管理職おすすめの仕事に役立つ本100冊×2

課長経験者が身銭を切る価値のあるのおすすめ本だけを紹介するページ(社会人向け)

休養学 あなたを疲れから救う 片野秀樹 著

1.はじめに

最近、自分でも疲れてるな、と感じることが増えました。

そこで、今日くらいゆっくり寝たいな、と思ったとしても、年齢を重ねていくと長時間寝られるものでもないし、夜中に目が覚めてしまうこともしばしばあります。そんな中、表紙に”「休むこと=寝ること」ではありません。”、と大きく書かれた本書が気になり手に取りました。

以下では、自身が強く関心を持ったところだけ引用していきます。

2.内容

(1)日本人の8割が疲れている

  • 人間は疲労感をマスキングして、一時的に忘れることができる。そのため疲れを考えに入れず、朝の体力が100あれば、1日中100のパフォーマンスを出せるはずだと勘違いしてしまいがち。しかし現実には自分の体力から疲労を引いたものが、自分が出せるパフォーマンス
  • アスリートたちは「超回復理論」に基づいて、激しいトレーニングのあとに必ず一定の休養をとることでパフォーマンスを上げていく。「必ず」「一定の」休養をとることがポイント。休むからこそ、身体能力が一段上に上がる

(2)科学でわかった!疲労の正体

  • 疲労感とは「あなたは疲労しています。これ以上活動を続けると危険ですよ。今すぐ休みなさい」という警告。もし体が疲労感という危険信号を発しなければ、私たちはどこまでも心身を酷使して、そのうち病気になってしまう。
  • 使命感や仕事のやりがい、褒章への期待、あるいは「ここでがんばらなければみんなに迷惑をかけてしまう」という責任感などによって、疲労感を覆い隠すことができる。
  • 問題は疲労感のマスキングを恒常的に繰り返してしまうこと。自分が疲れていることを認めず、十分な休養を取らずに活動を続けていると、今度は少し休んだくらいでは疲れが回復しなくなる。疲労の蓄積の始まり。こうなると疲労が回復するまで、予想以上に時間がかかる。
  • 代謝を担う主な部位は肝臓、脳、腎臓、膵臓などだが、疲労が蓄積して内分泌系が疲れてしまうと、その結果、内分泌系代謝作用を促すホルモンの異常が見られるようになる。内分泌系の病気には、糖尿病、高脂血症脂質異常症)、高尿酸血症痛風)などがある。
  • 自律神経が乱れると、不安や焦燥感で眠れない、集中できない、頭が痛い、倦怠感がある、イライラする、疲れやすい、食欲不振などの症状を訴えるようになる。これらの症状は「検査値には異常がないけれど本人は不調を感じる」というもので、いわゆる不安愁訴といわれることもあり、「疲れ」のサイン
  • ストレスから疲労が起こり、免疫系の不調につながる。免疫はがんからも守ってくれている。がん細胞は毎日生まれているが、すぐに免疫系が見つけて対峙しているので多くの場合は発症せずに済んでいる。しかし免疫系の働きが低下すると、がん細胞が勝ってしまい、がんを発症することになる。

