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1.はじめに
著者の午堂登紀雄さんは、たくさん本を出版されていますし、直近でも以下の記事がYahoo!ニュースでも取り上げられていましたので、名前は見たことがある、という方も多いかと思います。
本書自体は、読者登録しているNaokingさんのブログを拝見していて気になり購入しました。
結論から申し上げますと、30歳になって読めば結果が出せるというだけでなく、むしろ新入社員に読んでもらったほうがいいんじゃないか、と思うくらいですし、管理職になっても「そうだな」と思えるほど、年齢に限らず普遍的な内容が平易に書かれている良本と感じます。
2.内容
(1)会社編
- 何かを成したいと思ったら、効率的か非効率かという判断基準はいったん捨て、「目的を達成するためにはいったい何が最も効果があるか」を追求すること。
- サラリーマンであれば、仕事を選り好みしないこと。「こなせそうな」自分の延長線上の仕事ばかりをやっていると、自分の新しい能力が開眼しない。
- 難しいとわかっているからこそ、あなたに頼んでいる。やらずして、力を尽くさずして「できない」という精神性の低さ、気概のなさに、「コイツは見どころがない」と思わせてしまう。「できます」というチャレンジ精神のある返事をする人に、人は可能性を感じる。
- 「言われた仕事をやる」だけの人は、不平不満だらけ。しかし、「会社を(いい意味で)利用する」という視点に立てば、会社や上司の愚痴を言っている暇がなくなり、毎日が学びになる。
- つまらないと思えばどんな仕事もつまらないが、「どうすればうまくいくんだろう」と考えながら取り組むと、驚くほど学べるもの。「もっとやりがいのある仕事をしたい」という人は「工夫する力がない」と言っているのと同義。
- 「人前に出る」ことを重ねて社内で有名になると、他部署の協力が得やすくなる。普段はあまり接点のない部署に電話しても、「ああ、あの〇〇さんですか」と名前が知られており、ちょっとした無理や例外的な対応も受け入れてもらえる。
- 今、自分がやっている仕事のやり方を変革し、新しい業務マニュアルに作り変える。走高跳にしても、昔はベリーロールで飛ぶのが一般的だったが、あるとき背面飛びをやった人がオリンピックで金メダルをとって以来、それが主流になって、どんどん技が磨かれていった。
- 成熟した大人とは、自分の感情と反対の言動ができること。度量を大きくするには、意識的に感情と行動を切り離す力が必要。嫌いな人とは会話の量が圧倒的に足りないので、だから逆に話す。
- 管理監督責任がある上司にとって、部下が何をしているのかわからないのはストレスの原因。上司から「あの件どうなった?」を聞かれるようでは遅い。聞かれる前に報告するのが鉄則。
- サラリーマンというのは、上司からの指示が来る前に提案することで、自分がやりたいように仕事を誘導するもの。
- グチは巡り巡って必ず本人の耳に届く(KGB:必ずグチはバレる)。上司も社長も人間だから、おもしろくない。
(2)仕事編
- プレッシャーがかかるというのは、あなたに対する期待度も高いという証拠。プレッシャーがない人というのは、誰でもできる仕事しかしていないということ。だからプレッシャーとは、ビジネスパーソンの勲章。
- 中途半端な努力からは、中途半端な結果しか生まれない。始めたことを途中でやめれば、それまで投下したお金と時間が「全損」になってしまう。
- アウトプットのイメージを最初に描いてからインプットする。「これはアウトプットする場面がなさそうだな」と感じたら、あえて見送る勇気も必要。もちろん、無駄もある程度必要だが、実際にはきりがなくなってしまう。
- 最初から「いくら欲しい」ではなく、まず相手の役に立って信用を作る。それが結局、「またあの人と仕事がしたい」「よかったから知人にも紹介しよう」と広がっていく。そんな相手の役に立とうという発想と行動が、積立預金のように積み上がり、いつかは利息だけで生活できるようになる。
