1.はじめに
本書は2004年11月に単行本として刊行されています。
今となっては当たり前ですが、その時点で、「携帯電話はパソコンやSuica、デジタルカメラ、iPodと一体化し、個人認証ができるようになる。日本の警察は遅れているから、携帯電話が運転免許証になることはないだろう。」と記載されています。
ただし、初代iPhoneが発売されたのは2007年です。その約3年も前、今から20年弱前に、現代をほぼ正確に予見をしています。
そういった洞察力を持つ大前研一さんの「考え方」について学びたいと思い、この本を手に取りました。
2.内容
(1)思考回路を入れ替えよう
- 「やってみなければわからない」「たぶん、これで大丈夫だと思う」というレベルのものは、解決策とは呼べない。問題解決の根本にあるのは、論理的思考力である。問題解決のみならず、先見性とか直感と呼ばれるものも、じつは論理的思考があってこそ生まれる。
- 重要なのは、「仮説」ではなく「結論」を導き出すこと。いかなる問題にも解決策は必ずある。もちろんそれは「業界から撤退する」「身売りをする」といったことも含めての話だが、解決策のない問題など存在しない。
- 原因になっている部分を直さないかぎり、問題の解決は望めない。大切なのは「さまざまな現象の中で本当の原因は何か」を考えること。現象を数え上げるだけで思考を停止させてしまってはいけない。
- 「こうすれば問題は解決する」という提案までできなければ、真の問題解決とはいえない。しかも、その解決策は、すべて現場やマーケットから生まれてきたものでなければならない。
(2)論理が人が動かす
- 人を納得させるための論理構成がしっかりとなされていれば、提言には説得力が伴う。説得力とはすなわち相手の心理までも勘案した論理構成の力であり、その論理構成を生み出す思考回路の組み立て方こそが、提言のノウハウなのである。
- プレゼンテーションにおける「提言」は1つでいい。提言がいくつもあると経営者は実行に二の足を踏んでしまうが、「社長、とにかくこの1つだけをやってください」と言われれば、気持ちが動きやすいからだ。「これも重要、あれも重要。ここも直したほうがいい」というのは、コンサルタントではなく評論家でしかない。
- 人間の感情はロジックだけでは収まらない。感情の問題をきちんとフォローして、翌日から嬉々として実行に移してもらえるように仕向けていくことも、プレゼンテーションの実効性を上げるには不可欠なのである。
- 問題を羅列したところで、それらはしょせん現象に過ぎない。現象のさかさまは解決策ではない。本当は原因に対する解決策が必要なのに、現象にしか目が行っていない。日本の議論というのは、十中八九、現象と原因の区別さえできていない。そもそもそうした思考回路を持っていない。
(3)本質を見抜くプロセス
- もし事実に対して忠実なら、自分がどの立場にいるかは関係がないはず。その事実を素直に認めることができなければ、物事の本質を見抜くことができないし、正しい解決策を生み出すためのプロセスを踏むことなど不可能だ。解決策を生むためには、まず自分がバイアスがかかっていない状態に身を置かなければならない。
- 自分の意見が相手の意見と違うときに、事実に裏打ちされた信念を持って、どうやってその意見を相手に納得してもらうか。そういう努力を平素から行っている企業と、同質の集まりの中で訓練をまったくしていない企業とでは、極めて大きな差が生まれてしまう。
(4)非線形思考のすすめ
- 現実にお金がどう流れているかといった「物理現象」しか私は信用していない。そうした現象の積み重ね、証拠の積み重ねによって、あらゆる問いに対する答えは必ず出てくるからである。新しい経済の中では、過去の常識に当てはめるのではなく、今起こっていることを観察することが大切。
- ゲームの攻略本でテクニックだけを覚え、後ろに答えが書いてあったらそこを先に読んでしまうような人間は、世の中に出てから何の役にも立たない。答えを与えられないと何もできないし、答えのない状況になったらパニックを起こしてしまうからだ。
- 人間が極限の状況でどういう判断をし、どのような工夫をするのか、その辺を聞いておくだけで、自分がいざという場面に出くわした時の思考空間が広がる。「考える」ということは、自分に「知的備蓄」を作るということに他ならない。
(5)アイデア量産の方程式
- 「考える」とは、つねに質問をし、自分で答えを一生懸命に見つけること。「今ここで答えを出さないと王様に殺される」という強迫観念のもとに、自分の持っている数字やデータを頭の中ら引っ張り出して計算し、「なるほど」と思える解答を導き出す。こんなことは、本当は誰にでもできること。
- 散歩するならボケっと歩きたい、という人は、問題解決に立ち向かったり、新しいビジネスモデルにチャレンジしたりすることは諦めなければならない。知的に怠惰な人にはそれなりの人生がある。あなたがそのような人生を送りたければそれはそれでいいが、だとしたらこの本を読んでも仕方ないだろう。
- もちろん相手によって話し方は変える。ただ考え方の強度そのものは変えることはない。相手によって緊張がゆるんだり、考え方の強度を変えたりする悪い癖がつくと、「この連中に説明するときは、ちょっとくらいい加減でもいいや」という態度になる。こういう人間は、社長に前に行ったときもいい加減になってしまうものだ。
- 発想が豊かになるためには、知識は少ないほうがいい。なまじ知っていることが書いてあると、それを確認しただけで頭の働きは止まってしまう。実は「理解した」と思うことが、人間にとってはもっとも危険な状態なのである。
(6)5年先のビジネスを読み解く
- 成功した経営者の中には、神の啓示か何かのように「突然ひらめきがあった」などと予言者的なことをいう人はいる。しかし後で成功の原因を分析すると、ひらめきとか啓示といったものとはまったく違い、非常に論理的な「成功のパターン」が整っていることが多い。そのパターンには次の4つの要件がある。
- 事業領域の定義が明確にされている
- 現状の分析から将来の方向を推察し、因果関係について簡潔な論旨の仮説が立てられている
- 自分のとるべき方向についていくつか可能な選択肢があっても、どれか1つに集中する
- 基本の仮定を忘れずに、状況がすべて変化した場合を除いて原則から外れない
(7)開拓者の思考
- 突破できる人間とできない人間の違いは、要するに自分にはまだ経験がないというときに、そこを避けて通るか、「とりあえず入ってみよう。何かあるかもしれない」と思うかの違いである。なぜなら最初から成功の道が見えている人間など、今の世界にはいないからだ。
- 毎日が訓練であり、誰と会うときでも真剣勝負のつもりで、常にベストを尽くさなければいけない。これが平素の生活態度になっている人は、いずれ拳銃の名手になれる。
3.教訓
ただ漫然と仕事をしているだけではダメで、以下のサイクルを回していくことの重要性を再認識することができました。
- 実際に何が起こっているのか観察する(Look)
- その中で何がボトルネックになっているのか考察する(Think)
- それをどうやったら解消できるのか改善策を作る(Grow)
- 実行し、突破する(Do)
以上の内容は、現在受講中のチームビルディング研修の指定図書にも触れられています。
今の仕事でも、わかったつもりになっているけど、実際に人から聞かれたり、いざ自分でやってみたりすると、うまく説明できないことがよく起こります。
そのため、最近では、
- 「理屈上こうなる」と考えるだけで止まるのではなく、実際に業務を担当する人に聞きに行き、「実際にこうやっている」とことを聞きにいく
- たぶんあの人が解決してくれるだろう、と思うだけでなく、その人に「対応しているか」を確認し、未処理なら対応を促す
といったことを意識して行動するようにしています。
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