(3)最高の「休養」をとる7つの戦略

  • 辞書を引くと、疲労の反対語は「活力」であると書いてある。休養だけでは50%しか充電できなくても、活力を加えて満充電に近いところまで持って行く。
  • 疲れたら、休みつつ、負荷をかける。次の4条件を満たすことが必要。あくまでポジティブな負荷を課してみるのが大切。
  1. 自分で決めた負荷であること
  2. 仕事とは関係ない負荷であること
  3. それに挑戦することで、自分が成長できるような負荷であること
  4. 楽しむ余裕があること
  • 休養学では休養の7タイプを定義している。この7モデルを日常に取り入れることで、疲労回復は促進される。
①生理的休養その1:休息タイプ
  • 休憩には注意が必要。「1日中ベッドでゴロゴロしている」「ソファに横になって映画や動画を見まくる」といった休み方は、疲労をゼロにすることはできても、活力を高めるという意味ではあまり効果がない。
②生理的休養その2:運動タイプ
  • 運動すると血液の流れがよくなり、細胞の1つひとつにしっかりと酸素と栄養を運ぶことができる。それによって老廃物の除去が促進されたり、リンパの流れがよくなったりするので、疲労感の軽減につながる。「血のめぐり」をよくすることは健康の基本。それには体を動かすのがいちばん。
  • 風呂に入ると水圧がかかるので、1か所にとどまっていた血液が心臓に押し返される。そのため血行がよくなり疲れが取れる。
③生理的休養その3:栄養タイプ
  • 活力を得るためには、必要以上に食べないことを心がけること。それが体に休養を取らせることになる。
  • よく「甘いものを食べると疲れが取れる」というが、正確には疲れを一時的に覆い隠しているだけ。楽しみとしてケーキやチョコレートなどを食べるのはかまわないが、お菓子を食べたからといって疲れが取れるわけではない。
心理的休養その1:親交タイプ
  • スキンシップやハグをしなくても、言葉を交わすだけで十分「親交」になる。親しい相手でなくても、職場の人と朝のあいさつを交わすとか、近所の人やなじみの店員さんに「お疲れさま」「最近、調子はどうですか?」「元気ですか」といった声掛けも親交の一種。人とコミュニケーションすること自体が、自分の感情をポジティブにする。
心理的休養その2:娯楽タイプ
  • 娯楽とはいえなくても、たとえば「鼻歌をうたう」「爪を切る」「窓を開けて空気を入れ替える」「歯磨きをする」といった何気ないことだが、十分に気分を変えてくれる。自分なりの気分転換法は、ぜひ書き留めておいてほしい。
心理的休養その3:造形・想像タイプ
  • 1つのことに集中すると、疲労を忘れることができる。形のある、目に見えるものを残さなくても構わない。好きなことについて空想するだけで十分。
⑦社会的休養:転換タイプ
  • 転換とはまわりの環境を変えること。大がかりなものでなくても構わない。転換タイプの最たるものが旅行。普段とまったく違う環境に身を置くわけだから、とてもいい休養になる。買い物や外食でも構わない。

大事なのはここから。実はそれぞれのタイプを複合的に行うことで、疲労回復効果が2倍にも3倍にもある。複数のタイプを自由に組み合わせていく。

(4)眠るだけでは休養にならない

  • 若いころはいったん眠りにつくと朝まで一度も目が覚めないのが普通だが、中高年になると、夜中に何度か目が覚めるようになる。高齢者には「眠れない」「睡眠が足りない」と訴える人が多いが、実際は睡眠量はそれほど変わらない。おそらく中途覚醒が多いので、睡眠が足りない感じがする。
  • 夜になるとメラトニンという睡眠誘発ホルモンが出てくる。メラトニンは、朝起きて太陽の光を浴びてから14~16時間後に分泌が始まるので、寝る14~16時間前に日光を浴びることで、メラトニンの分泌の時間を入眠時間に合わせて調整すれば、薬に頼らず睡眠時間を調整できる。

(5)新しい「休み方」を始めよう

  • 卵が先か、鶏が先かというような話だが、とにかく「平日のあとの土日で休む」のではなく、「土日に休んだ分で平日働く」と考えるようにしてみる。
  • 仕事の合間のちょっとしたすき間時間でも十分に休養にあてることができる。たとえば立ち話は「親交」の要素も「転換」の要素もある。少しだけ行動を変えることで休養の質はどんどん高まっていくはず。
  • 100%のパフォーマンスを前提に契約しているのに、50%のパフォーマンスしか出せなければ、会社からすればむしろ損失になっている。それよりは有休を消化してでもしっかり休みを取り、100%のパフォーマンスが出せる状態で会社に行くことが会社のためにもなる。

3.教訓

本書を読んでまずよかったのは、疲れを感じている、夜中に目が覚めてしまうのは、自分だけではないとわかったことです。感覚だけではなく客観的なデータから見てもそうだということがわかると、安心できます。

