管理職おすすめの仕事に役立つ本100冊+

現役課長が身銭を切る価値のあるのおすすめ本だけを紹介するページ(社会人向け)

ティール組織 フレデリック・ラルー著


 

1.はじめに

ティール組織とは、経営者や管理職などが、部下の業務に対して指示出しや管理を行わなくても、組織に所属するメンバーが主体となり目的達成に向けたアクションを起こす組織のことです。

すなわち、組織の目的を実現するために、メンバー全員が共鳴する組織です。

本書は、2018年に書籍部門としてHRアワード優秀賞も受賞しています。

hr-award.jp

2.内容

(1)歴史と進化

①進化型(ティール)
  • 自分のエゴを一定の距離を置いて眺めると、その恐れ、野心、願望がいかに自分の人生を突き動かしているかが見えてくる。支配したい、自分を好ましく見せたい、周囲になじみたいといった欲求を最小化する術を得る。もはや自分のエゴに埋没しておらず、自分の人生がエゴを失う恐れによって反射的に振り回されることはない。このプロセスの中で、私たちは他の自分自身の深い部分にある知恵に耳を傾けられるようになる。
  • 進化型では、意思決定の基準が外的なものから内的なものに移行する。周囲からの反対に直面したり、成功しそうにないと思われたりしても、「誠実さ」や「自分らしさ」という感覚を出発点に、本当は正しいと思えない状況、自分が声を上げ行動を起こさなければならない状況に対する感覚を養う
  • 進化型パラダイムでは、人生における障害物とは、自分自身とは何か、世界とは何かを学べるようい機械なのだ。エゴにとっては有益な防御壁だが、魂にとっては無能な教師となる、怒り、恥ずかしさ、非難を素直に手放せる。そもそもこの問題は自分にあったかもしれないと考え、そこから成長するには何を学べるだろうと調べてみる

