課長がおすすめする仕事に役立つ本100冊+

現役管理職が身銭を切って買って読む価値のあるおすすめの本だけを紹介するページです

他者と働く 宇田川元一著


 

1.はじめに

 本の冒頭にもあるように、平田オリザさんの著書から、以下の引用がされています。

・対話が日本で起きにくいのは、お互いに同じ前提に立っていると思っているから。

・お互いにわかり合えていないことを認めることこそが対話にとって不可欠。

理屈では正しくても、現実的には相互理解が得られないことはよく起こります。

まずは「わかり合えていない」ことを受け入れた上で、少し視点を変えて取り組み方を工夫し課題に挑むことが、他者とよりよく働くためには不可欠という視点で記されています。

2.内容

(1)適応課題と向き合い方

まず、既存の方法で一方的に解決できない複雑で困難な問題のことを「適応課題」といいます。大きく4つに分類されます。

  1. ギャップ型:長期的なゴールのために、短期的な合理性をある程度犠牲にする必要があり、ギャップを埋めるために行動を変える必要がある。
  2. 対立型:それぞれの組織が担う「合理性の根拠」がお互い異なり、枠組みの違いに伴う対立を解消する必要がある。
  3. 抑圧型:発言が困難な関係や、言うと厄介な問題に巻き込まれて損をするために、抑圧された状態にあり、問題提起をすることが困難
  4. 回避型:痛みや恐れを伴う本質的な問題に取り組むことが難しく、問題をすり替えたり、責任を転嫁したりする

⇒一度、自分の解釈の枠組みを保留してみて、相手がなぜそのように主張するのかを考えてみると、相手には相手なりに一理あることが見えてきます。そうすると、相手が自分の主張を受け入れられるにはどうしたらよいかという視点に立つことができるようになります。この一連の過程こそが対話であり、適応課題に向き合うということです。

その一歩目として、相手を変えるのではなく、こちら側の解釈の枠組み(=ナラティブ)が少し変わる必要があります。そうでないと背後にある問題に気が付けず、新しい関係性を構築できません。

(2)対話のプロセス

  1. 準備「溝に気づく」:話が通じない場面に直面した場合、一旦自分のナラティブを脇に置いてみる対話の準備をする。
  2. 観察「溝の向こうを眺める」:相手の状況、責任、関心など、相手や相手の周囲を観察する。つまり観察とは、こちら側がどのように働きかけることができるか、そのリソースを掘り起こす作業
  3. 解釈「溝を渡り橋を設計する」:相手のナラティブに飛び移って、相手がどんな状況で仕事をしているのかシミュレートする。そこから、自分が言っていることややっていることがどんな風にどう見えるか眺め、どこにどんな橋を架けるか設計する。
  4. 介入「溝に橋を架ける」:実際に行動する。

⇒嫌なこともありますが、それを脇に置いてみないと、相手の言動を眺めてみる段階に移れません。自分の描く理想状態とのギャップが歯がゆいのはわかりますが、現実の中で一歩目を踏み出すことが、ギャップを埋めるために大切です。

(3)実践

  •  なぜ相手はそういう問題行動を起こすのか、その構図をよく理解することが必要で、何がわかっていないかをわかろうとすることが不可欠
  • 極めて平易に言うならば、相手の役に立つことでなければ、誰もその仕事を好んで受け入れようとはしない。それは意識が高いとか低いとかの問題ではない。
  • 「会社が、上司が協力してくれない」という会社批判の場面によく遭遇するが、一方で上司から見れば自分が偏って見えているはず。自らの偏りを認めなければ、他者の偏りを受け入れるのは難しい。
  • よい提案かどうかは、あくまで自分のナラティブの中での話であり、相手が受け入れなければ、判断できないだけの理由がある。そこに踏み出さないと橋はかからない
  • 相手が自分の提案をよいものだと判断できなかったことを相手のせいにしたくなるのはわかるが、ここで自分のナラティブを脇に置いて観察できるかどうかが、その人が新しく価値のある仕事ができるかどうかの大きな分かれ目になる。
  • 権力を持っていることに自覚的でなければ、自分が見たい現実だけを見ることになる。自らの権力によって見たいものが見られない、という不都合な現実を見ることこそが対話をする上では不可欠
  • 孤独を大切にするためには、孤立してはならない。そのためには、信頼できる仲間が現れるのを待つのでなく、あなたが他者に信頼されるように働きかけることが大切。私たちの行動があって信頼がそこに芽生える。
  • ナラティブ・アプローチが目指すところは、相手を自分のナラティブに都合よく変えることではない。自分が自分のナラティブの中においてしかものを見ていなかったことに気づき、自らを改めることを通じて、相手と私との間に、今までには無かった関係性を目指すことにある。

3.教訓

現実問題として、会社で別の部署の人と話すとき、「何でこちらの状況をわかってくれないんだ」と思うことによく遭遇します。

しかしながら、自分がその部署に異動し逆の立場に変われば、おそらく同じことを言ってしまうのだろうと想像します。それは、上司・部下の立場が逆転すると仮定しても、同様だと思います。

そういう場面に、本書の内容に立ち戻り、

  • お互いにお互いの正論がある
  • ギャップがあって当たり前
  • 自分の価値観は一旦脇に置く

という前提に立って、どうしたら相手が主張を受け入れてくれるかを考える意識付けをしていきたいと思います。