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AI分析でわかったトップ5%社員の習慣 越川慎司 著

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AI分析でわかったトップ5%社員の習慣 [ 越川 慎司 ]
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1.はじめに

「5%社員」とは、著者が代表を務めるクロスリバー社が605社の働き方改革の支援を行ってきた過程において調査した、各社の人事評価の「上位5%」に入る集団のことです。 

あとがきにもあるように、その人が「上位5%」であることを知らせずに、ICレコーダーやWebカメラを使って、行動パターンを分析した結果がまとめられています。

ただ、この読書の目的は、その結果を「知ること」ではなく、適用できる行動パターンを試して「行動すること」とも記されています。

また、シリーズ化もされていて、”リーダーの習慣”や”時間分析”についても出版されています。

2.内容

(1)序章 AIで18,000人分析してわかったずば抜けた結果を出す人の5原則

原則1:「目的」のことだけを考える
  • 5%社員が大切にしているのは達成感。達成のためには目標が必要で、目標を自分で設定して、最短距離で達成しようとしている。一方、一般社員は、目標を明確にしないで仕事をする人が少なくない。よって、達成に近づいていないにもかかわらう、その作業時間で充実感を覚えてしまう。
原則2:「弱み」を見せる
  • 5%社員は、「自分がわからないことがある」「まだ学べていないことがある」という前提に立っており、他者から自分が持っていない知見を獲得しようとする。
  • 5%社員は、自分の弱みを出すことに抵抗がない。心構えとして不要なプライドに引っ張られることなく自分のできないことや弱点を相手に見せてしまう。決して弱い部分を見せることが目的ではなく、弱い部分を見せるという手段を通じて、相手の懐に入るという目的を持っている
原則3:「挑戦」を「実験」と捉える
  • 失敗の原因を責任転嫁していたは、スキルアップにつながらず、いつまで経っても結果を出すことはできない。失敗してもそれを改善の材料と捉え、次の行動を修正していけば成長できるし、成功にも近づいていく
  • そもそも5%社員は、失敗をさほど悪いものだと思っていない。むしろ成功しても学びがないことをネガティブにとらえる。
原則4:「意識改革」はしない
  • 意識を変えて行動するのではなく、行動を変えることによって意識が変わる。そうやって行動を継続していくと、行動変容が習慣に変わる。
  • 「~すべき」と正論をかざしても、抵抗勢力は動かないこと5%社員は理解している
原則5:常に「ギャップ」から考える
  • 5%社員は、自分の判断が100%正しいとは思っていないので、途中でしっかりと振り返り、柔軟に行動を修正していく姿勢でのぞんでいる。結果として、この修正力が無駄な作業を生まないようにしている。
  • 優秀なリーダーは、途中経過として「うまくいっているところ」と「うまくいっていないところ」を包み隠さずに顧客や上司に報告する。最後の最後になって「できませんでした」や「遅れます」と相手が言われたら困ることを理解している。

(2)良かれと思ってやってしまう「95%社員」の行動

  • 作業していることに満足しているだけでは、目標達成はできない。何より働いた時間に対して評価されることはなくなっていく。95%の一般社員は作業が終わった充実感に満たされ、5%社員は成果を残した時の達成感を目指している。
  • 作業の目的を必ず確認し、まず目的を明確にして、何が達成されたら成功かをイメージする。資料が完成して終わりではなく、提案書を提出したり説明会が終わったりして完結するのではなく、その後に相手が動いてくれたかを確認する。
  • 何とか時間を生み出して、緊急度は低いが重要度が高いものに時間を割り当てられることができるか、というのが成果を出し続けるうえでのポイント。重要度が高ければ、緊急度にかかわらずにやらなくてはいけない。
  • 5%社員の特筆すべき点は、上司やチームメンバー、顧客への連絡の迅速さ。小さなことでも、すぐに報告の連絡をして、自分の中で閉じることをしない。5%社員は周囲から、「あの人は複数いるのではないか」と噂されるほど、反応が早くそしてマルチタスクでこなしていく。
  • 5%社員の課題解決方法を調査すると、「デザイン思考」と似ていることがわかった。「デザイン思考」とは、ユーザの痛みや悩みを理解し、その発生原因を定義して仮説を立て、それを外部のヒアリングをもとに解決策を改良していく問題解決の「型」。「どうやって」解決するかの前に、「なぜ」その問題が発生したのかを追求する