「土日に休んだ分で平日働く」という考えにも納得感が得られました。土日に何をするかで、次の1週間の質が決まるということだと思います。例えば、土日にこれからキャリアコンサルタントの資格取得を目指している受験生の支援活動をしています。その面談練習が「親交」にも、一緒に資格合格を目指して勉強してきた社外の友人とサポート役として定期的に集まり、勉強会後に食事をすることが「転換」にもなっています。10kmくらい先の会場まで自転車で行くことが「運動」であり、自分でも知らず知らず、複合的に休養学を実践できていた、ということがわかりました。

実際には木曜や金曜になると、日中に眠気を感じ電池が切れかかっていると感じることが多いです。その時には良くないこととは認識しつつもどうしても栄養ドリンクに頼ってしまっています。しかし、疲労回復しているわけではなく、疲労感をマスキングしているだけ、というのは確かになと改めて認識を新たにしました。そこでこれから栄養ドリンクに頼らない、と短絡的に考えるのではなく、疲れのサインが出ていることを認識し、うまく疲労と休息と活力のバランスを考慮しながら、うまく自分の体調やストレスに向き合っていく必要がある、という学びにつながりました。

絶対悲観主義 楠木 建 著

1.はじめに

会社の先輩に、なんだか仕事がうまく運ばない、ということについて相談していたところ、本書を勧めていただきました。

まず、帯を見たときに「心配するな、きっとうまくいかないから」と大きな文字で書かれています。昔読んだ「GRIT」も、最近よく耳にする「レジリエンス」も不要、と書かれています。そして、「はじめに」の中にも以下の文言が登場します。

”緊張と弛緩は背中合わせの関係にあります。長く続く仕事生活、緊張だけでは持ちません。弛緩もまた大切です。弛緩があるからここぞというおtきに集中できる。筋トレとストレッチのような関係です。”

”こと仕事に関していえば、そもそも自分の思い通りになることなんてほとんどありません。この身も蓋もない真実を直視さえしておけば、戦争や病気のような余程のことがない限り、困難も逆境もありません。逆境がなければ挫折もない。成功の呪縛から自由になれば、目の前の仕事に気楽に取り組み、淡々とやり続けることができます。GRIT無用、レジリエンス不要-これが絶対悲観主義の構えです。

どんな本だろうと思い読み始めて、ところどころで出てくるユーモアのある表現に通勤途上の電車の中で声を我慢しながら笑って読み進め、読み終えたときには心が軽くなったような気がしました。

以下では印象的な部分に絞って引用します。

2.内容

(1)絶対悲観主義

  • 仕事は趣味とは異なる。趣味でないものが仕事、仕事でないものが趣味、というのが僕の整理。趣味は徹頭徹尾自分のためにすること。自分以外の他者に何らかの価値を提供できなければ仕事とは言えない
  • 仕事である以上、絶対に自分の思い通りにならないと僕は割り切っている。「世の中は甘くない」「物事は自分の都合のいいようにはならない」、もっと言えば「うまくいくことなんてひとつもない」-これが絶対悲観主義。ただの悲観主義ではなく「絶対」がつくところがポイント
  • 仕事の向かう先にいるお客は自分の思い通りにはならない。野球であれば、どんな好打者でも凡打の方が多い。それでも負け方は確実にうまくなっていく。負け方がきれいな人こそ本当のプロ
  • 能力に自信がある人ほどプライドが高い。そういう人は失敗したときに大いにへこむ。プライドは仕事の邪魔でしかない。傷つくのがイヤで怖いから身動きがとれなくなる。動くときにも何とか失敗を避けようとするので、ヘンに緻密な計画を立てたりする。もちろん計画通りにいくわけないので、ますます疲弊するという悪循環に陥る。

