるのは防ぎようがない。

(3)プリセプティとの相性が悪く悩む先輩看護師アヤカさん

  • コーピングとは「対処」という意味で、その人が悪循環による苦痛にどう対処しているとか、悪循環から抜けるためにどのような行動をとっているか、といったことを記入する。私たちは誰でも、悪循環にやられっぱなしになるばかりではなく、悪循環に苦しみながらも何らかの対処を試みているはず
  • アセスメントするためには、ストレスを感じた際に、認知行動療法の基本モデルを使って、自分に問い、自分を観察することが不可欠。自己観察するには「ストレスを感じている自分」を見る「もう1人の自分」を置く必要がある。その「もう1人の自分」が「ストレスを感じている自分」を観察する
  • 「計画を実行に移す」ことを認知行動療法では「行動実験」と呼ぶ。「実験」で重要なのは、「よい結果を出すこと」ではなく、「結果を出すこと」と「計画が適切だったかどうか検証すること」。
  • 何か問題が生じたときにそこから逃げようとするのではなく、「何が問題か」ということを具体的に外在化し、「その問題に対して今の自分は何ができそうか」ということを落ち着いて考え、実行するという「問題解決的な構え」を持つということ。そのような構えを持てるようになると、少々困った問題が起きても、いちいちうろたえたりへこたれたりしないですむようになる。
  • コーピングをもうちょっと正確に言うと、「ストレスに対する意図的な対処」のこと。ここでポイントになるのが「意図」の有無。立派なこと、高尚なことでなくてもいい。ちょっとしたことでいいから、意図的に使えるコーピングをたくさん用意しておき、ストレスを感じたら適宜それらのコーピングを実施することを日常的に行うのが重要。

3.教訓

(1)で出てきた、待ち合わせに遅れそうになった事例の話を聞いて、思わずハッとさせられました。
確かに、物事の決め方やその扱い方には人それぞれのスタンスがあります。「決めたことは絶対に守るべき」と考える人もいれば、「状況に応じて柔軟に変えればいい」と捉える人もいますし、その中間に位置する人もいるでしょう。こうした違いは、その人固有の“ものの見方・考え方”に根ざしていて、同じ出来事を経験しても、感じ方や受け止め方は人によって異なります。どれが正しいということもなく、それぞれに意味があるのだと思います。
私自身は、一度決めた予定が後から変更されることに強い抵抗を感じます。たとえ同行者の都合が合わなくなったとしても、1人で実行可能なことであればそのまま行動してしまうこともあります。これは、「決めたことは実行すべき」という自分の中のスキーマが影響しているのかもしれません。
また、善意からのアドバイスであっても、それが自分の価値観に基づいたものである以上、相手にどう受け取られるかはわかりません。たとえ客観的に見てプラスになる内容だとしても、相手の「今ここ」の感情や、譲れない価値観に触れてしまえば、受け入れてもらえないこともあります。そう考えると、何も言えなくなってしまうこともあります。本書(3)に登場するアヤカさんの事例でも、アセスメントシートのコーピング欄に「アドバイスがあってももう言わない」という対処法が記されていました。ただし、アヤカさん自身も「これは一時しのぎであり、根本的な解決にはならない」と補足しています。
改めて、「認知行動療法」という名前の通り、自分の感情や思考を外在化し、客観的に眺めることで、今の自分に何ができるかを意図的に考え、行動に移すことの大切さを実感しました。これからは、そうした姿勢をより意識していきたいと思います。