(2)進化型(ティール)組織の構造、慣行、文化

①自主経営(セルフマネジメント)/組織構造
  • 社内全体にモチベーションの欠如が広がっている組織をよく見かけるが、これは権力の不平等な分配によって生まれる、破壊的な副作用の1つである。職場とは、自分らしさを失わず楽しく振舞え、有意義な目的を目指しながら同僚たちと仲間意識を育めるような場所だ、そう感じているのは少数の幸運な人たつだ。圧倒的多数の人々にとって、職場は苦役に服する場所なのだ。毎日いくらかの労力を提供して、その引き換えに給料を得る場に過ぎない。これは、才能と情熱の無駄遣いにほかならない。
  • 上司がいない組織では、チームの方針と優先順位を決め、問題を分析し、計画を立て、メンバーの実績を評価し、時に厳しい判断を下す、といった仕事を一人のリーダーに負わせるのではなく、チームメンバーの間で分担している。チームとは実質的に、メンバーで自主的に編成された自治組織なのだ。
  • 部下を支配する上司という上下関係が存在しない代わりに、自然発生的な階層、つまり評判や影響力、スキルに基づく流動的な階層が発生する余地が生まれる。
  • コーチの役割は、仮に自分の方が優れた解決策を知っていると思っても、チームに自分たちで選択させること。予想できる問題を防ぐことではなく、問題解決をしようとするチームを支援することなのだ。
  • スタッフ機能を担う人々は、ルールや手続きを改正したり、専門技術を積み上げたり、解決すべき問題を探したりといった「付加価値を出す」方法を見つけることで、自分の存在意義を証明しようとする傾向がある。そのうち、現場から離れたところに権限と意思決定権を集中させるようになる。これに対し、進化型組織は、スタッフ機能を極力小さく抑えている。
  • 信頼の対象が広がると、その見返りとして責任も広がっていく。他人を見習う習慣と、仲間からのプレッシャーが、階層性よりもはるかにうまくシステムを統制する。チームが目標を設定し、誇りを持ってそれを達成する。誰かがこのシステムを悪用し自分の分担をしっかりと果たそうとしなかったり、サボったりすると、チームの仲間たちがすぎに「そういうことはやめてほしい」という気持ちを伝える。
  • 無数の参加者がちょっとした変化に注意を払い、意思決定をし、参加者同士で調整する自由市場というシステムの方がはるかによく機能することを誰もがよく知っている。ところが、数多くの組織では、どういうわけか今でも中央計画委員会に等しい仕組みが正しいと信じられている。自主経営とはつまり、組織内に自由市場経済を成功させる諸原則を持ち込むということなのだ。
  • 固定化されたスタッフではなく、ボランティアによるタスクフォースを使う方が多くの利点がある。従業員たちは、自分の本業では必要ないかもしれない才能や天分を表現する方法を見つけられる。会社を変えていく実質的な権限を自分が持っていることに気づくと、誰もが「この会社は自分のものだ」という意識と責任を強く感じるようになる。
  • 自主経営組織では、重要な意思決定を行い、新たな取組をはじめたり、成績の悪い同僚に説明を求めたり、紛争を解決したり、成果が出ずに何らかの行動が必要となってリーダーシップを引き継ぐ必要がある場合には、誰もが「トップ」という帽子をかぶることができる。
②自主経営(セルフマネジメント)/プロセス
  • 助言を求めることは謙虚さを示す行為で、これは楽しい職場の最も重要な特徴。この行為自身が「私はあなたを必要としている」という意思表示にほかならない。意思決定者と助言者は必然的に親密になる。その結果、意思決定者が助言を無下に無視することはまずできない。
  • コンセンサスの考え方は、実際には参加者全員がめいめいに勝手なことを主張する、集団的なエゴの嵐にに陥ってしまうことが多い。全員の希望を満足させようとする試みは、往々にして出口の見えない苦行になる。そして最後には、ほとんどの人がどうでもよくなり、「何でもよいから早く誰かに決めてほしい」という状況になることも珍しくない。
  • コンセンサスにはもう1つ、責任の所在が希薄になるという欠点がある。多くの場合、最終判断に責任を感じる人がいない。多くの決定事項が実施されないか、実施されても「決まったことなので仕方がない」といった姿勢になってしまう。物事が予定通りの結果にならないと、責任の所在がさらにあやふやになる。助言プロセスでは、意思決定の責任は明確に1人に帰属する。
  • 階層式組織では、エンジニアが分析をして機械のモデルを選定すると、工場労働者は新しい機会に不平を漏らすことが多く、操作方法もなかなか学ぼうとしない。しかし、自分たちでモデルを選ぶということになれば、機種変更に対する抵抗は起こらない
  • 結局、根本をたどっていくと「我らが刈り取るのは蒔いた種から育った物」、つまり自業自得なのである。恐れは恐れを生むし、信頼は信頼を育てる。従来の階層型組織と、そこに組み込まれたおびただしい数の統制システムの核心は、恐れと不信を育てるほど強力な機械だ。自主経営構造と助言プロセスは、長い時間の間に「同僚同士の信頼」という広大な共同貯水池を作り上げる
  • 自主経営とは、さまざまな組織慣行が互いに連動して物事が進んでいく仕組みである。紛争解決プロセスは、同じ職場に働く仲間たちが相互に結んだ約束について互いに説明責任を負う仕組みである。従来型企業では、社員の誰かが約束を果たさないと、同僚たちは不平不満を抱くとしても、どう対処するかについては管理職に任せる。自主経営組織では、仲間たちが声を上げて約束を果たさない同僚に向き合わなければならない
  • 目的は完璧で確かな答えを出すことではなく、実現性のある解決策を見つけ、必要があればすぐに練り直すことだ。新しい取組を試し、それらがどの程度うまくいきそうかを見るときに完璧な答えを持っているわけではない。役割は、環境変化に適応するために常に有機的に進化する
  • 「この問題については誰かが何かをしてくれるはずだ」と言ってそのままにしておくことは、進化型組織では受け入れられない。あなたが何かの問題や機会を見かけたら、それについて何かをする義務を負う。そして多くの場合、その「何か」とは、問題に関連する役割を担っている同僚のところに行き、それについて話すことなのだ。
  • 自主経営組織では、人々は自然に多くの機会に触れて学び育つので、社員が正しい機会に触れているかどうかを経営陣が悩む必要がない。自由に仕事をできる人々は何でも熱心に学びたがる。そして彼らは、学んだことを仲間たちと共有するはずだと期待されている。自主経営組織でのキャリアは、人々の関心、強い衝動、そして自由な職場に常にあふれているさまざまな機会から自然と醸成されていく
  • 進化型の視点から見ると、正しい問いは「どうすれば全員が同等の権力を握れるか?」ではない。「どうすれば全員が強くなれるか?」なのだ。進化型組織では、権力の獲得を、誰かが持つと他の人の分が減るという「ゼロサムゲーム」とは見ていない。全員がお互いにつながっていることを認め合い、あなたが強くなれば私も強くなれると考える。組織の目的を達成するために自分が頑張れば頑張るほど、自分自身が貢献する機会もどんどん増える。