(3)トップ5%社員のシンプルな思考と行動

  • 5%社員は、自分でコントロールしにくい「相手からの承認」に依存することなく、自分が成長することを目指している。相手にどう評価されるかではなく、自分の目指すべき姿にどれくらい近づいたかが重要。
  • 何も挑戦しないことに対して、失敗のリスクがないとはいえ、「失敗を成功へのステップと捉えるならデメリットとは言い難い」と捉えている。
  • 挑戦には必ずデメリットが含まれていることも理解する。このデメリットばかりに目がいって、リスクをゼロにしようとすると時間も費用もかかり結果的に行動をしにくくなっていく。5%社員は、デメリットありきで、メリットの方が大きければ行動する習慣を持っている。見えないリスクをいくら論じていても前に進めないから、まず小さく始めて修正しながらリスクを最小化していくことで、結果的に成功に近づいていく
  • 100%完璧を目指して計画を立てると、準備に大量の時間をかけ、行動すら起こさずに終わってしまうこともある。「より短い時間でより大きな成果を残す」というルールの中では、完璧を目指さずにやめるべきことを決めないといけない
  • 本質的な価値とは、なぜそれがうまくいったのか、その構造やプロセスを解き明かし再現できること。成功にも必ず要因がある。それをしっかり把握すれば、成功までの道のりがわかるようになり、安定して高い成果を出し続けることにつながる。
  • 5%社員のように「さらに良くなりたい」という改善の欲求がないと、成長は止まる。こういった行動実験を続けていかないと、「再現性を持った人」ではなく、「同じことしかできない人」になりかねない
  • 1人が笑顔になればつられて周りも笑顔になる。会議の冒頭2分でくだらない雑談をすると、笑顔の人が増え、結果として心理的安全性が確保されて、会議で出されるアイデアが増える。相手を笑わせようとする必要はなく、「自分が笑顔でいること」が大切。自分が笑顔になれば、それが伝播して相手も笑顔になる

(4)トップ5%社員の強いチームをつくる発言

  • 組織内で円滑なコミュニケーションを取るためには、特段の用がなくても同僚に話しかけて相手に関心を持ち、良好な関係を構築する必要がある。5%社員は「今ちょっといい?」をよく使う。このカジュアルなコミュニケーションを組織に浸透させると、働きがいや満足度が増し、業務にプラスの影響が出る。
  • 上位20%ぐらいの若手エースに多い「これ絶対におかしい、こうすべき」と「べき論」を一方的に主張したところで意見は通りにくい。5%社員は意見をするときに、他者への配慮や感謝を当然忘れない。「メンバーがどうしたら気持ちよく協力する気になってくれるか」を考えて発言する
  • 5%社員が一般社員と異なるのは、自分に対する自信と強い信念があるから。これと決めたらブレずに突っ走る。5%社員は絶えず内省を繰り返して、自分だけの価値観を磨いていく。その価値観を元に、一般的に信じられている常識や道徳を疑っていく
  • 5%社員は会議の最後でアクションを決めないと成果につながらないことを知っている。会議は、①情報共有、②意思決定、③アイデア出しの3種類に分類される。その中で意思決定では才数的にアクションを決めなくてはいけないことを5%社員は理解している。最終的にYesかNoか、そして誰が何をやるかを決まらないと前へは進めない
  • 5%社員はダ行(だけど、でも、ですから、どうしても)を使って話す頻度が少ない。ダ行は断定しているように聞こえるため、聞き手にとって耳障りが悪く、言い訳に聞こえてしまう。ダ行の代わりに、サ行(そうですか、そうしたら、しかし、失礼しました、承知しました)を使うと相手の感情を逆なでしない。

