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貞観政要 呉競 著 守屋洋 訳

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貞観政要 (ちくま学芸文庫) [ 呉 兢 ]
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1.はじめに

唐の2代皇帝”太宗”とその臣下の言行録です。

古くから「帝王学」の教科書として有名で、徳川家康明治天皇も読んだと言われています。

中国の広大な国土を、周辺国の動きもみながら安定した統治をするには、トップ自らが自律した行動をするだけでなく、トップに対して遠慮なく諫言できる環境、人材を整えることが必要です。

本書は全280篇の中から、70篇が抽出されています。

2.内容

(1)太宗の発言

  • 単に私の下した詔勅に署名をし、下部に文書を流してやるだけのことなら、どんな人間にでもできる。わざわざ選りすぐってそれらの地位に据えておく必要はない。私の叱責を恐れて、知っていながら口を閉ざす、かりそめにもそんなことは許されないものと心得よ。
  • これは危ういと気づいたことああれば、隠さずに申し述べよ。仮にも君臣のあいだに疑惑が生じ、お互いの心の中で思っていることを言い出せないようになれば、それは国を治めていくうえで、この上ない害を及ぼすことになる。
  • どうか気づいたことがあれば、遠慮なく申し述べてほしい。またそちたちも、部下の諫言は喜んで受け入れるがよい。部下の意見が自分の意見と違っているからといって、拒否してはならぬ。部下の諫言を受け入れない者が、どうして上司に諫言することができようぞ。
  • 臣下があることを諫めても、君主の方は「今さらやめるわけにはいかぬ」とか、「すでに許可を与えてしまった」と聞き流して、一向に改めない、そんな話が良く出てくる。君主がこんな態度を取っていたのでは、あっという間に国を滅亡させてしまうだろう。
  • 同じ人物が同じ王の下に長く仕えるのは、好ましいことではない。長く仕えればそれだけ情が移り、やがては「我がご主君を天子に」などと、当初には思いもよらぬ野心が芽生えてくるからだ。
  • 例えていえば、船とは君主のようなものだ。そして船を浮かべる水は人民のようなものである。水はよく船を浮かべるが、時にはひっくり返しもする。かりそめにも人民をあなどるようなことがあってはならん。
  • いかに長い付き合いとはいえ、能力の劣る者どもを、単に古参だからといって、真っ先に登用することはできぬ。今、その者どもが自分の能力を棚に上げて恨み言を並べているとは、もってのほかのこと。
  • 一般庶民の間でも、人と話すとき、一言でも相手の気に障るようなことを口にすれば、相手はそれを覚えていて、いつか必ずその仕返しをするものだ。いわんや、万乗の君主たる者、臣下に語るとき、わずかな失言もあってはならない。たとい些細な失言でも、影響するところは大。
  • 古人は「幸、不幸は決まった門があって入ってくるわけではない。みな人が招き寄せるのだ」とも語っている。我が身を不幸に陥れるのは、利益を貪ろうとするからである。それはまったく餌を貪って人手にかかる鳥や魚と異ならない。どうか常にこの古人の言葉を思い出して自戒してほしい。
  • 国の法令は単純明快であるべきだ。ある一つの罪を数か条にわたって記載してはならぬ。そのような煩瑣な規定をすれば、係官といえどもことごとく記憶することおはできない。また、かえってそれにつけ込む輩も現れてこよう。というのは、手心を加えてやろうとすれば微罪の条項を適用し、重罪に陥れてやろうとすれば、重罪の条項を適用するだろうからだ。
  • しばしば法令を変更するのは、世道人心の不安を招くもとであるから、一度定めた法令は、やたらに変えてはならぬ。また、法令を制定する際には、慎重に条文を検討し、曖昧な規定は避けなければならない

(2)名臣の発言

  • まず君主がおのれの姿勢を正すことです。君主が姿勢を正しているのに、国が乱れたということはいまだかつてありません。
  • 名君の名君たるゆえんは、広く臣下の進言に耳を傾けることであります。また、暗君の暗君たるゆえんは、お気に入りの臣下の言葉だけしか信じないことであります。君主たる者が臣下の進言に広く耳を傾ければ、一部の側近に耳目を塞がれることなく、よく下々の動きを知ることができるのです。
  • 国の基盤が固まってしまえば、必ず心にゆるみが生じてきます。そうなると、臣下も我が身第一に心得て、君主に過ちがあっても、あえて諫めようとしません。国が安泰なときにこそ心を引き締めて政治にあたらなければなりません。
  • どんなに曲がりくねった木でも、縄墨に従って製材すれば真っ直ぐな材木が採れる。それと同じように、君主も、臣下の諫言を聞き入れれば立派な君主になることができる。
  • 良臣とは、自らが世の人々の称賛の声に包まれるばかりでなく、君主に対しても名君の誉れを得しめ、ともに子々孫々に至るまで、反映してきわまりがありません。一方の忠臣は、自らは誅殺の憂き目にあうばかりか、君主も極悪非道に陥り、国も家も滅び、ただ「かつて一人の忠臣がいた」という評判だけが残ります。それを考えますと、良臣と忠臣とでは、天と地ほどの違いがあるのです。
  • 臣下の上書に少しでもあやふやなところがあると、陛下はその者を呼びつけて厳しく叱責なさいます。上書した者こそいい面の皮、ただただ恥じ入るばかりでございます。これでは、あえて諫言しようとする者などいなくなってしまうでしょう。
  • 人物を推薦する際には、いつもその人物の長所と短所を詳しく申し上げてきました。陛下は、かれの長所に目をつけず、その短所だけを見て、私ども推薦人を詐欺師扱いなさいますが、承服いたしかねます。
  • 臣下の忠誠を期待するためには、まず君主の方が、それ相当の礼をもって臣下を遇しなければならないことがわかります。
  • しばしば勝てば王は得意満面となり、しばしば戦えば民力は底を尽きます。しばしば兵を動かしては、やがて滅亡の道をたどったのも当然です。
  • 嗜好、喜怒の感情は、賢者も愚者も同じように持っております。しかし、賢者はそれをうまく押さえて、過度に発散させることはしません。ところが、愚者はそれを押さえることができず、結局は身の破滅を招くことになるのです。

3.教訓

私の今の立場は、トップでも何でもなく、中間管理職に過ぎません。ただ、小さな1つのチームを率いる立場であっても、参考になることは多く含まれています。

また、社内規定を定める業務も担っているので、法令の制改定について記載された箇所は、非常に心に響くものがありました。

どうしても社内規定は長くなりがちです。そのため、全体を読む時間が取れないので、関連箇所だけ都度確認する、といったことが起こります。関連する章だけ読んでわかってもらおうとするために、他の章に箇所に記載されていることの要約をそこにも入れてしまう人が出てきます。

そうすると、1つの事柄について運営変更をする場合であっても、同じことが記載されている複数の箇所を手直しする必要が出てきます。漏れなく変更しないと、ここに書いていることと、あそこに書いていることが違って、「どっちが本当なんだ?」ということが起こります。

また、同じ規定を何度も改定をすると、「そんなに頻繁にルールが変わっても覚えられない」と言われることもあります。一方で、ちょくちょく改定せずに一定期間内容を溜めておき、同じ規定の複数個所を同時に改定すると、「そんなに一度に多くの箇所が変わっても分量を消化できない」と言われることもあります。

人の理解度や感覚には個人差があるので、一つの解はないと思いますが、洗練された表現、文量となるよう、意識をしていきたいと思います。