  • 自由は責任を伴う。あなたはもはやさまざまな問題やつらい決断、難しい判断を経営陣に丸投げし、面倒なことを管理職に頼めない。非難や無関心や怒りに逃げ込むわけにはいかない。誰もが成長し、自分の考えや行動に全責任を負う必要がある
③全体性を取り戻すための努力/一般的な慣行
  • 自分の魂の知恵と本当の声に耳を傾けたいのなら、仕事のペースを落として、職場の騒音や喧噪の中で、沈黙を守る時間を見つけ出さなければならない。皆で沈黙すると、同僚たちとの人間関係に質的な変化が起こる。これまでとは違ったレベルの気づきが必要となる。同僚が言うことに耳を傾けるのではなく、彼らの存在や感情、考えに耳を傾けなければならない。その結果、仲間たちとの人間関係の質が変わる。
  • 全員の意見を聞くことと、一人の意見が議事の進行を支配しないことが重視されると、複雑な問題に対しても現実的で実行可能な意思決定がすぐに下される。話し合いと意思決定の仕組みによって、人々は自分の個人的な「エゴ」をミーティングに持ち込むことができないため、かえって自分のエゴがいかに頻繁に出てくるのかに気づくことになる。
  • 紛争がないと、私たちは他人の言いなりになりすぎるか、そうでなければ防衛的になりすぎてしまう。そしてどちらの場合も、同僚たちと接するときに本当の自分でいることをやめてしまう。進化型組織では、職場で必要な対立を表面化し、それに対処するための方法の1つとして、人々が緊張や対立を表面化しやすい環境を整えることだ。
④全体性を取り戻すための努力/人事プロセス
  • 役職がないと、「自分は何者か」というアイデンティティと職場での地位を結びつけることがかなり難しくなる。役職と職務記述書がないと、自己や他者を何よりもまず一人の人間ととらえるようになる。そしてその自分が、たまたまある期間中に特定の役割を果たすことに情熱を注ぎこんでいると考えるようになる。
  • 実際には、同僚たちが助け舟を出してくれることが多い。なぜならば、いつかは自分にも同じことが起こる、つまりお互い様だということを知っているからだ。その結果、社員同士が力を貸しあい、プライベートで重要な問題が生じたときには周りに助けを求めるという文化が生まれる。
  • 古くからの知恵によると、失敗というものは存在せず、あるのはただ、学び、成長するための誘いである。特定の仕事に向かないと気づく(あるいはそう言われる)ことは、「あなたはただ、ある贈り物をもらった」という人生の教訓にほかならない。解雇ですら、愛と思いやりを示す1つの機会になりうる。
  • 進化型組織の観点からすると、職が人為的に維持されるというのは全く意味がない。人は身分の安定を重視しがちだが、突き詰めて考えると、それは恐れに発した概念で、ありとあらゆるものが変わっていくという基本的な真実を無視している。また、モノや人が豊富にありすぎる可能性を考慮に入れていない。つまり、ある人の才能が、人数の多すぎる組織の中で浪費されているのならば、必要とされるところに移ってそれを発揮する方がよい、という可能性に思いが至らない。
⑤存在目的に耳を傾ける
  • 進化型組織に転換すると、人々は自分のエゴを抑えられるようになる。その過程で、自分自身の問題としても、組織全体の問題としても、「私が人生でなすべき使命は何か?」「本当に達成しがいのあることは何か?」といった、意義や存在目的に関する問いについて深く考えるようになる。進化型組織には、もはや生き残りへの執着はない。本当に重要なのは自社の存在目的なのだ。
  • 進化型組織は、組織を生きたシステムと考えている。自らの情熱を持ち、自らが何者かを認識し、自らの創造性を発揮し、自らの方向感覚を持った独立した存在なのだ。そのシステムに何をすべきかを指示する必要はない。ただその存在の声に耳を傾け、連携し、それが私たちをどこに連れていってくれるかを悟ればよい。
  • 進化型組織の慣行を実践している組織がよく使う言葉に「感じ取る(センシング)」がある。人間はみな、自然の感知器を備えている。何かうまくいっていないとき、あるいは新たな機会が開けたときには、それに気づく能力を生まれつき持っている。自主経営組織では、誰もが組織の感知器になり、変革に着手できる
  • 自主経営組織では、変化はそれを必要と感じている人が起点となる。こうした現象は、まさに自然が過去数百万年にわたって機能してきた方法と同じである。イノベーションは、組織の中心から計画に従って起こるのではなく、常に組織の末端で起こる。しかし、組織内の有機体が環境変化を感じ取り、適切な反応を見つける実験をしたときに始まる。うまく行かない試みもあるだろうが、うまくいけば生態系の隅々まで急速に広がる。
  • 組織は、集団的な知識の形成プロセスに対応して、進化、変身、拡大、縮小していく。現実こそが偉大な審判であり、判断を下すのはCEOでも取締役会でも経営委員会でもない。うまく作用したものが、組織内で勢いとエネルギーを得る。そうでなかったものは定着せずにしぼんでいく
  • 大きな飛躍を何度か図るのではなく、高速反復を何度も行う企業の方が、自社の存在目的に向けてスムーズに進歩できる。ベストと思われる判断を見極めるために無駄なエネルギーが使われることはなく、多くのデータと確信を得られるまで判断を保留するという、時間の浪費もない。また、小さな判断を何度も修正することに慣れていれば、判断が間違いだと判明したときにそれをただすことがずっと容易になる。
  • 将来の予測から得られる「統制している」という幻想をあきらめ、現実の進行に合わせて物事を進める世界の方が安全に感じる。進化型組織の観点からすると、目標設定をすることには少なくとも3つの問題がある。標数値がないと、人々は自由に内なる動機と相談しながら、自分たちができるベストの仕事をするだけ。
  1. 自分たちは未来を予測できるという前提に立っている。
  2. 内なる動機から遠ざかった行動をするようになる。
  3. 新しい可能性を感じ取る能力が狭まりがちになる。
  • 現在多くの組織は、自分たちの仕事は物事を遂行するためであって、自分の使命を見極めたい人々を助けるためではないと感じている。しかし、個人の目的と組織の目的には密接な関係がある。本当に驚くべきことが起こるのは、まさに組織の存在目的と個人の人生でなすべき使命が互いに共鳴し、補強しあったときなのだ。組織が何をなすべきか明確であるほど、共鳴できる人々の数は多くなる。
⑥共通の文化特性
  • 組織文化は組織の文脈と存在目的によって形作られるべきもので、創業者やリーダーの個人的な前提や規範や関心事によって決まるべきものではない。自主経営の組織構造では、組織文化は誰から強制されることもなく、自然発生的に生まれる。というのも、トップだけでなく全員が組織に必要なものを感じ取る作業に参加しているからだ。