(5)トップ5%社員のすぐやる習慣

  • 5%社員は、時給を上げるためには「信頼を築くこと」が極めて重要であることを知っている。相手が動くのは、自分の主張を「伝えた」からではなく「伝わった」から。「伝わる」には、その人に伝える資格がなくてはいけない。相手は「この人の話なら」といって聞いてくれる。
  • 5%社員は、日ごろから重要なメールを送る相手と密なコミュニケーションを取っており、メールに「お疲れ様です」の一言がないくらいではどうこう言われる関係ではない。5%社員のメールは非常にコンパクトでありながら、受け取る側に冷たい印象を与えない。メールの文章が短いということは、打つ時間も短くて済むため、他の時間に仕事を充てられる。
  • 「それはできません」と言うことも非常に重要。仕事ができるがゆえに5%社員には多くの仕事や相談が降ってくる。これをすべて受けていては、自分が本当にやるべきことに費やす時間が少なくなる。自分が何をやるべきで、何をやるべきでないかを明確にして、「できないことはできない」と断ってしまう
  • 研修の目的は、学ぶことではなく、学びを業務に活かすこと。研修で重要なのは、動機付けをして自らが学ぶという気持ちを持たせること。学習意欲が高い状態で研修に参加すれば、吸収することも多く結果的に業務に活かすことができる。
  • 仕事の期限が守れない人は、仕事を受けた時点で不明確な見積りと曖昧な目標を持っている。この状態で仕事をスタートさせると、途中で不測の問題が起きてもセンサーが働かずにスルーしてしまう。発生して問題は処理も報告もされずに大きくなっていき、納期間際になって間に合う可能性がゼロになってから、「すいません、間に合いません」と報告する。これでは周囲も協力できない。
  • 5%社員は、インプットとアウトプットの時間差を縮めようとする。アウトプットとの時差を縮めるインプット方法とは、まず目的が明確であること。何をするにも、すべては「これによって自分は何を得ようとしているのか」という目標がクリアになっていることが前提。アウトプットが決まっていれば、インプットの後にすぐに準備に取り掛かれる

3.教訓

おそらく、既にマネジメント職についている人たちは、本書で紹介されている習慣のうち、既にいくつかは実践していると思います。

逆にそうしないと、本当に時間が足りなくなります。私自身、決して上位5%に入って出世しているわけではありませんが、「自分もそうしている」ということはいくつかありました。

また、今回引用した内容以外にも多くの習慣が紹介されていて、その人その人で参考になる項目は異なるかと思います。

ただし、自分がデキる人に思われたくて形から入ろうとするとおそらく失敗し、周りから「痛い人」に思われかねません。手段と目的をはき違えることなく、真摯な気持ちで向上を目指すことが何より重要だと考えています。

どちらかというと若手向けの内容と感じており、以下の「コンサル一年目が学ぶこと」とセットで読むと、一段上の考え方ができるようになるのではと思います。

bookreviews.hatenadiary.com

イシューからはじめよ 知的生産の「シンプルな本質」 安宅和人 著

1.はじめに

「シン・ニホン」でも有名な安宅和人さんの本です。

2010年に初版が発売されて以来重版を重ね、今でも多くの書籍で平積みで売られているところをよく目にします。

数年前に読みましたが、再読してみて改めて価値を認識したので、以下で引用しながら内容を紹介したいと思います。

2.内容

(1)はじめに

  • 「悩む」=「答えが出ない」という前提のもとに「考えるフリ」をすること
  • 「考える」=「答えが出る」という前提のもとに「建設的に考えを組み立てること
  • 仕事とは何かを生み出すためにあるもので、変化を生まないとわかっている活動に時間を使うのはムダ以外の何物でもない。これを明確に意識しておかないと「悩む」ことを「考える」ことだと勘違いして、あっという間に貴重な時間を失ってしまう。
  • 10分以上真剣に考えて埒が明かないのであれば、そのことについて考えることは一度止めたほうがいい。それはもう悩んでしまっている可能性が高い。

(2)この本の考え方ー脱「犬の道」

  • バリューのある仕事とは、「イシュー度」と「解の質」の両方が高い仕事。イシュー度」とは「自分のおかれた局面でこの問題に答えを出す必要性の高さ」、そして解の質」とは「そのイシューに対してどこまで明確に答えを出せているかの度合い」。このマトリクスをいつも頭に入れておくことが大切。
  • 絶対にやってはならないのが、「一心不乱に大量の仕事をして右上に行こうとすること」。労働量によって上に行き、左回りで右上に到達しようというアプローチを「犬の道」と呼んでいる。(以下引用をご参照)

president.jp

  • プロフェッショナルとしての働き方は、「労働時間が長いほど金をもらえる」というサラリーマン的な思想とは対極にある。働いた時間ではなく、「どこまで変化を起こせるか」によって対価をもらい、評価される。あるいは「どこまで意味のあるアウトプットを生み出せるか」によって存在意義が決まる
  • 「一次情報を死守せよ」というのは珠玉の教えの一つ。現場で情報に接するときに、どこまで深みのある情報をつかむことができるか、それはその人のベースになっている力そのもの。その人の判断尺度、あるいはメタレベルのフレームワークの構築力が問われ、ここは一朝一夕に身につくものではない。