(2)幸福の条件

  • 財前五郎のように「白い巨塔」の頂点に到達するのが幸せだと言う人もいれば、「黒い巨塔」の底辺にいるのが幸せだと言う人もいる。これが幸福の面白いところ。
  • 人は「幸福になる」ということと、「不幸を解消する」ということを混同しがち。不幸になる要因をどんどん潰していけば幸せになれるかというと、そんなことはない。その先にあるのはただの「没不幸」。
  • マクロ他責の鬱憤晴らしは悪循環の起点にして基点。そのときはちょっと気が晴れるかもしれないが、繰り返しているうちにどんどん不幸になっていく。しょせん1回の人生、1人の自分しか生きられない。人生晴れの日ばかりではない。それでも、生活の充実は「今・ここ」にしかない
  • 幸福ほど主観的なものはない。幸福は、外圧的な環境や状況以上に、その人の頭と心が左右するもの。あっさり言えば、ほとんどのことが「気のせい」だということ。「これが幸福だ」と自分で言語化できている状態、これこそが幸福に他ならない。

(3)お金と時間

  • 要するに、時間は平等な資源だということ。1日の時間は誰しも24時間。動かしようがない。お金ととがって時間には貯蔵性がない。買うこともできない。生きているだけで、必ず1日24時間が公平に支給される。時間と言う資源の使い方が誰にとっても関心事になるゆえん。
  • しばしば約束の時間や締め切りを破る人がいるが、「私は嘘つきです」「私は泥棒です」と公言しているに等しい。受ける以上は締め切りを守る。締め切りが守れないような仕事は受けてはいけない。断るのも能力のうち。これもまた重要なトレードオフ

(4)自己認識

  • 全員から受け入れられるということはあり得ない。ネット上で罵倒されることもしばしば。そのうち、罵倒されるのが面白くなってきた。被虐趣味ではない。「あ、こういう人からちゃんと嫌われている」という確認ができる。これが仕事にとても役に立つ。
  • 服に興味関心がある人にとっては、服装を選ぶプロセス自体に価値があるわけで、それを丸ごと人に任せてしまうのはそもそも関心がないということ。自己認識を診断ツールに頼るのは、ありていに言って、自分に関心がない。もっと自分と向き合い、自分を大切にしたほうがいいと思う。
  • 自分の経験と自分の頭で、自己認識を深めていく。日々の経験のすべてが自己認識の材料を提供している。近道はないが、回り道もない。お客とのラリーの中で自己認識を深めていくプロセスこそが重要。そこに仕事生活の核心がある

(5)チーム力

  • チームの定義は「お互いの相互依存関係を理解し合っている人間の集団」。この定義からして、チームには規模の上限がある。お互いの顔が見えないのはもちろん、そこにある程度相互依存関係を認識できないから。
  • 目的が達成できた時点で、ミッション・コンプリート。それぞれが自由意思で次に向かっていく。それぞれの中に、「あのときはよくやったな」とか、「あいつは頼りになったな」という記憶は残る。でも、引きずらない。記憶が残ればそれで充分。スカッとした「終わり」があるというのがいいチームというのが僕の考え。
  • 会社全体の組織を云々する前に、自分たちのチームを良くするのが先決。組織全体のあり方はすぐにはどうにもならない。それでも仕事の現場で動く自分のチームについては、今すぐに変えられることが多々あるはず。
  • 現状に問題を感じ、変革を起こしたければ、問題を組織の構造や制度にすり替えないことが大切。新しい制度設計を待たず、まず自ら動く。とりあえずは自分の影響の及ぶチームに新しい動きを起こし、明らかな成功例をつくる。組織の他の人々に成果が見えれば、賛同する人が出てくる。その他大勢もそのうちついてくる。制度化やシステム化を考えるのはその後で十分。構造変革を待たずに動き出すのが本当の構造変革者

(6)友達

  • 友達というのは偶然性、反利害性、超経済性という条件を備えた人間関係である。つまりは「縁」。偶然とか無意識というものが重なって、ひょんなことから縁が生まれる。
  • たまに会っても話をしているだけで面白い。次に会うのが楽しみになる。こういう人が本当の友達だと思う。ダークサイドも含めて自分をさらけ出せる人間関係というのは、実に気持ちがイイということに気づいた。

