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論語と算盤 渋沢栄一 著

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論語と算盤 (角川ソフィア文庫) [ 渋沢 栄一 ]
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1.はじめに

今、渋沢栄一と検索すれば、設立し現存する企業が大量に表示されます。

その最終的な功績だけが着目されがちですが、2021年のNHK大河ドラマを拝見していると、養蚕農家から身を起こし、会社尊王攘夷を目指していたのに徳川家に仕え、明治政府に仕えていたのに実業界に身を転じるという、人生の要所で大きな決断をして、各所での変革の実績を残してきたことがわかります。(美化されているところもあるのだと思います)

こうすれば成功するというハウツー本ではなく、処世的・道徳的なな内容です。

論語と算盤は何を意味しているというような解説は他の方の書評に任せまして、要約することもなく、心に残ったことだけを以下に書き溜めていきます。

2.内容

(1)処世と信条

  • 富をなす根源は何かといえば、仁義道徳。正しい道理の富でなければそ富は完全に永続することができぬ。
  • 論語に説かれた人物観察法は、まず第一にその人の外部に表れた行為の善悪正邪を相し、それよりその人の行為は何を動機にしているものなるやを篤と見、さらに一歩を進めて、その人の安心はいずれにあるや、その人は何に満足して暮らしてるや等を知ることにすれば、必ずその人の真人物が明瞭になるもので、如何にその人が隠そうとしても、隠し得られるものではないというにある。
  • 自働的なれば、何でも自分に省みて悪い点を改めるより外はない。世の中のことは多く自働的なもので、自分からこうしたい、ああしたいと奮励さえすれば、大概はその意のごとくになるものである。しかるに多くの人は自ら幸福なる運命を招こうとはせず、却って手前の方から、ほとんど故意にねじけた人となって、逆境を招くようなことをしてしまう。

(2)立志と学問

  • 与えれた仕事に不平を鳴らして、往ってしまう人は勿論駄目だが、つまらぬ仕事だと軽蔑して、力を入れぬ人もまた駄目だ。およそどんな仕事でも、それは大きな仕事の一小部分で、これが満足にできなければ、遂に結末がつかぬことになる。小事を粗末にするような粗大な人では、所詮大事を成功させることはできない
  • 大なる立志と小さな立志と矛盾するようなことがあってはならぬ。この両者は常に調和し一致するを要するものである。
  • 人間は如何に円くとも、どこかに角が無ければならぬもので、古歌にもあるごとく、あまり円いとかえって転びやすいことになる。あまりに円満になりすぎると「過ぎたるは及ばざるがごとし」と論語で説かれている通りで、人として全く品位のないものになる。

(3)常識と習慣

  • 意志の鞏固なるが上に聡明なる知恵を加味し、これを調節するに情愛をもってし、この三者を適度に調合したものを大きく発展せしめて行ったのが、初めて完全なる常識となる。
  • 口舌は禍の門であるだろうが、ただ禍の門であるということを恐れて一切口を閉じたら、その結果はどうであろう。有要な場合に有要な言を吐くのは、できるだけ意思の通ずるように言語を用いなければ、折角のことも有耶無耶中に葬られねばならぬことになる。それでは禍の方は防げるとしても、福の方は如何に招くべきか。口舌の利用によって福も来るものではないか。
  • 悪人必ずしも悪に終わるものでなく、善人必ずしも善を遂げるものとも限らぬから、悪人を悪人として憎まず、できるものならその人を善に導いてやりたいと考え、最初より悪人たることを知りつつ、世話してやるものもある。
  • 由来習慣とは、人の平生における所作が重なりて、一つの固有性となるものであるから、それが自ずから心にも働きにも影響を及ぼし、悪いことの習慣を多く持つものは悪人となり、良いことの習慣を多くつけている人は善人となると言ったように、遂にはその人の人格にも関係してくる。
  • 偉き人と全き人とは大いに違う。偉い人は人間の具有すべき一切の性格にたとい欠陥があるとしても、その欠陥を補って余りあるだけ他に超絶した点のある人で、完全なる人に比すれば変態である。それに反して完き人は、知情意の三者が円満に具足した者、すなわち常識の人である。
  • 土地に肥瘠あり時候に寒暖あるごとく、吾人の思想感情も異なっているから、同一の志を持って向かっても、相手によってその結果を異にする。だから、人の行為の善悪を判断するには、よくその志と所作の分量性質を参酌して考えねばならぬ
  • 医者は病人を治すが職務であるから、何時でも治してくれると思っては大違い。医者は必ず平常の衛生を勧めるに相違ない。ゆえに予はすべての人に不断の勉強を望むと同時に、事物に対する平生の注意を怠らぬように心掛けることを説きたい。

