1.はじめに
原題は、"Why has nobody told me this before?"です。
直訳すると、「どうして今まで誰も教えてくれなかったのでしょう?」となり、これだけでは何が書かれているのかわからず、日本の書籍にはなかなか無いネーミングです。
それが「一番大切なのに誰も教えてくれない」につながり、「メンタルマネジメント大全」と名付けるのだから、よく考えられていると感心しきりです。
この本は、心の健康を保つためのツールがぎっしり詰め込まれた、「一生使える道具箱」だ。(中略)その時々で必要なページを開き、有益なツールを見つけてほしい。
以下では、特に印象的だった部分を引用して紹介していきます。
2.内容
(1)気分が落ち込むとき
- 落ち込んでいるときには、周囲の人に励ましや安心感を求める。それらが得られないと無意識のうちに、相手は自分のことをよく思っていないと決めつける。それはバイアスであり、最悪の自己批判につながりやすい。調子が悪く、辛いと感じているとき、視野は狭くなりがち。他者の考えや見方を推測しにくくなり、他者の価値観が自分のものとは違うことを忘れがちになる。このバイアスは、心のつながりを傷つけ、人間関係にひびを入れる恐れがある。
- 落ち込んでいるときには、完璧な決断ではなく、より良い決断を下すことを目指そう。より良い決断は、わたしたちを望む方向に進ませてくれる。もっとも、その歩みはゆっくりでいい。落ち込んだ気分は、わたしたちが何もしないことを望む。だから、小さくても何か前向きなことをすれば、望む方向に向かう健全な一歩になる。
- (そうしたくなくても)人と一緒にいて、その人たちのことを観察し、交流し、つながりを築くことは、気分を高め、頭の中から抜け出て現実の世界に戻るのに役立つ。気分の落ち込みから這い上がろうとしてもがいているときには、自分を孤立と孤独へ押し流す激流に逆らって泳がなければならない。人と会う気になるまで待ってはいけない。行動が先だ。そうすれば気分は後からついてくる。
(2)やる気が出ないとき
- やる気は自然に生じるものではなく、行動によって生じさせる必要がある。何もしないでいると、心は燃料切れになり、無気力や「めんどくさい」という気持ちがいっそう強くなる。
- モチベーションをくじく1つの要素は失敗への恐れ。ちょっとしたミスをしただけで自分を激しく批判したり攻撃したりすると、羞恥心や敗北感を覚えるようになる。また、失敗に価値を認めないと、新しいことを始めるのが億劫で、先延ばししがちになる。
(3)辛い感情にとらわれているとき
- 感情は敵でもなければ味方でもない。辛い感情にとらわれている人は、脳の歯車が少しずつずれているわけでも、繊細すぎるわけでもない。感情とは、周囲の世界と体内で起きていることを理解し、意味づけしようとする脳の試みにすぎない。
- ネガティブな感情を区別する概念や言葉が乏しい人は、ストレスを受けると落ち込みの度合いが激しい。感情を区別する言葉が増えるほど、脳がざまざまな気持ちや感情を理解するための選択肢が増える。感情を正確に表せるようになると、感情をコントロールしやすくなり、ひいては心身のストレスを軽減できる。(参考:Willcoxの感情の輪)
(4)自信をなくしているとき
- 人間は自己中心的に考えがちなので、他の人も自分と同じ価値観とルールに従って生きていると思いやすい。したがって、批判は、あくまで批判する人の世界観に基づくものであり、そのもととなる人生経験、価値観、パーソナリティは人によって異なるという事実を無視している可能性が高い。
- 自分が強い人間だと思えない日には、そう思う必要はない。自分は弱い人間だと時折感じるのは、人間であることの一部だ。
- 自己を受容するにはまず、自分が何者で、どんな人でありたいかを理解する必要がある。それは自己認識から始まる。自己認識は内省によって得られる。幼い頃の経験や感情に対する周囲の反応のせいで、自分のある側面を他の側面より受け入れがたく感じることがある。自己受容できるかできないかは感情や経験に左右される。
(5)不安を感じているとき
- わたしたちはさまざまな方法で不安を回避しようとする。安全行動はそのときの不安を麻痺させるが、将来の不安を解消するのには役立たない。むしろ逆効果。安全行動は将来への不安を煽り、人はその行動に依存するようになり、人生はいっそう困難になる。
- ACT(Acceptance and Commitment Therapy)で時々用いるタスクは、自分の墓碑銘を書くことを想像すること。墓石に数行だけ書くとしたら、何を書きたいだろう? 他の人の考えを推測するのではなく、自分が何を重視しているかを探ろう。すなわち、今日から拠りどころにして生きたいと思う人生の意義だ。
(6)ストレスを感じているとき
- 有意義な人生にはストレスはつきもの。何に価値を置き、何を目指していても、それを達成するにはストレス反応が必要とされる。ストレスは、自らの価値観に沿って努力し、目的と意味のある人生を送っていることの反映。ストレスを活用する方法を学び、必要に合わせてその強弱をコントロールできるようになれば、それは最も価値あるツールになるだろう。
- ストレス反応を鎮めるための、最も即効性のある方法の1つは、吐く息を吸う息より長く、強くすること。目指すべきは、ストレスをすべて解消して、すっかりくつろぐことではなく、ストレス反応の利点(覚醒など)を活かし、不都合な点(心配や困惑など)の度合いを下げて、可能な限りベストな状態になること。
(7)心が満たされないとき
- 価値観は達成できるものではない。価値観は、人生をどのように生きたいか、どのような人になりたいか、どのような原則を貫きたいか、といったことだ。価値観とは、わたしたちが行うこと、それを行うときの態度、それを選択する理由。人生にはさまざまな変化がつきもの。したがって、自分にとって何が最も重要であるかを、定期的に見直すことが大切。
- 自分の価値観のどこまでが自分の願望によるもので、どこまでが他者の期待の影響なのかは往々にしてわかりにくい。どの価値観が本当に自分のもので、どれが押し付けられたものかがわかれば、人生のある側面が充実感より疎外感をもたらす理由がわかるだろう。
3.教訓
正直なところ、落ち込むときも、自身がないときも、不安やストレスを感じる日もあります。「自分が強い人間だと思えない日には、そう思う必要はない。自分は弱い人間だと時折感じるのは、人間であることの一部だ」という記載には、ホッとさせられます。
また、「自分の墓碑銘に書くとしたら?」というのも、考えさせられる内容です。いわゆる、「○○な者、ここに眠る」に、何と書くかということです。鉄鋼王カーネギーが有名です。自分が何を大切にして人生を過ごしてきたかが問われます。
冒頭に引用したように、”心の健康を保つためのツールがぎっしり詰め込まれた、「一生使える道具箱」”なので、今回紹介しきれないくらいたくさんのことが書かれています。中には、「ツール」や「試してみよう」として、実際にエクササイズとしてできることもあります。
全体で350ページ超あるので、読んだ内容のすべてを理解して、覚えて、実践する、というのは正直難しいと思います。記載のとおり、「その時々で必要なページを開き、有益なツールを見つけて」使うのが、現実的な活用方法だと思います。