(3)イシュードリブン 「解く」前に「見極める」

  • 「犬の道」に入らないためには、いろいろな検討をはじめるのではなく、いきなり「イシュー(の見極め)から始める」ことが極意。つまり、「何に答えを出す必要があるのか」という議論からはじめ、「そのためには何を明らかにする必要があるのか」という流れで分析を設計していく。
  • チーム内で「これは何のためにやるのか」という意思統一をし、立ち返れる場所をつくっておく。一度で十分でない場合は何度でも議論する。これはプロジェクトの途中でも同様。
  • イシューが見え、それに対する仮説を立てたら、次にそれを言葉に落とす。イシューを言葉で表現することではじめて「自分がそのイシューをどのようにとらえているのか」「何と何についての分岐点をはっきりさせようとしているのか」ということが明確になる。言葉で表現しないと、自分だけでなくチームのなかでも誤解が生まれ、それが結果として大きなズレやムダを生む。
  • 言葉にすることで「最終的に何を言おうとしているのか」をどれだけ落とし込めているかがわかる。言葉にするときに詰まる部分こそイシューとしても詰まっていない部分であり、仮説を持たずに作業を進めようとしている部分。
  • 一見イシューのように見えても、その局面で答えを出す必要のないもの、答えを出すべきでないものは多い。「イシューらしいもの」が見えるたびに、「本当に今それに答えをださなくてはならないのか」「本当にそこから答えを出すべきなのか」と立ち返って考える。これであとから「あれは無理してやる必要がなかった」と後悔するようなムダな作業を減らすことができる。
  • インパクトのある問い」がそのまま「よいイシュー」になるわけではない。「答えが出せる見込みがほとんどない問題」があることを事実として認識し、そこに時間を割かないことが重要
  • 現場に出て一次情報に触れた際には、現場の人の経験から生まれた知恵を聞き出してくる。読み物をどれだけ読んでもわからない勘どころを聞き、さらにその人がどのような問題意識を持っているかを聞いておく。現在の取組みにおけるボトルネック、一般的に言われていることへの違和感、実行の際の本当の押さえどころなど。お金では買えない知恵を一気に吸収したい。
  • 情報量がある量を超すと急速に生み出される知恵が減り、もっとも大切な「自分ならではの視点」がゼロに近づいていく。「知識」の増大は、必ずしも「知恵」の増大にはつながらず、むしろあるレベルを超すと負に働くことを常に念頭に置く必要がある。その分野について何もかも知っている人は、新しい知恵を生み出すことが極めて難しくなる。手持ちの知識でほとんどを乗り越えてしまえるからだ
  • 人がある領域について関心を持ち、新しい情報を最初に得ていくとき、はじめはいろいろなひっかかりがあり、疑念を持つもの。それを人に尋ねたり解明したりしていくたびに、自分なりの理解が深まり、新しい視点や知恵がわいてくる。これが消えないレベルで、つまり「知りすぎたバカ」にならない範囲で情報収集を止めることが、イシュー出しに向けた情報集めの極意の一つ

(4)仮説ドリブン

  • おおもとのイシューを「答えを出せるサイズ(サブイシュー)」にまで分解していく。サブイシューを出すことで、部分ごとの仮説が明確になり、最終的に伝えたいメッセージが明確になっていく。イシューを分解するときには「ダブりもモレもなく(MECE)」砕くこと、そして「本質的に意味のある塊で」砕くことが大切
  • 人に何かを理解してもらおうとすれば、必ずストーリーが必要になる。まだ分析も検証も完了していない時点で「仮説がすべて正しいとすれば」という前提でストーリーをつくる。どういう順番、どういう流れで人に話をすれば納得してもらえるのか、さらには感動・共感してもらえるのか、それを分解したイシューに基づいてきっちりと組み立てていく。
  • 「どんなデータがあれば、ストーリーラインの個々の仮説=サブイシューを検証できるのか」という視点で大胆に絵コンテをデザインする。もちろん、あとから触れるとおり、現実にそのデータが取れなければ意味はないが、そのデータを取ろうと思ったらどのような仕込みがいるのか、そこまでを考えることが絵コンテづくりの意味でもある
  • 分析とは比較、すなわち比べること分析と言われるものに共通するのは、フェアに対象同士を比べ、その違いを見ること
  • 軸の整理が終われば、次は具体的な数字を入れて分析・検討結果をイメージをつくっていく。「数字は細かく取ればいい」というものではない。最終的にどの程度の精度のデータがほしいか、それをこの段階でイメージする。