(4)理想と迷信

  • 何事でも自己の司ることに深い趣味をもって尽くしさえすれば、自分の思うとおりにすべてが行かぬまでも、心から生ずる理想、もしくは欲望のある一部に適合し得られるものと思う。
  • 何でもないことだが、日々に新たにして、また日に新たなりは面白い。すべて形式に流れると精神が乏しくなる。何でも日に新たの心掛けが肝要である。

(5)人格と修養

  • 四肢五体具足して人間の形を成しておるからとて、我々はこれをもってただちに人なりと言うことはできぬ。人の禽獣に異なる所は、徳を修め、智を啓き、世に有益なる貢献をなし得るに至って、初めてそれが真人と認められる。一言にしてこれを覆えば、万物の霊長たる能力ある者についてのみ、初めて人たる真価ありと言いたい。
  • 真に人を評論せんとならば、その富貴功名に属する、いわば成敗を第二に置き、よくその人の世に尽くしたる精神と効果とによってすべきもの。
  • 家康が遺訓として、「人の一生は重荷を負うて遠き道を行くが如し、急ぐべからず。不自由を常と思えば不足なく、心に望み起こらば困窮したる時を思い出すべし。堪忍は無事長久の基、怒りは敵と思え。勝つことばかり知りて負ける事を知らざれば、害その身に至る。己を責めて人と責めるな。及ばざるは過ぎたるに勝れり。」は、多くは論語中の警句中より成立している。
  • 今日の修養は、力行勤勉を主として、知徳の完全を得るのにある。すなわち、精神的方面に力を注ぐとともに、知識の発達に勉めねばならぬ。しかして修養が単に自分一個のためのみでなく、大にしては国家の興隆に貢献するのでなければならぬ。
  • もし、平生自己の主義主張としていたことが、事に当たって変化せねばならぬようなことがあるならば、宜しく再三再四熟考するのがよい。事を急激に決せず、慎重の態度を持ってよく思い深く考えるならば、自ずから心眼の開くものありて、遂に自己本心の住処に立ち返ることができる。この自省熟考を怠るのは、意思の鍛錬にとって、最も大敵であることを忘れてはならぬ。

(6)その他

  • 何業にかかわらず、自己の商売に勉強は飽くまでせねばならぬ。また注意も飽くまでせねばならぬ。進歩は飽くまでせねばならぬであるが、それと同時に悪競争をしてはならぬということを、強く深く心に留めておかねばならぬ。
  • 苟も世に処し身を立てようとすると志すならば、その職業の何たるを問わず、身分の如何を顧みず、終始自力を本位として、須臾も道に背かざることを意を専らにし、しかる後に自ら富みかつ栄えるの計を怠らざるこそ、真の人間の意義あり、価値ある生活ということができよう。

3.教訓

とにかく、「知情意」、「仁義徳」といった、バランスが大事、というメッセージだと受け止めました。

ただ、単に理想を追い求めるだけでなく、現実にも目を向けていて、「丸いだけじゃダメ」「つまらぬ仕事だといって力を入れないのはダメ」といったことを含め、社会人生活を送っていくうえで必要なことが散りばめられています。

自身が課長職となり、目の前の実務だけでなく、所属部署全体を見渡してみると、この人はよく考えて発言しているか、意思を持って行動しているかはわかるようになってきます。

自分自身を振返ってみると、役席として判断を求められる立場になれば、自分自身の軸を持って事に当たることがいかに大切かは身に染みてわかります。当然ながら毎回うまく対処できるわけもなく、日々鍛錬を重ねることの重要性も理解できます。

特に、以下の点には今後も注意を払いたいと考えています。

  • とにかくよく考える
  • 言うべきことは言う
  • 形式に流されない
  • 行いが人格を作り出す

 

 