(3)進化型組織を創造する

  • 進化型組織のリーダーが認識していること、それは個人的な成功も、集団的な成功も、意味のある目的を追求した結果として得られるものであって、成功自体を目標にしないよう気を付けなければならない。そして、自分のエゴは満たすけれども心には響かないような、また、会社の利益にはなるが存在目的には寄与しないような競争心へと戻らないように注意しなければならない。
  • 自主経営組織は楽なシステムではない。誰もが自分の行動と他の社員との関係の維持に責任を負うし、不愉快なニュースやトレードオフが発生した場合の困難な選択から逃げるわけにはいかない。自分を守ってくれる上司も、責任を転嫁する相手もいないからだ。自主経営の自由に伴う責任を背負いきれない人は、従来型の階層的組織へ去ることを選ぶことが多い
  • 仕事と組織に対する社員の思い入れを高めようとする際、整っていなければならない条件が1つある。それは自主経営を導入したいリーダーが信頼されていなければならない。たいていの職場では、上層部から売り込まれる変革への取組を、労働者は本能的に信じなくなっている。リーダーを信頼していない労働者に対して、自主経営方式を上から押し付けると、彼らは自由を享受するが責任を取ることは拒絶し、会社は倒産の方向に向かう
  • もしあなたが組織変革の中心的な役割を果たすのであれば、自分が社内でどう見られているかについて可能な限り意識するように努めてほしい。他の人々が、あなたがそこにいることから意識的、または無意識的に何かを受け取るだろうか?どのような恐れ、願望、ニーズであなたは動いているのか?社内外の人々に、あなたがどう映っているかを教えてくれるよう依頼し、自分の組織内における位置づけを十分意識するよう心掛けてほしい。周りを信頼し、愛し、思いやり、明晰な心と決断力を持っているという印象を与えれば与えるほど、組織変革は容易に進むだろう。

3.教訓

進化型組織(ティール組織)や自主経営組織がどういうものか、どのようなメリットまたデメリットがあるかは、よく理解できたと思います。

一方で、上場企業グループのいち末端組織のミドルマネージャーの立場では、現実的に導入はできないとも感じました。それは、本書の第Ⅲ部でも、「無駄な努力はやめた方がよい」とも指摘されています。

しかしながら、本書の考え方である例えば以下のようなことについては、今の組織でも実践できると考えています。自分自身の考えや行動の仕方にとっても、チームを運営していく側にとっても十分有益で、今後も意識していきたいと思います。

  • 自身のエゴを抑えて、本来正しいと思う信念に従う
  • 誰の指示が無くてもメンバーが主体的に行動する
  • 誰かに責任を転嫁するのではなく、自分事としてとらえ責任を持つ
  • 必要な紛争、対立を表面化したうえで対処する
  • 試行錯誤を繰り返し、その都度判断して修正する

 

菊と刀 ルース・ベネディクト著

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1.はじめに

背表紙の言葉を紹介します。

第二次世界大戦中の米国戦時情報局による日本研究をもとに執筆され、後の日本人論の源流となった不朽の書。日本人の行動や文化の分析からその背後にある独特な思考や気質を解明、日本人特有の複雑な性格と特徴を鮮やかに浮き彫りにする。”菊の優美と刀の殺戮”に象徴される日本文化の型のを探り当て、その本質を批判的かつ深く洞察した、第一級の日本人論。

