課長がおすすめする仕事に役立つ本100冊+

現役管理職が身銭を切って買って読む価値のあるおすすめの本だけを紹介するページです

論語と算盤 渋沢栄一 著

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

論語と算盤 (角川ソフィア文庫) [ 渋沢 栄一 ]
価格:836円(税込、送料無料) (2021/10/30時点)

楽天で購入

 

1.はじめに

今、渋沢栄一と検索すれば、設立し現存する企業が大量に表示されます。

その最終的な功績だけが着目されがちですが、2021年のNHK大河ドラマを拝見していると、養蚕農家から身を起こし、会社尊王攘夷を目指していたのに徳川家に仕え、明治政府に仕えていたのに実業界に身を転じるという、人生の要所で大きな決断をして、各所での変革の実績を残してきたことがわかります。(美化されているところもあるのだと思います)

こうすれば成功するというハウツー本ではなく、処世的・道徳的なな内容です。

論語と算盤は何を意味しているというような解説は他の方の書評に任せまして、要約することもなく、心に残ったことだけを以下に書き溜めていきます。

2.内容

(1)処世と信条

  • 富をなす根源は何かといえば、仁義道徳。正しい道理の富でなければそ富は完全に永続することができぬ。
  • 論語に説かれた人物観察法は、まず第一にその人の外部に表れた行為の善悪正邪を相し、それよりその人の行為は何を動機にしているものなるやを篤と見、さらに一歩を進めて、その人の安心はいずれにあるや、その人は何に満足して暮らしてるや等を知ることにすれば、必ずその人の真人物が明瞭になるもので、如何にその人が隠そうとしても、隠し得られるものではないというにある。
  • 自働的なれば、何でも自分に省みて悪い点を改めるより外はない。世の中のことは多く自働的なもので、自分からこうしたい、ああしたいと奮励さえすれば、大概はその意のごとくになるものである。しかるに多くの人は自ら幸福なる運命を招こうとはせず、却って手前の方から、ほとんど故意にねじけた人となって、逆境を招くようなことをしてしまう。

(2)立志と学問

  • 与えれた仕事に不平を鳴らして、往ってしまう人は勿論駄目だが、つまらぬ仕事だと軽蔑して、力を入れぬ人もまた駄目だ。およそどんな仕事でも、それは大きな仕事の一小部分で、これが満足にできなければ、遂に結末がつかぬことになる。小事を粗末にするような粗大な人では、所詮大事を成功させることはできない
  • 大なる立志と小さな立志と矛盾するようなことがあってはならぬ。この両者は常に調和し一致するを要するものである。
  • 人間は如何に円くとも、どこかに角が無ければならぬもので、古歌にもあるごとく、あまり円いとかえって転びやすいことになる。あまりに円満になりすぎると「過ぎたるは及ばざるがごとし」と論語で説かれている通りで、人として全く品位のないものになる。

(3)常識と習慣

  • 意志の鞏固なるが上に聡明なる知恵を加味し、これを調節するに情愛をもってし、この三者を適度に調合したものを大きく発展せしめて行ったのが、初めて完全なる常識となる。
  • 口舌は禍の門であるだろうが、ただ禍の門であるということを恐れて一切口を閉じたら、その結果はどうであろう。有要な場合に有要な言を吐くのは、できるだけ意思の通ずるように言語を用いなければ、折角のことも有耶無耶中に葬られねばならぬことになる。それでは禍の方は防げるとしても、福の方は如何に招くべきか。口舌の利用によって福も来るものではないか。
  • 悪人必ずしも悪に終わるものでなく、善人必ずしも善を遂げるものとも限らぬから、悪人を悪人として憎まず、できるものならその人を善に導いてやりたいと考え、最初より悪人たることを知りつつ、世話してやるものもある。
  • 由来習慣とは、人の平生における所作が重なりて、一つの固有性となるものであるから、それが自ずから心にも働きにも影響を及ぼし、悪いことの習慣を多く持つものは悪人となり、良いことの習慣を多くつけている人は善人となると言ったように、遂にはその人の人格にも関係してくる。
  • 偉き人と全き人とは大いに違う。偉い人は人間の具有すべき一切の性格にたとい欠陥があるとしても、その欠陥を補って余りあるだけ他に超絶した点のある人で、完全なる人に比すれば変態である。それに反して完き人は、知情意の三者が円満に具足した者、すなわち常識の人である。
  • 土地に肥瘠あり時候に寒暖あるごとく、吾人の思想感情も異なっているから、同一の志を持って向かっても、相手によってその結果を異にする。だから、人の行為の善悪を判断するには、よくその志と所作の分量性質を参酌して考えねばならぬ
  • 医者は病人を治すが職務であるから、何時でも治してくれると思っては大違い。医者は必ず平常の衛生を勧めるに相違ない。ゆえに予はすべての人に不断の勉強を望むと同時に、事物に対する平生の注意を怠らぬように心掛けることを説きたい。