現代語訳 学問のすすめ 福澤諭吉 著 齋藤孝 訳

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現代語訳学問のすすめ (ちくま新書) [ 福沢諭吉 ]
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1.はじめに

ご存知の方も多いとは思いますが、福澤諭吉さんは慶應義塾大学創始者です。

天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」から始まる本書は、あまりにも有名かと思います。

もともとは1冊の本でなく、数年かけて17編を刊行し、最終的に1冊に合本されています。

2.内容

初編:学問には目的がある

  • 人は生まれたときには、貴賎や貧富の区別はない。ただ、しっかり学問をして物事をよく知っているものは社会的地位が高く豊かな人になり、学ばない人は貧乏で地位の低い人になる。
  • ここでいう学問というのは、ただ難しい字を知って、わかりにくい昔の文章を読み、また和歌を楽しみ詩を作る、といったような世の中で実用性のない学問を言っているのではない。一生懸命にやるべきは、普通の生活に役に立つ実学である。
  • 自由とわがままの境目は、他人の害となることをするかしないかにある。ある人がやりたい放題やるのは、他の人の悪い手本になって、やがては世の中の空気を乱してしまう。人の教育にも害になるものであるから、浪費したお金はその人のものであっても、その罪は許されない。
  • もしも国民の水準が落ちて、より無学になることがあったら、政府の法律もいっそう厳重になるだろう。もし反対に、国民がみな学問を志して物事の筋道を知って、文明を身に付けるようになれば、法律もまた寛容になっていくだろう。法律が厳しかったり寛容だったりするのは、ただ国民に徳があるかないかによって変わってくる

第2編:人間の権理とは何か

  • 文字は学問をするための道具にすぎない。例えば、家を建てるのに、かなづちやのこぎりといった道具がいるのと同じ。かなづちやのこぎりは建築に必要な道具ではあるけれども、道具の名前を知っているだけで、家の建て方を知らないものは大工とは言えない。
  • 人と人の関係は、本来同等だ。ただし、その同等というのは、現実のあり方が等しいということではなくて、権理が等しいということ。

第3編:愛国心のあり方方

  • 独立とは、自分の身を自分で支配して、他人に依存する心がないことを言う。自分自身で物事の正しい正しくないを判断して、間違いのない対応ができるものは、他人の知恵に頼らず独立していると言える。
  • 独立の気概が無い者は、必ず人に頼ることになる。人に頼る者は、必ずその人を恐れることになる。人を恐れる者は、必ずその人間にへつらうようになる。常に人を恐れへつらう者は、だんだんとそれに慣れ、面の皮だけがどんどん厚くなり、恥じるべきことを恥じず、論じるべきことを論じず、人を見ればただ卑屈になるばかりとなる。

第4編:国民の気風が国を作る

  • そもそも事をなすにあたっては、命令するより諭した方がよく、諭すよりも自ら実際の手本を見せるがよい。

第5編:国をリードする人材とは

  • そもそも勇気というのは、ただ読書して得られるものではない。読書は学問の技術であって、学問は物事をなすための技術にすぎない。実地で事に当たる経験を持たなければ、勇気は決して生まれない。

第6編:文明社会と法の精神

  • 政府が法を作るにあたっては、なるべく簡単にするのがよい。既に法が定まった以上は、必ず厳格にその狙いを実現しなくてはならない。人民は政府の定めた法律を見て不都合だと思うことがあれば、遠慮なくこれを論じて訴えるべきである。既に法を認めて、その法の下にあるときには、その方についてあれこれ勝手に判断せずに、謹んでこれを守らねばならない。

第7編:国民の2つの役目

  • 国法はたとえ不正不便なものであっても、その不正不便さを口実にして破っていいということはない。実際に不正不便な箇条があれば、一国の支配人である政府にその旨を説いて、静かにその法を改めさせるべきである。政府が自分の意見に従わなければ、一方ではさらに力を尽くして説得し、一方では現状の法に我慢して時機を待つべきである。

第9編:よりレベルの高い学問

  • 今の学生は、昔から能力のある人物より文明の遺産を受けて、まさしく進歩の最前線にいるのだから、その進むところに限界を作ってはいけない。今より数十年後、後の文明の世では、今われわれが古人を尊敬するように、その時の人たちが我々の恩恵を感謝するようになっていなくてはいけない。要するに、我々の仕事というのは、我々の生きた証を残して、これを長く後世の子孫に伝えること。