つまり、アメリカ向けの内容であり、日本人に向けた書かれた本ではありません。

だからこそ、忖度無しに、客観的な見地から、日本人論を学ぶことができます。

2.内容

  • 政治や宗教や軍隊や産業においては、それぞれの領域が周到に階層に分けられていて、上の者も下の者も、自分たちの特権の範囲を越えると必ず罰せられる。「ふさわしい位置」が保たれている限り、日本人は不服を言わずにやっていく。彼らは安全だと感じる。
  • 人は義務を支払うためにはどのようなことでもすべきであって、時の経過は負債を減じない。年とともに減るどころか、かえって増えていく。いわば、利子が積もっていくのである。ある人から恩を受けるということは、重大な事柄でる。日本人がよく用いる表現が言い表しているように、「人はとうてい恩の万分の一も返すことはできない」。それは非常な重荷である。
  • 愛や親切や気前の良さは、アメリカでは何も付属物がくっついていなければいないだけ、いっそう尊重されるのであるが、日本では必ず付属物がつきまとう。そしてそのような行為を受けた人は債務者となる。
  • 人は「義務」を返済せねばならないと同様に、「義理」を返済せねばならない。しかしながら、「義理」は「義務」とは類を異にする一連の義務である。これに相当する言葉は英語には全く見当たらない。また、人類学者が世界の文化のうちに見出す、あらゆる風変わりな道徳的義務の範疇の中でも、最も珍しいものの一つである。
  • 日本では自己防御ということが非常に深く根を下ろしている。そこで、ある人に面と向かって、彼が職業上の過失を犯したということをあまり言わないようにすることが、一般的に行われている礼儀でもあり、また賢明な人の取る態度とされている。敗者はそのような失敗のために「恥をかく」。そしてこの恥は、発奮の強い刺激になる場合もあるが、多くの場合は危険な意気消沈を引き起こす原因となる。
  • 日本人は問題を競争でやるようになると、負けるかもしれないという危険にすっかり心を奪われ、仕事の方が留守になってしまう。彼らはあまりにも鋭敏に、競争を外から自分に加えられる攻撃と感じる。そこで彼らは、彼らが従事している仕事に専念する代わりに、その注意を自分と攻撃者との関係に向ける。
  • 猛烈な努力と全くの足踏み状態である無気力との間を、大きく気分が揺れ動くのが日本人生来の性質である。多くの日本人は何事によらずあなたまかせの態度を取ることが目的達成の最も安全な道であると考えている。こういう考えから、何をしてみたところでどうせ駄目なんだからしばらく足踏みして形勢を観望する方がマシだ、という考えに移行するのはまことに容易なこと。無気力は広がっていく。
  • 「忠孝」や「義理」の義務を果たすに当たって人がしばしば甚だしい苦痛を経験するという事実は、彼らの初めから覚悟しているところである。それは人生を困難なものにするが、しかし彼らはその困難に堪える心構えができている。彼らは絶えず、彼らが少しも悪いとは考えていない快楽を思いきる。それには意思の強さが必要であるが、そのような強さこそ、日本人の最も称揚する美徳である。
  • 各人の魂は、本来は新しい刀と同じように徳で輝いている。ただ、それを磨かずにいると錆びてくる。この彼らのいわゆる「身から出た錆」は刀の錆と同じように良くないものである。人は自分の人格を、刀と同じように錆びつかせないように気をつけねばならない。しかしながら、たとえ錆が出てきても、その錆の下には依然として光り輝く魂があるのであてって、それをもう一度磨け上げさえすればよい
  • 西欧人は、まずたいていは因襲に反旗を翻し、幾多の障害を克服して幸福を獲得することを強さの証拠と考える。ところが日本人の見解に従えば、強者は個人的幸福を度外視して義務を全うする人間である。性格の強さは反抗することによってではなく、服従することによって示されると考える
  • 日本人は恥辱感を原動力にしている。明らかに定められた善行の道標に従いえないこと、色々の義務感の間の均衡を保ち、または起こりうべき偶然を予見することができないこと、それが恥である。恥は徳の根本である、と彼らは言う。恥を感じやすい人間こそ、善行のあらゆる掟を実行する人である。
  • 日本人特有の問題は、彼らは一定の掟を守って行動しさえすれば、必ず他人が自分の行動の微妙なニュアンスを認めてくれるに違いない、という安心感を頼りとして生活するように育てられてきた。外国人がこれらの礼節を一切無視しているのを見て、日本人は途方に暮れる。
  • 「無我」という練達の域に達しない人々の場合には、意思と行動との間にいわば一種の絶縁壁が立ちはだかる。日本人はこの障壁を「見る我」「妨げる我」と呼ぶ。そして特別な訓練によってこの障壁が取り除かれた時に、達人は「いま私がしている」という意識を全然持たないようになる。回路は開かれ電流は自由に流れる。行為は努力なしに行われるようになる。
  • 「無我」の根底にある同じ哲学が、この「死んだつもりになって生きる」態度の根底にも潜んでいる。この状態にある時、人は一切の恐怖心や警戒心を棄てる。彼は死せる物、すなわちもはや正しい行動方針ということについて思い煩う必要を超越した者となる。死者はもはや「恩」を返すのではない。死者は自由である。したがって、「私は死んだつもりになって生きる」という表現は、矛盾相克からの究極的解放を意味する。
  • 自らを尊重する人間は、「善」か「悪」かではなくて、「期待通りの人間」になるか「期待外れの人間」になるか、ということを目安としてその進路を定め、世人一般の「期待」に沿うために、自己の個人的要求を棄てる。こういう人たちこそ「恥を知り」、無限に慎重な立派な人間である。
  • 日本人は、ある一定の行動方針を取って、目標を達成することができなかった場合には、「誤り」を犯したという風に考える。彼はある行動が失敗に終われば、それを敗れた主張として棄て去る。彼はいつまでも執拗に敗れた主張を固守するような性質にはできていない。日本人は「ほぞを噛んでも無益である」という。

3.教訓

原書の発刊は太平洋戦争終了直後の1946年です。

本書を読むと、それから長い年月が経ち、日本社会も様々なことを世界の中で経験しても、日本人の根底は変わらないように感じます。

「恩」や「義理」を重んじ、体面を重視する「恥の文化」が根付いている日本人の特性について、自身の行動パターンを認識するうえでも、他者との関係性を構築するうえでも、非常に有益な内容だと思います。

 

 