(5)アウトプットドリブン

  • ストーリーラインと絵コンテに沿って並ぶサブイシューの中には、必ず最終的な結論や話の骨格に大きな影響力を持つ部分がある。そこから手をつけ、粗くてもよいから、本当にそれが検証できるのかについての答えを出してしまう。重要な部分をはじめに検証しておかないと、描いていたストーリーが根底から崩れた場合に手がつけられなくなる
  • アウトプット時のトラブル対応でもっとも簡単なのは「人に聞きまくる」こと。格好よく言えば「他力を活用する」わけだ。それなりの経験ある人に話を聞けば、かなりの確率で打開策の知恵やアイデアを持っているもの。自分の手掛ける問題について、「聞きまくれる相手」がいる、というのはスキルの一部だ。自分独自のネットワークを持っているのは素晴らしいことだし、直接的には知らない人からもストーリーぐらいは聞けることが多い。
  • 人に尋ねようのない問題や独自のやり方がうまくいかないときは、「期限を切って、そこを目安にして解決のめどがつかなければさっさとその手法に見切りをつける」というもの。
  • どんなイシューであろうと、分析・検証方法はいくつもあるし、どれかが絶対的に優れているということもさほどない。自分の手法より簡単で時間のかからないアプローチがあれば、当然それでやるべきだ。この冷徹な判断が僕らを助けてくれる。
  • 1回ごとの完成度よりも取り組む回転数を大切にする。「受け手にとって十分なレベル」を自分のなかで理解し、「やり過ぎない」ように意識することが大切。

(6)メッセージドリブン

  • どんな話をする際も、受け手は専門知識は持っていないが、基本的な考えや前提、あるいはイシューの共有からはじめ、最終的な結論とその意味するところを伝える。つまりは「的確な伝え方」をすれば必ず理解してくれる存在として信頼する。「賢いが無知」というのが基本とする受け手の想定だ。
  • 「このチャートで何を言いたいのか」ということをしっかり言葉に落とす。この仕上げの段階まで来ると、「何を言うか」とともに「何を言わないか」も大切になってくる。
  • それぞれのチャートが本当に一つのメッセージしか含んでいないこと、そして、それが正しくサブイシューにつながっていることを確認する。
  • どんな説明もこれ以上できないほど簡単にする。それでも人はわからないというもの。そして自分が理解できなければ、それをつくった人間のことをバカだと思うもの。人は決して自分の頭が悪いなんて思わない
  • プロフェッショナルの堰合では「努力」は一切評価されない。確かに手の込んだ仕事をすれば多少の感銘はしてもらえるかもしれないが、それもあくまできっちりとした結果が生み出されてのこと。常に最初に来るのは結果であり、努力はその評価の補助手段であり、「芸の細かさ」をアピールするものに過ぎない。
  • すべての仕事は結果がすべてであり、この結果があるレベルの価値に到達しないと、その仕事はいかなる価値も持たず、多くの場合マイナスになる。

3.教訓

「コンサル一年目が学ぶこと」で基本姿勢を理解し、本書で考える・分析する・伝えることの本質を理解すれば、1通のメールを出すことから、社内外向けの説明資料を作ることまで、何を大切にすればよいかをしっかり学ぶことができると思います。

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本書の中はふんだんに図表で示されていて、コラムまで含めてしっかり読み込むことでデスクワークの基本が学べる良書だと思います。

特に、以下については、今後も継続的に意識していきたい項目です。

  • やみくもに手を出さず、何から手をつけるか事前に考えること。
  • アウトプットの質にこだわること。
  • 自力をつけることは大事だが、時間をかけ過ぎることは慎むこと。

|新訳|科学的管理法 フレデリック・W・テイラー著

 

1.はじめに

今から100年以上前、1911年に初版が発刊された古典的著書です。

ただ、「科学的管理法」と言われても、なかなかピンと来ないと思います。

従業員を単なる駒として扱い、ひたすら効率性だけを追求する、といったようなことがイメージされやるいと思いますが、決してそのようなものではなく、むしろ、マネジャー層と働き手が一体となり、緊密に協力することを勧める内容となっており、以下で本書を引用しながら紹介していきます。