第10編:学問にかかる期待

  • 人間たる者は、ただ自身と家族の衣食を得ただけで満足してはならない。人間にはその本性として、それ以上の高い使命があるのだから、社会的な活動に入り、社会の一員として世の中のために努めなければならない。

第12編:品格を高める

  • 学問で重要なのは、それを実際に生かすこと。実際に生かせない学問は、学問でないのに等しい。
  • 人間の見識品格は、深遠な理論を議論して高まるものではないし、また広い知識を持つことだけで高まるものでもない。見識品格を高める要点は、物事の様子を比較して、上を目指し、決して自己満足しないようにすること。

第13編:怨望は最大の悪徳

  • 怨望は、諸悪の根源のようなもので、どんな人間の悪事もここから生まれてくる。猜疑、嫉妬、恐怖、卑怯の類は、すべて怨望から生まれてくる。それが内向的に表れると、ひそひそ話、密談、内談、策略となり、外に向けて表れると、徒党、暗殺、一機、内乱となって、少しも国にプラスとなることがない。災いが全国に広まるに至っては、自分も他人もひどい目に会う。怨望とは、公共の利益を犠牲にして私怨をはらすもの。

第14編:人生設計の技術

  • 「世話」という言葉には2つの意味がある。1つは「保護」という意味、もう1つは「命令」という意味。保護と指図とは、究極的には両方とも一緒のもの。また、その範囲はぴたりとして寸分の狂いもあってはならない。

第15編:判断力の鍛え方

  • 物事を軽々しく信じてはいけないのならば、またこれを軽々しく疑うのもいけない。信じる、疑うということについては、取捨選択のための判断力が必要。学問というのは、この判断力を確立するためにある。

第16編:正しい実行力をつける

  • 心が高いところにあって働きが乏しい者は、常に不平を持たざるをえない。仕事を求めるに当たって世間の仕事を一渡り見てみると、自分にできるような仕事はすべてみな自分の心の基準に満たないものなので、その仕事に就くのは好まない。かといって、自分の理想にかなうような仕事にあたるには実力が足りない。こうなってもその原因を自分に求めようとせず、他を批判する。
  • 非常に大きなことからとても細かいことまで、他人の働きに口を出そうとするならば、試しに自分をその働きの立場において、そこで反省してみなければいけない。あるいは、職業が全く違ってその立場になれない、というのであれば、その働きの難しさと重要さを考えればよい。

第17編:人望と人付き合い

  • 人望とは実際の力量で得られるものではもとよりないし、また財産が多くあるからといって得られるものでもない。ただ、その人の活発な知性の働きと、正直な心という徳をもって、次第に獲得していくもの。

3.教訓

各編の見出しがわかるように要約したものではなく、各編の中で自身の心に引っかかった文章のみを抽出しています。

本書の内容自体は、国法だったり、官民の違いだったりが主眼となっていますが、1企業として捉えたとして、本部が定める運営・ルールと、現場での実運用という関係性にも応用できると考えます。

私は現在、本部でルールを定める立場にあります。

あらゆる面において100点満点の整合性の取れたルールを作ることは現実的に困難です。だからといって、ルールは定めずに現場の運営に任せる、というのは、ある意味責任放棄に近くなります。

そこで、一旦行動指針を示した上で、それでいて実運用にそぐわないケースが出てくるのであれば都度ブラッシュアップしていくという、柔軟性のある考え方を持つことが大切だと思います。

 

ブルー・オーシャン戦略 W・チャン・キム レネ・モボルニュ著


 

1.はじめに

今日の産業すべてを指す”レッド・オーシャン”に対し、”ブルー・オーシャン”とは、今はまだ生まれていない市場、未知の市場空間すべてを指します。

ブルー・オーシャン戦略は、血みどろの戦いが繰り広げられるレッド・オーシャンから抜け出すよう企業に迫ります。そのための手法は、競争のない市場空間を生み出して競争を無意味にするというものです。