リーダーシップ論 ジョン・P・コッター著

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1.はじめに

私が読んだのは、第2版でなく、中古で購入した初版です。

タイトルは「リーダーシップ論(原題:WHAT LEADERS REALLY DO)」ですが、リーダーシップについて体系的に語っているのではなく、著者のテーマの異なる論文を集めた内容に、序章として「リーダーシップの未来」を加えた内容となっています。

すなわち、リーダーとマネジャーの違いや、マネジャーの行動分析など、内容の半分程度はマネジメントの内容になっています。

2.内容

(1)序章:リーダーシップの未来

  • 重要な組織変革を成功に導くのはそれがどのような手法であれ、息の長い仕事であり、複雑な8段階のプロセスからなる。変革がトントン拍子に手際よく進むことはありえない
  1. 危機感を醸成する
  2. 変革プロセスを主導できるだけの強力なチームを作る
  3. ふさわしいビジョンを構築する
  4. 構築したビジョンを組織内に伝達する
  5. 社員がビジョン実現に向けて行動するようにエンパワーメントを実施する
  6. 信頼を勝ち取り、批判を鎮めるために、短期間に十分な成果を上げる
  7. 行動に弾みをつけ、その余勢を駆って変革を成し遂げるうえでのより困難な課題に挑む
  8. 新しい行動様式を組織文化の一部として根づかせる
  • リーダーシップを持たないエグゼクティブは、とうてい成功などできない。リーダーシップに欠ける人々が、周囲の危機感を十分あおるよなことはまずない。変革を主導するには、組織全体が一枚岩で臨む必要があることをよく理解していない。
  • マネジメントの基本目的は、現在のシステムをうまく機能させ続けることである。これに対してリーダーシップが目指すものは、そもそも組織をよりよくするための変革、とりわけ大変革を推進することである。
  • 自分の部下との関係だけに気を取られ、他の人々、つまり変革ビジョンを実行しようとしている人材開発部門やIT部門のスタッフ、マネジャーの多くをないがしろにすると、失敗することになる。
  • 命令するという仕事はさほど重要でなくなっている。周囲の人々と仕事のうえで良好な関係を築くことが、課題として重みを持つようになってきている。「良好な関係」とは、当然ながら直属の部下にとどまらず、幅広く多くの人々との関係を指している。そして、事業の繁栄のためには、上司との関係をも積極的にマネジメントしなければならない。
  • 上司をうまくマネジメントすることは、上司の人となりと置かれた状況を理解し、自分自身とそのニーズを客観的に判断したうえで、ニーズにもスタイルにも適した関係を築き上げ、その関係を長く保つということだ。
  • 変革の実現に威力を発揮するのはインフォーマルな人的ネットワークであって、フォーマルな階層が生かされるのは安定した環境においてである。このため、過渡期や変革期には、フォーマルな役割や人間関係というのは、大切なもののほんの一部に過ぎない。

(2)第1章:リーダーとマネジャーの違い

  • 複雑な環境にうまく対処するのがマネジメントの役割である。これに対してリーダーシップとは、変革を成し遂げる力量を指す。昨日と同じことを繰り返していたのでは、あるいはそれを少しばかり改善したくらいでは、もはや成功を手にすることはできなくなっている。こうした新しい環境を生き抜き、競争の勝者となるためには、これまで以上の大変革が求められる。
  • マネジメントの武器はコントロールと問題解決である。リーダーシップがビジョンを達成するための手段は、動機づけと啓発である。価値観や感性といった、根源的ではあるが往々にして眠ったままの欲求に訴えかけることで、大きな障害をも乗り越え、皆を正しい方向に導く
  • 針路決定と計画の策定は混同されがちだが、両社は決して同じではない。計画とは演繹的な性格を持つマネジメント・プロセスで、変革を実現するためではなく、目標通りの結果を生むために作られる。これに対して針路の決定とは、どちらかというと帰納的であり、リーダーは幅広いデータを収集して、そこからさまざまな事柄の説明根拠となるパターンや関係性を見つけ出す。
  • 「人心の統合」は「組織編成」とは違う。メンバーの力を結集するのは、いかにうまく設計するかということよりも、いかにうまくコミュニケーションを図るかという側面が強い。コミュニケーションの相手は、部下にとどまらず、上司、同僚、他部門のスタッフ、顧客等にまで及ぶ。
  • 変革への道のりは決して平坦ではない。あえてその茨の道を進もうという、熱意あふれる行動が欠かせない。組織変革が成功するかどうかは、組織メンバーからこうした熱意意を引き出せるかという、リーダーの力量いかんにかかっている。
  • たくさんのリーダーがうまく共存しながら活動するには、健全なカルチャーを育んでいる企業に特有の、インフォーマルで緊密な人間関係が役に立つ。インフォーマルな人間関係のほうが、非日常的な活動や変革に関わる調整を数多くこなせる。大切なのは、対話と強調から、バラバラで矛盾しあうビジョンではなく、調和のあるビジョンが生まれるという点だ。