2.内容

(1)科学的管理法とは何か

  • 望める限りの最高の豊かさを手にするためには、誰もがどこまでも効率を追求し、日々の出来高を最大限に増やすほかにはない。この点を否定する人はいないだろう。
  • 怠業の問題こそが、賃金や豊かさ、ほぼすべての勤労者の生活、さらには国内のあらゆるきぎょの将来に直接大きな影響を及ぼす。怠業、そして非効率の諸問題を一掃すれば、生産コストが目覚ましく低減する。
  • 大勢を1か所に集めて同じような仕事をさせ、1日あたりの賃金基準を統一すると、多くの人々が持つ「楽をしよう」という傾向を大きく助長させることになる。有能な人材も少しずつしかし確実に仕事のペースを緩めていき、やがては最も効率の悪い人材と同じ水準に落ち着く。仕事の遅い輩が、たった半分の仕事量で同じ賃金をもらっているなら、自分だけがむしゃらにするのはばかげていると気づく。
  • 科学の法則に従って仕事をするためには、現場の労働者に任せきりにしていた仕事の多くのマネジャーが引き取り、自分たちでこなさなくてはいけない。一人ひとりの働き手に対して、上に立つ人々が日常的に助言を与え、親身になって手を差し伸べるのが望ましい。高圧的な態度を取ったり強い調子で発破をかけたりするのも、その逆に何の助けもせず本人の工夫にすべてを委ねるのも好ましくない。経営層と最前線の働き手が、密接に協力し合うことこそ、時代の先端を行く科学的管理法(課業タスクのマネジメント)の神髄である。