2.内容

戦略には機会とリスクの両方がつきもので、それはレッド・オーシャンだろうとブルー・オーシャンだろうと同じ。

ブルー・オーシャンを切り開いた企業は、競合他社とのベンチマーキングを行わず、その代わりに従来とは異なる戦略ロジックに従う。

ライバル企業を打ち負かそうとするのではなく、むしろ、買い手や自社にとっての価値を大幅に高め、競争のない未知の市場空間を開拓することによって、競争を無意味にする。

①アクション・マトリクス

次のような4つのアクションを通して、これまでの戦略ロジックやビジネスモデルに挑む。

  1. 取り除く:業界常識として製品やサービスに備わっている要素のうち、取り除くべきものは何か。
  2. 減らす業界標準と比べて思い切り減らすべき要素は何か。
  3. 増やす業界標準と比べて大胆に増やすべき要素は何か。
  4. 付け加える:業界でこれまで提供されていない、今後付け加えるべき要素は何か。
②優れた戦略に共通する3つの特徴
  1. メリハリ:すべての競争要因に力を入れず、特定の項目にだけ絞って力を入れる。
  2. 高い独自性:上述の4つのアクションを実践して、業界標準とは違った戦略プロフィールを築く。
  3. 訴求力のあるキャッチフレーズ:明快で人々の心に強く訴えかけるメッセージも優れた戦略には欠かせない特徴。

(1)第1原則:市場の境界を引き直す

①代替産業に学ぶ
  • 購買の判断を下す際に、我々は無意識にではあるが、代替材を比べている。例えば2時間ほど気ままに過ごしたいとしたら、映画館に足を運ぶか、マッサージを受けにいくか、近所のカフェで読書する、直観的にこうした比較をしながら判断をくだしている。
  • 当該判断ポイントを重んじて、その他を取り除く、減らすといったプロセスを経れば、新しい市場空間(=ブルー・オーシャン)を切り開ける。

⇒(例:プライベートジェットを共同所有しフライト時間の権利を得る)

②業界内の他の戦略グループから学ぶ
  • 顧客があるグループを離れて別のグループを選ぼうとする際に、何が決め手になるかを押さえる必要がある。

⇒(例:カーブス・・男性の目を気にせず、特殊な機器設定をする必要なく気軽に利用できる女性専用フィットネスを作る)

③買い手グループに目を向ける
  • ひと口に「買い手」といっても、実に幅は広い。
  • 製品やサービスの代金を負担する”購買者”は、実際の”利用者”とは異なる可能性があり、場合によっては購買の意思決定を大きく左右する”影響者”の関与もあるだろう。
  • 利用者へと視点を切り替えて、従来からの業界常識を問い直してみれば、新しい価値を解き放つための全く新しい手法が見つかる可能性がある。

⇒(例:インスリン注射器・・処方する医師向けでなく、利用する患者目線で機能開発する)

④補完材や補完サービスを見渡す
  • 製品やサービスは単独で利用されるのは稀である。たいていは、他の製品やサービスと併用することで価値が増大する。
  • 自社の製品やサービスを購入する際に、買い手がどのようなトータル・ソリューションを求めているかを見極めることがカギになる。そのためには、製品・サービスの利用前、利用時、そして利用後のシチュエーションを想像してみるといい。

⇒(例:映画館・・映画を見たい子育て世代のために託児所を併設する)

⑤機能志向と感性志向を切り替える
  • 感性志向の業界は、機能向上にはつながらないが価格上昇をもたらす、余計な要素を盛り込む傾向がある。こうした要素をそぎ落とせば、従来とはうって変わって、シンプルなコストも低いビジネスモデルを生み出し、顧客に喜ばれる。

⇒(例:QBハウス・・髭剃り・シャンプー・肩もみをせずカットに特化する)

  • 機能志向の業界は、完成に訴えかける要素を添えて、コモディティ化した製品に潤いを与えれば、新しい需要を呼び起こせる。

⇒(例:スターバックス・・単にコーヒーを売るのではなく、コーヒーを心ゆくまで楽しめるような雰囲気作りをする)

⑥将来を見通す
  • トレンドが顧客価値をどう変えるか、自社のビジネスモデルにどう影響するかと知恵を絞ることが求められる。視線を現在から将来に移して、将来の市場はどのような価値を生み出すかを予想すれば、積極的に自社の未来を切り開き、ブルー・オーシャンを支配できるだろう。
  • トレンドの先行きを見通すうえで重要な原則が3つある。①事業に決定的な意味合いをもたらす、②後戻りしない、③はっきりとした軌跡を描くという3条件を満たす。