(4)理想と迷信

  • 何事でも自己の司ることに深い趣味をもって尽くしさえすれば、自分の思うとおりにすべてが行かぬまでも、心から生ずる理想、もしくは欲望のある一部に適合し得られるものと思う。
  • 何でもないことだが、日々に新たにして、また日に新たなりは面白い。すべて形式に流れると精神が乏しくなる。何でも日に新たの心掛けが肝要である。

(5)人格と修養

  • 四肢五体具足して人間の形を成しておるからとて、我々はこれをもってただちに人なりと言うことはできぬ。人の禽獣に異なる所は、徳を修め、智を啓き、世に有益なる貢献をなし得るに至って、初めてそれが真人と認められる。一言にしてこれを覆えば、万物の霊長たる能力ある者についてのみ、初めて人たる真価ありと言いたい。
  • 真に人を評論せんとならば、その富貴功名に属する、いわば成敗を第二に置き、よくその人の世に尽くしたる精神と効果とによってすべきもの。
  • 家康が遺訓として、「人の一生は重荷を負うて遠き道を行くが如し、急ぐべからず。不自由を常と思えば不足なく、心に望み起こらば困窮したる時を思い出すべし。堪忍は無事長久の基、怒りは敵と思え。勝つことばかり知りて負ける事を知らざれば、害その身に至る。己を責めて人と責めるな。及ばざるは過ぎたるに勝れり。」は、多くは論語中の警句中より成立している。
  • 今日の修養は、力行勤勉を主として、知徳の完全を得るのにある。すなわち、精神的方面に力を注ぐとともに、知識の発達に勉めねばならぬ。しかして修養が単に自分一個のためのみでなく、大にしては国家の興隆に貢献するのでなければならぬ。
  • もし、平生自己の主義主張としていたことが、事に当たって変化せねばならぬようなことがあるならば、宜しく再三再四熟考するのがよい。事を急激に決せず、慎重の態度を持ってよく思い深く考えるならば、自ずから心眼の開くものありて、遂に自己本心の住処に立ち返ることができる。この自省熟考を怠るのは、意思の鍛錬にとって、最も大敵であることを忘れてはならぬ。

(6)その他

  • 何業にかかわらず、自己の商売に勉強は飽くまでせねばならぬ。また注意も飽くまでせねばならぬ。進歩は飽くまでせねばならぬであるが、それと同時に悪競争をしてはならぬということを、強く深く心に留めておかねばならぬ。
  • 苟も世に処し身を立てようとすると志すならば、その職業の何たるを問わず、身分の如何を顧みず、終始自力を本位として、須臾も道に背かざることを意を専らにし、しかる後に自ら富みかつ栄えるの計を怠らざるこそ、真の人間の意義あり、価値ある生活ということができよう。

3.教訓

とにかく、「知情意」、「仁義徳」といった、バランスが大事、というメッセージだと受け止めました。

ただ、単に理想を追い求めるだけでなく、現実にも目を向けていて、「丸いだけじゃダメ」「つまらぬ仕事だといって力を入れないのはダメ」といったことを含め、社会人生活を送っていくうえで必要なことが散りばめられています。

自身が課長職となり、目の前の実務だけでなく、所属部署全体を見渡してみると、この人はよく考えて発言しているか、意思を持って行動しているかはわかるようになってきます。

自分自身を振返ってみると、役席として判断を求められる立場になれば、自分自身の軸を持って事に当たることがいかに大切かは身に染みてわかります。当然ながら毎回うまく対処できるわけもなく、日々鍛錬を重ねることの重要性も理解できます。

特に、以下の点には今後も注意を払いたいと考えています。

  • とにかくよく考える
  • 言うべきことは言う
  • 形式に流されない
  • 行いが人格を作り出す