(2)科学的管理法の原則

①「科学的管理法」以前における最善の手法
  • マネジャー層の大多数はもともと最前線で大いに腕を振るっていたはずだ。とはいえ、本人たちが誰よりもよく認識しているように、彼らの知識や技量は、配下で働く者たちの知識や技量を束ねたものには遠く及ばない。このため、経験豊かなマネジャーほど、仕事のやり方を躊躇なく部下に任せ、最も経済的で優れた方法を自由に選ばせている。
  • 従来における最善のマネジメントとは、おおまかに言って「働き手が最大限の自主性を発揮して仕事に取組み、雇用主がその見返りに特別なインセンティブを与える仕組み」と定義できる。
②科学的管理法のエッセンス
  • マネジャー層の新しい任務は次の4種類にまとめられる。
  1. 一人ひとり、一つひとつの作業について、従来の経験則に代わる科学的手法を設ける。
  2. 働き手自ら作業を選んでその手法を身に付けるのではなく、マネジャーが科学的な観点から人材の採用、訓練、指導などを行う
  3. 部下たちと力を合わせて、新たに開発した科学的手法の原則を、現場の作業に確実に反映させる。
  4. マネジャーと最前線の働き手が、仕事と責任をほぼ均等に分け合う。かつては実務のほとんどと責任の多くを最前線の働き手に委ねていたが、これからはマネジャーに適した仕事はすべてマネジャーが引き受ける
  • 作業のペースについては、必ず適任者が何年もそのペースで仕事を続けても、体を壊さず、より大きな幸せと豊かさを手にできるように決めなくてはいけない。科学的管理法とはまさに、このような作業プランを立てて実行するためにある
③作業や事例の研究
  • 一人ひとりを尊重せず、集団の一員としてしか扱わなかった場合に、志や自主性が損なわれる。丹念に分析すると、働き手を大勢の中の一人としてしか扱わないと、一人ひとりの野心や向上心に訴えかけた場合と比べて仕事の効率が格段に落ちるという事実が見えてきた。
  • 雇用主がこれまで手掛けてこなかった新しい義務や仕事をマネジャーたちが引き受けてこそ、大幅な改善が可能になる。精一杯努力しようという意欲をみなぎらせ、新しい手法を十分に理解した働き手であっても、マネジャー層からこのような手助けをしてもらえない限り、目覚ましい成果は上げられないはずだ。
  • すべての事例をまとめると、有益な成果の数々は、主に次のようになる。
  1. 働き手それぞれの判断に代えて科学を取り入れる。
  2. 働き手が成り行きで仕事を選んで覚えようとするのではなく、会社の側で一人ひとりの人材を吟味、指導、育成したうえで、つまりある意味で実験の対象としたうえで科学的な視点から人選と能力開発を行う。
  3. 各働き手に問題の解決を委ねるのではなく、マネジャーそうが部下と密接に協力しながら、科学的な法則に沿って仕事を進める。
④科学的管理法の実践
  • 法則を導くための一般的な5つのステップは以下の通り。
  1. 分析対象の作業に非常に長けた人材を選り抜く
  2. 各人が作業の中でどのような操作や動作をするか、基本的なものを押さえるとともに、使用ツールについても把握する。
  3. 各基本動作に要する時間を計測し、最も短時間でこなすための方法を選ぶ
  4. 適切でない、時間がかかりすぎる、役に立たない動作などをすべて取りやめる
  5. 不要な動作をすべて取り除いたあと、最も要領のよい、最適な動作だけをつなぎ合わせ、最善のツールを用意する。
  • 平凡な生徒に対して、課題も与えずに、ただ「がんばれるだけがんばれ」などと発破をかけても進歩は見込めない。大人もこれと同じ。一定の課題を決まった時間内にこなすよう指示しない限り、平凡な働き手が会社に最大限の満足をもたらし、自身もこれ以上ないような満足に浸るのは不可能。
  • 学生と労働者の唯一の違いは、学生は自ら進んで師に教えを乞うのに対し、科学的管理法に下では、その性質上、指導者の側が働き手に接近しなくてはならないということ。現実に、働き手は、進歩し続ける科学の下、指導者からの指示を受けながら仕事をすると、知的レベルは変わらなくても、より高度で興味深い仕事をし、利益にもより大きく貢献できるようになる。
  • ツールについても手法についても、改善提案があれば遠慮なく提出するよう、働き手たちの背中を押すべきだろう。その結果、新しい手法が古い手法よりも明らかに優れているとわかったなら、標準として採用すべき。提案者に対しては、改善の功労者として大いに称え、創意工夫の報奨を支払うのが当然だろう。
  • 働き手に影響を及ぼすような変革については、初めはとにかくゆっくりしすぎるほどの時間をかけ、まずは1人だけを対象とすべき。最初の1人が新しいやり方のほうが自分に大きなメリットがあると得心するまでは、それ以上の変革を進めるべきではない。こうして一人ひとりの意識を無理なく変えていく
  • 科学的管理法は、1つの要素で成り立っているのではなく、いくつもの要素が組み合わさったものである。
  1. 経験則ではなく、科学
  2. 不協和音ではなく、調和
  3. 単独作業ではなく、協力
  4. ほどほどでよしとするのではなく、最大限の出来高
  5. 一人ひとりの仕事の効率アップと豊かさの追求
  • マネジャーと働き手が折に触れて意見を交わしながら緊密に協力し合うことこそが、何にも増していさかいや不満の解消につながる。同じ目標に向けて一日中肩を寄せ合うようにして仕事をし、共通の利害で結ばれているなら、いつまでも対立を続けるわけにはいかないはずだ。

3.教訓

本書の研究対象となっている業務は、日本でいえば明治時代、第一次世界大戦前のことでもあり、肉体労働が中心です。

例えば、シャベルすくいの作業において、名人を選んできて、一回あたりにすくう重量を調整し、1日の作業量を最大化する話が出てきます。調査を踏まえ、作業者に自由にシャベルを選ばせるのではなく、鉱石をすくうなら小さなシャベルを、灰をすくうなら大きなすくう中身に応じたシャベルを用意して作業者にあてがう、という内容です。

これこそまさに、科学的な管理方法です。

すなわち、今の時代の知識労働に置き換えると、

  • ベテランの経験や勘だけに頼るのではなく、まずは作業を分解し見える化する。(いわゆるAS-IS分析)
  • ペーパレスにしたり自動計算ツールを導入したり、最適な業務フローを再構築する。(いわゆるTO-BEの検討、BPR)。
  • どのような能力持った要員が何名必要かを割り出す。(最適人員配置)
  • 1on1ミーティング等で継続的な成長促進・信頼構築を図る。(コーチング手法)

といったもので、将来的にもベースとなる考え方ではないかと感じます。

読み終わった今は、副題として「マネジメントの原点」と記されている意味がしっかりと理解できます。