(7)「なり」と「ふり」

  • 自分のスキなことをやっていて、人がどう思うかは全然気にしていない。それぞれの原理原則がはっきりしている。一緒にいると、この人はこういう人なんだよなということがすごくよくわかる。これが個人的に知る上品な人の共通点。
  • 品が良いということは、お釈迦様のように世俗的な欲望から解脱してしまうことではない。普通に欲はある。ただそれをなりふり構わず取りに行かない。欲望が「ない」のではなく、あくまでも欲望に対する速度が「遅い」ということ。
  • 現実には「総取り」はない。捨てることについてはきっぱりとあきらめて、執着しないのが上品な人。上品さや、欲がないということではなく、むしろすごく欲がはっきりしているとも言える。だからこそ、それ以外には無頓着になれる。潔さのメカニズムはそういうことだと思う。

(8)失敗

  • 人間は失敗の直後に正しい対応を取ることはできない。大きなショックやダメージを受けたときには、風船に穴があいたような状態になってしまう。本来回復に向けて動いていくためのエネルギーが、その穴からシューッと漏れていく。そういう状態のときにじたばたしても、正しい判断や行動ができない。回復どころかさらに間違った行動に出る。ダメージがさらに大きくなるという悪循環に持ち入り、自滅してしまう。
  • 失敗をすると正論を振りかざして責め立ててくる人が必ず現れるもの。そんなものを気にする必要はない。たとえその人が言う正論のとりに行動したとしても、失敗を避けられたかどうかはわからない。正論は単なる建前論で、何か責めてくる側が主張を正当化するための詭弁であることは多いもの。

(9)痺れる名言

  • 仕事になると、「命を懸けてやっている」とか「死ぬ気でやれ」とか言う人がいるが、本当に死んだ人はあまりいない。「仕事は仕事」と思っていたほうがかえって気持ちよく集中できる。これは大変だという事態に直面しても、「いや、そんなに大層なことではない」と思えば、また切り抜けるアイデアも出てくるというもの。
  • 周りの人を観て、俺も立ち上がろうかなと思いがちだが、機が熟していなければ、もう少し座っていようーこの構えが結局は仕事の質を高めることにつながると考えている。

(10)初老の老後

  • 自分を含めていろいろな人を見てきて思うに、「出会い頭」や「ひょんな縁」「成り行き」の積み重ねでこうなっているわけで、なるようにしかならない。結局は自分の身の丈というか、自分の実力の範囲でしか仕事はできない。それでも、なるようにはなる。禅問答めいているが、結論は「なるようにしかならないが、なるようにはなる」
  • 物理的な死の前に、才能や能力の枯渇が訪れるのが普通。世の中から相手にされなくなるときが、いつか必ずやってくる。これから先の仕事生活、絶対悲観主義の構えがますます大切になってくると実感している。

3.教訓

自身の勤める企業にはキャリアコンサルタント制度があり、いま心に抱えているモヤモヤについて、先日相談してきました。

自分からは「本来、これくらいやるんだろう、という理想がある。しかし、周囲に比べて自身の今の知識や経験では追いつかないのが現実。」という話をしてきました。そうすると、「まずは自分としての理想を描けている時点で素晴らしいこと。自分で動いてみたからこそ、理想と現実の違いが見えてきたわけで、進んでいる証拠。」というお話をいただきました。

また、上席にもなかなか仕事で貢献できていないことを正直に伝えました。すると「昔から進展してこなかった領域で、簡単なことをやっているわけではない。少しでも動き始めているし、もし理想通り進められなかったとしても首を取られるわけではない」ということを言われました。

それらの話があり、そして本書も読み終えて、「今までちょっと自分が構えすぎていたのかも」、と思うようになりました。

”「うまくいくことなんてひとつもない」-これが絶対悲観主義。ただの悲観主義ではなく「絶対」がつくところがポイント。この言葉を噛みしめていきたいと思います。

本書のはじめにの一番最後に書かれていた、”筋トレに明け暮れがちな読者にとって、本書が思考のストレッチとなれば幸いです。”という部分が少し理解できたような気がする良書でした。