⇒(例:CNN・・グローバリゼーションの流れにのり、24時間絶え間なくリアルタイムで世界のニュースを配信する)

(2)第2原則:細かい数字は忘れ、森を見る

  • 大多数のプランは戦略と呼べるものではなく、戦術の寄せ集めに過ぎない。それらの戦術は単独では意味があっても、全体としては競争を避けるのに役立たないのはもとより、卓越した地位につながる明確な方向性すら導かない。
  • 資料を作成するのではなく戦略キャンバスを描くプロセスに従えば、社内の幅広い人材の創造性を解き放ち、ブルー・オーシャンに着目した戦略を生み出せるだろう。そのような戦略は、理解やコミュニケーションが容易で、効果的な実行につながりやすい。

(戦略キャンバス、価値曲線については以下参照)bizgate.nikkei.co.jp

ステップ①:目を覚ます
  • よくある失敗は、競争の現状について見解の違いを解消しないまま、「いかに変えるべきか」という議論を始めるというもの。
  • だが幸いにも、自社の価値曲線を描くように経営陣に求めると、変わらなくてはいけない、との意識が芽生える。「既存の戦略を問い直さなくてはいけない」と気付かせる、いわば目覚まし時計のような役割を果たす。
ステップ②:自分の目で現実を知る
  • 次のステップではチームを現場に送り込み、マネジャーたちに自社の製品やサービスがどのように使われているか(あるいは使われていないか)を直に確かめさせる。
  • 直に確かめるという作業は、決して外部委託してはいけない。自分の目で確かめるのと、間接的に報告を受けるとでは、雲泥の差である。
  • 偉大なアイデアは、天賦の才能から生まれるというよりは、現場に足を運び、競争の土俵を問い直すというプロセスを通してもたらされる
ステップ③:ビジュアル・ストラテジーの見本市を開く
ステップ④:新戦略をビジュアル化する
  • 新戦略が定まったら、最後のステップとして、従業員みながすぐに理解できるように、コミュニケーションに工夫を凝らす。これを見れば、自社がどのような位置にあるか、明るい未来を切り開くためには何に力を注げばいいか、誰でもわかるようにする。
  • 投資判断を下す際にも、将来に向けた戦略プロフィールを参考にする。古い価値曲線から離れ、新しい価値曲線に近づくのに役立つアイデアだけが、投資適格とされる。

仮に現在、将来の事業ポートフォリオが安住者を柱としているなら、成長性は低く、レッド・オーシャンにどっぷり浸かっていると言える。安住者が利益を上げていれば、いまだにそれなりの収益性があるのかもしれないが、競合他社のベンチマーキング、模倣、熾烈な価格競争などに陥るおそれは十分にある。

PMSマップの説明は以下ご参照)

diamond.jp

(3)第3原則:新たな需要を掘り起こす

  • セグメンテーションを突き詰めて顧客の嗜好を満たそうとする企業は、ともするとターゲット市場を狭めすぎてしまうきらいがある。限りなく広いブルー・オーシャンを目指すなら、これとは逆の道筋を選ばなくてはいけない。顧客だけに目を奪われるのではなく、顧客以外の層に視線を向けるのである。そして顧客間の違いに焦点を当てるのではなく、買い手が共通して重んじる要素をテコとして使う。すると、これまでになかった新しい需要を掘り起こして、多数の新規顧客を得られる。
  • 非顧客層は、以下の3グループに分けられる。いずれかのグループだけに目を奪われるのえなく、3グループすべてを見渡し、共通点を探して潜在需要を解き放ち、規模の最大化を目指す
  1. 第1グループ:市場の縁にいるが、すぐに逃げ出すかもしれない層
  2. 第2グループ:あえてこの市場の製品やサービスを利用しないと決めた層
  3. 第3グループ:市場あら距離のある未開拓の層
  • できるだけ広大なブルー・オーシャンを手に入れるためには、既存の需要だけに気を取られずに非顧客層まで視野を広げ、新戦略を練るにあたっては脱セグメンテーションを図るべき。