(3)第2章:人を動かすパワーをどう獲得し行使するか

  • 命令や職務上の権限だけでコントロールしようとしてもうまくいかない理由は以下の2つ。
  1. マネジャーは、フォーマルな権限が及ばない人々にも依存している。
  2. 今日の企業では、たとえ上司からであっても、次々と出される命令を黙って聞き入れ、忠実に従う社員などほとんどいない。
  • 有能なマネジャーは、その職務に伴う依存関係にうまく対応するために、4種類のパワーを生み出すか、強化するか、維持している。
  1. 相手に感謝してもらえるような行動を取る:それがうまくいけば、その相手は一定の範囲内でマネジャーに影響力を行使されても構わないと感じる。
  2. ある分野の「専門家」としての評判を高める:経験や知識があると信頼されれば、その分野の仕事で頼られることが多くなる。こうしたパワーを獲得するには、目に見える実績が必要である。マネジャーの功績が大きく目立ったものであるほど、得られるパワーも大きくなる。
  3. 周囲の人々が知らず知らずのうちに一体感を感じるようにすること:マネジャーを理想的な人物だと認識し、無意識のうちにもそう思えるほど、そのマネジャーへの帰属意識が強まる。
  4. マネジャーに依存することで助けられ、守られていると実感させること:依存しているという自覚が強いほど、そのマネジャーに協力しようとする。

(4)第3章:上司をマネジメントする

  • なかには、あたかも自分が上司からあまり頼られることがないかのように振る舞う人がいる。彼らは自分の上司が仕事をこなすうえで、どれだけ部下の助けを必要としているかがわかっていない。また、上司が部下の行動いかんで深刻な痛手を受けること、そして部下の協力、部下への依存、部下の誠実さをどれほど必要としているかをわかろうとしていない。
  • 逆に、自分はあまり上司に依存していないと考える人もいる。直属の上司は、多くの重要な役割を担っている。しかし、なかには、上司が提供するような重大な情報や資源は必要ない、自分は他者には依存していないと考えなければ気が済まない人間もいる。
  • ただし、上司も人間に過ぎない。きわめて有能な者たちは、この事実を認識し、自分のキャリアと昇進には自らが責任を負っている。こうした有能な者たちは仕事に必要な情報や支援を得るためには、上司が与えてくれるのを待つのでなく、必ず自ら進んで得るという姿勢を取っている。
  • 上司の目標、プレッシャーはどんなものか、得意不得意は何か、どのような仕事のスタイルを好むのか、情報収集の方法はメモか会議かあるいは電話を好むのか、などに対する認識を持たずに上司に接するのは、目をつぶって歩いているようなもので、不必要な衝突や誤解、問題を必ず招く
  • 上司と部下の関係において、上司の占める割合は半分でしかない。残りの半分は部下自身が占めており、部下が自分で直接マネジメントできる部分である。したがって、効果的な仕事上の関係を作っていくためには、部下自身が自分のニーズや強み、弱み、またスタイルをよく把握しておくことが不可欠になる。
  • 反依存的態度も過剰依存的態度も、「上司とは何か」ということについて、非現実的な幻想を抱き、いずれの態度も「上司も人間であり、普通の人々と同様、不完全で過ちを犯す」という事実を見落としている。上司とて無限に時間があるわけでも、百科事典並みの知識がわるわけでもなく、超能力があるわけでもないし、不倶戴天の敵というわけでもない。
  • 上司が何を求めているかを、明らかにするのは最終的には部下の責任であるといえる。上司の求めることは、大まかなことから非常に具体的なことに至るまで多岐にわたる。話し合いをすることで、上司の期待している点を事実上すべて明らかにすることができる場合が多い。