(3)自分編
- 目標はあったほうがよいが、無ければ無いで構わない。それよりも、目の前のことを必死にやる。そうすると、今までできなかったことができるようになり、人から声がかかるようになり、それが転機になっていく。朝令暮改を恐れず、状況が変われば対応を変える。計画に固執するのではなく、都度見直していく。
- どの世界でも、常識破りのことをしようとするとき、前例のないことをしようとするとき、相手には普通じゃないと映るので、摩擦や批判が起こる。だから自分が発表したものに対して賛否両論が起これば、自分の発言の価値が出てきたということ。逆に何も反応がないときは、自分がまだちっぽけな存在だと認識する。
- 自分とは「探す」ものではなく、いろいろな経験や人との出会いの中で「創っていく」もの。迷ったら、立ち止まるのではなく、むしろ動く。動けば景色も変わる。動けば、何ができて何ができないかがわかる。
- 自身がある人は、ことさら自分からアピールしなくても周りが認めてくれるのであえて言う必要もない。だから「自分が、自分が」とならず、相手の話を落ち着いてきくことができるので、さらに人が集まってくる。「自慢話をするのは、自分がまだ小さい証拠である」と肝に銘じ、口にしないようにする。
- 世間が自分の思い通りにならないのは当たり前。それに対して文句を言うのは、自分の思い通りになるべきだと考えている。つまり、不満を言う人は、傲慢な考えの持ち主。他人の動きに自分の気分が依存している弱い存在。
- 素直でない人は、まず批判・否定から入る。そして、自分にできない理由、自分がやらなくてもいい理由を探す。自分が動かないので、周りの環境も変化しない。自分のキャパでできる範囲のことしかやらないため成長しない。すぐやらない人に助言しても意味がないので、上位者から成功者からもそっぽを向かれ、抜擢などストレッチするチャンスを得ることもできなくなる。
- 「自分の発言には”愛”があるだろうか」を考えると、トゲトゲしい言い方はできない。経営者や上司は、感情の起伏が激しい社員に、重要な仕事を任せようとは思わない。
3.教訓
本書を読んで、2022年9月25日に、ヤクルトが丸山和郁選手が、”日本プロ野球史上初の新人によるサヨナラヒットによる優勝決定"、という快挙を達成したことを考えました。
もちろん、前年のドラフト2位で指名されるくらいですから、一定の期待はされてはいますが、勝てば優勝というこの試合でも、スタメンに名を連ねたのではなく、8回の守備でサンタナ選手にアクシデントが発生したことで、たまたま途中出場しています。
プロ1年目のこれまでの打率は2割そこそこで、守備固めでの出場が中心で、0-0で9回裏の緊迫した状況で打席が回ってきた際、代打を送られる、という可能性もありました。
共同会見において、記者からその趣旨での質問があった際、高津監督は、
「延長戦に入ることも勘案し、守備も意識をしていたので、そのまま打席に送った」
という趣旨の回答をされています。
達成の数分後には、Wikipediaにもうその快挙が書き込まれ、歴史に名を刻んでいます。
丸山選手の頭の中には、「ここで決めたらプロ野球史上初だな。優勝インタビューで何を話そうかな。」という雑念があったわけではなく、とにかくこの打席に集中する、という意識だけがあったと推察します。
守備力がある、という、大きな武器を一つ持っているからこそ、打席に入るチャンスを得ました。そして、目の前のことに必死になり、結果を残したことで、
「以前にはこんな大仕事をしてくれた。これからも何かしてくれるかもしれない。」
という将来の期待感に代わります。
これは、ビジネスシーンでも同じで、以下のような好循環が生まれると考えます。
- 武器があるから起用される
- 実際に1つの結果を出して見せる
- 今後も期待され、本人も努力する
- 周囲に一目置かれる存在になる
自身でもこのサイクルを目指しつつ、これからの丸山選手の活躍にも期待したいと思います。