(4)第4原則:正しい順序で戦略を考える

以下の順で考え、すべてYESとという答えにたどり着くまで練り直す。

  1. 買い手にとっての効用:大勢の人々に「是非とも購入したい」と思わせる理由はあるか
  2. 価格:多くの買い手を惹きつけて、十分な売上を得られるだけの価格になっているか
  3. コスト:多くの人々に買ってもらえるように戦略価格を設定したとして、果たして利益を上げられるだろうか。
  4. 実現への手立て:アイデアを大規模に展開するうえで、どのようなハードルがあるだろうか。
  • ブルー・オーシャンから最大限の利益を引き出すためには、まずは戦略価格がいくらであるかを見極め、続いてそこから望ましい利幅を差し引いて、目標とするコスト水準を算出する。コストプラス方式で価格を設定するのではなく、あくまでも「価格マイナス方式」でコストを導き出す。利益をもたらし、なおかつ他社から模倣されにくい仕組みにするためには、この原則を貫くことが必須。
  • 新しいアイデアに投資するのに先立って、関係者を啓蒙して、心配を取り除かなくてはならない。
  1. 従業員:新しい事業アイデアが暮らし向きにどう影響するかを従業員が心配している場合、その心配にうまく対処しておかないと、大きなしっぺ返しを受けるかもしれない。社内の足並みを揃えて、「アイデアの実行に伴う不安を理解する」と従業員に伝える努力をしなくてはならない。従業員たちと力を合わせて不安を和らげる方法を探し、役割、責任、報酬などが変わってもだれもが納得できるようにする。
  2. 事業パートナー:新しい事業アイデアによって売上や市場での地位が脅かされるのではないかと恐れて反発する場合がある。
  3. 一般消費者:アイデアがあまりに型破りで、これまでの社会規範や常識を揺るがす場合には、反感が広まる可能性がある。

(5)第5原則:組織面のハードルを乗り越える

①意識のハードル
  • 従業員たちに戦略変更の必要性をいかに目覚めてもらうかである。従業員にとってはなじみが深く、これまでは組織に利益をもたらしてきたのに、なぜ事を荒立てるのか、というわけである。
  • 現実を目の当たりにする、結果に触れる、感じ取る、といったことを伴わないと、人はその経験に心を揺さぶられず、すぐに忘れてしまう。数字が並んだだけの抽象的な資料を見せられる、というのはこの部類に属する経験である。
  • 現状を打ち破るには、業務の最も悲惨な一面を従業員に直視させる、というプロセスが求められる。惨憺たる業務成果を目の当たりにすると、動揺に襲われ、逃げ場がなくなるが行動は起こせる。この、身をもって実態を知るという経験が、意識のハードルを立ちどころに解消するうえですさまじい威力を発揮する
経営資源のハードル
  • 「重点領域」とは、少ない経営資源を投入しただけで、業績が著しく向上する可能性のある活動を指す。
  • 逆に「非重点領域」とは、多大な経営資源を要するが、業績押上効果は乏しい活動を意味する。どの組織にも、この両方がここかしこに見られる。
  • 「資源交換」とは、部門間でそれぞれの余剰資源を交換して、不足資源を補う試みである。今ある資源を適切に使いさえすれば、経営資源のハードルはすぐに乗り越えられるはずだ。
③士気のハードル
  • 前向きな熱意を多くの人に広めるためには、努力をいたずらに拡散させるべきではない。むしろ、組織に強い影響力を誇る中心人物だけに徹底して働きかけを行うほうがよい。中心人物とは、周囲の心を動かす力にあふれ、尊敬を集める、生まれながらにしてリーダーの素質を持った人々である。
  • 中心人物の士気を狙い通りに高め、そのモチベーションを維持するには、彼らの行動を繰り返し目立つように紹介するとよい。これが「金魚鉢のマネジメント」である。つまり、中心人物の行動(あるいは無為無策)が、まるで金魚鉢の金魚のように、すべて見通せるようにする。
  • 従業員に可能性を信じてもらわないことには、戦略転換は実現しない。そこで、目標を細分化して、さまざまな階層の職員が自分の仕事と関係づけて考えられるようにする
④社内政治のハードル
  • ハードルを乗り越えるには、次の2点を自問してみることが求められる。
  1. 大敵は誰だろうか。誰が戦いを挑んでくるだろうか。ブルー・オーシャン戦略によって最も大きな損失を被るのは誰だろうか。
  2. 守護神は誰だろうか。誰が一緒にスクラムを組んでくれるだろうか。戦略転換によって最も得をするのは誰だろうか。
  • 一人で戦ってはいけない。上役を含めて、広く様々な人々を味方につけて、ともに戦う。戦いが始まる前に守護神と幅広く手を組み、大敵を孤立させておくこと。そうすると、相手は戦うのをあきらめるか、早い段階で戦意を失う。