50代からの幸せな働き方――働きがいを自ら高める「ジョブ・クラフティング」という技法 高尾義明 著

1.はじめに

ジョブ・クラフティングは、多くの人にとって、あまりなじみのない言葉かもしれません。本書の冒頭に以下のように説明されています。

自分の仕事を主体的に捉え直すことで、自分らしさや新たな視点を入れて、やらされ感のある仕事をやりがいのあるものへと変えていく考え方のことです。一言で伝えるときには、「仕事の中に自分をひと匙入れる」というたとえを用いています。

自身はキャリアコンサルタントの勉強をする中でこの言葉は知っていたものの、私もあと数年経てば50歳になりますので、より深く理解しようと思い購入しました。

以下では特に重要と感じた部分を引用していきます。

2.内容

(1)ジョブ・クラフティングの基礎

  • ジョブ・クラフティングとは、「働く人たち一人一人が、自らの仕事経験を自分にとってよりよいものにするために、主体的に仕事そのものや仕事に関係する人との関わり方に変化を加えていくプロセス」のこと。重要なポイントは、①主体的に変化を加えることと、②変化の目的を自分で考えることにある。
  • 変化が小さければ自分以外の周りの人からは変化を捉えてもらえないかもしれない。しかし、ジョブ・クラフティングで大事なのは、自分自身が主体的に行ったかどうか。自分自身では、変化を加える前後に違いをはっきり捉えることができるはず。
  • ジョブ・クラフティングには、自分自身の心の中だけで変わるものも含まれている。いいかえれば、物理的な変化だけでなく、仕事や人の見方を変えるといった認知的な変化もジョブ・クラフティングだということ。
  • ジョブ・クラフティングで大事なのは、自分で何かを変化させることができるという実感を持てるかどうかであり、その変化の大小にこだわる必要はない。

(2)ジョブ・クラフティング・マインドセット

  • 自分は(ジョブ・クラフティングを通じて)仕事を変えることができる、というジョブ・クラフティング・マインドセットが、ジョブ・クラフティングの実践を左右する。
  • 近年、人事・実務の世界では、ホームとアウェイを行き来する越境は、個人の学習・成長を促すことにつながるとして注目されている。社外での勉強会への参加や社会人大学院などへの通学、ボランティア活動、副業(複業)などが典型的なものとして取り上げられている。

(3)最初の一歩を踏み出し、習慣化を図る

  • 最初は周りに影響しない範囲で自分が進めていく仕事の段取りを小さく変えることから始めるといい。ポイントは、自分で自分のために変えること
  • 2つ目はの方法は、周囲を見渡しても誰も手を付けていない雑用を、自分が無理なくこなせる範囲で積極的に引き受けてみること。雑用に意識的に取り組むことで、自分が得意なことが見えてくるかもしれない。
  • 身近な人たちに自分が何かを提供しており、どのように役にたっているかを考えることは、認知的クラフティングのきっかけになる。
  • 自分の仕事を俯瞰する際に注意すべきポイントは、過去の自分の仕事や他の人の仕事と比較してはいけないということ。「以前の職場で働いていたときの方がもっと大きな貢献ができていた」「同期は自分よりずっと活躍している」などという比較は無意識に行ってしまいがつだが、ここは視点を変える。皆さんもそれぞれの持ち場で何らかの貢献をしている。
  • ささやかなものであるからといって、簡単に継続できるわけでもない。小さなジョブ・クラフティングだとしても、それが習慣化するにはある程度の日数や回数が必要。小さなジョブ・クラフティングから初めて、小さな変化を積み重ねていくことが、「自分で仕事やその環境を変えられる」というジョブ・クラフティング・マインドセットにつながる。すぐに効果が出なくても、焦らず継続することが重要。