(5)第4章:変革プロセス その8段階

①緊急課題であるという認識が不徹底
  • 変革の実行のためには、新しい制度を作り出す必要があり、またそのためにはリーダーシップが必須となる。真の意味でリーダーシップのある人材を昇進させるか、もしくは外部から登用しない限り、変革プロセスの第一段階は何の成果ももたらさない。
  • 肝心なことは、「未開拓の領域に踏み込むよりも、現状を維持することの方が危険は多い」と認識させることである。
  • 安全策を講じたところで依然危険は存在する。危機意識が十分に浸透しなければ、変革プロセスの成功は望めないし、投機的な企業の将来が危険にさらされる。
②推進チームの指導力不足
  • 要となる当該事業部門ではなく、人事部や企画部などのスタッフ部門の幹部がチームを率いてしまっている場合もある。その人がどれだけ逸材で献身的であっても、当該部門からリーダーが出ない限り、グループが必要な威力を発揮することはありえない。
③ビジョンの欠落
  • 的確なビジョンがない変革プログラムは、紛らわしく矛盾するような数々のプロジェクトの乱立になりがちで、その結果、組織を誤った方向に導いたり、あるいはやみくもに進めさせるということになりかねない。失敗した改革では、たいてい計画や方針やプログラムばかりが羅列されていて、ビジョンが欠けている。
  • 5分以内でビジョンを他の人に説明できない、あるいは相手から理解と関心を示す反応が得られないのであれば、変革プロセスのこの段階を完了したとはいえない。
④社内コミュニケーションが絶対的に不足
  • 何百、何千という人々が、短期的犠牲を払ってまでも進んで協力してくれない限り、変革は不可能である。社員はたとえ現状に不満足だったとしても、変革が実現するとの確信を得ない限り、自ら犠牲を払おうとしない。信頼に足る十分なコミュニケーションなくして、彼らの心や関心を捉えることなど決してできない。
  • コミュニケーションは言葉と行動の両方で行われるものであり、ことに行動は最も説得力のある手段となることが多い。つまり、自分の言葉とは裏腹な行動を取る経営幹部こそ、変革を潰してしまう元凶なのである。
⑤ビジョン実現の障害を放置
  • 推進チームは、新しい方針を上手に伝えることによって、ある程度までは他の社員たちに新しい行動を起こさせることはできる。しかし、コミュニケーションだけでは十分ではない。刷新を実行するには、障害を取り除くことも不可欠である。もっとも、多くの場合、障害物は実際に存在しているものである。
  • どの組織でも、変革プロセスの前半においては、すべての障害を排除するだけの勢いも力も時間も持ち合わせていないものである。しかし、重大な障害には立ち向かい、取り除かねばならない。人物を処分するというアクションを避けてはならない。社員のやる気を引き起こし、変革プログラムに対する信頼を維持するためには必要なのである。
⑥計画的な短期的成果の欠如
  • 達成可能な短期目標を設定しないと、変革の勢いを失うというリスクがつきまとう。このまま進めば期待通りの成果を得られると確信できるような証拠を目にすることができなければ、ほとんどの人は遠い道のりを歩き続けようとはしない。短期間で成果を上げられない場合、多くの人は投げ出してしまったり、また変革に抵抗する勢力の側についてしまうだろう。
⑦早すぎる勝利宣言
  • 反対者は一緒になって祝う。祝勝会が終わると、反対者は戦いは勝利のうちに終わったのだから、兵士たちは自分の家に帰りなさいと声をかける。疲れ切った兵士たちは、自分たちは勝ったのだと思い込んでしまう。一度自分の家へ戻ってしまうと、彼らは再び戦艦へ乗り込もうとは思わない。そしてまもなく変革は座礁し、過去が再び忍び寄ってくる。
  • 変革を成功に導くリーダーは、勝利宣言する代わりに、短期間で結果を出したことで得られた信頼感を追い風に、より大きな問題に立ち向かう
⑧変革の成果が浸透不足
  • 変革を企業風土の中に制度として根づかせるためには、新しいアプローチ、行動様式、考え方などが業績改善にどれだけ役立ったかを社員に意図的にアピールすること。業績改善との関連性についての判断を社員任せにしてしまうと、とんでもない勘違いをしてしまうことがある。
  • 次世代の経営陣に新しい考え方がしっかり身に付くよう、十分な時間をかける。昇格の基準が変わらないままでは、変革の効力は長続きしない。

(6)第5章:変革への抵抗にどう対応するか

  • 一般に、社員とマネジャーの間には強い信頼関係は存在しないため、変革時には誤解が生まれやすい。すぐに察知して打ち消さなければ、誤解が反発へと発展する
  • 仕事の中身がガラリと変われば、行動様式を改めなくてはならないし、今の仕事や付き合いにおいて満足していたものも手放さねばならない。このため、アレルギーのある人が大きな変革を迫られると、自分でもはっきりと理由がわからないまま、激しく抵抗してしまうことがある。
  • 抵抗しそうな相手を、計画・実行段階で巻き込んでおくと、機先を制して抵抗を抑え込める場合が多い。参加促進型の変革は、影響を受ける人々の意見に耳を傾け、そのアドバイスを取り入れながら進められる。
  • 変革を進めるうえで一番多い失敗は、どのような状況下でも1つの戦略に固執してしまうことである。
  • 一本筋の通った戦略を持たない組織改革が、どんな問題にぶち当たるかは、言わずもがなである。例えば、計画を事前に詰めないまま拙速で実行してしまうと、予期せぬ問題に足を取られがちである。大勢の人々を巻き込む変革を短期にやってしまうと、普通は行き詰まりを見せるか、参加が形骸化するかのどちらかである。

3.教訓

訳者あとがきにもあるように、変革を推進するリーダーシップについて記載されているのは、1・4・5章です。

今、まさに自身が、支店ごとに人手をかけている業務を、本部でシステム的に集約しようとしているプロジェクトに参画していて、第1弾をリリースしたばかりで次のステップに進もうとしているところなので、かなり実感を持って読み進むことができました。

当然ながら、変革により今までのやり方とは変わるので、将来的な負担減にはなっていいくものの、新しい業務フローを覚えたり、予算の制約などで既存機能の一部が使えなくなったりするため、短期的には不便さを感じることはあります。

また、変革の初めの段階で、「変えるならなぜ現場の意見を聞いてくれなかったのか」「本当は本部が楽になりたいだけではないのか」など、色んな声が出るのも事実です。

本書を読み、将来ビジョンを確り示したうえでコミュニケーションを取ることの重要性を再認識しました。

 

そして、リーダーシップは、必ずしも役職者に求められるものではありません。

担当者でも個別案件単位のリーダーとしての役割を求められることもありますし、担当者時代では上司が何を考えているのかわからなかったことがこの本には書かれていることもあり、現在マネジメント職に就いている方だけでなく、これから目指す方にとっても有益な内容である点がおすすめのポイントです。