(6)第6原則:実行を見据えて戦略を立てる

  • 経営トップから距離があって、戦略立案に直に携わらなかった人々ほど、強い不安に駆られる傾向がある。戦略を日々実行するのは最前線で働く人々だが、彼らは自分たちの考えや思いに関係なく一方的に戦略を押し付けられると、憤りを覚えるかもしれない。戦略を立てた側が「すべて狙い通り」と胸をなでおろした瞬間、最前線では突如として歯車が狂いかねない。
  • だからこそ、人々の信頼と献身を得て自発的な協力を引き出すためには、初めから実行を見据えて戦略作りをしておくべき。そうすれば、信頼や協力の欠如、妨害行為といったマネジメント・リスクを抑えられる。
  • 研究によれば、人々は成果そのものと同じくらい、成果に至るプロセスを気に掛ける。「手続的正義」が保たれれば、成果への献身と満足も大きくなる。従業員による自発的な協力は、ただ仕方なく協力するのとはわけが違う。義務だから命じられた通りにするというのではなく、熱意と積極性を発揮して、あるいは自分の利益さえ犠牲にして、持てる力を出し切って戦略を実行しようとする。
  • 公正なプロセスは、関与(Engagement)、説明(Explanation)、明快な期待内容(clarity of Expectation)という互いに支えあう3つの要素(E)で成り立っている。戦略を実行に移す際に公正なプロセスを踏むのを怠れば、模範的な従業員から手ひどい反逆にあう。戦略の実行には従業員の協力が欠かせないにもかかわらず、彼らの不信を買い、抵抗を受けることになる。
  • しかしながら、公正なプロセスに従えば、問題児と見られていた従業員が模範生への早変わりする。そして上司や会社を信頼して、骨の折れる戦略転換にも熱心に取り組む。公正なプロセスが従業員の知性、感性を認め評価することにつながり、それが普遍的な価値を持つという点に経営者が目を向けることの重要性が、改めて浮き彫りになってくる。
  • 私たちは自分の知性が評価されていると感じると、進んで知識を出そうとする。アイデアや知識の溶融を積極化してはどうかと提案して、知性への期待に応えたいと感じる。同じように、感性が評価されると、戦略に共鳴してできるかぎりの貢献をしたいと願う。周囲からの評価は強いモチベーションを生み出し、義務感でなく自分から進んで協力しようとする
  • ただし、公正なプロセスを踏みにじると、自分の知識がないがしろにされた人は、憤りを感じてアイデアや専門性を抱え込む。優れた発想や創意工夫を誰にも紹介せず、日の目を見ないままにしてしまう。そのうえ、仲間の知的価値からも目を逸らそうとする。「私のアイデアが評価されなかったから、周囲のアイデアも評価するものか。戦略が決まっても関心もないし、信頼もしない。」となる。

3.教訓

自分自身は、ベンチャー企業に勤めているわけでも、経営計画や新商品開発に携わっているわけでもなく、既存業務の再構築(BPR)や法令対応が業務の中心です。

そのため、業務フローをペーパレスにしたり、法令改正に伴って顧客に確認する項目が増えたり、それを入力するためのシステムを変更したりと、現場に運営変更を求めることが多くあります。そのため、本書の第4原則の後半くらいからの内容は実感を持って理解することができました。

どうしても、「紙のままの方がわかりやすい」「何で面倒なことが増えるのか」といった反対の声が出ることもあります。それを防ぐために、運営変更の検討段階から意見を求めて一部を取り入れたり、いきなり全店展開するのではなくキーパーソンにだけ事前に説明して了解を取り付けたり、といったことを工夫しています。

しかしながら、時間が不足していたり、様々な要因で事前に情報を伝えることができなかったりで、毎回理想通りに進めることができるわけではありません。

それでも、できる限りの努力はして、円滑な業務移行を目指していきたいと思います。