(4)ジョブ・クラフティングを継続・発展させる

  • いずれの異動でも、仕事の内容や仕事で接する人たちが変わってくる。異動は新たなジョブ・クラフティングを始めるフレッシュスタートの機会にもなる。また、環境が大きく変化した場合には、業務自体を変えるクラフティングよりも、人との関係性に関するクラフティングの方が着手しやすい。
  • ジョブ・クラフティングがもたらす過剰がある種の副作用をもたらし、持続可能性を低下させることを示している。そうした過剰には、①こだわり”すぎ”、②偏り”すぎ”、③抱え込み”すぎ”の3つの「すぎる」とわかりやすく表現されている。
  1. こだわり”すぎ”:結果として働き”すぎ”になり、負担が過大になってしまうと、ジョブ・クラフティングが持続可能でなくなってしまう。
  2. 偏り”すぎ”:偏りすぎによって、他の人の意見を取り入れて仕事の成果や生産性がいっそう向上する可能性が失われたり、他の人に対して頑なな態度を取ることで周りからの眼が厳しくなったりすることもあるかもしれない。
  3. 抱え込み”すぎ”:自らの想いを大事にしすぎると、部下や若手になかなか任せることができず、周りからは抱え込み”すぎ”とみなされることもある。自分のこだわりや強みをいかに発揮するかとともに、それをどう継承していくかという意識も求めれられるようになる。
  • 自分の仕事に対する他者からの期待が変えられそうにないならば、ジョブ・クラフティングを行う前に変化や工夫の内容について話してみるとよい。そうした話し合いが、関係性クラフティングのきっかけになるかもしれない。
  • どういった目的で何に力を注いでいるのかが周りから見えにくいと、それがチームや組織にプラスに働くことを意図したものであっても、自分勝手に仕事をしていると受け取られる可能性もある。
  • ジョブ・クラフティングの幅を広げるという観点から言えば、DXにこだわる必要はない。あくまで自分起点であることがジョブ・クラフティングの大原則。スキル・クラフティングの際は、まずは自分が関心を持てる対象について検討するのがよい。
  • 常識や文化の違う場や状況を経験することで、新しいものの見方に触れたり、自分の当たり前を疑う機会に直面したりすることで、ジョブ・クラフティングの幅が広がるということもある。
  • クラフティングとは、自分起点で変化を生み出しながら、物事の捉え方を変え、対象との関わり方を変えること。このようにクラフティングを捉えるならば、変化させる対象は仕事だけに限定されない

(5)職場や組織からのサポート

  • ミドル・シニア層なら自分でできるだろうと考えがちだが、そういう人は多数派ではない。ミドル・シニア層自身がそのような立場になるのは初めてであり、不安や迷いを抱えていることが多いから。具体的にどうすればよいかを示せなくても、上司がサポートする姿勢を示すことは、ミドル・シニア層が前向きな変化に向かう支えになる。
  • もちろん、ミドル・シニア層が変わることを期待していても、そうした全員が短期間に良い方向に変わるということは相当難しい。それでも、小さな変化を捉えながら、彼らが変わりうるという信念を持ち続けようとすることが大事
  • ジョブ・クラフティングの最も有効な伝え方の1つは、上司などの支援者自身が、自分がひと匙を入れているところを見せたり、自分の取った行動をジョブ・クラフティングの観点から解説すること。それが、部下や後輩のジョブ・クラフティングの促進に弾みを付けることになる。
  • 年齢を重ねるとともに、同じ年代間の個人差は拡大していく。にもかかわらず、「50歳以上の人は・・」といった、年齢によるストレスタイプが当てはめられることも少なくない。そうした高年齢者に対するステレオタイプの当てはめはエイジズムと呼ばれ、一種の差別であるとされている。年齢包括的な職場風土の醸成がこれから重要な課題になる。

3.教訓

自身も最近異動を経験し、同じ会社でありながら違う事業だと文化も考え方も全く異なる環境に身を置いています。越境学習をしているようなもので、そのため2(4)の内容は特に身に沁みました。

今の苦境を相談していた社外の友人からも「異動は転職みたいなもの。まずは周囲を伺って、人間関係の構築から始めればいい。」と、ほぼ同じようなことを言われ、ものすごく納得感を得ました。

確かに、以前の部署での仕事と今を比較してしまっています。この状況のまま今の仕事を続けるのかはわかりませんが、どこに向かっていくにしろ、「自分で仕事や状況を変えられる」というジョブ・クラフティング・マインドセットは持ち続け、何かひと匙足してみよう、と焦ることなく向き合っていきたいと思います。